ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

お土産を渡します1

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 女神が私達に夢を見せた日から、何日か経ちました。

 夢のおかげでミュン王妃様が良い人だって分かったし、陛下やショウさん達、騎士さん達が頑張っているので、これから、あの獅子国の悪事も暴かれていくんだろうな。

 それに、私が王太子妃の勉強をする予定だった日に起きた、王妃様が大怪我をした事も、

「王妃様が茶会で参加していたご夫人を助けようとして、身代わりになって暗殺者に刺され、大怪我をした。だから、王妃は今、休養をしている。」と陛下が皆に話したので、それが広まってから、王妃の周りにあった悪評も消えていっているし。

 私には王妃様の怪我を治しただけで何もなかったし、その翌日から毎日行われている王太子妃の勉強をしています。

 何日周期でお休みなのか分からないけど、今日は勉強がない休養日おやすみになったから、ずーーーっとワーオランドーラで買ったお土産を渡しそびれていたので、それを渡したいと思っているのですよ。

 それに、お土産を渡す口実で家族に会う勇気も出なくって、ショウさんに同行してもらえないかと頼みたいのですが、獅子国のせいでショウさんは多忙です。

 それに、家族に会うのでも、前もって訪問していいかどうかを聞いてから、その予定をあわせなくてはならないという貴族の常識にはばまれているんですよね。

 部屋の中で、お土産の確認をしないとならないか、な。それと、渡す順番にも気を付けないと。番の嫉妬で大変な目に遭いそうだから、注意しないと!

 あああ!銀行にも行けてない!はっ!カーナさんに借りたお金を返せていない!うわああー!どうしよう!市場にも行きたいし、厨房でお料理をしたいし、この国のお料理も習いたい。

 と、色々な事でテンパっていた私。
「ユーイお嬢はん、どないしたん?」

「ええとね、ワーオランドーラで買ったお土産を渡したいけれど、その順番とか家族に会う勇気がなくって、ね、銀行にも行けていないし、やりたい事も沢山あるし、しなくちゃならない事も沢山あるしって考え込んでいました!」

「そらまた、大変なこって。こういうのはどうでっしゃろ?まずは厨房で何かを作りはって、王太子はんへ差し入れするついでに、うたお土産をお渡しするちゅうのはどうでっしゃろか?」

「そっか!ロート、ありがとう!その手で行くわ!」

 私付きのメイドさんに頼んで、厨房を借りれるかどうかを確認してもらってから動く事にしました。

 メイドさん待ちで、お茶を飲んでいます。それにしても時間が掛かっているなぁ。無理だったら、ブレスレットの中の物を差し入れしようかな。

 戻ってきたメイドさんが「申し訳ありません。」と言うので、「急には無理なのではないかと私も思っていたのよ。だから気にしないでね。」と言うと、そのメイドさんはホッとした顔をしました。

「サンドラ、ユーイ様は意地悪をする方ではないから大丈夫だって、私、前にも言ったでしょ。」
「ユーイ様、重ね重ね申し訳ありません。王城に来る前に勤めていた家が酷かったものですから、つい、悲観的な物の見方をしてしまいまして…。」

「ユーイ様、私と同じく専属になったサンドラです。ユーイ様の専属になった者は、あともう一人いるのですが、今日は休みでして。後日、紹介致します。」

「ごめんなさい。マリンカが毎日側にいてくれていたから、休みに気付いていなくって。」
「いいえ、ユーイ様。私の家は裕福でないので、勤めた分だけ給金が貰える王城での仕事は助かります。弟や妹の学費代を稼ぎたいので、休みを減らしているのです。ですから、お気になさらずにいて下さいませ。」

「それならいいのだけれど。マリンカもサンドラも無理はしないでね。」
「「はい。」」

「私は、これから王太子様の元へ差し入れに行くユーイ様の警護で、一緒に出ます。知らない者、王太子様の許可のない者をユーイ様の部屋に入れないで頂きたい。まだ、色々と危険もあるのですから。お願いします。」

 マリンカさんもサンドラさんも「「はい。分かっております。」」と答えたので、私は衣装部屋に行き、簡易ドレスからショウさんに会いに行けるドレスに着替えさせられたのでした。

 その間に、さっき見たロートの姿を思い出して、騎士服について聞いた事を思い出していた。

 初めてロートの騎士服姿を見た時は、「わぁ!ロートが騎士様をしている!騎士服を着ているだけじゃなくて、ちゃんと騎士様だよっ!リヨウさんは、そんな気配さえ感じさせなかったから、ロートの騎士様らしくしているのが新鮮に感じる!」って思ったなぁって。

「騎士の服装は動き難くて苦手な筈やのに、こん服はそないな事あらへんなぁ。」って、ナーオ・ロウ国の騎士服を着たロートが言っていたのも聞いていたし、後日、その騎士服の事をショウさんに聞いたら、騎士服は日本で大量に買い付けた生地を使って作っているって言っていたっけ。

 そのロートにも、違う日に騎士服の上着を見せてもらったけど、日本のと同じ洗濯表示が付いていて感心したっけ。その洗濯表示のタグに、「日本の動きやすくて洗いやすく、蒸れませんし丈夫です!って言う生地に、魔法で防御力アップしています。」と書いてあったのには驚いたけど。どこの3D画面や!って。

 魔法で表示タグが凄ーく小さくなっていたんで、つい日本と同じ見方をしちゃったからなぁ。突然、目の前にドでかく表示が現れたのにはビックリしちゃったけれど、ナーオ・ロウは日本の良い所を取り入れているんだ。凄いなぁ、って思ったし。

「ユーイ様、ご用意が終わりました。」って、マリンカさんに声をかけられるまで、他にも、あっちこっちに思考を飛ばしていました。

 衣裳部屋からロートの待っている居間まで移動してから、ロートと2人で部屋を出る前に、「いってきます。」と言ったら、「「はい。いってらっしゃいませ。」」と、マリンカさんとサンドラさんが見送ってくれました。

 私がショウさんの所へ行くというのを部屋の入り口で警護していた方達にも防犯対策で伝えておいたし、それより前、私が着替えている間に、ロートの部下(最近出来たばかりのホヤホヤだそうです。)が、「ユーイ様が仕事中の王太子様をねぎらいにお伺い致します。」と先に伝えに行っていたのだそうです。これで安心して、ショウさんの所へ行けます。

 私がショウさんの居る王太子の執務室前に着くと、「ショウのやつ、ソワソワして待ってるぞ。」と陽太郎さんこと、リヨウさんに揶揄からかわれました。

 リヨウさんと私の会話で私が婚約者のユーイだと分かったのでしょうね、扉前にいた守衛の様に立っていた騎士の方達のチェックも無しで、ショウさんのいる執務室へ入れました。

「ユーイ、待っていたよ。」
「突然でごめんなさい。でも、今日は勉強のない休養日だったので、差し入れをしたくって来ちゃいました。」

「ハートが飛んでるねぇ。私もカーナに会いたくなった…。はぁ。」

 そう言うと、イッチェン様(一郎さん)がしおれてしまいました。

「あ!イッチェン様、お仕事の邪魔をして、もう「邪魔じゃないから!息抜きした方が仕事がはかどるから!」ショウ様がそう言うなら、いいですけど。」

「ユーイ様、差し入れの前にあれを。」
「何かあるのかな?」

「あのですね、ワーオランドーラで買ったお土産があるんですが、渡す機会がなくって今になってしまいました。でも、一番最初にショウさんへお土産を渡したいと思って…。」

 何かを期待する様なショウさんの目に射抜かれて、嬉しくなってしまった私。惚れた弱みでショウさん限定で、私も甘いんでしょうか。
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