ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ラーン・ビット国編

次へ向かうまで

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 夜が明けて、また新しい日が始まった。

 ナーオ・ロウ陣営は、次をどうするのかを話し合っていた。

 本当なら、ラーン・ビット国から他国を幾つか訪問する予定でその下準備を本国の方で済ませていたのだが、ラーン・ビット国で起きた一連のせいで、国へ帰った方が良いのではないかとの意見も国の方で出ており、現場責任者であるショウ王太子と、ユーイ王太子妃、王太后、聖獣のクー様での会談で決めて欲しいとの旨が国の方から出ていたのだ。

 所詮、その場に居ない者が現場にいる者の行動を縛れる訳ではないとの判断あっての事だった。現場でしか解らない事もあるので、現場にいる者達に任されたのだった。

 国の方では内密にしているが、ここには先王に王弟もいるのだから。

「当初の予定通りに、ガオン・ロード国へ向かうかどうかを決めたい。」

 議事進行の司会役をショウは引き受けた。

「ユーイはどうしたいの?」

 優しく尋ねてくれる王太后様おばあさまへユーイは答えた。私の方をチラッと見てからだが。

「行った事が無いので一度でも行きたいとは思いますが、この国で起こった事のような事が他国でも起きないとは思えません…。」

「そうよね。あなた、どうしましょう。私達は処刑をしたのを見届けない限り、ここから動けないのですし。」

 ひげを触りながら、先王様おじいさまは悩んでいる。

「せめて、王弟むすこが同行できればいいのだが、今回はここから国へ帰国せよとの命が出ているのだ。
 調印した書類を安全に国へ持ち帰る役目を担っていた私と息子だが、私はここで処刑がキチンとされたかの見極める仕事が出来てしまったのでな。」

 今回の視察は外交を兼ねた新婚旅行なのだろう。リンクス王ちちうえからの結婚式が延びている事への罪滅ぼしわびちんだったのだろうが、それが裏目に出てしまったという事だろうな。

「私も甥とそのお嫁さんの安全を考えると無理強いをしたくはないが、兄上が内緒にするべく、新婚旅行を嬉々として内密に計画していた姿を見ていたからか、今頃、あの兄上がいじけているのかと思うと、可哀想になってしまって…。」

 弟である叔父上は、サラッと辛辣な言葉を混ぜて、父上を上げてから落としているなぁ。

「まぁ!なんて兄弟想いの弟でしょう!我が子ながら、イイ子だわ!」

「母上、照れますって…。」

 この親子は…。うわぁ、私の血縁だった…。

「王太子様の好きにしたら?」

「私も同じく。」

 リヨウとイッチェンはそう言って、私に決定権をゆだねてくれた。

「わいも、かまへんわ。お二人の好きにしたらええわ。」

「私共も、各国を外遊する予定で用意をして来たので、何も問題は有りません。」

 侍従に護衛にメイドに侍女達の代表として、お婆様のメイド長が答えてくれたのだ。

 皆で色々と話し合ってから、一番最後に、聖獣様であるクー様に尋ねたら、クー様が熊男が今代であった時に次代で苦労していただろう、新しく今代になった聖獣に会ってみたいのだと散々ごねたからだ。

 たしか、こういう事を鶴の一声とか、日本では言っていたかな。

 ナーオ・ロウの方でも、獅子国のように、聖獣によって、国の中が歪まされていたので、その影響がどのようになっているかを視察したいと元々は思っていたのだ。

 先代の熊男の時は、密偵でも影でもスパイでも、入国した途端に聖獣の力で(怪我もないが)無理矢理それぞれの国へ強制的に転移で帰されていて、ガオン・ロード国へは一切、入り込めなかったのだった。

 今はどうなのかは分からないが、正規の王族の外遊での訪問ならば、入国出来ない事はないと分かっているし、その為に、国と国との書簡やら魔法契約やらで、王太子と王太子妃が正式に訪問する事を約束し、その安全をガオン・ロード国が保証すると確定されているのだ。

 国としても、一切の情報が漏れなかったガオン・ロード国のその内情が知れるのは確かに魅力的なのだ。

 皆でその後も寝てしまったクー様を見ながら、色々と話し合い、次は元々の予定通りにガオン・ロード国へ向かう事になった。

 そうすると、この国で滞在するのも後幾日かになる。その事をラインハルト王子とアマデウス王へと伝えるようにし、次にどこへ行くかをその2人には内密にしてもらった。

 でないと、女神さまの愛し子が危険な目に遭う確率が増えるのだと言う理由をも含めて、内密にしたのだから。私達には沢山の借りがあるこの国の王家の者だから、他には漏らさないと魔法契約をしてくれて、その契約書のもう1部だけを私に渡してくれたのだった。

 これなら、ユーイの危険は少しだけでも減るだろうし、もし、次に移動する場所が漏れたのならば、行先であるガオン・ロード国の方からこの情報が漏れたのだと確定出来るだろう。

 そうそう、ナーオ・ロウの陣営での話し合いで決めたのはまだあった。

 ガオン・ロード国を訪問した後も、また今回の様に現場で話し合いを持って、その後の行動を決める事にしたのだ。

 これなら、聖獣のクー様が機密を漏れない様にして下さるので、他に漏れる事が出来ないからだ。

 それと、先王様おじいさま王太后様おばあさまはクー様の転移で移動日数と移動距離を短縮して、後から私達と合流して下さるとの事だ。

 それを見越して、私とユーイに付いて来てくださったのだろうか?まあ、何にしても、助かったのは本当だ。

 そうして幾日かを過ごし、明日はラーン・ビットを出立すると言う夕方に、リヨウが聖獣のクー様に呼ばれたのだった。

 4、5日、リヨウには休暇を与えて欲しいとクー様から言われたので、そうしたのだけれども、その理由はまだ不明だ。

『リヨウの代わりににゃ、元総騎士団長殿が出張してくるにゃ。その都合も付けておいたにゃよ。

 にゃーんも心配ないにゃ。

 バルバドスも子供達や妻に他国のお土産が買えると喜んでいたにゃ。』

「へ?俺ですか?」

『あたいが転移をするにゃから、心配ないにゃ。陣痛がもうすぐ始まるから番の側についているんにゃよ。』

「はいっ!ありがとうございますっ!家にお願いします!」

『そこは分かっているにゃ。バルバドスと入れ替わりの転移にするにゃ。だから、警護の穴もないにゃよ。

 では、行くにゃ!』

 笑顔全開のリヨウがクー様によって転移をして姿を消した場所に、バルバドス殿が立っていた。

「リヨウ殿も大事な時、私が代わりを務めましょう。

 ですが、明日にはこの国を出立するとの事。お土産を買うのにどなたかを案内としてお願いしたい。」

『王女の婿殿のラジル殿に案内を頼んだにゃ。もうすぐここへ来るにゃ。土産を買う金も臨時雇いだからと国からも沢山出たのであろうにゃ。』

「クー様の言う通りです。王弟様もロート殿もいるし、聖獣様のいる今、ココから動かないであれば、私も土産を買いに行けるでしょうから。」

『よく分かってるにゃん。奥方は元気かにゃ?』

「はい、元気です。子供達も私に似て元気一杯で、幸せですよ。」

 クー様とバルバドス殿が話している間に、案内をするラジル殿が来て、土産を買いにバルバドス殿が部屋から出て行った。

 リヨウの父となる奮闘を私の元へ戻って来てから、イッチェンと一緒に聞こうと思う。

 目が合ったイッチェンも微笑んで、「リヨウの話が楽しみです。」と嬉しそうだった。
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