後宮で侍女になった私は精霊に好かれている

さかまる

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後宮で侍女になった私は精霊に好かれている

六、拘束

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「ちょいとそこのお嬢さん。」

急に話し掛けられたので振り返ると三人の男に囲まれた。

まずい。ここは花街…
路地裏に引き込まれたらお終いだ。

路地裏には女に飢えた貧しい男が彷徨いている。
それは私もよく知っている。
昔は男児のフリをして歩いたり、顔にわざと傷を作ったりして引き込まれないようにもしていた。

花街があり、街は活気付いている手前、賃金が少ない者は家にすら留まることが出来なくなりつつある。

くそっ…男三人に囲まれては女の私にはどうしようも…

『人差し指を前に…』

「え?」

急に声が聞こえたので思わず声が出てしまったがこれは精霊の声…

「なんだ?どうした?お前。」

「早く行こうぜ。なあ」

私は手首を掴まれ、強引に引っ張られた。

『早く!!』

わかった。

私は人差し指を出した。

「なんだなんだ?指なんか指して。喧嘩売ってるのか?あ?」

『……………バン……』

精霊がそう言うと、私を囲んだの男達はバタバタと倒れた。

「キャァーーッ!」

見ていたのか、遊郭の禿が悲鳴をあげた。

さらにまずいことになった。

私はその男たちの安否も確認せずに、東の山へ走った。

「ちょっとだけお金あげたら良かったのかな。」

『そんな事しなくていいさ。あの技は麻酔銃みたいなもの。眠っただけだよ。』

「そうなの…」

たとえその男たちが生きていたとしても、金がないと暮らせないこの花街からは出て行かなければならないだろう。

私は、あの人達と…同じ……だった。

私は子供だったから身寄りができた。

「この世界には報われるなんて言葉ないのかな。」

『……努力はするだけ力になる。けれど、必ずなんて保証は無い。報われるなんて言葉、最初からないのかもね。』

「……ええ。…というか、今まで何をしていたの?私の前に現れずに…」

『あ、ああ。修行…だ。』

「それって力を使い果たした若い精霊は修行して戻ってくる…的なやつ?」

『恥ずかしいが、強ち間違いではない。私は修行してきた。神様の元で。』

あの噂、本当だったんだ。

「それと、私が四歳のとき、私には自身の力は無いって言ったよね?私、ワープさせられるし、時間止められるし、封じ込めも出来るんだけど。」

『それは私が取り憑いたから使えるようになったんだろう。あの時は未熟だった。それすらも良く分かっていなかった。すまない。』

「ううん。大丈夫よ。」

早く東の山へ向かわないと。

もう夜。お月様が輝いている。

『困ったときは私を呼べ。前よりは力になれる。勿論、お前が危険な時は勝手に力を使わせてもらうが。まあ、自己判断もする。』

「わかったわ。約束だからね。」

この精霊、意外と気まぐれだから微妙よね。大丈夫かしら。

『聞こえてる事をお忘れなく。』

「ごめんごめん。」


「居たぞ!!!」

えっ?何?

「捉えろ!!傷一つ付けるなよ!あのお方が許してくれないぞ!」

あのお方?

って…………

まるで他人事のように思いながら走っていたが、その油断一つで捕まってしまった。

「っ!離して!」

「よし!間違いない!雪蘭だ!連れ戻せッ!」

「「はい!!」」

私は呆気無く拘束され、おそらく後宮?に連れ戻される…

ど、どうすればいいの!?

『……従えば良いんじゃないか?』

はあ?さっきの!約束は!?
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