ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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虎の国、小国群編

立ち往生からの、偵察

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 草原を走る大きな獣の影が2つ、野営している場所に向かって走って近付いていた。

 その大きな獣達は、小声で話をしていた。

「まずは2人で片方の様子をうかがってから、その先を決めよう。」
「そんでええですわ。」

「それにしても、あんさんが「気ままな黒猫」ちゅう2つ名の通りだとは思いまへんでしたわ。」
「俺だって、「自由自在の猫」って別名のままだとは思わなかったよ。」

 その大きな2匹の獣は、獣化した姿のロートとリヨウであった。

 2人がどうしてそのような姿で、草原を走っているのかと言う理由は、その日の昼間にまで、話をさかのぼらなければいけない。

 その日の昼間、あと3日程で虎の国だと思っていたナーオ・ロウ国の一行は、虎の国まであと2つだと言う国の関所で、これ以上の移動は出来ないと言われ、魔馬車のこの先の国へ向かう通行を止められたのだった。

 何故、2つ手前の小国での滞在を許可され、その先の国への通行を禁止されたのかの話が一切されず、魔馬車の置ける見晴らしの良い場所まで案内されただけだった。

 その案内をしてくれた関所の役人から、どうしてここまで案内されたのか、どうしてこの国での滞在が許可されたのかをここまで来れば大丈夫でしょうと言って、説明されたのだった。

 虎の国の手前の国で、兄弟による王位継承権を争う内紛が起こったので、通行するのが危険になったとの事だった。あの場所で説明をすると、国民が不安になるので、説明出来なかったのだと謝罪をされたのだ。

 あの場で出来る事と言えば、ナーオ・ロウ国の一行の乗った魔馬車を通行禁止の措置を執るだけしか道がなかったのだと、丁寧に答えてくれたのだった。

 ましてや、小国群を実質、取りまとめている虎の国の王太子妃の生国の王族が、外交で訪れるのが事前に解っているのに、そんな時期に内紛を起こしたのだから、どんな思惑や危険があるのか分からないので、滞在許可を出したのだと、これまた丁寧にナーオ・ロウ国一行へ説明してくれたのだった。

 その上、ナーオ・ロウ国の一行が内紛を起こした国へ偵察に行っても、我が国は一切を知らぬ存ぜぬで通すし、滞在を勧めただけと言い張るのだと言った。

 滞在許可証の他に、この国の王家はこの許可証を持つ者の身分を保証するので、詮索をしない様にと言う許可証まで10枚も発行して、私達に渡してくれたのだった。

 その情報を元に、魔馬車の中での話し合いが続いていた。

 誰を偵察用員として出すのかと。

 そこで最終的に、先王の鶴の一声で、リヨウとロートが偵察に出る事が決まったのだった。

 リヨウとロートが獣化して人の姿に戻ると、普通なら全裸になるのだが、偵察をするのに全裸にならなくて済むように、ナーオ・ロウ国独自で作られた服があるのだ。

 その服はステルス戦闘機のように、魔法での探索を物理での探索も文字通りにステルス、素通りして、正体が分からないのだ。

 その上、魔法も物理攻撃も通り抜けないように特殊な加工をされているし、服の伸び縮みも魔道具並みに自動調節可能な加工を施してある、非常に金額と手間暇が掛けられている服なのであった。

 もちろん、服の色は黒一色である。

 服を着るときは人型でも、獣化した姿でもオーケーな優れモノであって、2人は全裸に人型で魔馬車内で着替え、獣化した全裸では、人前にはあらわれなかったのであった。

 服を着た姿を理解しやすい姿で表わすなら、水中に潜る時に着る、頭までを覆っているウエットスーツだろう。

 獣化した時に音が聞こえるように、水中とは違い、耳を出す事を前提としているので、耳を出す穴が人型の時と獣化している時とで使えるように、4つの穴が開いているのだ。

 それに、目が光って見つかってしまわないようにと、反射しないグラスを使用し、これまた自動で暗視調節される機能の付いたゴーグルを付けている。

 2人が魔馬車内で着替えて外に出てきた時には、魔馬車の外へ2人以外にいたのは、先王とショウ王太子のみだった。

 2人がその場で人型から獣化した姿になった。もちろん、認識阻害で魔馬車の外には誰もいないように見せかけている。

 その獣化した姿は服を着た大型の猫種、服を着たピューマの様な姿だった。ただし、ロートは服から出ている部分とゴーグルから出ている顔の部分が、白かった。

「ほうほう、2つ名の通りか。リヨウは獣化した姿は元から黒いが、ロートは白一色なのか?」

 先王がロートに尋ねると、首を横に振った。

「いえいえ。自由自在なんで、色を変えられますんで。このままじゃ、目立つんで、リヨウはんに合わせて黒一色にしますわ。」

 ロートは白い毛皮から、黒一色の毛皮になった。

「ロートは色が変えられるんだ。いいなぁ。便利そう。」

「そう言うリヨウはんも、大きさを変えられるんでっか。そっちの方が便利そうや。」

 大きな姿から黒猫と言われる大きさになったり、大小の大きさになるのを繰り返しながら、服の様子を見ていたリヨウだった。

「んー、慣れれば快適だけど、初めて小さくなった時は、アクシデントで大きさが変わったから、元の大きさに戻るのに四苦八苦したよ。」

「…2人とも、凄いな。リヨウは親父さんも大小の大きさを好きなように出来るって聞いていたけれど、実際に見るのと聞くのでは違うね。」

「先王様はわい達を見ても、驚かへんのは流石やなーと思ったわ。」

 先王はニヤリと笑ってから、2人の方へ向いて、どうして欲しいのかを伝えた。

「褒めてもらえて良かった良かった。

 2人にはどうして内紛が今に時期に起きたのか、私達が通行するのは分かっていた筈、それに合わせたのはどうしてなのかと、王位継承権を争っている兄弟と王の兄弟がどのような背景で関係しているのか、そして、野営している場所の確認と兵達の様子見を頼む。

 ま、分かる範囲内でいいから。自分達の身の安全を優先してくれるのが一番だ。」

「私も王太子として、2人の無事な帰還を第一にして欲しいと思っている。命あっての任務だからな。ええと、「命大事に」が私からの指令だ。

 後は先王様の言う通り、何か裏があるのだと思っている。この場所に滞在中、何度も偵察任務へ行ってもらわねばならないだろうから、様子見で構わない。

 では、健闘を祈る。」

「「応!いざ、参る。」」

 そうして、獣化した姿の2人は、滞在している小国の許可証をブレスレットの中にそれぞれ持参しているので、何かあっても身分の証明が出来るので大丈夫だろうと互いに合図をして駆け出してから、滞在中の小国から出て、内紛を起こしたと言われている小国の中を走っていたのだった。

 山岳地帯の小国とて、山岳部分での戦いは争っている互いでの消耗戦になるのは、王位を継いでからも不利になるとみて、平原での戦いをするように密約したのだろう。

 どちらの野営をしている陣も、人の住んでいない草の生えた、ただの平原の南北に分かれて、張られているようだ。

 南側にある陣の近くに近付いたので、ロートとリヨウはお互いに頷いてから、聞き耳をたてたのだった。
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