ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ラーン・ビット国編

王家の後始末

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 ラーン・ビット王家の者は、短期間に起きた一連の後始末に追われていた。

 勝負後、ベルナールは処刑まで死なない様にする護符を縫い付けた囚人服に着替えさせられてから、ベルナールが逃亡出来ない様にと、魔義足を使える最低限の魔力しか出ないよう使えない様にした魔力制限を施した首輪を嵌められた。

 両足には魔義足を付けられ、腕は片方だけはあるので最低限の生活は出来るだろうと魔義手を付けるのを見送られた。

 そのまま、大罪を犯した者が入る一般の(無様な姿を他の者へ見られない様にという最後の親心で)個室の牢へと送られた。

 その日の夕方から、イッチェンと一緒にラインハルト王子やその部下達は、熾烈な尋問の立ち会いと手伝いをし、その後、書類の不備を見つけ、検討、訂正、その書類の件を見直しする仕事に忙殺されたのだった。

 イッチェンは嬉々として、ラインハルト王子とその部下達をこき使った。

 その尋問の過程で、ベルナールへ「王国」へのこだわりを長年、植え付け、自身の駒として傀儡の王に据えようと画策していた者達が居る事が発覚し、その捕縛をラインハルト王子が騎士団に命じて調査し、後日、その集団を一斉に捕縛したのだが。

 よれよれのラインハルト王子はその夜、アインハルト王子の件を聞かされ、頭を抱えたそうだが、王と王妃と3人で話し合い、アインハルトの幽閉を決めたのだ。

 その幽閉期間は不明。場合によっては、その生涯、寿命が尽きるまで幽閉になるかもしれない。

 次代シルビアと今代ラジルの聖獣夫妻は、ファネス王妃にスパルタで今代と次代として鍛えられている最中である。

 アマデウス王は責任をとって引退しようとしていたが、それも叶わず、まだまだ現役として次代の王のラインハルト王子を厳しく育てながら、国の為にもまだまだ働き続けなくてはならなくなった。

 気楽な隠居生活をファネスと送るつもりだったのが、当分、いや、大分だいぶ先にまで延びたのだ。

「ファネスとの気楽な生活が遠退とうのいた…。」

「ベルとアルのせいで、王の威光がガタガタな今、そんな事を言うモノではない!王妃になって、私が側にいるのだけでは不服かのぉ?」

 眼光鋭く問うファネスにタジタジなアマデウスだが、残念な気持ちはぬぐえない。

「そうではないが…。」

 ファネスと気楽にイチャイチャし放題な隠居生活が出来ないではないかとガッカリしている。

「わらわはライだけでも王家の王子として残ってくれて良かったと思うぞ。それまでは、2人でライを助けなければ!」

 ああ、ファネスは熱血であったな。逆境に対してそれを跳ね除けるようにと燃えるたちであったわ…。

「そうだな。1人ではないのだから。」

 諦め気分で答えた。

「ええ。ナーオ・ロウの先王様とその妃であるわらわの親友が滞在するのです。気を入れなければ!

 お茶会を沢山開いて、沢山交流いたしましょう!この国の為にも、わらわの為にも!」

「最後のが本音だな、ファネスよ。」

「アマデウス様にはお判りになりますか。」

「過ぎた事を嘆いていているだけではこの国を守れないからな。」

 それにそんなファネスと寄り添って人として生きていけるようにはなったのだから。多少の妥協は仕方ないか。

「あと、ライの手伝いをする子を2人位は生まないと!!」

「そこは全面的に協力しよう。」

「そうです!シルビアの所よりも子を先に産むつもりです!」

「そうだな、孫は聖獣様だし、私達が生きている間に会えるか分からないからな。私もまだ現役だしな。」

「ええ!頑張りますわ!」

 どこを頑張るのかと思ったが、自分の願いが少しは叶いそうなので、黙っておいた。



 そんなラブラブな夫婦は置いておいて、ラインハルトは、ショウ王太子と先王ご夫妻様との非公式な会談をしていた。

「それで、私に相談とは何でしょうか?」

 問いかけるショウ王太子に答えるラインハルトわたし。まさか、聖獣様までいらっしゃるとは思わなかった…。(焦るよ…)

「私の番は今のままでいいのですが、その、ええと、幽閉が決まったアインハルトの番の扱いは…どうなるのでしょうか。」

 戸惑いながら、大事な事なので、ショウ王太子の問いへ答えて、質問したのだけれども…。

 その会談の立ち会いになった先王夫妻様方の膝の上にいる聖獣のクー様が代わりに答えて下さった。

『その件については、女神さまから聞いてますにゃ。次に生まれる王子の番とする事にしたと、仰ってましたにゃ。』

 王太后様が目を丸くしているが、何か今の答えに不都合でもあったのだろうか?

 私も知らない事をサラッと答えて下さったのだが、弟がまた生まれる?と?

『1年後ぐらいに産まれる予定にゃのかにゃ。その魂は厳選されるとの事にゃ。問題にゃい。
 ラーン・ビットの王子の番とすれば、両国には都合がいいのだろうからにゃって仰ってたにゃ。』

 母上、またまた父上の、この国の兎人の精力旺盛さ、特に王族は凄まじいと噂される程の夜伽に付き合わされるんだろうな。

 まぁ、私もその王族だからか、ちちの事を言えた義理ではないのだけれど。

「国外へも今回の一連の件は既に情報が言っているのだろうと推測します。
 その件にあたり、両国での詳細な部分までのすり合わせが必要だと思いまして、その事について、ご相談したいと思い、非公式での話し合いをもうけました。」

「うむ。良い心がけじゃ。」「ええ。若い世代はこうでなくっちゃね。」

 先王ご夫妻の答えに安心出来た。

 さあ、ここからは、私が頑張らねば!!


 その夜、クー様が普通に喋れたとの報告を受けたナーオ・ロウ国陣営は、衝撃を受けていた。

 その渦中のクー様は、『語尾に「にゃ」と付くから、にゃんにゃんと話していたんだにゃ!』と、拗ねてしまったのだが。

 ユーイはそれを微笑ましい気持ちで見ていた。姪達が幸せになりそうだからと。

 その後、その夜中に、女神さまと黒百合のクー様の話し合いがもたれていた。

 ナーオ・ロウの皆は誰も起きていないし、女神が盗聴記録媒体などのそれらを遮断しているから。

『どうするにゃ?』

 くしくしと毛づくろいをしながら、女神の膝の上で、黒百合はのんびりとしている。

『そうね。まさかのアインハルトも地球産の魂とこちらの魂が融合したモノだとは思わなかったのだ。』

『送り返すかにゃ?』

 顔を前足で洗いながら、聞き返す黒百合。

『ベルナールの魂と一緒に、送り返す。それまで融合した魂をゆっくりと分離していき、半分だけを残して、からじゃな。』

『厄介なモノを渡されたんにゃね。』

 伸びて、んー!と丸まりながら、黒百合は女神に撫でられている。

『ああ。長年融合していた魂の半分を分離するのにも、時間が掛かるのだ。私に見せる魂をこちらの魂で覆っていたのに気付けて良かったのだ。

 まったく、地球神おっとには碌でもない魂ばかりを押し付けた事について、文句を言っておこう。』

『大変にゃね。』

 ゴロゴロと喉を鳴らしながら、黒百合が答えた。

『そうだな。…(上の神々に報告もしなければならないし、全く面倒ばかりで嫌になる。)…黒百合が話を聞いてくれるので助かった。』

『女神さまは聖獣皆のお母さんにゃ。気にしないでにゃよ。』

『あ”-、黒百合に癒される私は恵まれているぞ。』

 わしゃわしゃと強く黒百合を撫でる女神に、増々、ゴロゴロと喉を鳴らした黒百合はご機嫌だ。

『にゃにゃにゃ!嬉しいにゃ!』

 そうして、また明日がやって来る。
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