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ガオン・ロード国編
ブリュンヌ王太子妃の苦悩
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ガオン・ロード国のブリュンヌ王太子妃はずっと怖かった。
幼少時から婚約していた王太子様へ嫁入りをしたけれど、まさか、品行方正と噂されていた聖獣様があのような本性であったとは思わなかったからだ。
王太子様と私の結婚は盛大に行われたし、王太子のアルクトス様を好きになって恋していた自分にも酔っていた。私は誰よりも幸せだと思っていたわ。
それも無事に初夜を終え、アルクトス様との幸せな蜜月の休暇が尽きた頃、不幸が服を着て向こうからやって来たのだ。それも、聖獣という名の王家の方々が嫌でも逆らえない者が。
最初は『可愛い嫁をもらった王太子が羨ましい』とか、『手を繋ぎたい』とか、王太子のアルクトス様がさり気なく断ってくれていたのだけれど、王太子様がいない所で出会ってしまった時に、『キスをさせろ。』『胸を揉ませろ。』と迫って来るようになった。それも、私が一人でいる時を狙って、日に何度も言ってきた。
ハッキリ言って、怖かった。でも、泣き崩れそうになっていた王太子妃である自分の側にいる侍女達を守らなければと思い、気丈に振舞った。
貴族や王族の人間ならば、護衛の武力と魔法で排除出来たけれど、神力を使う聖獣様には太刀打ち出来ない。
だからすぐ、アルクトス様に相談し、出会ってしまうのを避ける為に部屋からは必要がない時は極力出ないようにし、王太子様と一緒の公務へ出る時に出会ってしまうと、アルクトス様の後ろへ隠れるようになった。
それと同時に、王妃様にも相談したら、私と同じ目に遭っていたと聞かされたのだった。
そんな馬鹿な!とは思ったが、この国を守る為に、聖獣様の醜聞を外へ出す訳にはいかなくて…との裏の事情を聞かされたのだった。
聖獣様を名誉騎士団長という名ばかりの役職と伯爵の爵位を名乗れるようにしてあり、城下でも女好きの放蕩貴族で有名なのだと知った。
それで王妃様からは、代々受け継がれていると言う女神さまからの護符をいくつかいただき、持ち歩くようになったけれど、私に近寄って来ない代わりに、私の身体を足の先から頭の天辺まで嘗める様に観ているのが解って、底知れない寒気を感じていたわ。
それでも王妃様から、「私の場合も先王の妃さまもね、子供を産んだら、こちらへの興味をなくしたし、そう聞いたから、それまでは我慢してね。
陛下にも、あの子があなたの所へ行く回数を増やす様にしやすくするから。
こんな醜聞を聖獣様が起こしているなんて、国民には聞かせられないの。ごめんなさい。」と、謝罪までされたの。
子供が少しでも早く出来る様にと、王太子であるアルクトス様の休みの日には2人で寝室から出ない事も多々あった。そのお陰か、子が出来難いと言われている王家でも異例の速さで妊娠したわ。
悪阻で部屋から出れない時は、面会を断る口実にも出来たし、悪阻が終わっても、妊娠中の体調不良という事で面会も断れた。
私が部屋から出る時は王妃様の付き添いと、それまでは女性の護衛だけだったのが、男の護衛が婚姻直後よりも増えて、何人も付くようになっていたから。
次代を産むブリュンヌ王太子妃様の身に何かあってはいけないと言う名目で。
子供を2人産んだからか、出産後は大丈夫だろうと安心していたのに、たまたま護符を持ち歩かなかったせいで、聖獣様に出会ってしまうとは思わなかった。
今なら、私に出会うようにあの聖獣様が護符を持たない時に接触出来るようにと私を待ち構えていたのだと解るのだけれど。
それで、護符を持たない私に出会って、その時に私にかけてきた言葉が、『子供を産んだから、色気が増したなぁ。今なら私の子も産めそうだ。』とか、『私の子を産まんか?』などと言われてしまい、震えてその場から動けなくなった。他にも何かを言っていた様だけれど、怖くて怖くてそれどころではなかったわ。
私と聖獣様が接触した事をアルクトス王太子様に知らせに走ってくれた護衛の1人が、王太子様をすぐに連れて来てくれたので、私はすぐに助け出してもらえたわ。
だけれど、私が何を言われて動けなくなったのかを私の近くにいた者達から聞いて知った王家の皆様方での話し合いがもたれたの。
その際、私のショックが大きかったのもあって、私は部屋から出ない方が良いという事になり、部屋の四隅に護符を張り付けて、安全な部屋の中に篭るようになってしまったし、部屋から出たくなくなった。
生まれた子供達は2人共、王子だったので、聖獣様に何かされるのではという心配はなかったけれど、王子達についている乳母に子供を産めと迫る可能性もあり、そのせいで護衛が増えてしまったのでしたわ。
聖獣の次代様の番様も、あの聖獣様を避けているのだとアルクトス様から聞いていたので、私だけじゃないのだとどこかで安心していたの。でもね、次代様の番様がどんな目に遭ったかを聞いて、余計に怖くなったし、もっと用心しなければと、部屋から更に出れなくなり、公務にも支障が出て来てしまったわ。
そんな私でも、見捨てずにいてくれたアルクトス様や陛下や王妃様には感謝しなければならない。
私が部屋から出れずにいた間に、あの迷惑な聖獣様が引退して女神さまの監視下に置かれ、二度とここへは戻って来れなくなった話を聞いても、怖じ気づいた私の心は、そのまま。
それでもまだ怖くて、怖くて、心と身体が動けない。人と接する事が億劫になっていたわ。
そんな中、ナーオ・ロウ国の王太子様ご夫妻が公務で我が国へいらしたの。
幼少時から婚約していた王太子様へ嫁入りをしたけれど、まさか、品行方正と噂されていた聖獣様があのような本性であったとは思わなかったからだ。
王太子様と私の結婚は盛大に行われたし、王太子のアルクトス様を好きになって恋していた自分にも酔っていた。私は誰よりも幸せだと思っていたわ。
それも無事に初夜を終え、アルクトス様との幸せな蜜月の休暇が尽きた頃、不幸が服を着て向こうからやって来たのだ。それも、聖獣という名の王家の方々が嫌でも逆らえない者が。
最初は『可愛い嫁をもらった王太子が羨ましい』とか、『手を繋ぎたい』とか、王太子のアルクトス様がさり気なく断ってくれていたのだけれど、王太子様がいない所で出会ってしまった時に、『キスをさせろ。』『胸を揉ませろ。』と迫って来るようになった。それも、私が一人でいる時を狙って、日に何度も言ってきた。
ハッキリ言って、怖かった。でも、泣き崩れそうになっていた王太子妃である自分の側にいる侍女達を守らなければと思い、気丈に振舞った。
貴族や王族の人間ならば、護衛の武力と魔法で排除出来たけれど、神力を使う聖獣様には太刀打ち出来ない。
だからすぐ、アルクトス様に相談し、出会ってしまうのを避ける為に部屋からは必要がない時は極力出ないようにし、王太子様と一緒の公務へ出る時に出会ってしまうと、アルクトス様の後ろへ隠れるようになった。
それと同時に、王妃様にも相談したら、私と同じ目に遭っていたと聞かされたのだった。
そんな馬鹿な!とは思ったが、この国を守る為に、聖獣様の醜聞を外へ出す訳にはいかなくて…との裏の事情を聞かされたのだった。
聖獣様を名誉騎士団長という名ばかりの役職と伯爵の爵位を名乗れるようにしてあり、城下でも女好きの放蕩貴族で有名なのだと知った。
それで王妃様からは、代々受け継がれていると言う女神さまからの護符をいくつかいただき、持ち歩くようになったけれど、私に近寄って来ない代わりに、私の身体を足の先から頭の天辺まで嘗める様に観ているのが解って、底知れない寒気を感じていたわ。
それでも王妃様から、「私の場合も先王の妃さまもね、子供を産んだら、こちらへの興味をなくしたし、そう聞いたから、それまでは我慢してね。
陛下にも、あの子があなたの所へ行く回数を増やす様にしやすくするから。
こんな醜聞を聖獣様が起こしているなんて、国民には聞かせられないの。ごめんなさい。」と、謝罪までされたの。
子供が少しでも早く出来る様にと、王太子であるアルクトス様の休みの日には2人で寝室から出ない事も多々あった。そのお陰か、子が出来難いと言われている王家でも異例の速さで妊娠したわ。
悪阻で部屋から出れない時は、面会を断る口実にも出来たし、悪阻が終わっても、妊娠中の体調不良という事で面会も断れた。
私が部屋から出る時は王妃様の付き添いと、それまでは女性の護衛だけだったのが、男の護衛が婚姻直後よりも増えて、何人も付くようになっていたから。
次代を産むブリュンヌ王太子妃様の身に何かあってはいけないと言う名目で。
子供を2人産んだからか、出産後は大丈夫だろうと安心していたのに、たまたま護符を持ち歩かなかったせいで、聖獣様に出会ってしまうとは思わなかった。
今なら、私に出会うようにあの聖獣様が護符を持たない時に接触出来るようにと私を待ち構えていたのだと解るのだけれど。
それで、護符を持たない私に出会って、その時に私にかけてきた言葉が、『子供を産んだから、色気が増したなぁ。今なら私の子も産めそうだ。』とか、『私の子を産まんか?』などと言われてしまい、震えてその場から動けなくなった。他にも何かを言っていた様だけれど、怖くて怖くてそれどころではなかったわ。
私と聖獣様が接触した事をアルクトス王太子様に知らせに走ってくれた護衛の1人が、王太子様をすぐに連れて来てくれたので、私はすぐに助け出してもらえたわ。
だけれど、私が何を言われて動けなくなったのかを私の近くにいた者達から聞いて知った王家の皆様方での話し合いがもたれたの。
その際、私のショックが大きかったのもあって、私は部屋から出ない方が良いという事になり、部屋の四隅に護符を張り付けて、安全な部屋の中に篭るようになってしまったし、部屋から出たくなくなった。
生まれた子供達は2人共、王子だったので、聖獣様に何かされるのではという心配はなかったけれど、王子達についている乳母に子供を産めと迫る可能性もあり、そのせいで護衛が増えてしまったのでしたわ。
聖獣の次代様の番様も、あの聖獣様を避けているのだとアルクトス様から聞いていたので、私だけじゃないのだとどこかで安心していたの。でもね、次代様の番様がどんな目に遭ったかを聞いて、余計に怖くなったし、もっと用心しなければと、部屋から更に出れなくなり、公務にも支障が出て来てしまったわ。
そんな私でも、見捨てずにいてくれたアルクトス様や陛下や王妃様には感謝しなければならない。
私が部屋から出れずにいた間に、あの迷惑な聖獣様が引退して女神さまの監視下に置かれ、二度とここへは戻って来れなくなった話を聞いても、怖じ気づいた私の心は、そのまま。
それでもまだ怖くて、怖くて、心と身体が動けない。人と接する事が億劫になっていたわ。
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