398 / 416
【26】秉燭夜遊~さよならアルクアラウンド
お利口な生徒はホント楽
しおりを挟む
賑やかに笑いながら、全員は外宮を後にした。
歩いてバス停へ向かう。
目的地は内宮方面、おはらい町だ。
おかげ町は内宮の近くにある、江戸風の建物の連なる場所だ。
観光地として近年、江戸をテーマに再興されたそうで、協力したのはあの赤福の会社という事だ。
「全く観光客が来なかった町を再興して、凄いよ」とは御堀の談で、経済研究部では題材にされるのだという。
そのおはらい町におかげ横丁というテーマパークのような場所があり、お土産屋さんなどが連なっているとの事だ。
バスに乗り内宮方面へ向かうと、十分程度で到着した。
降りたのは猿田彦神社前とあるバス停だった。
「猿田彦って、さっきもそうだったような」
一番最初にお参りした、二見興玉神社の祭神は猿田彦だ。
「そう。同じ神様で、ここは猿田彦の奥さんの天宇受売命(あまのうずめのみこと)も祀られてる。音楽や芸術をつかさどる、芸能の神様だ」
前原が言うと、幾久は、ふと気づいた。
そして児玉も同じ事に気づいたらしい。
「―――――お土産、ここにしよっか」
「そうだな」
誰に、とは言わずとも判っている。
あのやかましい先輩達には、ぴったりのお土産だ。
教師の三吉が言った。
「今日は神社はここでおしまい。お参りが終わったら、おはらい町に行くので、丁寧にお参りするように!」
「はーい!」
三吉の言うように、全員は手水で手を洗い清め、きちんとお参りをし、忘れずに芸能の神様にもお参りをして、先輩らの事をお願いした。
御朱印帳もお願いして、待っている間に幾久等はお守りを選んだ。
丁度芸能のお守りがあったので、それを買うことにした。
「幾久、色は揃えたほうがいいぞ」
児玉のアドバイスに幾久は首を傾げた。
同じお守りで、色違いがあるのでどっちも入れておけば好きな色を選ぶだろうと思ったのだが、児玉が言った。
「どっちも欲しがる人がいるだろ」
子供みたいに、とは思ったが児玉は言わなかった。
幾久はすぐそれが誰かと気づいた。
「ああ、そうだね」
どっちも僕の!と暴れる青木をなんなく想像できてしまい、幾久は肩を落とした。
「よし、オレの独断と偏見でこっちの色にする」
「そうしろ」
幾久が選んだとあってはあの先輩は絶対に文句を言うまい。
幾久はブルーベースの色を選んだ。
御朱印を頼んでいる間、皆もお守りなんかを選んで楽しそうにしていた。
神社は開放的で、しかもさっきの外宮のようにさっぱりした作りではなく、普通の神社といった雰囲気があった。
「神社って、なんかこういうのっていうイメージだから、外宮とかってさっぱりしすぎてびっくりした」
「ここは確かに、普通の神社のイメージだよね」
御堀も頷く。
参拝客もそこそこ多く、開けて明るい雰囲気だ。
賑やかな雰囲気があるのは、芸能の神様のせいなのかな?と幾久は思う。
「御朱印、けっこう溜まったね」
「そうだね。ここで二つお願いしてるから、合わせて五つか」
「わりとある」
いま御朱印帳を預けてあるが、後から見るのが楽しみだ。
そう話していると、代表で御朱印を受け取ってきた山田が戻って来た。
「おーい、御朱印、貰ったぞ。しまっとけ」
「ウン」
幾久はそう言って袋の中に御朱印帳を大切にしまう。
「御空のおかげで、御朱印集められた!ありがとう!」
幾久が言うと、山田は一瞬目を大きく見開いたが「おう」と少し照れて顔をそらした。
全員で猿田彦神社から歩いておはらい町へ向かった。
おはらい町は歩いてすぐで、通りを入ると、この場所か、とすぐに判った。
石畳が敷かれてあり、街中は江戸時代さながらの和風の建築物で溢れている。
「お土産屋さんとか、お店がいっぱいある!」
和風の建築が連なり、お土産屋さんが並んでいて、どこに入るかと迷ってしまう。
おはらい町を歩きながら、赤福の本店前で三吉が足を止めた。
「さて、今から時間は少ないけど、自由時間です」
わーい、と皆の声が上がる。
「せんせー、何時まで?」
普が尋ねると、三吉が答えた。
「十七時過ぎに、ここに集合」
時計を見ると、あと一時間ちょっとしかなく、一年生は抗議の「えー!」という声を上げた。
「だって仕方ないでしょ。お店がしまっちゃうんだもん」
三吉がわざとらしく腕を組み、唇を尖らせて言うと、一年生は驚く。
「えっ、そんな早くに?」
「そう。ここは店が閉まるのがとっても早い。だから私にはどーしよーもないです」
なんだあ、と一年生連中ががっかり肩を落とすも、雪充が言った。
「まあまあ、明日はたっぷり時間があるから、一日中ここを見ていられるよ。今日は下見のつもりで行っといで」
「雪ちゃん先輩、じゃあその後は、どーするんですか?」
幾久が尋ねると、高杉が言った。
「ここから歩いてすぐの場所が、宿泊場所じゃ。晩飯が近いけ、あんまりがっつり食うなよ」
高杉の指示に、はーい、と返す。
「じゃ、解散。時間になったら集まって」
三吉が号令をかけると、集まっていた面々は早速好きに移動を始めた。
幾久は山田に誘われて、ぶらぶら通りの散策を始めた。
いろんなお店が並んでいて、どうせ見るだけなら、と気が向くまま店に入った。
「食べ物がいっぱいあって目移りしそう」
食べたいな、と思ったが高杉の言う通り、夕食が近いのなら我慢だ。
「明日もあるんだから、焦らなくていいよ」
雪充が言うと、幾久は「そうっすけど」と不満げだ。
「今のこのテンションのまま食べたい。スタグルみたいなもんス」
幾久が言うと御堀が頷いた。
「なんかそれ判るな」
「だろ?」
普が尋ねた。
「スタグルって?」
「スタジアムグルメのこと。サッカーの試合があるとき、スタジアムで食べ物売ってんだけど、屋台もあって楽しいよ」
御堀の説明に幾久も頷く。
「その地域の特色が出てたりもするし。そういや誉んとこのスタグルってどんなの?ファイブクロス」
「うちが入ってるよ。だからスタジアムで外郎売ってる」
「まじでか!いいなあ!食べに行こうかな」
どこまで来ても外郎大好きな幾久に、普が呆れた。
「そんなのいつも食べてるだろ?」
和菓子屋のお坊ちゃんの御堀のおかげで、鳳の一年生は和菓子に困る事がない。
毎月のように、大量のお菓子が寮に届けられ、御門に移った今となってもおすそ分けを桜柳寮は貰っている。
勿論、幾久には約束通り、出来立て生外郎が御堀の父から送られてきている。
「スタジアムで食べるものは、そこで食べるからいいんだ」
「いっくんは外郎ならなんでもそう言いそう」
「あ」
話していると、突然山田が足を止めた。
「どうしたの御空」
「あれ見ろよ幾久」
ニヤッとして指さした方向を見ると、「ういろ」の看板があった。
「ここ、外郎の店?」
驚く幾久に、御堀が言った。
「伊勢の虎やういろだね。有名だよ」
途端、目を輝かせて幾久が言った。
「買う!」
「うーん、幾がどこまで知っているか知らないけど、多分想像とは違うと思うけどなあ」
「いい、買ってみる!オレは今日、これにチャレンジする!」
幾久が言うので、皆で店に入り、幾久は看板商品らしい、白と黒のボーダーのような柄の外郎をひとつ買った。
「そういや、瑞祥先輩とハル先輩はどこなんだろ」
幾久が言うと、雪充が笑った。
「瑞祥がダダこねてただろ。赤福で善哉食べてるよ」
多分他の連中もそうじゃないか?と言われ、幾久等は顔を見合わせた。
「オレらも行きたい!」
「善哉!」
「うまそう!」
次々と言い出す面々に、雪充はやっぱりな、と笑ったのだった。
このおはらい町には赤福のお店がいくつもあるのだという。
多分、さっき別れた場所ですぐ入っただろうと雪充が予想して、解散した場所にある赤福の本店に向かった。
「多分、こっちかな」
向かいにある別店を覗き込むと、案の定皆揃っていた。
「なんじゃ、冒険は終わったんか」
「善哉食いに来たっス」
幾久が先に店に入ると、皆はすでに食べ終わった所だった。
「あっ、赤福食ってる!」
目ざとく、久坂が食べている赤福を見つけて幾久が言った。
「売ってるから買えばいいだろ」
「いや、多分誉のことなんで買ってくれてるはず」
幾久はそう言うと、皆の近くの席に腰を下ろした。
「あー、疲れた」
腰を下ろすと、疲れが一気に出て、立ち上がる気がしなくなる。
「もうオレ歩けない」
幾久が言うと、高杉が笑った。
「瑞祥も全く同じ事をゆうちょったが、善哉食ったら機嫌がなおったぞ」
「オレは瑞祥先輩と違って、善哉食えなさすぎていじけてるわけじゃないんで」
むっとして久坂は言い返そうとするが、雪充が「ぶっ」と噴き出したので言うのをやめた。
注文した善哉を御堀と山田が運んできてくれた。
「はい、幾」
焼いた四角い餅がふたつ入っていて、別に梅と塩こぶ、お茶がついている。
そして赤福が乗った皿がある。
「ほら!オレの言った通りでしょ!」
自慢げに幾久が言うと、久坂は「はいはい」と呆れた。
幾久らが善哉を食べ終わった所で、丁度、三吉が言ったくらいの時間になった。
「集合かけなくて済んだね。仕事が楽でいいなあ」
三吉はそう言ってにこにこしている。
「先生、こういう修学旅行みたいなの、よく行くんスか?」
幾久が尋ねると、三吉が言った。
「行かされるんだよ。千鳥の修学旅行はスキー場だろ。面白くもなーんともないけど、仕方なく」
「なんでスキー場なんスか?」
幾久が尋ねた。
どうせならこんな風に観光地なら三吉だって少しは楽しめるだろうに。
すると、周布が答えた。
「答えは簡単。どこに行っても問題をおこすんだよな」
「問題……」
何を?と幾久他の一年生が首を傾げると、周布は笑いながら教えてくれた。
「つまり、お前らみたいにお利口さんじゃねーからな。脱走、飲酒、他校と喧嘩、女の子をナンパ、ありとあらゆる問題を起こす」
「あぁ……」
確かにそれは起こしそうだ、と皆納得する。
なにしろ、遊ぶ場所はあっても一度帰れば出られないと有名な報国寮だ。
修学旅行なんて外に出かけたら、その反動で何をするか。
「けどスキー場なら、貸し切りにできるし他校の生徒もいねえ。おまけに脱走したら即遭難。飲酒は持ち込みでしかできないし、やったとしても隠蔽できるし女の子も居ない」
隠蔽ということは聞かなかった事にして幾久は尋ねた。
「じゃあ、スキーしかしないんスか?」
「スキーかスノボだな」
「吹雪とかになったらどうするんスか」
「そういう時あったな。でも時間になったら帰る」
「じゃあ、修学旅行の意味ないんじゃ」
幾久が驚くと三吉は言った。
「それが嫌なら、鳳に上がれって事」
「酷い、本当に報国院って酷い」
「今更だよ、幾。僕らは彼らのおかげでこうして楽しめるし」
「……千鳥のお父さんお母さんごめんなさい」
ちょっとだけ、千鳥クラスの保護者に同情を覚えたのだった。
歩いてバス停へ向かう。
目的地は内宮方面、おはらい町だ。
おかげ町は内宮の近くにある、江戸風の建物の連なる場所だ。
観光地として近年、江戸をテーマに再興されたそうで、協力したのはあの赤福の会社という事だ。
「全く観光客が来なかった町を再興して、凄いよ」とは御堀の談で、経済研究部では題材にされるのだという。
そのおはらい町におかげ横丁というテーマパークのような場所があり、お土産屋さんなどが連なっているとの事だ。
バスに乗り内宮方面へ向かうと、十分程度で到着した。
降りたのは猿田彦神社前とあるバス停だった。
「猿田彦って、さっきもそうだったような」
一番最初にお参りした、二見興玉神社の祭神は猿田彦だ。
「そう。同じ神様で、ここは猿田彦の奥さんの天宇受売命(あまのうずめのみこと)も祀られてる。音楽や芸術をつかさどる、芸能の神様だ」
前原が言うと、幾久は、ふと気づいた。
そして児玉も同じ事に気づいたらしい。
「―――――お土産、ここにしよっか」
「そうだな」
誰に、とは言わずとも判っている。
あのやかましい先輩達には、ぴったりのお土産だ。
教師の三吉が言った。
「今日は神社はここでおしまい。お参りが終わったら、おはらい町に行くので、丁寧にお参りするように!」
「はーい!」
三吉の言うように、全員は手水で手を洗い清め、きちんとお参りをし、忘れずに芸能の神様にもお参りをして、先輩らの事をお願いした。
御朱印帳もお願いして、待っている間に幾久等はお守りを選んだ。
丁度芸能のお守りがあったので、それを買うことにした。
「幾久、色は揃えたほうがいいぞ」
児玉のアドバイスに幾久は首を傾げた。
同じお守りで、色違いがあるのでどっちも入れておけば好きな色を選ぶだろうと思ったのだが、児玉が言った。
「どっちも欲しがる人がいるだろ」
子供みたいに、とは思ったが児玉は言わなかった。
幾久はすぐそれが誰かと気づいた。
「ああ、そうだね」
どっちも僕の!と暴れる青木をなんなく想像できてしまい、幾久は肩を落とした。
「よし、オレの独断と偏見でこっちの色にする」
「そうしろ」
幾久が選んだとあってはあの先輩は絶対に文句を言うまい。
幾久はブルーベースの色を選んだ。
御朱印を頼んでいる間、皆もお守りなんかを選んで楽しそうにしていた。
神社は開放的で、しかもさっきの外宮のようにさっぱりした作りではなく、普通の神社といった雰囲気があった。
「神社って、なんかこういうのっていうイメージだから、外宮とかってさっぱりしすぎてびっくりした」
「ここは確かに、普通の神社のイメージだよね」
御堀も頷く。
参拝客もそこそこ多く、開けて明るい雰囲気だ。
賑やかな雰囲気があるのは、芸能の神様のせいなのかな?と幾久は思う。
「御朱印、けっこう溜まったね」
「そうだね。ここで二つお願いしてるから、合わせて五つか」
「わりとある」
いま御朱印帳を預けてあるが、後から見るのが楽しみだ。
そう話していると、代表で御朱印を受け取ってきた山田が戻って来た。
「おーい、御朱印、貰ったぞ。しまっとけ」
「ウン」
幾久はそう言って袋の中に御朱印帳を大切にしまう。
「御空のおかげで、御朱印集められた!ありがとう!」
幾久が言うと、山田は一瞬目を大きく見開いたが「おう」と少し照れて顔をそらした。
全員で猿田彦神社から歩いておはらい町へ向かった。
おはらい町は歩いてすぐで、通りを入ると、この場所か、とすぐに判った。
石畳が敷かれてあり、街中は江戸時代さながらの和風の建築物で溢れている。
「お土産屋さんとか、お店がいっぱいある!」
和風の建築が連なり、お土産屋さんが並んでいて、どこに入るかと迷ってしまう。
おはらい町を歩きながら、赤福の本店前で三吉が足を止めた。
「さて、今から時間は少ないけど、自由時間です」
わーい、と皆の声が上がる。
「せんせー、何時まで?」
普が尋ねると、三吉が答えた。
「十七時過ぎに、ここに集合」
時計を見ると、あと一時間ちょっとしかなく、一年生は抗議の「えー!」という声を上げた。
「だって仕方ないでしょ。お店がしまっちゃうんだもん」
三吉がわざとらしく腕を組み、唇を尖らせて言うと、一年生は驚く。
「えっ、そんな早くに?」
「そう。ここは店が閉まるのがとっても早い。だから私にはどーしよーもないです」
なんだあ、と一年生連中ががっかり肩を落とすも、雪充が言った。
「まあまあ、明日はたっぷり時間があるから、一日中ここを見ていられるよ。今日は下見のつもりで行っといで」
「雪ちゃん先輩、じゃあその後は、どーするんですか?」
幾久が尋ねると、高杉が言った。
「ここから歩いてすぐの場所が、宿泊場所じゃ。晩飯が近いけ、あんまりがっつり食うなよ」
高杉の指示に、はーい、と返す。
「じゃ、解散。時間になったら集まって」
三吉が号令をかけると、集まっていた面々は早速好きに移動を始めた。
幾久は山田に誘われて、ぶらぶら通りの散策を始めた。
いろんなお店が並んでいて、どうせ見るだけなら、と気が向くまま店に入った。
「食べ物がいっぱいあって目移りしそう」
食べたいな、と思ったが高杉の言う通り、夕食が近いのなら我慢だ。
「明日もあるんだから、焦らなくていいよ」
雪充が言うと、幾久は「そうっすけど」と不満げだ。
「今のこのテンションのまま食べたい。スタグルみたいなもんス」
幾久が言うと御堀が頷いた。
「なんかそれ判るな」
「だろ?」
普が尋ねた。
「スタグルって?」
「スタジアムグルメのこと。サッカーの試合があるとき、スタジアムで食べ物売ってんだけど、屋台もあって楽しいよ」
御堀の説明に幾久も頷く。
「その地域の特色が出てたりもするし。そういや誉んとこのスタグルってどんなの?ファイブクロス」
「うちが入ってるよ。だからスタジアムで外郎売ってる」
「まじでか!いいなあ!食べに行こうかな」
どこまで来ても外郎大好きな幾久に、普が呆れた。
「そんなのいつも食べてるだろ?」
和菓子屋のお坊ちゃんの御堀のおかげで、鳳の一年生は和菓子に困る事がない。
毎月のように、大量のお菓子が寮に届けられ、御門に移った今となってもおすそ分けを桜柳寮は貰っている。
勿論、幾久には約束通り、出来立て生外郎が御堀の父から送られてきている。
「スタジアムで食べるものは、そこで食べるからいいんだ」
「いっくんは外郎ならなんでもそう言いそう」
「あ」
話していると、突然山田が足を止めた。
「どうしたの御空」
「あれ見ろよ幾久」
ニヤッとして指さした方向を見ると、「ういろ」の看板があった。
「ここ、外郎の店?」
驚く幾久に、御堀が言った。
「伊勢の虎やういろだね。有名だよ」
途端、目を輝かせて幾久が言った。
「買う!」
「うーん、幾がどこまで知っているか知らないけど、多分想像とは違うと思うけどなあ」
「いい、買ってみる!オレは今日、これにチャレンジする!」
幾久が言うので、皆で店に入り、幾久は看板商品らしい、白と黒のボーダーのような柄の外郎をひとつ買った。
「そういや、瑞祥先輩とハル先輩はどこなんだろ」
幾久が言うと、雪充が笑った。
「瑞祥がダダこねてただろ。赤福で善哉食べてるよ」
多分他の連中もそうじゃないか?と言われ、幾久等は顔を見合わせた。
「オレらも行きたい!」
「善哉!」
「うまそう!」
次々と言い出す面々に、雪充はやっぱりな、と笑ったのだった。
このおはらい町には赤福のお店がいくつもあるのだという。
多分、さっき別れた場所ですぐ入っただろうと雪充が予想して、解散した場所にある赤福の本店に向かった。
「多分、こっちかな」
向かいにある別店を覗き込むと、案の定皆揃っていた。
「なんじゃ、冒険は終わったんか」
「善哉食いに来たっス」
幾久が先に店に入ると、皆はすでに食べ終わった所だった。
「あっ、赤福食ってる!」
目ざとく、久坂が食べている赤福を見つけて幾久が言った。
「売ってるから買えばいいだろ」
「いや、多分誉のことなんで買ってくれてるはず」
幾久はそう言うと、皆の近くの席に腰を下ろした。
「あー、疲れた」
腰を下ろすと、疲れが一気に出て、立ち上がる気がしなくなる。
「もうオレ歩けない」
幾久が言うと、高杉が笑った。
「瑞祥も全く同じ事をゆうちょったが、善哉食ったら機嫌がなおったぞ」
「オレは瑞祥先輩と違って、善哉食えなさすぎていじけてるわけじゃないんで」
むっとして久坂は言い返そうとするが、雪充が「ぶっ」と噴き出したので言うのをやめた。
注文した善哉を御堀と山田が運んできてくれた。
「はい、幾」
焼いた四角い餅がふたつ入っていて、別に梅と塩こぶ、お茶がついている。
そして赤福が乗った皿がある。
「ほら!オレの言った通りでしょ!」
自慢げに幾久が言うと、久坂は「はいはい」と呆れた。
幾久らが善哉を食べ終わった所で、丁度、三吉が言ったくらいの時間になった。
「集合かけなくて済んだね。仕事が楽でいいなあ」
三吉はそう言ってにこにこしている。
「先生、こういう修学旅行みたいなの、よく行くんスか?」
幾久が尋ねると、三吉が言った。
「行かされるんだよ。千鳥の修学旅行はスキー場だろ。面白くもなーんともないけど、仕方なく」
「なんでスキー場なんスか?」
幾久が尋ねた。
どうせならこんな風に観光地なら三吉だって少しは楽しめるだろうに。
すると、周布が答えた。
「答えは簡単。どこに行っても問題をおこすんだよな」
「問題……」
何を?と幾久他の一年生が首を傾げると、周布は笑いながら教えてくれた。
「つまり、お前らみたいにお利口さんじゃねーからな。脱走、飲酒、他校と喧嘩、女の子をナンパ、ありとあらゆる問題を起こす」
「あぁ……」
確かにそれは起こしそうだ、と皆納得する。
なにしろ、遊ぶ場所はあっても一度帰れば出られないと有名な報国寮だ。
修学旅行なんて外に出かけたら、その反動で何をするか。
「けどスキー場なら、貸し切りにできるし他校の生徒もいねえ。おまけに脱走したら即遭難。飲酒は持ち込みでしかできないし、やったとしても隠蔽できるし女の子も居ない」
隠蔽ということは聞かなかった事にして幾久は尋ねた。
「じゃあ、スキーしかしないんスか?」
「スキーかスノボだな」
「吹雪とかになったらどうするんスか」
「そういう時あったな。でも時間になったら帰る」
「じゃあ、修学旅行の意味ないんじゃ」
幾久が驚くと三吉は言った。
「それが嫌なら、鳳に上がれって事」
「酷い、本当に報国院って酷い」
「今更だよ、幾。僕らは彼らのおかげでこうして楽しめるし」
「……千鳥のお父さんお母さんごめんなさい」
ちょっとだけ、千鳥クラスの保護者に同情を覚えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる