ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

ミュン王妃は王妃を辞めたい

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 深い眠りの中へ潜ったままだった私が、空腹過ぎて気持ち悪くなって目を覚ましたら、メイドが驚いていたの。何人かが出入りする音がしていたので、誰かを呼びに行ったのでしょうね。

 腕が引っ張られる感覚がしたので、腕を見てみたら、点滴がされていたわ。

 王妃付きの見知ったメイドが近付いて来たから、尋ねてみた。「私、死ななかったの?」と。

 メイドは私の言葉に驚いていたけれど、私自身、自分の切られた傷が滅茶苦茶痛かったから、結構派手にやられていたのだろうと予想していたのですが、今は、痛くなくて助かっていますのよ。痛いのが長引くとツラいんだもの。

「結構深い傷で大変でしたが、ミュン王妃様は生きていらっしゃいますよ。詳しい話は医師の方から致しますので、今さっき、メイドの1人を医師の所に使いへ出しました。もう一人が厨房へ、3人目が宰相閣下へと王妃様の事を知らせに行きましたので、お待ち下さいませ。」

 メイドがニッコリと告げて来たので、生き残ってしまったからには、今これからをどうしよう?と考える事にしたわ。しばらくは安静を言い渡されるだろうから、その間に王城から出ていく算段をつけなければならないだろうし。

 そうね、まずは王太后様に頼んで、リンクス王との離婚を出来る様にしてもらおうかしら?私、いつもあんな冷めた目付きで見てきて、嫌味や暴言しか吐かない人と、これ以上、もう結婚を続ける気は全く無いの。

 10年以上夫婦だったのに、普通の会話の一つもなかったわ。結婚当初の最初から、歩み寄る姿勢の欠片かけらだって、努力だって、全くなかったもの。もういい加減、自由になりたいわ。

「ミュン王妃様、医師が参りました。」
「分かったわ。それと王太后様へ、至急に内密で、ご相談したい事があるので面会したいと、使いを出しておいてちょうだい。」
「承りました。」

 予想していたけれど、医師の診察を受けたら、やっぱり安静を言い渡された。何でも、5日間も目覚めなかったので、万が一の事が起きても困りますので、様子見したいのです。と言われたのだけれど。

 厨房からは、野菜だけのスープが届けられたのです。私、凄くお腹が空いていたので素直に食べましたわ。おかわりもしてしまいましたのよ。

 私が目覚めたのは朝だったようで、私が落ち着くのを待っていたのでしょう、夕方になって、王太子の婚約者のユーイ嬢がお見舞いに来てくれましたのよ。

「お加減はいかがですか?」
「大分、マシになったわ。ユーイ様が、私の傷を治癒魔法で治して下さったと医師から聞きましたの。ありがとうございました。」

 あら、赤くなって照れているわ。日本ではともかく、ここの年齢換算だと、まだ12、3才よね。可愛くて当然ね。ショウ王太子はもうすぐ15?16?才位だったかしら?

「あの、王妃様が元気になられてからでいいのですが、女神の加護について教えてもらえないでしょうか。」
「いいわ。女神の事を聞くなら、皇太后様もいらっしゃるの。私からだけでなく王太后様からも聞けるわ。一緒にお茶を頂きましょう。王太后さまのご都合もあるし、私の体調もまだ分からないから、予定が決まったら、ユーイ様にお知らせするわね。」

「はい。宜しくお願い致します。早くお元気になられる様、お祈り致しております。」
「ありがとう。」
「では失礼致します。」

 義娘ね。そうね、私もささやかながら、自分の家庭を作ってみたい、可愛い子供が欲しいと思ったわ。舞台の幕が下がったし、死にそうになったからこそ思ったの。素直に、幸せになりたいって思ったわ。

 気が抜けたからかもしれない。そのまま、眠ってしまったわ。

「少しは前向きになったようだの?」
「女神さま、こんばんは。夢の中ですのね。私、死に損ないですわ。舞台を降りたのですもの、今度は幸せになりたいと思ったのです。」

「で、番がリンクス王でも離婚をするのか?」
「します!いつも冷めた目付きで見てくるし、嫌味や暴言しか吐かない人と、もうこれ以上、結婚を続ける気は全く無いのです!

 私、リンクス王を何とも思ってないのですわ!私に気付いてくれたバルバドス殿の方が好みですのよ!

 だって、10年以上夫婦だったのに、リンクス王は嫌々結婚したって態度を見せているんですよ!私だって、王とは絶対、結婚したくなかったのに!それに、夫婦なのに普通の会話の一つもなかったのです!結婚当初から、歩み寄る姿勢の欠片かけらだって、努力だって、全くなかったんです!もういい加減、王妃を辞めたいし、自由になりたいわ!」

「そうか。王太后よ、これがミュンの本音だと。聞いていたか?」

「え?!」王太后様が聞いていらしたの?

「ええ、ミュン、わたくし、最初から聞いていました。バルバドス殿には離婚後のミュンの再婚相手にどうかと打診をしたら、「ミュン殿のお心次第」と答えていたので、脈はあります。良ければ、その話を勧めたいですが、どうしますか?」

「本当に?バルバドス殿が?」

「女神の私が保証しよう。ミュンの相手はバルバドスでもいいと。」
「…いいのかな?」
「再婚同士だし、良い組み合わせなのでは?」

 ええい!勇気を出さないと!!幸せには、なれない!!

「お、王太后さま!お願いします!」
            
 ひゃぁあ!頼んでしまったわ!

「ミュンはまだ本調子ではないのだから、戻そう。」
「そうですね。ミュン、身体を治しておきなさい。」
「分かりました。女神さまに王太后様、お先に失礼致します。」

 女神がミュンを戻した後、王太后と女神が話をしていた。

「ま、私でも、リンクス王の嫌々結婚してやったという態度は腹に据えかねていました。ミュンだって好きで結婚したのではないですからね。王命での結婚でしたから。
 それでも、冷めた視線に嫌味と暴言しか吐いてなくて、普通の会話が一つもなかったとは思いもしませんでした。そこまで酷かったのですね。」

「王太后、今更だと私も思うぞ。女神である私でも、リンクス王は都合が良過ぎると思ったが、これから、どうするつもりでいるのだ?」

「女を何だと思っているんだ!って話になりますね。仕方のない子。アレには政略での再々婚を勧めましょう。」

「それがいいだろう。王を振り回す程のじゃじゃ馬がいいだろう。」
「ついでに、仕事をするようにと、王に躾が出来る娘がいいでしょうか。」
「ええと、日本語で言う「鬼嫁」って言うのが王には合うと思ったぞ。」
「まぁ、「鬼嫁」ですか。良いですわね、それ。」

 ニタリと笑う女が2人。
「離婚を急いでさせてから、ミュンの見合い、王の再々婚のお相手の選定も急ぎます!」
「お相手が決まったら、王には、その相手を番にしてやろう。そうして、私から番になったと告げよう。」
「その前に、ミュンが番だったと告げたのは間違いであったと訂正をしておいてくださいな。」
「それは出来ぬ。本当に番だったのだから。」
のなら、過去でそうだったが、今は違うと訂正をするのはいかがでしょう?」
「ああ、それなら、嘘にはならぬから出来るぞ。」
「では、それで今夜にでも、関係者全員にお願い致します。」
「分かっておる。王が言い逃れ出来ぬようにするからのぉ。」

 そうして、その夜は更けていった。
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