ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ガオン・ロード国編

魔馬車内での先王ご夫妻はどうしていたのでしょうか?

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 魔馬車がラーン・ビット国を出て、やっと夫であるスカー様と2人っきりになれました。

 ナーオ・ロウ国では、先王が若くしてその息子へ王様業を譲り、引退すると、名を墓に刻んだ時点で、名無しになりますのよ。

 だから、色では灰色、モノでは影を意味する名を付けて、改名するのです。

 そして、その地位を先王が望む爵位を与え、第2の人生を謳歌おうか出来るようになるのですわ。

 そしてなお、これらは王家とその側近達の家に口伝くでんでしか伝わらないのです。

 だから、王であった時の名を無くした夫は「スカー」と名乗る事と、伯爵の地位を得たのです。でも、私は、女神さまたっての願いで、今までの地位のまま、先王の妻で王の母のままの「王太后」でいますのよ。

 ただ、貿易という仕事を楽しめるようにはなったと夫が言うので、日頃は寂しくても我慢をしているのですわ。

 その、先王である夫が、馬車の中でもクー様からの話を聞いて、クー様と話していると、静かにしていないじゃじゃ馬め!と私の事を思っているのも知っている上で、その後もクー様からの話を聞いていたのですわ。

 あんなツマラナイ見世物の処刑に立ち会わなければいけない役目なんて、本心では立ち合いなんぞもしたくなかったのだし、あんな俗物、死んでも当たり前のことをしたのだとその自覚さえもなかったのよ!

 親友ファネスと女神さまとユーイに頼まれていなければ、到底は我慢ならなかった仕事なのだわ!

 ファネスもファネスよ!処刑に立ち会って、その場で倒れたからと私が心配していたら、すぐにファネス王妃様がご懐妊されましたとの連絡が来て、私は呆れたのよ!!

 人間になって、すぐに妊娠したなんて!!アマデウス王もヤルことはヤっていたってことでしょう?

 はぁー。アマデウス王は処刑で息子を亡くしてしまい、悲しんでいいのやら、倒れたファネスが何でもなくて、懐妊した知らせを受けて、喜んでいいのやら、モノすっごく複雑な顔をしていたわね。

 でも、あの抜け目ないアマデウス王は多分、処刑が決まった息子を悲しんでいる風を装って、ファネスを離さないぞと周りを牽制けんせいしていたのよね、きっと。

 王様業なんてしていれば、それこそ自分以外をぶった切ることなんてよくある話だし、アマデウス王も王様を70年以上していたのだから、悲しむなんてしないだろうし、今更よね。

 あぁ、それをダシにアマデウス王が盛り上がって、連日、親友ファネスを抱き潰す理由にしたんでしょうね。

 息子の処刑が決まった後のファネスが、聖獣だった頃の事を思い出して、淡々とその事実を受け止めていたのだから、アマデウス王を労わるつもりで抱き潰される事を受け入れていたのでしょうね、ファネスは。

 あの日から連日、腰が痛いとこっそりと嘆いていたし、陰に隠れて、腰をさすってかばって動いていたのよね。

 アマデウス王とファネスは似たもの夫婦なのよ、聖獣も3千年していれば、またか。と思うだけの出来事だったし。

 ファネスの娘も、「お母様に先を越されたわ!」って騒いでいるだけだったわ…。

 はぁ、私達のひ孫の予定はどうでしょうかと聞く前に、女神さまは、まだまだ未定でって詳しい話をしてはくださらないし、そそくさとその場から逃げられていたわ。

 あの女神さまの逃げていたご様子じゃ、予定があってもまだまだ先のようだわ…。

 私も懐妊して、ファネスと同じ年頃の子を産もうかしらと言うと、
「私は死んだことになっているのだから、先王の妻が懐妊するのはマズいし、相手が死人扱いでは、さぞかし不思議な現象に見えるだろう。」って、私の提案をあの人は、ぶった切ってしまったし。何だかとっても悔しいわ!

 女神さまも地球神さまも色々とあるみたいだし、一国民になってしまった今の立場では私がどうにも出来ないのよね。

 ただ、女神さまの近くにいた時間が聖獣として生きていて長かったからか、周りをよく観察する癖があったので、今でも役に立っていて、それで今も気付くことがあるってだけだし…。

 どこの国でも大なり小なり問題を抱えているものだから、クー様から、これから向かうガオン・ロード国の話を聞いて、あの熊男こと、先代聖獣のブラウスが残した爪痕が大きいのだと知れたわ。

 クー様から聞いたガオン・ロード国のことを親友の為に、渋々だけれど、アマデウス王にも知らせておいたし、あちらはあちらで片付けるでしょうね。

「妻よ、何を考えている?」

「先代の熊男の件ですわ。そのせいで、孫と孫娘が王太子夫妻に依存される所だったのを断って、自分達の再会するまでの話をしたそうですの。」

「その話はクー様からか。」

「そうなの。ただね、国の中でも外の情報を掴んでいた者達がうごめいていて、王城でも安全とは言えないそうなの。
 そのせいでユーイがどこにも出れずに、しおれた花の様に元気なく、ガッカリして退屈しているそうなの。」

「ああ。知っている。外務担当がしっかり悪どく国費をピンハネして稼いで貯めていた裏金と、その者達から、私が我が国へその金額を還元出来るように絞り取ろうか?」

「スカー様、そうしていただける?ショウとユーイの結婚式の費用の一部として、それらを還元出来たら嬉しいわ。」

「孫思いの優しい妻の願いを叶えましょうか。…褒美に夜の時間をたっぷりとくれるんだろう?」

「そうね。沢山いるかしら?」

「ああ、沢山な。私も嬉しい。交渉にも張り合いが出るよ。」

「ではこういうのはどうかな?」

 2人で耳元でこしょこしょと話し合い、詳細が決まりましたわ。

 待っていなさい!孫達の結婚費用(になる者)達よ!夫がキッチリと搾り取りますわ!おほほほほ!!

「顔が輝いて見えるな。生き生きしている妻は可愛いな。」

「ありがとうございますわ!」

「お淑やかに見えるように、少しだけ、妻の元気を搾り取ろう。ヤル気も出るしな。」

 そう言って夫が生き生きとしたので、ああ、魔馬車が停まるまで私を美味しく食べるのだろうと予測したので、夫の深いキスを受け止めたのでした…。

 ナーオ・ロウの王族の男は溺愛で、絶倫なのです…。ユーイもこの点では苦労するでしょうね…。

 段々と白くなる意識の中で「他所事よそごとを考える余裕がまだあるのかな?」と夫の声が聞こえたような気がしましたが…、気付いたら、夕方でしたわ。
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