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しおりを挟む私の言葉に和臣さんの瞳の色が変わる。まるで餓えた獣のような色彩に、私の声が僅かに上擦り、逃げ腰になってしまう。だが、和臣さんは赦さなかった。私の腰をがっちりと掴み、空に広がる私の足を肩に乗せ逃げられぬようにとホールドした。
「ぁ…」
「抱いてくださいって、言ったよな?もう、逃がさないよ」
情欲に濡れた瞳が私を射抜く。今まで見せた事の無い和臣さんの雄の表情に、鼓動が高鳴った。
再度、和臣さんの指が自身の性器を擦り、溢れる先走り汁を先端に、竿に塗りたくる。そんな淫猥な和臣さんに私は視線を逸らせず、恐怖はどこかに飛んでしまい、逆に期待しているような…そんな欲を浮かべた。
満遍なく濡れた凶器を片手に、私に覆い被さり蠢く秘部に先端を押し付けながら和臣さんの声が私の鼓膜を震わせた。
「秋乃のナカに、挿れる、よ」
「あ、あ…っ………!」
啄むような口付けを施しながら、私の前髪を掻き上げそっと腰を進める。
ぐぐぐ、と怒張が私の膣内を掻き分ける度にメリメリ、と無理矢理に引き裂く音が響き、声にならない叫びを上げ無我夢中で車のシートを引っ掻いた。
それ程までに彼の怒張は大きかった。まるで初めてのような痛みで、無意識に目尻に涙が流れた。
「キツ…っ、秋乃…力、抜いて。じゃないとお前が痛い思いをするから…」
シートを引っ掻く私の腕を取った和臣さんが、自信の背中に回し、優しく腰を撫でながら、呼吸をするよう促す。
どうやら息が止まっていたようで、私はまだ続く痛みに眉を顰めながら呼吸を繰り返せば、強ばっていた身体が弛緩した。
「イイコ、だ。
…秋乃の大好きな乳首とクリトリス、愛してあげるから快楽に集中して」
ぴちゃりと音をたてながら舌で乳首を嬲り、長い指が敏感になっている突起を捏ねる。途端に快楽が徐々に痛みを上書きするように色濃くなっていく。
舌で潰して舐めて、転がして。指で捏ねて摘んで撫でて。
豊満な胸を楽しむかのように大きな掌がわしり、と撫で、掴んで。
じんじんと膣内が痛むが、動いていないお陰か痛覚よりも快楽の方が勝っていて、知らず知らず声にならない嬌声をあげていた。
「あぁぁん!!…あっ、んん…!ひぅ…!かずおみ、さ…あ…!」
私の口元に唾液が伝う。和臣さんの舌が唾液を器用に掬いながらゆっくりとした動作で腰の動きを再開した。
ずずず、と秘部から侵入してくる異物に子宮が押し潰されていくような感覚が私を襲うが、先程より苦しさと痛みは、無い。
和臣さんはちらちらと私の様子を見ながら腰を進める。
痛みで眉を潜めれば、乳首と突起の愛撫を激しくし、力が抜ければ再度腰を進めて。どうしようもない優しさに胸が潰れそうだった。
暫くして、私と和臣さんの接続部が重なる。最後まで繋がった証拠だった。和臣さんの唇から、甘い吐息が漏れた。
「全部繋がった、よ。ほら、触ってみて…」
和臣さんの背に爪を立てている腕を解き、手を取られる。そのまま接続部に導かれ、みっちりと埋まった箇所に指を這うように誘導された。躊躇いがちに密着した部分を指で確かめれば、二人の間に隙間は何一つ無く、私達は深いところまで繋がっていた。
「本当だ…私たち、繋がっているんですね…」
真実に声が震える。笑顔が零れる。そうすれば、和臣さんも綺麗な笑みを返してくれた。
いつまでもこうしていたい、と願う。このまま二人繋がったまま、朽ちてしまえたら、と。叶わぬ願いだとわかってはいるが、願わずにはいられなかった。
「秋乃…動いて、良いかな」
情欲に濡れた艶のある声が私の鼓膜を震わせる。ぞくりとして身体が震えると同時に膣内も蠢いたのか、和臣さんが甘い吐息を漏らして。
もっともっと聞きたいと思った。私自身で感じて欲しい、と思った。
「動いて、ください。和臣さんでいっぱいに、してください」
アダルトビデオのような言葉だと、思った。けれど本心だったから恥ずかしさなんて無かった。早く感じたかったから。早くいっぱいにして欲しいと思ったから。
私の言葉に、和臣さんが歯を鳴らし、大きな掌で私の腰を掴みながら耳元で囁いた。
「…もう止めてやらないからなっ…!」
「や、ああぁ!…や、んぁ…!あ、あ、ん…!」
いきなりの律動に私の背中が仰け反る。言葉通り、私の膣内を乱暴に行き来する和臣さんの性器に私の秘部は何度も飛沫をまき散らした。
車ががたがた、と揺れる。傍から見ればナニをしているのか一目瞭然な程激しく揺れていたが、それすら気にならない程に私達は互いの身体に溺れていた。
嬌声が、水音が車内に響き渡る。窓を開けていない為、独特な匂いが鼻腔を擽る。
「は…秋乃…秋乃……!」
「和臣さ…ん、んぅ…は、ぁ…!」
唇を重ね、唾液を交換して、ぐちゃぐちゃに溶ける程に混じりあって。何度も、求めあった。壊れたように、壊れるように。
――時間なんて止まってしまえ。全部、全て止まってしまえ。自分等の心臓すら。
「は…ん、も、……あ、あ…!や…!!!」
ビクビク、と震えながら絶頂を迎える。一体何度目だろうか。頭がおかしくなりそうだった――否、私の頭はイかれている。
きゅうと締まる膣内に和臣さんも眉を顰め、精を私のお腹に放つ。限界が来たのか動きは止まったと同時に身体が反転され、和臣さんの身体に身を預ける姿勢となった。
ゆっくりと、優しく背中を撫でられるうちに、眠気が襲う。こんなところで寝ては駄目だ、と頭の中では思うのだが、身体がいう事をきかない。
「眠いのだろう?いいよ、寝てしまいなさい」
まるで赤子にするかのように、ぽんぽんと背を叩かれ私の瞼はゆっくりと降り、夢の中へと堕ちていった。
****
私の目の前で奏太さんや麻美さん――父が私を見て、酷く歪んだ表情で何かを言っている。
私はそれが怖くて、恐くてどうしようもなかった。逃げようとも足が無い。耳を塞ごうとも、腕が無い。目を瞑ろうともそもそも何も、無い。第三者からして、俺は唯の化け物だった。
罵声を浴びせられる。わからない言葉で、金切り声で。
すると皆の後ろから和臣さんがやってきた。私は助けて、と叫んだつもりだったが、唇が爛れて、動かなかった。醜く嗄れた声でう、う、と呻き声をあげる事しか出来なかった。
そんな私を見て、和臣さんは笑った。いつもの優しい笑みで。
この人はわかってくれたんだ、と思った。この化物が俺、だという事を。
早く抱きしめて欲しくて、駆け寄りたかった。けれど、動かせるものは何も、ない。ただ、醜く体のようなモノを蠢かせるだけ、で。
和臣さんは言った。何かを言った。
言葉がわかった。他の人の言葉は理解出来なかったのに。和臣さんの言葉、だけは。けれど、聞きたくなかった。こんな言葉を聞くなら理解出来ない言葉を発せられた方がよかった。
和臣さんは何時もの綺麗な笑みを浮かべながら言った。
『気持ち悪い。罰があたったんだよ。』
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