ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ガオン・ロード国編

暇だと嘆いていると…

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 魔馬車内で先王夫妻が仲良くしていた頃と、その前の日々の中、そうそれは、王太子ご夫妻との話し合いをして以降の日々、ユーイは国賓ということで、したい事は何一つ出来ず、ただ暇を持て余していただけでした。

 とほほ。国と国との間で決めることが多いとは思っていましたよ。

 でもね、他国の王太子妃がガオン・ロード国の王城から視察にも出れないのでは、実質、この場にいるだけで、何も出来ないのですよ。

 たしかに、お茶会やら夜会やらはありました。面倒でしたけど。王太子妃の務めだと思って、頑張りましたよ。

 でもね、お土産や食料品を見たり買い物したり出来ないと、ストレスがどんどん溜まっていくので・す・よ!

 日本では一般庶民でしたから!20年近くを自由な庶民として過ごしたんですから、王太子妃になって日が浅い私には気を抜くタイミングが分からないので・す・よ。ふぃー、どこで気を抜けばいいんだろう?

 貴族の淑女らしく、刺繍して差し上げたハンカチも小物も、ショウ様が大切にしまい込んでしまい、宝物のように大事にしているのだそうで(イッチェンさんとリヨウさん情報)、それなら沢山、刺繍すればよいかと沢山、作りました。

 国でも国外でも見せるだけで大事にして使わない刺繍されたハンカチーフを毎日、交換して持ち歩いているのだそうです(これも側近のお二人からの情報です)。
 だから、この国へ来てからもラーン・ビットでも、何枚か新しく刺繍したものをプレゼントしましたとも!でもね、私、刺繍するのにも飽きてしまいましたー。ナーオ・ロウでも刺繍をしていたので。

 ショウ様はどうやって気を抜いたり、ストレス発散するのでしょう?って、昨夜、尋ねたら、「ユーイだよ。」って耳元で囁かれて、朝までコースで抱き潰されました…、はい。自業自得です。

 だから、今朝は起き上がれなくて、昼になっても起き上がれずにいたから、ポーションを飲んで回復しました。ええ、もう、ショウ様には怖くてその手の事は聞けなくなりました…。

 イッチェンさんとリヨウさんにも聞いたのですが、「カーナ(妻)と子供達。」「奥さんと子。」という、ショウ様と同じような答えでした。血の繋がった親戚だからか分かりませんが、まさか、同じような答えが返ってくるとは思いもしませんでしたけれど。

 そのイッチェンさんの妻のカーナさんは、産前に始めた恋愛小説の執筆が今でも趣味と実益を兼ねたストレス解消だそうで、取材メモの催促をされましたー。

 本当にその道の第一人者になってしまいましたとさ。今をトキメく、話題で大人気の女流作家様なんです。凄いですよね。もう本を何冊も書いているし、出した端から大人気!の作家さんです。

 カーナさんは、子供を一人で育てられる程の収入を既に得たので(この事実はイッチェンさんには内緒にしているのだそうです。いざという時の切り札にするって言ってましたっけ。)、イッチェンさんがダメダメなら切り離すわ!と豪気に語っていましたが、イッチェンさんがカーナさんを離さないでしょうね。

 そうそう、取材メモの方は、メイドさんや侍女さん達があちこちで聞いた話をまとめてもらえるようにしました。まとめたら、まとめた分だけの成果主義での特別手当を渡すという契約をカーナさんと私の立ち合いで、してもらっていますから。

 ええと、ロートのストレス解消は?と今日の昼に聞いたら、「剣術で相手を倒すこと!スカッとしまっせ!」と、にこやかに笑っていたっけ。意外な答えでしたが、ロートは正統派の爽やか系でしたね。

 後から合流した先王様の先程お会いして聞いたのですが、「妻と息子と貿易。」とお答えになってくれて、王太后様は「夫ね。息子をからかうのと、そうねぇ、他には何があるかしら?」と考え込んでいらしてました。

 ここで何かしらの料理がしたいと思っても、ここは自国でない他国ですし、ワーオランドーラ国の様に、お友達がいないので、厨房を借りる事も出来ないし、外出も出来ないしで、どうにもなりませんです。はぁ。

 最後の最後で、聖獣のクーちゃんに相談しましょうか。

 そう思って、気晴らしに散歩していた庭園から離れ、クーちゃんと話し合おうとして、割り当てられている客室へ私とロートとメイドと部屋に向かって歩いていました。

 でも、その戻る手前の間に、私の前へと立ちはだかる方がいました。すかさず、私の専属護衛のロートが私を守る為と、不測の事態に備え、私の前に出ました。

「そなた、こちらの方が他国の王太子妃と知っていての事でしょうか?」冷めた声で尋ねるロート。

「いえいえ、滅相もないです。たまたまです。偶然とはいえ、挨拶もなく無言で黙礼するだけなのも失礼かと思いまして。せめて、最低限でもご挨拶だけをと考えたのでございます。」

 ロートの立つ隙間から、私へ挨拶がしたいという方をさり気なく盗み見てみました。

 背の高い若い女性に見えるし、若干、その声も女性にしてはハスキーな声のように聞こえましたが、服装がドレスではありません。
 この方、男装が趣味なのでしょうか?その上、剣帯までしています。女性にしては珍しい恰好ですね。

 この国へ訪れるまで、この国の上位貴族の系譜と名と絵姿で顔を覚えたけれど、このような方はいらっしゃいませんでしたし、さて、このご挨拶をしたいという方と私の穏便な着地点を見つけなければ。

 それにしても、この方はどこの方でしょう?向こうが名乗りもしないので、どこの家の方かも分かりませんし、どう取り扱うのかを検討する事も出来ません。困りました。どうしましょう?

 クーちゃんに聞けばいいでしょうか?うーん、そこまでの知識がない私としては、それしか手がなさそうですね。ロートも相手の方も何も言わず、ずっと黙ったままですし。

 頭の中で、クーちゃんに呼びかけました。

《クーちゃん!クーちゃん!知らない人に話しかけられたんだけど、相手が名乗らないし、黙ったままなの!どうしよう?》

『…んにゃ?ユーイ、どうしたんにゃ?だんまり無言なのかにゃ?今、視るにゃよ。待っててにゃ。』

《ロートが段々と冷え冷えとしてきてるから、お願いしますっ!!》

 内心では焦っているのを外には出さないようにして、淑女の仮面をかぶり続けています!

『んーとにゃ、この国の者ではないにゃ。またこの国とは違う、他国の留学生にゃ。一応、その相手は王族にゃよ。』

《王族なんだ!だから黙っているんだ、ね。私に直接、問いかけてこないのはどうして?》

『そうにゃね。ロートにはその辺りも伝えておくにゃ。ユーイは何も話さず、全てをロートに任せるにゃよ。いいにゃ!』

《はーい。話さない方がいいっていうクーちゃんの判断を信じます。ややこしい事情があるんだね。分かりました。》

『ロートには、あたいから話しておくにゃ。もちろん、ショウにもにゃ。』

《私が直接、関わらない方がいいんだね。》『そうにゃ!!ユーイは知らない方がいいにゃ!!』

 クーちゃんがすぐに返事をするくらいだから、私が関わらない、知らない方がいいんだろうな。

にゃ!にゃよ!!』《はい!》

 私もトラブルを好んで引き寄せているつもりも、引き寄せる気もないので、斜め下を見ながら、だんまりを決め込んだのでした。

 ロートが私の視界の端で、一瞬だけビクッとしたように見えましたが、
「王太子妃様は具合が悪いので、滞在する部屋にすぐにお戻りになる所ですので。
 ですから、ご挨拶をする余裕さえ今はありません。申し訳ありません。
 後日、挨拶は日を改めて頂ければと思います。」と言って、私を支えながら歩き、滞在する部屋まで戻りました。

 あー、焦ったー!

 私はたしかに、寝不足で顔色が良いとは言えなかったので、全くの嘘ではありませんし、まだ新米の王太子妃で、気持ちも落ち着かないし、部屋へ何事もなく戻れてよかったです。ふぅ。

 もしかして、私が暇だからって嘆いたから、トラブルが寄って来たのでしょうか?ま、まさか、だよね。あ・はは。
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