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二件目『ガーディニアス:木の聖域』

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「…このままだとナツは神獣に戻れなくなる」
「へ…?」

私を見下ろしながら私の耳元で囁く言葉に私の視線はハイネさんへと逆戻りする。どういう事だ。

「ナツの前世の魂が拒絶反応を起こしてるって言ったけれど、ナツを神獣に戻すには神力で神獣の魂を起こしてあげなきゃいけないんだ。けれど、前世の魂が拒絶して神獣の魂に神力が届かないって事」
「え…もしも……私がこのまま神獣に戻らなかったらどうなるんですか…?」
「それは…」

私の問いにハイネさんが言い淀む。何か良くない状況になりそうで徐々に私の心拍数が上がっていく。

「こういう魂は初めて見るからはっきりとは言えないけど…。もしかしたら神獣の魂が消滅しちゃって、前世の魂が固着する。けれど、前世の魂はこの世界とは違う異質のものだから…消滅するかも知れないね」
「えっ…」

不吉な事を言うハイネさんに私は言葉を失う。だが、流石最強チート巫女様と言えよう。打開策を私に教えてくれた。

「でも大丈夫。神力を馴染ませれば徐々に慣れていくよ。今の状況は前世の魂が感じた事の無い異質なものに驚いている状況だけだからさ」
「そ、そうなんですね。…それで馴染ませるってどうやって…」
「うん。毎日少しずつナツに僕の神力を送って馴染ませる。大体一週間くらいで馴染んで戻れると思うよ。馴染ませ方は…こうやって……」
「んひゃ!?」

ハイネさんが私の腕を引き、ギュッと抱きしめる。少しはだけた胸元と私の肌がぴったりと密着して心臓が飛び出て宇宙まで飛んで行きそうだった。

「ナツ、目を閉じて集中。…感じない?僕の神力」

言われた通りに目を瞑り、自身の身体の流れに集中すれば暖かい何かがふわふわと私の中に混じっていく。
これが神力なのだろうか。優しくて、暖かい力。

「うん、良いね。偉いよナツ。ちゃんと僕の感じてるね」
「あの、言い方が…」
「うん?」

何だか含みがある。けれど、自意識過剰な気がしたので言葉にしなかった。頭上でクスクスと笑みを零すハイネさんを感じながら神獣の身体が恋しくなった。

人間になって、こんなにもドキドキするだなんて思ってもみなかったから。





******





それから私達は毎日抱き合った。…抱き合ったと言えば語弊があるようにも思えるが、事実なのだから仕方が無い。
今日も何時ものように抱き合いながら、先日から疑問に思っていた事をハイネさんにぶつけた。

「あの、ハイネさん。神獣の魂が目覚めたら、人間と神獣の身体を自由に変身出来るようになるんですか?」

私の問いに、んんーと間延びした声を出し、私の肩に顎を乗せ思案している。
どうやらハイネさんでも分からない事があるらしい。

暫くして、ハイネさんの口から出た言葉は否定の言葉だった。

「出来ないかな。僕が今やっている事はあくまで神力を循環させて、馴染ませているだけだからね。ナツに力を渡している訳では無いんだ」
「そう、ですか…」
「何、人間の姿で居たいの?」

ガクリと肩を落とす私の顔を近距離で覗き込むハイネさんに、思わず腰を引いてしまうが、腕を回されている為、直ぐに引き戻されてしまった。鼻が触れあう程近すぎる距離感に脳味噌が飛んで行きそうだ。

ジッと見つめられ、言葉を促される。鼻息は当たっていないだろうか、と変な事を心配しながら恐る恐る言葉を紡いだ。

「え、と…居たい訳では無いですけど…人間の姿だと威嚇出来るのかなって…」
「威嚇?」
「は、はい」

はぁ?と言いたげな表情だった。確かに人間の姿でも弱々しい風貌をしているかもしれないが、いざとなったら犬よりも人間の姿の方が何かと動きやすいのは事実だ。

…多分。

「…へぇ?威嚇、ねぇ…」
「おかしい、ですか」

何とも言えない表情で私を見つめるハイネさんに頬を膨らませれば指で潰された。ぷすぅ、と音を立てる頬が面白かったのか、クツクツと肩を揺らしながら私の頭を撫でる。
その手が余りにも優しいから、思わず頬が緩んでしまった。

「こぉんなに可愛い子に威嚇されても逆効果だと思うけど?」
「かっ…!?かっ…!!か、可愛くなんか、ないですっ…!」

何を言っているんだこの人は…!まだ犬の姿なら分かる。私でも可愛いと思うさ。けれど今は人間だ。この姿が可愛い訳が無い。ましてやハイネさんが側に居ると尚更私の地味感が増す。

全力で否定する私が不服だったのか、私の頬を撫でながら可愛いを連呼するハイネさんに私は限界だった。羞恥心で爆発してしまいそう。

早く犬の姿に戻りたい、と切実に願った私であった。




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