ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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獅子国編

白角と白星1

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 儂は愚かじゃった。妻の赤穂を亡くした事にして、ナーオ・ロウ国の姉の元へ帰したのじゃよ。

 彼女と儂は政略結婚の相手を見つける為の夜会で出会ったのが初めてだったがのぉ。

 見合いをする夜会前に、条件を守れる方とだけ政略結婚を致しますと知らせがあったのだが、それほどの条件を付ける女とはどんな者なのかと好奇心で話しかける前に、その彼女に一目惚れをしてしまったのじゃ。

 儂は、彼女を手に入れる為に、その条件を受け入れなければならなかったんじゃがの。

 赤穂と結婚するにあたっての条件、それは、赤穂が3人目の子供を産んだら、姉である王太后様の元へ帰すと言う約束だった。
 彼女が帰った後は、儂が離婚をして良い。後妻でも愛妾でも迎えて良いと言われていたが、離婚する気にも後妻や愛人を作る気にもなれなかったんだわな。

 妻の赤穂には血族の未来視が出来る能力があったが、それを知られない様にと、結婚して一緒に暮らしていた時は屋敷から出した事もなかったのでな。
 社交界でも皇宮でも、妻であった赤穂の顔を知られてはいなかったので、赤穂が亡くなったと偽装しても、誰にも気づかれなかったがの。儂にとって政敵に付け込まれないで済んだが、なによりも、赤穂が狙われなくて済んだと思えた事が儂にとっての唯一の救いであったわ。

 あれから数十年を経て、儂も王族専用の牢で幽閉をされて引退後を過ごす羽目になるとは思わなかったがのぉ。
下の娘達が公爵家を継いでくれたので、心配もない。ただ、皇妃であった娘の赤雪が処刑されると密偵から聞いてから、赤穂の姉のナーオ・ロウ国の王太后様へ手紙を出した。

 赤雪が処刑されたら、その亡骸を儂が受取人になり、家の墓に収めたいと書いたのだ。赤穂が家を出る前に、もし姉に手紙を書くなら同封して欲しいと言われていた、赤穂が書いた手紙を同封したのだが。

 それから暫くして、儂に面会がしたいと申し込んで来たご夫人がいると、孫の白星が告げて来た。

 そのご夫人とは白星の手配で、白星とその側付きの者と儂が一緒に、皇宮の一室で会う事になった。

「お久しぶりでございます。白角様。」

 白星には、どんな関係の方だ?と目線で聞かれたが、儂にも分からなかったので、気付かない振りをしておったわ。

「久しぶりだのう。息災であったか?」
「夜会では何度かお目にかかりました。白角様、…ここでの話を内密として頂きとうございます。」

 儂に会いたいと言うのだから、内密の話だろうと思っておったが、やっぱりだのぅ。

「して、内密にしよう。白星達も他言無用じゃぞ。」
「ええ。爺様の言う通りにします。」
「…実は、私共、息子を刺客にするべく、白炎様によって息子を動かす駒として、人質にされていましたの。」
「なんと!」

 儂が表で引退した途端にか。

「息子が白炎様の指示通りにしたので解放されましたが、難を逃れる為、皇都を離れる前に、どなたかに息子の真実を話しておこうと思いましたの。」

「真実とは?」

「息子は赤雪様と一緒に処刑されます。黄海と言いますが、白角様の弟の白妙様の子なんです。」
夫君おっとぎみは、違う方の筈。儂の弟の子とはどういう意味だ?」

「夜会でお会いした時に、白角様に魔法で見せ掛けた白妙様と関係を持ちましたわ。私の能力は真実を知る目です。魔法で姿を変えた位では私の目を誤魔化せませんでしたわ。

 夫に愛人を何人も作られていた上に、娘と同じ年の愛人を連れ帰られたのに腹を立てて、当てつけに私も浮気をするつもりでいた所に、白妙様からのお誘いがあったのです。

 たった一晩でも、白妙様との間に子が出来てしまったのですわ。」

 夫人はそこまで言った事で、少し冷静になった様に見えた。溜め息を一つつくと、話を続ける。

「夫は私以外に子が出来なかった事実から目を背けていました。魔力量が釣り合わないと子が出来難い事を知っている筈なのに。

 愛人達に子が出来ないのは魔力量が釣り合わないからと、その当たり前の事を分かっているのにも関わらず、気まぐれで、愛人と比べながら私を批判しつつ、交わるのですわ。

 私、白妙様と交わって子が出来たと分かった直後にわざと夫に抱かれたのです。だから、私にそっくりな黄海を自分の子だと信じていますわ。

 黄海も夫である父に認めてもらう為にと、皇妃と言う権力を目当てに赤雪様に近付いたのですから、自業自得ですけれど…。」

「儂を追い込むのに、白炎様が儂の弟の息子を刺客に仕立て上げたという訳じゃな。白星、この者の家族をかくまえるかの?」

「爺様、皇太子の手札にせよと言う話ですか。」

 白炎が皇帝を続けられなくなる様に、追い詰めなければな。白炎一人に任せたら、機嫌を取るだけの貴族共にいい様にされて、獅子国は崩壊してしまうだろうからのぉ。このご夫人の真実を知る目も白星には必要になるだろうて。

「分かっておるなら、皆まで言わんよ。頼めるかの?」
「処刑後にそのご子息の遺体の引き取りもするように手を打っておきましょう。」

 儂も赤雪の遺体を引き取ると王太后へ頼んでいるのだ。後で、それを白星に伝えておこうかの。

「お前は全部を言わなくてもいいので、助かるわい。」
「元皇妃様の処刑後に、爺様は屋敷で幽閉生活をするつもりだろう?」

 そこまで分かっているなら、ぼんくらな白炎よりもマシな皇帝になるだろうて。白星は白星専属の側近共に指示をしている。このご夫人も、すぐには死なないで済むだろう。側近共に付き添われて、ご夫人が出ていったわい。

「では、元居た場所へ戻るかのぉ。白星や、戻してくれるかの。」

「はい、はい。爺様を生かす為、爺様を私の味方にしておく為にも、王族専用牢へ戻ってもらわないと、ね。元皇妃様の処刑後は王族の親戚でなくなるから、屋敷へも帰れますよ。」

 白星は「面倒くさー、男の面倒は父だけで沢山だよ。」と聞こえる様に独り言を呟いて、儂を牢へ戻して、去って行った。
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