ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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異界渡り(ワーオランドーラ国)編

馬車が来て、乗って、移動しました

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 私達がマスクは絶対、手放せないね!等、話をしていると、馬車の音が近くに聞こえるようなっていた。

 馬車の音が私達のすぐ近くで止まった。見てみると、茶色くて目立たない、でも人が5、6人乗れそうな馬車が停まっていた。その馬車の中から、年配の男性が降りて来た。

「失礼します。私は、ルー公爵家の家令です。当家のお嬢様、ジャンヌ様が馬車の中でお二方をお待ちです。」

 マミ姉さん(加奈さん)は、家令と名乗った人の態度に何かを感じた様で、その年配の人を冷たい目で見ていた。

「幾つか、いいかしら。私、お腹に番の子が多胎でいるの。馬車をゆっくり走らせて休憩も入れてくれるなら、ジャンヌ様の馬車に乗るわ。妹にも番がいるの。変な噂をたてられるのは困るわ。だから、馬車の中に女性が居るか確認したいの。これでも私達、国では公爵家の出身なので。お判りいただけるかしら。」

「それはそれは、知らぬ事とは言え、ご無礼致しました。こちらの手落ちでございます。ジャンヌ様に伝えてまいりますので、しばしお待ち下さい。」家令と名乗った人は、私達へ頭を下げて謝罪をしてから、馬車へ戻って行った。

 家令を名乗った年配の男性が馬車の扉を開けて、中にいる人と話しているようだ。あ、こっちにまた来た。

「ジャンヌ様がまずはご挨拶をしてから、こちらの非礼を詫びたいと。それでご納得頂けたら、馬車に乗って欲しいとおっしゃっています。」

 家令の人が言い終わったら、馬車の中から真っ赤なドレスを着た黒髪で綺麗系の派手な女性が降りて来た。その女性が私達の所まで歩いて来たのだ。

「はじめまして。ごきげんようですわ。私、ジャンヌと申します。先ほどは、私の家の家令のヤイバが身の程を弁えず、先に話しかけてしまい、礼儀知らずな態度でご迷惑をお掛け致しましたわ。お詫び致します。お二方は異界渡り直後とお見受け致しますけれど、どうして此処へ?」

「ええ、はじめまして。ご機嫌ではないですわ。ふふっ、知っていらっしゃるから此処までいらしたのでしょう。それなのに私達にお聞きになるなんて、ジャンヌ様は真っ直ぐな方ですのね。理由ですか…、どこかの王様が、私達の到着地点に王城の寝室を指定していたのですわ!それも私達と一緒にいた番と引き離してまで。」

「その首の痕を見れば、番と引き離した馬鹿が誰なのかを証明されてしまいますわ。それに、お腹に多胎で子がいる女性を寝室に招いていたら、飛んだ王家の醜聞になる所でしたわ。申し訳ありません。」

「私達は、だ、か、ら、こ、そ、王城からの迎えの馬車には乗りたくないのですわ。お判りいただけますわよね、ジャンヌ様。」
「ええ。充分に。王城からの馬車も近くまで来ているでしょうから、私の家の馬車に乗って移動した方が宜しいかと存じますわ。」
「そうですわね、これ以上の厄介事は勘弁して頂きたいんですの。ジャンヌ様と一緒の馬車になら私達も乗りますわ。」

 マミ姉さん(加奈さん)が私に頷いた。私も2人のやり取りを黙って見守っていたが、頷く。王城の馬車よりもキチンと詫びをしたジャンヌ様の方が、祥さんや一郎さんに馬鹿王と言われていた王様よりも、余程マシだろうって思ったし。

 2人でジャンヌ様と一緒の馬車に乗って、20分位馬車が走って町の真ん中に差し掛かった頃、大きな馬車とすれ違った。

「今すれ違った馬車が王城からの迎えの馬車だと思いますわ。一応、私達の乗る馬車のわだちと足跡を消す様に家令のヤイバに指示しておきましたが、王相手では、我が家に入っていてもらわないと、お二方を守れないのです。今までは、ゆっくり馬車を走らせていましたが、それも王家の馬車とすれ違ったので出来なくなりました。申し訳ありませんが、少しだけ馬車を急がします。」

「構いませんわ。王にはつかまりたくないので、長時間でなければ、速度を上げても大丈夫ですわ。」

 マミ姉さん(加奈さん)が答えると、ジャンヌ様が前もって指示していたのだろう、馬車が速度を上げた。

 それから馬車が20分程走って、大きな屋敷の敷地へ入って行った。どうやら、このお屋敷がジャンヌ様の家なのだろう。私達は、ジャンヌ様の私室へ案内されたけど、テレビで見た事があった、どこかのスイートルームか!!って程、見事で綺麗で、豪華で、ええと、とにかく凄い部屋だった。

 マミ姉さん(加奈さん)に付け焼刃で教えてもらったアレコレを思い出しながら、キョロキョロしない様に気を付けて、慌てず、ゆっくりと勧められたイスにマミ姉さん(加奈さん)が座った後に、一応、妹とされている私が座った。

「では、改めまして、私、筆頭公爵家ルー家が長女のジャンヌですわ。お二方には番の方がいらして、マーキングまでされている仲。此度は我が国の王が馬鹿な事を仕出かしてしまい、申し訳ありませんでした。」

「私は番が居るので。どこから名前が漏れるか分かりませんので、此処では正式な名乗りは出来ませんが、公爵家の出身で番とは婚姻しております。此度は子を多胎で授かった事により、今回の帰省となったのですわ。」
「まあ!人妻を!…(小声で)あの馬鹿め!」

「異界渡りの地点に何ヵ月も前から仕掛けていた様ですわ。女性で、黒の毛色という条件を付けて。王の寝室を到着地点として等、王は何時になく焦っていらしているご様子がうかがえましたわ。」
「…。」
 ジャンヌ様は無言でいる。

「私は、無事に婚約者との結婚の日取りが決まったので、滞在していた国から結婚式の準備をする為に帰省してゆく所でした。」
「…あんの馬鹿…。」

「ジャンヌ様、「私、お腹に子供がいて、悪阻で具合が悪くて犬臭さに耐えられない、心細いので一緒に居た彼女が側に居ないと不安でツラい。」って言っていたと、それで断ってもらえますか。このスカーフの被り方でも使者の方も解って頂けると思いますわ。」

「私も、「彼女の側じゃないと心細いって、彼女を一人にしたくないって、泣いて騒いで、ずーっと訴えています」と伝えて頂けますか、私も番以外はお断り致します。スカーフでも意思表示していますので。」

 ジャンヌ様がパンパンと手を打った後、さっき馬車で一緒だった家令と見知らぬ男性が部屋の中に現れた。魔法かーー!!凄ーい!!と思ったが、無表情を貫き通した。

 見知らぬ男性は王家からの使者のマシロだと名乗った。その男性に話しかけるジャンヌ様。

「シロ、あの人に伝えてもらえる?馬鹿な事をもうこれ以上しないで欲しいって。」
「正式なお断りの理由が判明致しましたので、王にはそう伝えます。が、今回ばかりはマズいかもしれません。」
「まだ何かあるの?」
「そちらのお二方が、とある国の王様と宰相補佐殿のお相手だと、とある国ではもっぱらの噂です。」
「お二人をこの様な術式で招いた我が国が、戦争の引き金になるだろうと言いたいのね。」

「今回は、王が極秘で用意したようです。その事を私共臣下が知ったのは1時間程前でして。王から(焦って)馬車の手配や使者の手配を言い付けられたからでした。此度の細工は、王が計画され、単独で実行されたご様子です。」

 ジャンヌ様が心底疲れたという顔をして、何かを振り払うように首を何度か左右に振っていた。

「…はぁ、もう王の尻拭いをするのは今回でお終いにするわ。この件が片付いたら、修道院へ入ります。その準備をなさい。」
「はい。ジャンヌ様。」馬車で一緒だった家令のヤイバさんがジャンヌ様に返事をしていました。
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