ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

囚われの皇妃

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 貴族牢に入れられている赤雪皇妃は、「白様!お許しを!」と何度か同じ言葉を叫んで飛び起きてから、憂鬱ゆううつな気持ちにとらわれて、周りを気にする余裕がなくなっていた。

 茶会のあの時、私に切り付けてきた刺客は獅子国にいた筈の私の愛人だった。あの愛人は、私の一番贔屓ひいきにしていたで、私に一番なついていた#男__こ__だったのに、#そのが切り付けてきた事に驚いて、思わず、興奮してしまったから、鎮静剤の注射を打たれたんだろう。

 大国の皇妃なんぞしている時点で、毒や薬に対する耐性なんぞあって当たり前。鎮静剤からも早々に覚めたわ。

 赤雪は茶会で愛人に切り付けられた事を考え始めた。

 誰にも言わず、勝手に数人の護衛とメイドと共に、お忍びで国外へ出たのだから。その私に、白様が白炎様に指示して私を狙うように仕向けたのだろうと。私の命を狙わずに、傷をつける事が目的だったのだろう。

 それが私に対する仕置きなのだろうと考えていたから、その後に眠ってしまって見た夢の中でもうなされた気がしたし、「白様!お許しを!」と何度も叫んだのであろうな。

 だから、今まで獅子国の奥宮の更に奥にいらっしゃる白獅子様を隠し通せてきたと言うのに、私が叫んだ内容で、ナーオ・ロウ国に白獅子様の存在が知られてしまった。今までは、ただの噂話で済んでいたのに、なんという事をしてしまったのだ、私は!憂鬱ゆううつだ、今度はどんな仕置きをされるか分からない、憂鬱ゆううつだ。

 白様が何もしなくても、白炎様が、勝手に飛び出て余計な事をして、使い道のなくなった私を殺そうとするだろうな。

 まぁ、この貴族牢にいる限りはナーオ・ロウ国の立場や威信もあるのだろうし、他国の妃に死なれない様にするだろうから、私は生きていられるだろうな。この牢から出されて馬車に乗せられた瞬間から、私は命を狙われる。それもまた私の生きざまだろうし、ここまで来たんだもの、この流れに自分を任せてみるのも一興でしょう。

 そうだ、獅子国から連れて来た者はどうなっただろうか。私は自分が死ぬのを自分で決められるが、付いて来た者達は自分がどうなるか不安であろうな。今回は王宮へ来て日の浅い者達を選んで、情報が漏れないようにしたからな。私にしては珍しいが、たまには慈悲深い皇妃だと演出するのも楽しそうだし、あの者達の命乞いをしておいてやろう。

 牢番が何人もいるな。様子見をしておるのだろうな。さて、慈悲深い皇妃を演じるか。

「あの、もし…。」

 牢の見張りをしている者が近付いて来た時を狙って、弱々しく呼び止めた。

「いかが致しましたでしょう?」

 少し躊躇ためらってから、上目遣いで身体全体は弱々しく、でも、これだけは聞きたいの!って目に力を込めて聞いた。

「私に付いて来ていた者達はどうしているでしょうか。
 あの者達は私のワガママで無理矢理付いて来させられた者達でございますの。心配なので、つい、お呼びだてしてしまったのですわ。」

 言い切った後は、シュンとした姿で、どうしましょうと、迷っている振りを見せた。

「確認をしてきますので、しばらくの間、お待ち下さい。」

「お願い致します…。」

 弱々しく返事をしておいた。これで、あの牢番は私に少しは良い印象を持っただろうな。上司の指示を受けに行っただろうから、時間が掛かるだろう。

「赤雪皇妃様。お気付きになられたのですか。遅くなりましたが、朝食はいかが致しましょうか?」

 次の牢番が来たか。日の当たり方で言えば、もうすぐ昼だろうな。朝食とはいえ、皇妃である私の為に、それなりの物が用意されているのだろう。ふむ、流れに任せるか。私には多少の毒でも平気だからな。

「そうですね。用意されているのでしたら、捨てるのは忍びないので、いただけますか?」
「すぐにご用意致します。」
「お願いしますわ。(ニッコリ)お気遣いありがとうございます。」と、嬉しそうに微笑んでおいた。

「!」小走りで、私がいる牢から離れていった。

 今度の牢番は、女慣れをしていない様子。上手く手懐てなずけられるだろうか。

「何かご要望はございますか?」

 3人目か。朝食後に今の状況把握をしておこうか。

「私の朝食後に、今の私の状況を説明して下さる方をお願い致しますわ。でも、そんな事が出来るの?大丈夫かしら?」

 不安そうに見える様に、語尾を小さくして尋ねてみた。

「分かりました。上にはそう伝えておきます。」

 こいつは、私に引きられないタイプか。仕方ない。今の状況を知りたいのは本当の事だからな。

 私に話しかけてきた牢番は、もう一人いた(4人目の男の)牢番と何かを話した後、私の見張りが出来る様にと、所定の位置へ戻っていった。

*****(3人目の牢番)*****

 あれが毒婦って言うんだな。1人目と2人目はたらし込まれる可能性が高い。今さっきのだけで、皇妃に好意を持っただろう。4人目は直感タイプだから、皇妃の側に近付くのも寄るのも嫌がったしな。

 申し送りの時に不用意に牢へ近づかない様にと、皆に釘を刺しておかなければ。

 デッドリー殿とバルバドス殿は、この様子を遠くから見ていて、ほくそ笑んでいるだろうな。1人目と2人目は皇妃の正体を暴く為の仕込み人員だって、本人達にも知らされていないのだから。

 牢に近付けさせるのは、最初から、あの2人だけの予定なのだから。

 2人目が戻ってから、報告へ行くか。俺が報告に行かなくても、上司達は何が起こっているか知っているだろうに。この変装も、部下が俺だって分からない様にしたからいいが、バレたら大変なんだからな!

「ヨタロー、済まないなー。俺っちの代わりに聞きに行ってもらってさ、あの女性ひとなんだか苦手だし、怖いんだよぉ。」

「仕方ねえよ。どっかの国の妃だって聞いたぜ。俺もこええよ。」

 あー、これを見て、一兄(イッチェン)と祥(ショウ)が笑い転げるんだろうなぁ。愚痴は総騎士団長じょうしへ言うか。
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