ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ラーン・ビット国編

王太子とその側近が動くと…3

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 ショウと大罪人ベルナールの勝負が行われるその日は午前中から、王城の中が騒がしくなった。

 王家の自分以外の全員を暗殺するつもりで計画していた第3王子ベルナールが、その計画を万全とする為に、訪問中の他国の王太子妃を誘拐し、人質にして有利に事が運んだ後に、その王太子妃を殺害をするつもりでいたのだと。

 それをその番である王太子がお忍びで後からこの国に訪問してすぐ、王太子妃の誘拐を未然に防ぎ、その結果、第3王子の計画を全て暴いたのだと王子の大罪の詳細が発表されたのだった。

 自国とその番を侮辱された王太子は、王子となった者との勝負をアマデウス王へと願い出たので、真剣での勝負が許可されたのだと。

 そして、その勝負に王太子と大罪人の王子が挑む事になったのが今日の午後であり、その場所も王侯貴族しか立ち入れない王城の訓練所にある闘技場で行われるのだと、今朝、急に発表されたのだ。

 それまで、第3王子のベルナールが大罪を犯したので処刑するとの発表をしていたで、詳細は不明だったので、どこもかしこもその一大スキャンダルに沸いたのだった。

 城下では、その話でもちきりになった。

 いくら暢気のんきな気性のラーン・ビット国民でも、他国の王太子の番を誘拐、殺害をしようとし、その上、自分の家族を殺すつもりだと聞いたのだ。

 元第3王子と言えど、即座に切り離す決意をし、処刑するとキッパリと発表した王家に対しての非難はなかったようだ。私はその話を叔父上から聞いたので、そうなのかと思っただけだった。ここはナーオ・ロウではないから、そこまでの興味がないのだ。

 それよりも、自身の番を殺されそうになったナーオ・ロウの王太子に同情する声や、王太子妃も初の外交で卑劣な犯罪に巻き込まれて、お可哀想だと言う声が上がっていたのだ。

 だからか、犯罪者と他国の王子のどちらが勝つのかの賭け事は成立しなかったので、元王子がどんな姿になるのかとの賭け事がひそかに行われたのだった。

 一応、だからか、大っぴらな賭け事には出来ないとの事で、元王子も1ヵ月後には処刑も控えているし、殺さない様にされるのだろうと。

 だから、どんな姿になるのかのオッズが午前中には始まっていた。

 勝負が始まるまで、勝負が終了した後にどんな姿になるのかどうかに賭けるという、ある種の娯楽の様に、予想され賭け事がされたのだった。

 番がいる者達の大多数は「両手両足がなくなる」に賭けた。
 自身の番が危険な目に遭ったのだ。その気持ちが理解出来るからと。俺なら私ならこうしたいと思うという一種の願望と、こうするだろうという報復を想像した結果に賭けたのだった。

 番のいない、まだ見つかっていない者達の多くは「両足だけ、もしくは片足がなくなる」に賭けた。
 勝負事の終わった後に、そんな卑怯なヤツの世話をする者が気の毒だから、手だけは残すだろうと。

 残酷過ぎると思った者達は「片手片足だけ」に賭けた様で、その理由も、処刑まで魔義足と魔義手を付ければ、処刑まで生活出来るだろう。腐ってもなのだから、それ位は配慮されるだろうからと。

 一部の少数の過激な者達は「勝負で殺される」か「首をはねられても即座に治癒魔法で治してから、治癒魔法でギリギリに生かしておくだけにする」との予想をして、賭けたのだった。

 いくらなんでも、首をはねられたら、誰でも即死するだろうし、魔法は万能ではないのだ。魔法で蘇生は出来ないから、賭け自体が成立していないのだが、その事実に反論した者がいなかったので、うやむやになって賭けは成立しているようだった。

 ラーン・ビット王城内の訓練所の闘技場の見学場所には、物見高い貴族達が勝負を見物に来ていた。

 国内の貴族達の血縁関係者がその王子の行方を娯楽とし、この国の行く末を見て己の身の置き方をはかる為という実益を兼ねて、ここまでやって来ていたのだ。

 午後になり、闘技場の出入り口から両者が出て来た。

「顔色は悪いが、健康そうだし、体力もありそうだ。」とショウは冷静にベルナールを見ていた。

 あちらも、私を見て、憎悪を眼に滾らせているようだな。でもな、番であるユーイを手離す気はさらさらないんだよっ!

 目を瞑ってから、深く大きな息を吐く。必要以上な焦りや怒りで自分の手元を狂わせる訳にはいかない。

 番である王太子妃を守るのは、その番である王太子の私なのだ。だから、国の為、自分の為に冷静になれ。ブレないように。

 どこからか声が聞こえる。「両者、位置について。」

 目を開けて、相手を見た。

 焦りはない。必要以上の怒りも出ていない。心をフラットに出来たのだと判った。

 定位置へ歩いて向かう。愛用の剣を構える。

「では、始めっ!」

 ああ、私に向かって突っ込んできた。初撃に賭けてきたのか。

 だがな、「私がそんな手に引っかかる訳がないだろうっ!」

 上段からの切込みで初撃をかわす。その流れを生かして、がら空きの脇をみね打ちし、痛みで膝から崩れる様に打ち付けた。

 相手も気力で膝をつかなかったか、でもな、「私の番を侮辱した貴様を許す気はない。やっと手に入れた番だっ!」

「俺だって、あのが欲しいんだ!」

 打ち合いが続く。

「私は妃と出会った3才の頃から、再び出会うまでの間もな、ずっと努力をしていたんだよっ!それを譲れだと?!出来ないなっ!」

 切り込んで、その無駄に長い髪の縛ってある部分を切り落とした。私なら、こんな事も出来るんだと。お前をすぐにでも殺せるほどの努力をしたんだと見せつけるように。

 目の前の敵だけを生かさず殺さずにも出来るのだと。

 相手との打ち合いが続くが、経験と訓練の長さが違うのか、この男、体力が減って、バテてきたようだ。息が荒くなってきているな。

 そろそろ頃合いだろう。私の体力はまだまだ大丈夫。この位打ち合えば、見物客も満足しただろうから、やってしまおうか。

 まずは片腕っと!

 ザシュッと音がして、利き腕でない方の腕の肘から下が切り落ちた。

「ぐがああああっ!!」うるさいな。ユーイはもっと嫌な気持ちになったんだ。思い知れ!

 肘から下を切っただけだが、治癒担当の魔法使いが痛みを抑え、出血を止めた。続きをしようか。

 相手が再び立ち上がって、片手だけで剣を持っている。

 では、残した肘から肩をっ!

 今度も綺麗に切り落とせたようだ。これなら、止血もしやすいだろう。

「ぎゃああああっ!!」

 相手は息をゼイゼイと吐きながら、こちらを睨んでいる。

 止血も痛み止めも終わったようだ。睨んで立上がったからな。

 この男だけに聞こえる様に打ち合いながら、周りには聞こえない様な声で囁いた。

「妃は、な、凄く乱れて強請ねだるんだ。「もっと」ってな。」

「くそっ!!」

 打ち合いながら、あちらに精神的なダメージを与えていく。

「奥にもっと欲しいと強請ねだる姿は最高だ。」

「畜生っ!!」

「お前には一生手に入らないものだ。」

「俺の方が先に出会っていればっ!」

「無理だな。女神さまが妃の産まれる前から私の番にするのだと決めていたと教えてもらったのだ。」

「そんなっ!!!!」

 顔を歪ませて嘆いても、私はお前には何も感じない。

 女神さまから個人的に教えてもらった事実をもう一つ告げる。

「お前は早逝そうせいするのだと産まれた時から決まっていたそうだ。だから、最初からお前の番は何処にもいなかったし、用意もされていなかったそうだ。」

「うわあああああっ!!!!」

 では、最後の仕上げをしよう。

 両足を膝から切った。

「ぎゃあああおぅっ!!!!」

 今度も綺麗な切り口に出来たな。ここから先は治癒担当の魔法使いの仕事だ。 

 片手だけは残しておかないと、食事やトイレに困るし、世話をする者の負担が増えるからな。この辺でいいか。

 審判をしている騎士の肩を叩いた。

「これで終わる。後は任せた。」

 騎士が了解しましたと言うように頷いたので、魔法で、愛用の剣の血をキレイにしてから、鞘に収めた。

 今、気付いた。大歓声が聞こえた。それでも周りを見ず、後ろを振り返らずに、その場から、滞在している部屋まで戻った。

 リヨウとイッチェンが闘技場を出てからすぐに、私の後ろに付いて来ている。2人共、私の心を解っているから何も言わない。

 私が部屋に入る前に、リヨウが「剣だけで済ませたんだな。」と言うから、「剣だけしか使わずに済ませたんだ。この国にも王族のメンツがあるだろう?」と答えたのだ。

「そうか。魔法も使わず、足も手も出さずに済ませたのか。」

「王子同士だとお綺麗に戦った方がいい場合もあるから、仕方ないさ。」

「ま、貴族様方は納得しただろうね。自国の元王子が無様な戦う姿を晒さなくて、さ。」

「リヨウ、ショウも実力を隠しておくのは必要だから。でないと、女神さまの愛し子を守れないだろう?」

「まぁ、そうだな。でも、あそこにいた貴族の中で、何人がショウの実力と元王子の実力の違いに気付いたかな?」

「それで、余計な事に巻き込まれたくはないからな。知らん。」

「私までこの国へ来てから仕事をさせられるとは思いませんでしたよ。」

 イッチェンの嘆きにクスリと笑ってしなったが、「風呂に入りたいから。」と会話を切り上げた。

 さて、血の匂いをさせたままでユーイの所へ行きたくないので、部屋に戻ってから風呂に入ろう。

 滾った血の発散については、ユーイに協力をしてもらおう。今夜は2人で朝方までは眠れないな。それで、ユーイがまた拗ねるだろうか?ふふっ、それもいいか。


 その勝負結果は誰かの手によってすぐさま、城下に知らされた。
 賭けた者達はガッカリしたのだが、賭け自体が成立しなかったので、損をする者はいなかったようだ。


 後日、その勝負事も含め、人気のある歌劇としてラーン・ビット国内だけでなく、他国でも上映される程のモノになった。

 「番を救った他国の王子様」「番に助けられた他国のお姫様」「悪役となった王子」「スリルが一杯」「一人の女性をかけての真剣での勝負」が揃っていたので、人気が出たのだろうと名のある芸能評論家達は分析したのだが、その歌劇の脚本を書いたのは、誰あろう王太后様だった。

 何せ、元王子が確かに処刑されたのかどうか、立ち会いする証人となっていたので、その処刑が行われるまでの間、先王と王太后を除く皆がこの国から出て行ってしまったので、2人は暇だった。

 その暇つぶしにと、2人で孫と孫嫁が出る脚本を書いたのであった。勿論、歌劇の中の聖獣のクー様も活躍したのである。

 女神さまと話し合いをした部分を馬鹿正直に書ける訳がないので、その役どころを王太子と一緒にお忍びで後から合流した事にしておいたクー様に役をあてて、色々と脚色したのだ。

 だが、現時点では、まだ、勝負が終わっただけだった。
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