276 / 416
【18】治外法権~あこがれの先輩
オフザボール
しおりを挟む
実際にそうかどうかは判らない。
だけど、元ルセロの幾久から届くボールはあまりにもぴったりすぎて、驚くほどだ。
『最高に気持ちいいから』
御堀の言葉に藤原は気づく。
(そっか、こういうことなんだ!)
欲しいところに欲しいボールがきちんと届く。
これまで藤原にとって、ボールは味方であろうが敵であろうが奪って手に入れるもので、必死にねだってもらえても、へろへろのボールしかもらえなかった。
だからまずボールを受け取り、たてなおす時間が必要で、その隙にやられることが多かった。
幾久のボールは違う。力強いボールが藤原の足元にきちんと強く届く。
(点を入れろって。お前がやれって)
力強く当たるボールは、幾久の意思をそのまま運んで藤原に当たる気がした。
期待されるのも初めてなら、託されるのも初めてだった。
(なんだこれは!)
こんなにも気持ちがいいものなのか。
仲間がボールを運んできて、それを届けてくれて、藤原にやれとチャンスをくれる。
(なんだこれは!すげー楽しいぞ!)
藤原の足が軽やかに走る。
いつもより早くボールに届く。
藤原が走る。
いつもよりずっと軽く早く先に行ける。
ギリギリのラインを幾久が狙う。届く。
必死にならないと叱られる。その通りだ、幾久は藤原の届く距離をじっと見ていて、藤原の届く距離を修正してくる。
ずっと昔から一緒にやっていたみたいな、そんな錯覚すら感じる。
(これで落ちるって……!ルセロどんだけなんだよ!)
藤原はサッカーをしているのではなく、幾久に上手なサッカーを『させてもらってる』のだとわかる。
最高の自分が出せている。
幾久と御堀のフォローのお陰で。
「こっち!」
御堀の声にはっとして、ボールを渡す。
しかしそれを、時山に奪われた。
「ドンマイ!」
幾久が怒鳴り、すぐに取り戻しに行き、時山からボールを奪う。
謝らなくてもいいから次に行け。
言葉にならなくても通じた。
藤原はすぐに次の行動へ移る。こんなサッカーは初めてで楽しくて。
「藤原!」
幾久に怒鳴られ、ボールを受けた。
すぐ目の前に虎継が居て、だけど幾久がもう走り出していた。
幾久に向けて藤原がボールを蹴る、それを華之丞が奪おうと走る。
幾久がボールを上手にうけ、華之丞はボールを奪おうとしたのに、幾久は体をくるりと回転させて華之丞のマークをはずし、勢い、バランスを崩した華之丞は膝をついた。
幾久はその隙を見逃さない。
すぐ御堀に向かって場所を示すと、御堀に向かってボールを蹴った。
御堀は幾久が示した場所をめがけ走り抜け、マークについていた時山を振り切り、フリーになった瞬間幾久のボールが届き。
御堀は空中で思い切り足を振りぬき、ボールを打ち込んだ。
「うわっ!」
キーパーは御堀のボールを止められなかった。
ネットが揺れた。
一点目を奪ったのは、藤原のチームだった。
(……ッ、けぇ!)
藤原は驚きのあまり声も出なかった。
(一応、プロのキーパーだぞ?!なのに)
控えとはいえ二部のプロのキーパー相手に迷い無く打ち込んだ上に、しかも点を取って見せた。
おまけに御堀のシュートは空中でボールを蹴りぬくボレーシュートだった。
幾久のパスを空中でダイレクトに打ち抜く。
打ち抜いた御堀も凄いが、ピンポイントであわせた幾久も凄い。
互いによっぽどの自信と信頼がなければ出来ないだろう。
(プロ相手に、ちっともビビッてないどころか)
むしろ実力を試せて楽しそうですらある。
点を入れた御堀は得意げに指を一本上げて示す。
まずは一点目、ということだろうか。
幾久も藤原も得点をした御堀に駆け寄っていく。
幾久は御堀に抱きついた。
「やった誉、さっすが!」
「まーね。さっき削られそうになった幾の敵」
「とれたとれた!かっけー!」
そういって二人で笑ってハイタッチした。
藤原はただ、二人のコンビの格好良さに驚いていた。
「手」
幾久に言われて両手の平を出すと、幾久と御堀に、ばちん、ばちんと叩かれた。
「いってぇ!」
藤原が言うと幾久と御堀は笑った。
「先輩が決めたんだから褒めろよ!」
「あ、すげえっす!」
藤原が言うと、幾久が言った。
「違うだろ?勝つのは」
藤原がはっとして、怒鳴った。
「おれらだ!」
「上出来」
そういって御堀も笑う。
(すげえ)
藤原は気持ちが高ぶるのを感じた。
こんなにも気持ちが良くて、楽しくて、面白いサッカーは初めてだ。
強いって、なんて楽しいんだろう。
決められた華之丞のチームは渋い顔だ。
「あーあ」
時山は苦笑いしているが、仕方が無い。
「はいはーい、切り替えて次いこか」
時山が言うも、華之丞はむっとしたままだ。
(なんなんだよ)
時山は上手い。
それは間違いない。
華之丞がミスしたボールも時山が拾っているし、年下の虎継に負担がかからないようにも動いている。
動けていないのは自分だ。
いつもより体が重い。うまく動けない。
(なんだよ)
華之丞は手を握り締めた。
なんであんなに一生懸命なんだよ。
たかがサッカーだろ。練習試合だろ。
むしろそこまででもねえだろ、こんなん。
あいつなんか選手になんかなれるわけねえじゃん。
それなのに。
藤原はずっと楽しそうだ。
幾久も、御堀もだ。
フィールドの外ではあまりに上手い二人に驚いたのだろう、ケートスの選手が驚いたり話したりしている。
中には先生と話をしているのもいるから、ひょっとしたらスカウトでもするもりなのかもしれない。
そのくらい二人とも別次元で上手い。
だけど、それよりも華之丞が下手だと笑った藤原が、いつもとは桁違いによく動けている。
(―――――これが、ルセロなのか)
自分だけが上手に動くわけではなく、相手も上手に動かしてみせている。
幾久のチームは上手く稼動していて、どこにも隙も無駄もない。
いつもの藤原なら、点を自分のチームが入れた途端、華之丞を煽りに来るだろう。
どうだ、ハナちゃん、すげーだろ、そんな風に。
でも今の藤原はどうだ。
そんなこと気づきもせず、先輩達のサッカーに夢中だ。
わくわくして、その一瞬も見落とさずにいようとしているみたいに。
(―――――俺が)
本当ならそっちに行きたかった。
(俺が先に、見つけたのに!)
幾久を見つけて、その凄さに気づいたのは華之丞のほうが先だった。
だから勝手にあこがれた。
父親に、元ルセロのユースだったとも聞いた。
この人だと思ったのだ。
サッカーをやりたい。でも他のこともやりたい。将来の夢はどっちとも違う。全部やれないのはわかってる。
だからどれかを諦めるか、どうしようか、ずっと悩んで幾久だったらきっとなにか教えてくれるのではないかと。
実際そうだった。だから、もう絶対にこの人をお手本にするのだと決めた。
それなのに。
『お前がやってるのはサッカーじゃない。サッカー使っていじめてるんだよ』
華之丞は悔しさのあまり、奥歯をかみ締めた。
7分の前半が終わり、3分のハーフタイム、休憩となった。
この程度の時間なら別に作戦もいらないし、人数が少ないのでただ休むだけで済む。
ケートスの選手からの差し入れで、全員スポドリを貰った。
幾久達のチームが一点奪い、試合は1対0。
後半7分で点を二点入れないと負けてしまう。
(くそっ)
華之丞は苛立つ。
待ちに待った、報国院の見学だったのに、どうしてこんなことになっているんだ。
しかもやたら体が重い。
メンタルの影響とは思いたくないが、そうなのか。
時山が言った。
「いやーさすがあっち、つえーつえーwww」
楽しそうなのが余計に腹立たしい。こっちは負けているというのに。
「動きづれーっすよ。年齢、離れすぎたせいじゃないっすか」
こっちは時山が高3だが、あっちは同じ学年が二人、ひとつ違いが一人。
負けているせいもあるが、こっちのほうが不利な気がしてきた。
「なになに?こっちが負けてるのは俺っちのせいって?」
ニヤニヤしながら時山が言う。
「そんなことは。ただ、やっぱやりづれえっていうか」
華之丞よりひとつ年下の虎継はびくっと肩を震わせた。
さっきからろくに動けていないのを、自分でも気にしていたのだ。
すると、知り合いのケートスの選手がやってきた。
「よっ、ノスケ!いい負けっぷりだな!」
「うるせー。すぐ取り返します」
「ハハハ、その意気だぞ」
この選手は時山と仲がよくて、年下のユースの子によくちょっかいをかけにくる。
「でもお前、体、すげー重いだろ?それ虎のせいって思ってんだろ?」
図星をつかれ、華之丞は黙った。
実際その通りだった。虎継の動きが悪くて華之丞はうまく動けない。
するとケートスの選手が言った。
「お前がいっつも動けてるのは、左サイドに藤原がいたからな」
「……え?」
藤原と華之丞のポジションはMF(ミッドフィルダー)、同じだが、華之丞は右サイド、藤原は左サイド。
体格に恵まれ、敵にぶつかられてもあたり負けしない華之丞は体で押し切り、自分でシュートまで持っていく事が多い。
一方、藤原はドリブルで突破して、敵ゴール前の攻撃を担当するFW(フォワード)にボールを渡す、チャンスがあれば狙う、といった事が多かった。
だからいま、FWである攻撃の御堀、守備も出来てゲームメイクも出来るCMFの幾久とうまくかみ合っている。
こちらは右SB(サイドバック)の虎継、MFの華之丞、FWの時山なので、どうしても華之丞の負担が大きくなる。
サッカーなら守る必要が出てくるからこれで良かったのかもしてないが、今やっているのはほぼフットサルなのでフィールドは狭いし、瞬間の判断が必要になるから、正直部が悪い。
攻撃に特化したあちらが有利だ。
動き辛いのはそれが原因だと思っていたのに。
ケートスの選手は楽しそうに華之丞に言った。
「いつもは藤原がお前の反対側でちょろちょろ敵にかましてるから、お前がフリーになりやすくなって、その分お前が楽に動けてたんだよ。気づいて無かったろ?だから、今のお前が動けねーのは藤原がいないせい。しつこく言われたろ。ボールを持ってないときもちゃんと考えて動けって」
だけど、元ルセロの幾久から届くボールはあまりにもぴったりすぎて、驚くほどだ。
『最高に気持ちいいから』
御堀の言葉に藤原は気づく。
(そっか、こういうことなんだ!)
欲しいところに欲しいボールがきちんと届く。
これまで藤原にとって、ボールは味方であろうが敵であろうが奪って手に入れるもので、必死にねだってもらえても、へろへろのボールしかもらえなかった。
だからまずボールを受け取り、たてなおす時間が必要で、その隙にやられることが多かった。
幾久のボールは違う。力強いボールが藤原の足元にきちんと強く届く。
(点を入れろって。お前がやれって)
力強く当たるボールは、幾久の意思をそのまま運んで藤原に当たる気がした。
期待されるのも初めてなら、託されるのも初めてだった。
(なんだこれは!)
こんなにも気持ちがいいものなのか。
仲間がボールを運んできて、それを届けてくれて、藤原にやれとチャンスをくれる。
(なんだこれは!すげー楽しいぞ!)
藤原の足が軽やかに走る。
いつもより早くボールに届く。
藤原が走る。
いつもよりずっと軽く早く先に行ける。
ギリギリのラインを幾久が狙う。届く。
必死にならないと叱られる。その通りだ、幾久は藤原の届く距離をじっと見ていて、藤原の届く距離を修正してくる。
ずっと昔から一緒にやっていたみたいな、そんな錯覚すら感じる。
(これで落ちるって……!ルセロどんだけなんだよ!)
藤原はサッカーをしているのではなく、幾久に上手なサッカーを『させてもらってる』のだとわかる。
最高の自分が出せている。
幾久と御堀のフォローのお陰で。
「こっち!」
御堀の声にはっとして、ボールを渡す。
しかしそれを、時山に奪われた。
「ドンマイ!」
幾久が怒鳴り、すぐに取り戻しに行き、時山からボールを奪う。
謝らなくてもいいから次に行け。
言葉にならなくても通じた。
藤原はすぐに次の行動へ移る。こんなサッカーは初めてで楽しくて。
「藤原!」
幾久に怒鳴られ、ボールを受けた。
すぐ目の前に虎継が居て、だけど幾久がもう走り出していた。
幾久に向けて藤原がボールを蹴る、それを華之丞が奪おうと走る。
幾久がボールを上手にうけ、華之丞はボールを奪おうとしたのに、幾久は体をくるりと回転させて華之丞のマークをはずし、勢い、バランスを崩した華之丞は膝をついた。
幾久はその隙を見逃さない。
すぐ御堀に向かって場所を示すと、御堀に向かってボールを蹴った。
御堀は幾久が示した場所をめがけ走り抜け、マークについていた時山を振り切り、フリーになった瞬間幾久のボールが届き。
御堀は空中で思い切り足を振りぬき、ボールを打ち込んだ。
「うわっ!」
キーパーは御堀のボールを止められなかった。
ネットが揺れた。
一点目を奪ったのは、藤原のチームだった。
(……ッ、けぇ!)
藤原は驚きのあまり声も出なかった。
(一応、プロのキーパーだぞ?!なのに)
控えとはいえ二部のプロのキーパー相手に迷い無く打ち込んだ上に、しかも点を取って見せた。
おまけに御堀のシュートは空中でボールを蹴りぬくボレーシュートだった。
幾久のパスを空中でダイレクトに打ち抜く。
打ち抜いた御堀も凄いが、ピンポイントであわせた幾久も凄い。
互いによっぽどの自信と信頼がなければ出来ないだろう。
(プロ相手に、ちっともビビッてないどころか)
むしろ実力を試せて楽しそうですらある。
点を入れた御堀は得意げに指を一本上げて示す。
まずは一点目、ということだろうか。
幾久も藤原も得点をした御堀に駆け寄っていく。
幾久は御堀に抱きついた。
「やった誉、さっすが!」
「まーね。さっき削られそうになった幾の敵」
「とれたとれた!かっけー!」
そういって二人で笑ってハイタッチした。
藤原はただ、二人のコンビの格好良さに驚いていた。
「手」
幾久に言われて両手の平を出すと、幾久と御堀に、ばちん、ばちんと叩かれた。
「いってぇ!」
藤原が言うと幾久と御堀は笑った。
「先輩が決めたんだから褒めろよ!」
「あ、すげえっす!」
藤原が言うと、幾久が言った。
「違うだろ?勝つのは」
藤原がはっとして、怒鳴った。
「おれらだ!」
「上出来」
そういって御堀も笑う。
(すげえ)
藤原は気持ちが高ぶるのを感じた。
こんなにも気持ちが良くて、楽しくて、面白いサッカーは初めてだ。
強いって、なんて楽しいんだろう。
決められた華之丞のチームは渋い顔だ。
「あーあ」
時山は苦笑いしているが、仕方が無い。
「はいはーい、切り替えて次いこか」
時山が言うも、華之丞はむっとしたままだ。
(なんなんだよ)
時山は上手い。
それは間違いない。
華之丞がミスしたボールも時山が拾っているし、年下の虎継に負担がかからないようにも動いている。
動けていないのは自分だ。
いつもより体が重い。うまく動けない。
(なんだよ)
華之丞は手を握り締めた。
なんであんなに一生懸命なんだよ。
たかがサッカーだろ。練習試合だろ。
むしろそこまででもねえだろ、こんなん。
あいつなんか選手になんかなれるわけねえじゃん。
それなのに。
藤原はずっと楽しそうだ。
幾久も、御堀もだ。
フィールドの外ではあまりに上手い二人に驚いたのだろう、ケートスの選手が驚いたり話したりしている。
中には先生と話をしているのもいるから、ひょっとしたらスカウトでもするもりなのかもしれない。
そのくらい二人とも別次元で上手い。
だけど、それよりも華之丞が下手だと笑った藤原が、いつもとは桁違いによく動けている。
(―――――これが、ルセロなのか)
自分だけが上手に動くわけではなく、相手も上手に動かしてみせている。
幾久のチームは上手く稼動していて、どこにも隙も無駄もない。
いつもの藤原なら、点を自分のチームが入れた途端、華之丞を煽りに来るだろう。
どうだ、ハナちゃん、すげーだろ、そんな風に。
でも今の藤原はどうだ。
そんなこと気づきもせず、先輩達のサッカーに夢中だ。
わくわくして、その一瞬も見落とさずにいようとしているみたいに。
(―――――俺が)
本当ならそっちに行きたかった。
(俺が先に、見つけたのに!)
幾久を見つけて、その凄さに気づいたのは華之丞のほうが先だった。
だから勝手にあこがれた。
父親に、元ルセロのユースだったとも聞いた。
この人だと思ったのだ。
サッカーをやりたい。でも他のこともやりたい。将来の夢はどっちとも違う。全部やれないのはわかってる。
だからどれかを諦めるか、どうしようか、ずっと悩んで幾久だったらきっとなにか教えてくれるのではないかと。
実際そうだった。だから、もう絶対にこの人をお手本にするのだと決めた。
それなのに。
『お前がやってるのはサッカーじゃない。サッカー使っていじめてるんだよ』
華之丞は悔しさのあまり、奥歯をかみ締めた。
7分の前半が終わり、3分のハーフタイム、休憩となった。
この程度の時間なら別に作戦もいらないし、人数が少ないのでただ休むだけで済む。
ケートスの選手からの差し入れで、全員スポドリを貰った。
幾久達のチームが一点奪い、試合は1対0。
後半7分で点を二点入れないと負けてしまう。
(くそっ)
華之丞は苛立つ。
待ちに待った、報国院の見学だったのに、どうしてこんなことになっているんだ。
しかもやたら体が重い。
メンタルの影響とは思いたくないが、そうなのか。
時山が言った。
「いやーさすがあっち、つえーつえーwww」
楽しそうなのが余計に腹立たしい。こっちは負けているというのに。
「動きづれーっすよ。年齢、離れすぎたせいじゃないっすか」
こっちは時山が高3だが、あっちは同じ学年が二人、ひとつ違いが一人。
負けているせいもあるが、こっちのほうが不利な気がしてきた。
「なになに?こっちが負けてるのは俺っちのせいって?」
ニヤニヤしながら時山が言う。
「そんなことは。ただ、やっぱやりづれえっていうか」
華之丞よりひとつ年下の虎継はびくっと肩を震わせた。
さっきからろくに動けていないのを、自分でも気にしていたのだ。
すると、知り合いのケートスの選手がやってきた。
「よっ、ノスケ!いい負けっぷりだな!」
「うるせー。すぐ取り返します」
「ハハハ、その意気だぞ」
この選手は時山と仲がよくて、年下のユースの子によくちょっかいをかけにくる。
「でもお前、体、すげー重いだろ?それ虎のせいって思ってんだろ?」
図星をつかれ、華之丞は黙った。
実際その通りだった。虎継の動きが悪くて華之丞はうまく動けない。
するとケートスの選手が言った。
「お前がいっつも動けてるのは、左サイドに藤原がいたからな」
「……え?」
藤原と華之丞のポジションはMF(ミッドフィルダー)、同じだが、華之丞は右サイド、藤原は左サイド。
体格に恵まれ、敵にぶつかられてもあたり負けしない華之丞は体で押し切り、自分でシュートまで持っていく事が多い。
一方、藤原はドリブルで突破して、敵ゴール前の攻撃を担当するFW(フォワード)にボールを渡す、チャンスがあれば狙う、といった事が多かった。
だからいま、FWである攻撃の御堀、守備も出来てゲームメイクも出来るCMFの幾久とうまくかみ合っている。
こちらは右SB(サイドバック)の虎継、MFの華之丞、FWの時山なので、どうしても華之丞の負担が大きくなる。
サッカーなら守る必要が出てくるからこれで良かったのかもしてないが、今やっているのはほぼフットサルなのでフィールドは狭いし、瞬間の判断が必要になるから、正直部が悪い。
攻撃に特化したあちらが有利だ。
動き辛いのはそれが原因だと思っていたのに。
ケートスの選手は楽しそうに華之丞に言った。
「いつもは藤原がお前の反対側でちょろちょろ敵にかましてるから、お前がフリーになりやすくなって、その分お前が楽に動けてたんだよ。気づいて無かったろ?だから、今のお前が動けねーのは藤原がいないせい。しつこく言われたろ。ボールを持ってないときもちゃんと考えて動けって」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる