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【20】適材適所~愛とは君が居るということ
ジュリエット君は(内緒の策略に)気づかない
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通路を歩き、突当りを曲がる。
いろんなスタッフさんが忙しそうに走り回っていた。
(なんか急がしそうだけど、いいのかな)
遊び気分で来た幾久は申し訳ないような気持ちになるが、南風はにこにこしている。
そして通路を曲がり、ある部屋の前で足を止め、楽屋の扉を叩く。
「みなみっす。入りまーす」
うーす、という声がして、南風が扉を開けた瞬間だった。
「うわっ」
思わず南風が声を上げたのは、目の前にどーんと青木が両手を広げて立っていたからだ。
青木は言った。
「お前じゃねえよ」
「判ってますよ」
そういって南風は幾久をぐいっと前に押しやった。
「どうぞ、お待ちかねの方です」
「いっ、」
いつものように幾久に飛びかかろうとした青木が、ぐいっと後ろから引っ張られ、幾久の前から消えた。
「いいから入って」
そう言ってにこにこ笑顔で迎えてくれたのは、宮部だった。
幾久と御堀が楽屋に入ると、扉は閉められた。
「はい、青木君、どうどう、落ち着いて」
思い切り首根っこから引っ張られた青木は憤怒の表情で福原を睨んでいたが、幾久を見るとぱあっと顔色を明るくした。
「いっくうぅん、いらっしゃぁあああああい!」
「あ、ドモ。今日はお世話になります」
前回と同じく、御堀の背中から覗き込みながら言うと、青木は御堀を笑顔で見ながら言った。
「邪魔だな」
「すみません」
ふんと青木は御堀に言った。
「とっととどけよ」
「そうできたらいいのですが。幾、出てこれる?」
幾久は御堀の腕の間から顔をのぞかせて言った。
「アオ先輩がウザくなかったら」
「酷い!いっくん酷い!」
相変わらずのテンションに幾久は顔をしかめるが、福原が言った。
「いっくん、青木君、本当に仕事頑張ったから、ちょっと我慢してやって?」
ね?と言われれば仕方なく、幾久はしぶしぶ前に出た。
満面の笑顔で腕を伸ばす青木に、仕方ないな、と抱きついた。
喜んで幾久をぎゅうっと抱きしめる青木の背をぽんぽんと叩くと幾久は言った。
「アオ先輩、ステイ」
すると青木は、むっとしつつ幾久から離れた。
福原はげらげら笑っていた。
楽屋には、福原、来原、集と青木、そして宮部が居た。
青木が御堀を指差し言った。
「で、そっちの奴。ロミオ」
御堀は「はい」と返事をした。
「用事があるんだろ。とっとと言えよ」
「ここではちょっと。青木先輩お一人にお話したいんですが」
御堀が言うと、青木がふんと鼻を鳴らす。
「じゃあ宮部っち、僕こいつと隣に移動すっから」
「うーん、それはちょっと駄目かな。一緒に聞いても?」
「ええ。青木先輩が居て、ここじゃなければ」
青木はそれでピンときたらしい。
「わかった。隣、もう一人メンバーいるけど、無関係だからいいよな」
青木が御堀に尋ねると、御堀は頷いた。
「大丈夫です」
宮部が頷き、福原達に言った。
「じゃあ、御堀君とこっちでお話してくるから、いっくんは先輩達のお世話、よろしくね」
「はいっす」
幾久が頷くと、宮部と青木は楽屋を出て行った。
「隣、何なんすか?」
幾久が福原に尋ねる。
「楽屋。ここと同じよ基本。リーダーが気をつかって、移動してたの」
リーダーとはグラスエッジのリーダー、ベース担当の中岡(なかおか)音(おん)。
五月に紹介された高杉の友人、坂本の従兄弟で、いま船に乗っている幾久と同じ年の中岡(なかおか)楽(がく)の兄だ。
楽とは時々、メッセージのやりとりをしているので、中岡の兄の事も少し知っていた。
「先輩ら、もうお仕事いいんすか?」
ライヴまで三時間あるが、することはないのだろうか。
幾久が尋ねると、全員頷いた。
「どうせいっくん来てから、ぼちぼちメイクでもしよっか、って感じだったからね」
「やっぱドーランとか塗るんすか」
地球部で舞台を経験した幾久は、舞台メイクも当然経験済みだ。
舞台では、見栄えをよくする為や、お客さんから表情がよく見えるようにするため、メイクをする。
バンドもするのかな、と思っていたが。
「塗る塗る。ばっちりメイクするよ。メイクさんもヘアメイクさんもいるよ!」
「へー!なんか本格的っすね」
「ちょっといっくんー、俺らが本物のバンドって忘れてない?」
福原がむくれながら言うと、幾久は「忘れてました」と言い、なぜか幾久の発言がいつもツボにはいる集が爆笑していた。
「んでさー、あのお坊ちゃまくんはなにしにきたの?」
福原は幾久にお茶を渡しながら言うと、幾久はそれを受け取り、一口飲んでから言った。
「なんかアオ先輩にせびりに来たそうで」
「直球―!あの子経済研究部だったよね」
「はい。もう直球そのままです」
「なにがそんなにいるんだろうねえ。正直、報国院って鳳が頼めば大抵のことは上が通すじゃん」
福原の不思議そうな疑問に、幾久もそうなんだよな、と首を傾げる。
報国院は成績が全ての価値基準なので、鳳クラスの生徒が言ったことは大抵思い通りになる。
しかも御堀は鳳で首席、おまけに時期桜柳会の責任者でもあるから、いうなればやりたい放題のはずなのだ。
それなのにわざわざ『青木』にご指名で『タカリ』に行くとは。
「わかんないっす。でも誉がアオ先輩って指定したってことは、やっぱりそれなりの理由があるんだろうと思うんす」
「ふーん」
福原は頷く。
「ま、なんでもいいけど。青木君実際金持ってるからねえ」
「やっぱそうなんすね」
「そりゃだって、グラスエッジで一番仕事してんの青木君だもん。作曲は俺らもするけど、編曲全部青木君だしね。おまけに自分のブランドも持ってるから、忙しいなんてもんじゃないんだよね」
仲が悪いと言いながら、そのあたりはしっかり青木を評価しているらしい。
「そうだ、いっくんからも青木君にさ、運動するように言ってくんないかな」
福原の言葉に幾久は首をかしげた。
「オレが、っすか?」
「うん。俺とリーダーはサッカー繋がりだから、サッカーチーム持ってるし遊んだりもするんだよね。んで来とアツは見ての通りのマッチョマチョでしょ?青木君、ちょっと運動不足なんだよね。でもいっくんが言えばあいつ絶対に運動始めるから」
「それは判るっスけど、なんて言えばいいんスかね」
運動しろ、なんてふんわりした言葉で、果たして青木がどのくらい運動するのかなんて、幾久には判らないのだが。
福原が言った。
「そこはほら、なんか適当に、サッカーやってる福原先輩、かっこいいっすよねとか煽ったら」
「絶対に福原先輩を蹴りますよね」
「そうそう、俺がサッカーボールにって、なんでやねん」
福原が言うと、集が腹を抱えて爆笑していた。
さて、一方こちらは御堀と宮部、そして青木の三人と、楽屋に一人居たのは中岡だった。
「ごめんね音、ちょっと話があってさ」
すると中岡が腰を浮かせた。
「俺、出とくよ」
「いいよリーダー。リーダーが居ても問題ないみたいだから」
青木が言うと、御堀も頷く。
だったら、と中岡も腰を下ろした。
楽屋はさっき青木が居た場所と同じくらいの広さで、室内のあつらえも同じだった。
宮部が全員分のお茶を用意する間、御堀と青木、そして中岡はソファーに腰を下ろした。
中岡に御堀はぺこりと頭を下げると、中岡も軽く頭を下げる。
「後輩?」
中岡が青木を示し、御堀に尋ねると、御堀は「はい」と頷く。
青木はソファーに深く座ると、足を組んで腕も組み、ふんぞりかえった。
「で、話って何だよ」
すると中岡が驚いて言った。
「アオ、他人の話なんか聞くんだ」
ふんと青木はそっぽを向く。
「いっくんの将来にも関わる事だ、って聞かなけりゃ誰がこんな奴」
むっとしたまま青木は言う。
本当に心底、青木は御堀なんかと話をしたくはないのだ。
だが、御堀は幾久から絶大な信頼を受けている。
その御堀が『幾久の将来にも関わる』なんて青木に匂わせぶりな事を言うのだから、策略があるのは間違いない。
「優等生っぽいね。頭よさそう」
中岡が言うと青木が露骨にいやな顔をして言った。
「コイツ、首席なんだってよ。ろくなもんじゃねーわ」
「え?首席?すごいなあ」
「頭いいんだね」
宮部と中岡が感心するも、御堀は素直に「はい」と頷く。
青木が言った。
「こいつ、最上位クラスの鳳で首席って、絶対にろくな奴じゃねーよ」
「また青はそんな意地悪を」
宮部が言うと、青木が言った。
「僕だってそうだったからね」
すると宮部と中岡は「ああ……(納得)」という表情になった。
「でさ、そんな頭のいい子が、アオに相談する事なんてあるの?」
中岡の言葉に青木が突っ込んだ。
「リーダー、いまなにげに僕をディスッたね」
「違うって。頭良いなら、自分でどうにかしそうだからね」
すると御堀が言った。
「―――――自分じゃどうにもできないんです」
そう、自分ではどうにもできないからこそ、こうしてわざわざ青木の所までやってきたのだ。
御堀は鞄からファイルを取り出すと、青木へ渡した。
A4の冊子状態にされたのは、図面と計画書、そのほかだった。
青木はそれをぱらぱらと捲る。
御堀は、静かに息を吸って、吐いた。
(勝負だ)
多分、これは御堀にとってかなり勝率の高い勝負だった。
なにせ、幾久を溺愛している青木がいるし、その青木は桁違いのお金持ちだ。
報国院にかけあいはしたものの、予算の都合上、すぐには難しいという返事だった。
そうだろうと御堀も思っていた。
だから、もし予算の都合が付けば可能か。
そう尋ねたら、そりゃ勿論可能だと言われた。
だったら、お金さえあればどうにかなる事だ。
だけど、やはり御堀のポケットマネーや、高校生の信用レベルでどうこうできる額ではなかった。
だったら諦めるのか。勿論そんなことはしない。
どうにかするのが、鳳のプライドだ。
「で、これが僕に何の関係があるの」
「青木先輩には関係ありません。あるのは、幾にです」
そして御堀は、幾久の話を始めた。
いろんなスタッフさんが忙しそうに走り回っていた。
(なんか急がしそうだけど、いいのかな)
遊び気分で来た幾久は申し訳ないような気持ちになるが、南風はにこにこしている。
そして通路を曲がり、ある部屋の前で足を止め、楽屋の扉を叩く。
「みなみっす。入りまーす」
うーす、という声がして、南風が扉を開けた瞬間だった。
「うわっ」
思わず南風が声を上げたのは、目の前にどーんと青木が両手を広げて立っていたからだ。
青木は言った。
「お前じゃねえよ」
「判ってますよ」
そういって南風は幾久をぐいっと前に押しやった。
「どうぞ、お待ちかねの方です」
「いっ、」
いつものように幾久に飛びかかろうとした青木が、ぐいっと後ろから引っ張られ、幾久の前から消えた。
「いいから入って」
そう言ってにこにこ笑顔で迎えてくれたのは、宮部だった。
幾久と御堀が楽屋に入ると、扉は閉められた。
「はい、青木君、どうどう、落ち着いて」
思い切り首根っこから引っ張られた青木は憤怒の表情で福原を睨んでいたが、幾久を見るとぱあっと顔色を明るくした。
「いっくうぅん、いらっしゃぁあああああい!」
「あ、ドモ。今日はお世話になります」
前回と同じく、御堀の背中から覗き込みながら言うと、青木は御堀を笑顔で見ながら言った。
「邪魔だな」
「すみません」
ふんと青木は御堀に言った。
「とっととどけよ」
「そうできたらいいのですが。幾、出てこれる?」
幾久は御堀の腕の間から顔をのぞかせて言った。
「アオ先輩がウザくなかったら」
「酷い!いっくん酷い!」
相変わらずのテンションに幾久は顔をしかめるが、福原が言った。
「いっくん、青木君、本当に仕事頑張ったから、ちょっと我慢してやって?」
ね?と言われれば仕方なく、幾久はしぶしぶ前に出た。
満面の笑顔で腕を伸ばす青木に、仕方ないな、と抱きついた。
喜んで幾久をぎゅうっと抱きしめる青木の背をぽんぽんと叩くと幾久は言った。
「アオ先輩、ステイ」
すると青木は、むっとしつつ幾久から離れた。
福原はげらげら笑っていた。
楽屋には、福原、来原、集と青木、そして宮部が居た。
青木が御堀を指差し言った。
「で、そっちの奴。ロミオ」
御堀は「はい」と返事をした。
「用事があるんだろ。とっとと言えよ」
「ここではちょっと。青木先輩お一人にお話したいんですが」
御堀が言うと、青木がふんと鼻を鳴らす。
「じゃあ宮部っち、僕こいつと隣に移動すっから」
「うーん、それはちょっと駄目かな。一緒に聞いても?」
「ええ。青木先輩が居て、ここじゃなければ」
青木はそれでピンときたらしい。
「わかった。隣、もう一人メンバーいるけど、無関係だからいいよな」
青木が御堀に尋ねると、御堀は頷いた。
「大丈夫です」
宮部が頷き、福原達に言った。
「じゃあ、御堀君とこっちでお話してくるから、いっくんは先輩達のお世話、よろしくね」
「はいっす」
幾久が頷くと、宮部と青木は楽屋を出て行った。
「隣、何なんすか?」
幾久が福原に尋ねる。
「楽屋。ここと同じよ基本。リーダーが気をつかって、移動してたの」
リーダーとはグラスエッジのリーダー、ベース担当の中岡(なかおか)音(おん)。
五月に紹介された高杉の友人、坂本の従兄弟で、いま船に乗っている幾久と同じ年の中岡(なかおか)楽(がく)の兄だ。
楽とは時々、メッセージのやりとりをしているので、中岡の兄の事も少し知っていた。
「先輩ら、もうお仕事いいんすか?」
ライヴまで三時間あるが、することはないのだろうか。
幾久が尋ねると、全員頷いた。
「どうせいっくん来てから、ぼちぼちメイクでもしよっか、って感じだったからね」
「やっぱドーランとか塗るんすか」
地球部で舞台を経験した幾久は、舞台メイクも当然経験済みだ。
舞台では、見栄えをよくする為や、お客さんから表情がよく見えるようにするため、メイクをする。
バンドもするのかな、と思っていたが。
「塗る塗る。ばっちりメイクするよ。メイクさんもヘアメイクさんもいるよ!」
「へー!なんか本格的っすね」
「ちょっといっくんー、俺らが本物のバンドって忘れてない?」
福原がむくれながら言うと、幾久は「忘れてました」と言い、なぜか幾久の発言がいつもツボにはいる集が爆笑していた。
「んでさー、あのお坊ちゃまくんはなにしにきたの?」
福原は幾久にお茶を渡しながら言うと、幾久はそれを受け取り、一口飲んでから言った。
「なんかアオ先輩にせびりに来たそうで」
「直球―!あの子経済研究部だったよね」
「はい。もう直球そのままです」
「なにがそんなにいるんだろうねえ。正直、報国院って鳳が頼めば大抵のことは上が通すじゃん」
福原の不思議そうな疑問に、幾久もそうなんだよな、と首を傾げる。
報国院は成績が全ての価値基準なので、鳳クラスの生徒が言ったことは大抵思い通りになる。
しかも御堀は鳳で首席、おまけに時期桜柳会の責任者でもあるから、いうなればやりたい放題のはずなのだ。
それなのにわざわざ『青木』にご指名で『タカリ』に行くとは。
「わかんないっす。でも誉がアオ先輩って指定したってことは、やっぱりそれなりの理由があるんだろうと思うんす」
「ふーん」
福原は頷く。
「ま、なんでもいいけど。青木君実際金持ってるからねえ」
「やっぱそうなんすね」
「そりゃだって、グラスエッジで一番仕事してんの青木君だもん。作曲は俺らもするけど、編曲全部青木君だしね。おまけに自分のブランドも持ってるから、忙しいなんてもんじゃないんだよね」
仲が悪いと言いながら、そのあたりはしっかり青木を評価しているらしい。
「そうだ、いっくんからも青木君にさ、運動するように言ってくんないかな」
福原の言葉に幾久は首をかしげた。
「オレが、っすか?」
「うん。俺とリーダーはサッカー繋がりだから、サッカーチーム持ってるし遊んだりもするんだよね。んで来とアツは見ての通りのマッチョマチョでしょ?青木君、ちょっと運動不足なんだよね。でもいっくんが言えばあいつ絶対に運動始めるから」
「それは判るっスけど、なんて言えばいいんスかね」
運動しろ、なんてふんわりした言葉で、果たして青木がどのくらい運動するのかなんて、幾久には判らないのだが。
福原が言った。
「そこはほら、なんか適当に、サッカーやってる福原先輩、かっこいいっすよねとか煽ったら」
「絶対に福原先輩を蹴りますよね」
「そうそう、俺がサッカーボールにって、なんでやねん」
福原が言うと、集が腹を抱えて爆笑していた。
さて、一方こちらは御堀と宮部、そして青木の三人と、楽屋に一人居たのは中岡だった。
「ごめんね音、ちょっと話があってさ」
すると中岡が腰を浮かせた。
「俺、出とくよ」
「いいよリーダー。リーダーが居ても問題ないみたいだから」
青木が言うと、御堀も頷く。
だったら、と中岡も腰を下ろした。
楽屋はさっき青木が居た場所と同じくらいの広さで、室内のあつらえも同じだった。
宮部が全員分のお茶を用意する間、御堀と青木、そして中岡はソファーに腰を下ろした。
中岡に御堀はぺこりと頭を下げると、中岡も軽く頭を下げる。
「後輩?」
中岡が青木を示し、御堀に尋ねると、御堀は「はい」と頷く。
青木はソファーに深く座ると、足を組んで腕も組み、ふんぞりかえった。
「で、話って何だよ」
すると中岡が驚いて言った。
「アオ、他人の話なんか聞くんだ」
ふんと青木はそっぽを向く。
「いっくんの将来にも関わる事だ、って聞かなけりゃ誰がこんな奴」
むっとしたまま青木は言う。
本当に心底、青木は御堀なんかと話をしたくはないのだ。
だが、御堀は幾久から絶大な信頼を受けている。
その御堀が『幾久の将来にも関わる』なんて青木に匂わせぶりな事を言うのだから、策略があるのは間違いない。
「優等生っぽいね。頭よさそう」
中岡が言うと青木が露骨にいやな顔をして言った。
「コイツ、首席なんだってよ。ろくなもんじゃねーわ」
「え?首席?すごいなあ」
「頭いいんだね」
宮部と中岡が感心するも、御堀は素直に「はい」と頷く。
青木が言った。
「こいつ、最上位クラスの鳳で首席って、絶対にろくな奴じゃねーよ」
「また青はそんな意地悪を」
宮部が言うと、青木が言った。
「僕だってそうだったからね」
すると宮部と中岡は「ああ……(納得)」という表情になった。
「でさ、そんな頭のいい子が、アオに相談する事なんてあるの?」
中岡の言葉に青木が突っ込んだ。
「リーダー、いまなにげに僕をディスッたね」
「違うって。頭良いなら、自分でどうにかしそうだからね」
すると御堀が言った。
「―――――自分じゃどうにもできないんです」
そう、自分ではどうにもできないからこそ、こうしてわざわざ青木の所までやってきたのだ。
御堀は鞄からファイルを取り出すと、青木へ渡した。
A4の冊子状態にされたのは、図面と計画書、そのほかだった。
青木はそれをぱらぱらと捲る。
御堀は、静かに息を吸って、吐いた。
(勝負だ)
多分、これは御堀にとってかなり勝率の高い勝負だった。
なにせ、幾久を溺愛している青木がいるし、その青木は桁違いのお金持ちだ。
報国院にかけあいはしたものの、予算の都合上、すぐには難しいという返事だった。
そうだろうと御堀も思っていた。
だから、もし予算の都合が付けば可能か。
そう尋ねたら、そりゃ勿論可能だと言われた。
だったら、お金さえあればどうにかなる事だ。
だけど、やはり御堀のポケットマネーや、高校生の信用レベルでどうこうできる額ではなかった。
だったら諦めるのか。勿論そんなことはしない。
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