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第一章、婚約破棄

真夜中の来客と変装

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辺りはすっかり真っ暗。
夜中の一時頃だ。
波は静かに揺れ、子守唄を奏でている。

トワイトは、ぐっすり夢の中。

ではなく、目が覚めてしまい、星空を見上げていた。

「寒い……こんなにも寒いと、なぜ出てきてしまったのかって思ってしまう……はぁ…」

ガサッ……ガサガサ…

「え?………なに……」

近くの小麦畑からだろうか。何かが通っている音が聞こえる。

「っ………ロバート…助けて…っ」

小声で呟いた。

ガサッガサッ………

もう駄目だそう思った途端、トワイトがいる崖に何かは降りてきた。

ギュッと目を瞑り、膝を抱える。

足に、ふわふわしたものが当たった。

そっと目を開けてみると、
目の前にいたのは子うさぎだった。

産まれて十日経っただろうか。まだすごく小さい。

でもなぜ親がいないのだろう。
トワイトはそう思った。

「あなたも…一人なの?……一匹か。」

うさぎは、体温を求めてトワイトに擦り寄ってきた。

「私が、名前を付けてあげるわ。…そうね……あなたはメスだからラビィちゃん。ふふっ…寝ちゃってる…」

トワイトは子うさぎを両手に抱え、太ももの上に乗せて温かくして一緒に眠った。

なんだか、とても心地が良いと思った。


「………様…………イト…様…トワイト様……」

「はっ………!……わ、驚かさないでよぉ…!」

「すみません…」

トワイトが目覚めると、もう日が昇り始めていた。

「あ、うさぎは…?」

「ちゃんとここにいますよ。」

ロバートはバスケットにふかふかのタオルを敷き、うさぎを寝せていた。

ひくひくと鼻を動かしている。
細かく呼吸をしている。
撫でてみると、温かい。

今だけと思って寄り添ってみた小さな生き物の体温が、こんなにも愛らしく思うなんて、初めての事だとトワイトは思った。

「私、動物なんてほとんど触ったこと無いから、今とても幸せ…」

「そうですね。私も、幸せです。」

ロバートは、優しく微笑んでいるトワイトの表情が何よりも嬉しく、愛おしかった。

「…あ、トワイト様、変装するためのものをいくつか持ってきました。」

「変装…?なんだか、面白くなってきたわね…!」

「ですが、ここで隠せられないと、すぐに城へ戻されます。完璧に変装しましょう。」

「はぁーい」

まず、トワイトが着ていたものを庶民の服に変え、靴も少しボロボロの靴に履き替えた。
鼻の上にはそばかすをつけ、髪型も目立たないように三つ編みにした。眼鏡をつけ、変装は完璧だ。

ロバートも、庶民の服に変え、ブーツに履き替えた。髪はオールバックにし、ベレー帽をかぶった。
ちょっと清楚な絵描きみたいな格好に仕上がった。

執事はあまり見られないので、ほぼ変えず、王女であるトワイトの変装に力を入れた。

これで完璧…かな?

二人と一匹は早朝の街へと出掛けた。
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