ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ナーオ・ロウ国編Ⅰ

騎士達は仕事中3

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 ショウ王太子は、朝の仕事中に王から呼び出されて不機嫌であった。

「いい加減にしろ。また私に仕事を押し付けて、お忍びで城下へ行くつもりか?」と、いつもの父を思い出していたが、父ではなく、王として王太子である自分を呼んでいる事実を優先し、早足で王の執務室へ向かって歩いていた。

 途中で、宰相殿に呼ばれて王の執務室へ向かっていた一兄と合流したので、「おや?今回は違う事か?」と思ってはいたのだが。

 王に呼びだされた用件が、王太子妃暗殺計画と知って、文句の一つでも言うつもりだったのを沈黙して、陽とロートの報告を待ったのであった。

 元総騎士団長のバルバドス殿から陽へ渡された報告書と、王妃の実家の悪事の報告書を証拠として渡されて、宰相補佐のイッチェン(一兄)と2人で報告書を読んでいった。父親であるリンクス王とカッツェ宰相は、ショウと宰相補佐のイッチェンを待っている間に報告書を読んだそうだ。

 報告書には、

 ミュン王妃との茶会で女神の力を悪用して、毒を分からなくした飲み物を王太子妃へ飲ませる。
 毎日少しずつ飲ませて、8日目に王太子妃が死亡するように毒を使う。

 ミュン王妃の実家は商売をしている貴族だが、金遣いが荒く、いつも金策に走っているという噂がある。実家が密輸入した新しい毒を使って王太子妃を殺せば、毒の有用性を証明出来る上に、自分の地位を脅かす小娘を処分出来ると王妃が毒殺を率先して計画している。

 王妃の実家の貴族が密輸入を隠す為、王弟派の色々な貴族に便宜を図ったり、裏金で作った金を賄賂で渡していたので、その相手、場所、年月日までが詳しく書いてあった。

 ショウが報告書を読み終わると、王と王太子と、宰相と宰相補佐に、陽とロートがバルバドスから聞いた話が、陽から皆に伝えられた。

「その新しい毒は魔物から生み出されたもので、効能が毒だという事以外は全く分かっていない。だが、その毒を取り込んでしまうと、死を待つだけになるのです。通常では効く治癒魔法も、この毒には効かないことが証明されているのだそうです。

 治癒魔法が効かないのは、この世界に魔法を与えた女神でも困る代物であり、ゆえに、女神の加護がある王太子妃様でも、この毒を飲んだら亡くなってしまいます。

 ユーイ王太子妃様の為にと王太子様が親切心で、王妃様との茶会を行うように手配をしていましたが、今回は、それが裏目に出てしまいました。ミュン王妃様でも、女神の事をユーイ様が聞きたがるだろうって思いついたんですから。

 ユーイ王太子妃様が女神の力の事を聞きたがっているだろうと王妃様との茶会を手配したショウ王太子様はもちろん、茶会に参加する予定だったリンクス陛下や、招待されていたカーナ様の保護者であり、今回の話が国を揺るがす話なので、宰相殿と宰相補佐殿にも教えなくてはならないと危惧致しました。

 その報告をする為にも、皆様をリンクス陛下に呼びだして頂きました。

 カーナ様は妊婦ですし、「家族でのお茶会だから、参加出来なくなったと伝えて欲しい。」と、勝手に暴走しないよう、こっそり王城へ来て、巻き込まれない様にしたいのです。今回ばかりはカーナ様を遠ざけて欲しいのです。」と、陽とロートが必死に一兄へ頼んでいた。

 妊婦を致死性のある毒のある場所へ近付けたくないし、暗殺の計画のある犯罪行為の捕縛にも巻き込みたくはないだろうからか、一兄が青い顔をしている。この件を陽達が報告してくれなかったら、カーナさんも、カーナさんのお腹の中にいる子供達も巻き込まれていただろう。

 カッツェ宰相殿がその場ですぐに、「今日カーナが参加を予定していた茶会だが、秘匿されている女神の力の話をするので、王族だけの茶会になった。だから、カーナは参加出来なくなったので、王城へは来ずに安静にするように。」としたためた手紙を書き上げ、家に急いで書いた手紙を使いに持たせ、即座に家へ届ける様に手配した。

 一兄は、「私が書いた手紙なら、カーナは自分の心の思うままに、自分のワガママを通して行動した事でしょう。茶会に参加出来なくても、好奇心で王城まで来てしまう所でした。父上、ありがとうございます。」

「孫と義娘を危険に晒したくはないからな。私からだと、甘えからの万が一もあると思ってな、王太子様と息子を待っている間に、王から王印を使用する許可を頂いておいたのがよかったようだ。手紙の中に王印まであるのだ。幾ら、あのカーナとて、王印を無視してまでの無理は出来ない。」

「カーナについての懸念が無くなって、助かりました。王印のある手紙なら、母上も必ずカーナを止めるでしょう。」

「ああ。妻は、そういう勘は鋭いから、大丈夫だろう。」

 陽とロートの利いた話は、宰相が家に手紙を出して親子の会話が終わった所で、陽によって話し続けられた。

「王太子妃様暗殺計画の裏にいるのは獅子国皇妃赤雪だそうです。

 前王妃リュン様と会談で会って以来、何年も側妃に寄越せと白炎皇帝がナーオ・ロウへ密書を送ってきていたのを私達若い世代は知りませんでしたので、その事をバルバドス様から聞きました。

 攫って側妃にする為だけに戦争を起こそうとしていた程、横恋慕をして惚れこんでいたせいで、その戦争を起こそうとして実行した時から今まで、女神の怒りで皇帝が不能になっているようです。そのせいで、皇妃がずっと嫉妬していたのが理由で、皇妃がミュン王妃をそそのかしたのだとバルバドス様から教えてもらいました。

 赤雪皇妃にとってリュン前王妃が邪魔だったのでしょうが、自分で手を下そうと計画している間にリュン前王妃が亡くなったので、今もいきどおっているのでしょう。皇帝も、リュン前王妃様が手に入らなかったからこそ、未だに執着していると聞きました。

 皇帝の中では、この先ずっと1番はリュン前王妃様で、皇妃は2番目以降の女であると感じているからかもしれない故の嫉妬と思い込みで行動していると、バルバドス様が分析していました。

 リュン様への嫉妬が消えないうちに、亡くなったリュン前王妃様そっくりなミュン王妃様が現れました。

 皇帝は見かけが同じでも、ミュン王妃様の周りを獅子国の密偵が探っていた時期があったので、中身がまったく違う事が皇帝にも知れて、ミュン王妃様には食指が動かなかったんでしょうとも言っていました。

 リンクス陛下も、ミュン王妃様には指一本触れてない清い関係であり、ミュン王妃様も、清いままでいないと女神からの加護が消えると、婚姻前に女神本人から釘を刺されていると聞きました。

 それを破ったら、加護もなくなり、王妃でいる資格もなくなりますと。ショウ王太子様は、この事をお知りになっていなかったでしょう。私もこの話を今回初めて聞いたのですから。

 そのリュン前王妃様そっくりなミュン王妃様を、リュン前王妃様を殺せなかった赤雪皇妃が、ミュン王妃様を破滅させたいと思ったようで。王妃様の実家を通して、便宜を図って散々、甘い汁を吸わせてから逃げられない様にして、毒を使わせる事を計画させたのだとバルバドス様が言っていました。

 ただ、ミュン王妃様も、有用性がいるだけのお飾りの王妃で未だにいられる程の腹悪であり、皇妃の計画に乗ったようですが、裏では皇帝と接触して、この国から追放されても、清い身であるのを活かして、皇帝の愛人として獅子国で過ごせる様に手を打っているそうです。

 王太子妃様を殺したら、この国ですぐに処刑されるという現実を忘れて、なんと王妃様にとって都合の良い事だけを考えているのでしょうか。

「反吐が出るがな。」とバルバドス様が吐き捨てて言っていた理由が理解出来ました。

 赤雪皇妃をそそのかして、皇太子が王太子妃様に興味を持ち、攫うよう計画させた裏にいたのは、ミュン王妃様なのも判明したばかりだそうです。

 王太子妃様を邪魔で消そうとしているのはミュン王妃様で、皇帝が王太子妃様を側妃に欲するのではないかとの嫉妬と思い込みから、王太子妃様を消そうとしているのは赤雪皇妃だそうです。

 茶会に陛下や皇太子様も呼んで、夕方から開催すると私から聞き及んだバルバドス様が、
「8日後には、王も王太子もその毒で殺されてしまい、国ごと獅子国に乗っ取られるかもしれない。」と、言われましたので、王妃様が皇帝と接触していた証拠と、その毒を見つけて回収するのが私とロートの仕事です。

 元総騎士団長、今は酒場の店長兼、裏隠密部隊隊長であるバルバドス様も伝手つてもコネも総動員して、王国民への被害がない様に、獅子国の密偵を端から捕まえるそうですから。バル様の指揮で裏隠密部隊を動かして、国の根底を揺らしている今を抑えに走ると伝えてきました。」

「店は全店、午後から研修旅行で臨時休みにするとバルバドス様が通達しておくそうです。
 それから、その休店を騎士の皆には、もう伝えてありますので。

 私は、近衛騎士団団長として、現総騎士団長にも事実を伝え、その指示をし、王妃様の実家を秘密裏に捕縛、探索すると同時に、内密に外から王妃様を探るのを最優先にする事をショウ王太子様の命で致しておきました。

 ロートは、お茶会時にユーイ王太子妃様の守りを最優先致しますが、それまでは、私と王妃様を探ってまいります。王太子様は王太子妃様のお側にいてお守り差し上げて頂きたいと思いますが、いかがでしょう?」

 ニヤリと笑った陽が憎たらしい。先回りして、動いていたのは評価するが。

「ああ、陽の機転で、騎士団が私の命で既に動いているのだな。それは、助かった。」

「お役に立てて幸いです。」陽が得意そうにしていた。
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