ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

男達の話し合い2

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 ユーイをロートの護衛付きで下がらせた後、王の執務室へ残った者達での報告と話し合いが始められた。

「王妃様の部屋で見つかった虚偽を混ぜて送った手紙の写しと、皇妃から届いていた手紙、王妃の実家の悪事の内容と、皇妃が用意した人と物の背後関係を記した物が出て参りましたので、宰相である私と宰相補佐であるイッチェンとで、中身を読んで確認致しました。」

「総騎士団団長デッドリー殿と情報担当のバルバドス殿にも中身を読んで頂いてあります。」

「読んだ上での考察ですが、獅子国の奥宮深くに生きて潜んでいると言われている化け物が、獅子国皇帝や皇妃の背後にいるのではないかと思われます。」

「して、王としてバルバドスに尋ねる、どうしてそう考えたのかを聞いてもよいか?」

「陛下、バルバドス殿に代わって、私、デッドリーめが答えてもいいでしょうか。」

 今の総騎士団長デッドリー殿は、騎士によくいる脳が筋肉で出来ていて動く、いわゆる脳筋ではないので、バルバドス殿の後を引き継げている、頭も働く方だ。

「構わない。デッドリーが答えるがよい。」

「バルバドス殿の調べた情報と、王妃様の集めた情報は差異があまりありませんでしたが、皇妃から送られてきていた手紙には、皇妃らしくない書き方をしたものが含まれていました。
 筆跡は皇妃のモノと判定されておりますし、代筆をした形跡が見当たりませんでした。時々、不自然に話が変わって、手紙の前後に関連が見付からない事を書いているのです。

 それに、貴族牢に入っている、最低限の治療を施しておいた皇妃が叫んで飛び起きたそうです。「白様!お許しを!」と何度か同じ言葉を叫んでいたそうです。」

「白炎皇帝ではないのか?」

「いいえ。赤雪皇妃は、皇帝を白炎様と呼んでいたそうです。息子には関心がなく、白星皇子と呼んでいるとか。
 そうすると、奥宮の更に奥で生きていると言われている化け物の名が「白獅子様」と言う名で獅子国では呼ばれているのですから、この場合はその化け物を指すのではないかと思われます。」

「まぁ、あの色ボケ皇帝や、鬼婆真っ青の皇妃じゃ、こんなに色々思い付くとは思わないけどなー。」
「リヨウの直感は的を外さないからね、だからこそ信用しているけども。ショウ王太子はどう見るかな?」

「宰相補佐のイッチェン殿のご指名ですか。

 そうですね、この王妃様が調べたモノを今、ざっと読んでいましたがその中に、
「ここ何年かは、皇帝が白角宰相に魔法で擬態して、裏で暗躍していた。皇帝にとって、白角は大きくて邪魔な目の上のたん瘤だったようだ。だから、皇太子の番だと言う白花は、宰相にも皇帝にも人質の価値があったので、何もさせてもらえず、カゴの中の鳥であった。」と書いてあった文章が気になりました。

 背後に誰かがいて、宰相と皇帝を競わせている様な書き方だと思いましたが、その化け物を見た事が無いモノで。表現が難しいですね。野性の勘とでも言うのでしょうか。何故か引っかかるんですよね。」

「皇帝と宰相のパワーゲームならぬ、力比べなら、ここまでこじれたりしないで、どちらかがとっくに殺されていてもおかしくないんですよ。宰相の立場の私から考えるとすれば。
 何故、こんなに長くバランスがとれているかが不思議でしたから。」

「赤雪皇妃から何か聞き出せないかと、牢番が様子見をしております。バルバドス殿の所の調査員も一緒に見張っております故。何かあれば、陛下並びに皆様へ報告致します。」

「デッドリー殿、獅子国の根は深くて、どす黒いのかもしれませんね。皇妃を殺しに来る可能性も捨てきれませんが。」

 私が王太子の立場で、そう告げると、治癒魔法を使えるものを牢番として、2人ずつ見張りにおいています。と爽やかな笑顔でデッドリー殿に言われてしまった。

 どこかのスポーツマンガのライバル並みに爽やかなデッドリー殿は、城内でもモテている。が、本人は仕事にしか興味がないので、女性からの秋波を見当違いで外して、日々、気付かずにかわしているのだ。

 まぁ、人気のあった王太子である私が、王太子妃を連れて帰ってきてしまったので、デッドリー殿のモテる順位が繰り上がってしまうのは仕方ないと思うのだが。

「(小声で。)ショウ、何だか残念そうに思っているのが顔に出てるぞ。」と、リヨウに肘で小突かれた。

 あ-、ミュン母上の人生を夢の中で強制で見せられたので、眠気がキツイ。思考がまとまらないから、考え事が脱線したのだろうな。

 話し合いの途中だったな。気を付けないと。

「…以上の事で、監視の手や目は緩めずに、王妃や王太子妃の警護にも気を抜くな。化け物相手だから、どんな手を使ってくるかが分からないからな。皆、頼むぞ。」

 しまった!聞いてなかった!
 議事録作成を手伝いながら、イッチェンに私が聞いていなかった間の話を聞いておかねば…。

「ドンマイ。」リヨウに肩を叩かれた。
「城内を任せるから。」
「ショウに言われなくても、俺は俺の仕事をするさ。また後でな。」

 皆がまた自分達の仕事へ戻っていって、王の執務室には、私達親子と宰相親子だけになった。

「で、陛下。王妃様にはどうやって謝るんでしょうか。」
「まだ考えていない。」

 ミュン母上に今以上嫌われない様に、手を動かして仕事をしながら、宰相殿と父上の話が続いた。

「では、バルバドス殿に王妃様を降嫁させるんですか?」
「いいや!しない!」
「では、嫌われているご自覚はおありですか?」
「…ある。」
「冷たい言葉や嫌われる言葉しか話してきませんでしたからね、それも10年以上避けていたお相手ですからね。上手くいくかは分かりませんよ。」
「…それも分かっている。」
「王妃様ご本人の希望を優先する様にと、王太后様からいわれております。」
「ああ。」
「ちなみに、王太后様と王妃様がしょちゅうお茶を飲む程、仲が良いのは知っていらっしゃいましたか?」
「へ?!!知らん!!」
「そうですか。私も王太后様から口止めされていたので言えませんでした。」

「ショウは知っていたか?」父上、仕事の手が止まっていますよ。仕方なく、質問に答えた。

「何となく。時々、王太后様の所へお茶を飲みに行くと、ミュン王妃様とすれ違っていましたから。私とお茶を飲んでいる王太后様がご機嫌でいらしたのもあって。何となくですが。」

「ぐがあああ!晩餐の時に、王太后様と仲良く出来ないだろうって責めてしまったぁあ!!!」

 叫んで床にうずくまった男が、この国の王だと王国民には見せられない姿だ。ああ、イッチェンが笑いを堪えている。

「仕事をしない男はもっと嫌われますよ、陛下。」

 カッツェ宰相殿のトドメの言葉まで出てきてしまったではないですか。

「…仕事をする。」

 立ち上がり、執務用の椅子へ座り、仕事を再開した父上を見て、番を大事にして気を付けていこうと思った。
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