ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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虎の国、小国群編

店での会話2

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 こりゃアカンわ…!お母はんは今回の件では使いモンにならないと判断した方がいいわ。

 そう思ったわいの溜め息は大きいものになった。

 チラッとルゥ兄やハイリェンとイーリェンの顔を見たら、誤魔化す様に笑った兄妹達を見て、もう一回、溜め息をついてしまっていたんよ…。

 そうこうしているうちに、この店のセールスポイントでもある、小規模転移を使って各テーブルに頼んだ料理を配膳するんやと妹達が自慢気にしていたけどな。

 テーブルに現れた料理の数々を、皆で食べ始めて、美味いとか、これが好みだとか、ワイワイと楽しく食べれたわ。

 他国でやらかしてたお母はんの過去の事はともかく、わいがここに来た目的を果たさにゃならんのや。ルゥ兄貴を脅してでも、わいは王家の内情を聞かねばならないんや。と、話している事とは違うことを頭ん中で考えながら、皆で食べれて嬉しかったわ。

 食後の茶の時に、な、わいは今回の件が知りたいんやと兄妹達に話し始めたんや。

 乗ってた魔馬車が足止めされなかったら、今頃はゆっくり出来て、休暇をもらい、極秘帰国も娯楽として楽しめた筈やのに、なぁ、とか。

 王家の都合で国内を内紛状態にしてからに!とか。

 わいの王位継承権廃棄と出奔で国内の安定を図れると言うたった陛下ちちおやとの密約があったからこそ、わいも自身の安全と国内の安定を手に入れた筈や。なのに、その国内の安定が崩れたのにはわいの怒りがあるんや!なんて、事をな。

 それにな、魔馬車で過ごすわいの平凡な日常を返して欲しいんや、と。

 わいがそう言って兄妹達の顔を見回すと、渋々ながら、王太子のルゥ兄貴が王家で起きた事を話してくれはった。

 自分達では王であるちちうえを蹴落とす事も出来ず、かと言って、甘い汁を吸えない今の立場に自分達で自業自得で追い込んだ王弟おじうえ達が、自身の派閥の貴族共と手を組み、次代を担ぎ出したそうで。

「相変わらずの馬鹿どもや。わいが国を出る前とやってる事はおんなじやな。」

 わいがそう言うと、ルゥ兄貴が溜め息をついた。

「相変わらず、なんだ。ローが自身の進退と引き換えに密約までしたのにと、親父殿もカンカンでね、今回の事で愛想が尽きたみたいで、馬鹿どもに猶予を与えるつもりもないと言うので、大ナタを振るって綺麗サッパリに膿を消すつもりなんだよ。

 その為に、膿を出すにも大ごとにしようと他国の魔馬車が通るのを知っていて、時期を合わせたんだが…。

 ロー、済まない。

 大ごとにするのに、私達王子全員が二手に分かれて動く事にしたんだ。ああ、王命で王子全員が動いているんだよ。

 馬鹿どもが国民を巻き込まない事を陛下との魔法契約で事前に交わしてあるんから、心配はない。

 王弟達は魔法契約で縛ってあるから、自分達の派閥の貴族と王城勤めの騎士達しか動かせないし、それぞれの陣営には治癒魔法師達を待機しているので、人が死ぬような事はない筈だ。

 もちろん、陛下の密偵もまぎれて潜んでいるし、我々に情報を伝えてくれている。ローの危惧するような事はないと思う。」

 妹のハイリェン、イーリェンの2人は、ルゥ兄貴の言う事に頷いているけどな、わいは安心出来ないと言ったったわ。

 そこへ丁度、個室へ入ってきた弟のリューシンが言い放った。

「俺はロー兄の言う通りだと思うぜ。あの女タラシ男が帰国したんだよな。不確定要素として動きそうな奴を警戒していないと、な。どこか思わぬ所で足元をすくわれると思うぜ。漁夫の利を狙った他国の介入もあるかもしれないし。用心をしておかないとマズいと思うぜ。」

「リューシン!ローが不安になるような話をするんじゃない!」

「ルゥ兄貴、わいが乗っていた魔馬車でアノ男を移動させたんでっせ。そないな事も王太子のルゥ兄貴なら自分で情報を掴んでいるんやろ?わいの言いたい事はルゥ兄貴かて、分かってはるやろ?な?」

「リュー!ルゥ兄がロー兄に口で勝てないのは知ってるのにぃ!…ほら!ルゥ兄が、イジケちゃったじゃないっ!」

「兄上達は変わらないねー。
 だから、口で勝てるロー兄の方が王太子に相応しいって騒ぐ貴族達がいたんだしー。」

「イーリ!そのせいで、ロー兄が国を出なくちゃならなくなったんだからっ!酷すぎたのっ!」

「イーリもハイも言い合いして騒がないんやで!今更や。騒いでも今も未来もな、わいの立場は変わらへんよ。

 ただ、長めに休暇が取れたら、極秘で帰国してさ、こうやって家族に会うだけのお気楽な身分でいるのが楽やし、な。

 わいが王子をしてた時よりも、今は肩の力が抜けててな、生き易いんや。それにな、わいよりも王子らしくそれに相応しい人を身近で見てるんで、な、今では王子を辞めて良かったって思ってはる位やで。」

「「はぁーい。」」

「俺も今の雇われ店長でなくてさ、大商会の長になって、いつかは王子を辞めるつもりなんだぜ。

 だから、王子を辞めた先輩のロー兄がいてくれるから心強いんだぜ。」

「リューは、その調子のイイところを直さないとねー。」「そー、そー。私もそう思うっ。」

「で、ローはアノ男と接触した感じはどうだった?」

「わいが国を出る前と同じで、タラシは変わってないですわ。それよりも、前よりも何かに焦っている感じがしたんですわ。」

「あー、アノ男も、見かけは若作りしているけどさ、高齢だから自分の子供、あの場所を維持するにも次世代、分かり易く言うとさ、自分の後ろ盾になりそうな嫁と世継ぎが欲しいんだろな。」

「リューの言う通りだと思う。あそこは姉妹とも男タラシなのに子が出来ないと騒いでいるんだ。

 …ここからが我が国で掴んだ極秘情報なんだが、あの姉妹には子が出来ない。その機能が身体に無いんだそうだ。」

「え?なんやて?」「うっそー!」「やべえじゃんか!」「うわーっ!」と、わいも含めて驚いたわ。

「…私も驚いたわ。では、噂は本当なのね。」とお母はんが。

「噂?どないな噂なん?」

「ええ。子を宿しているのに、元王姉が番の男性を殺して国から出たから、子供達に悪い影響が出たんだって。」

「それについては、医師と治癒魔法師の両方が「妊娠中に無理をしたのと番の死という強いショックを受けたせいで、子供に何らかの影響が出たんでしょう。」と言う見解を示している。

 事情はどうあれ、元王姉があのタラシ兄姉妹を産むまで、国を出る直前に自身の番を亡くしているのは事実だし、この小国群の空白地域に辿り着くまでに、妊婦が強引に内紛や戦争の地域を抜けて来たんだから、何かしらの影響を受けているんだろうと、私でも想像出来るんだ。」

「ええと、妊婦は火事を見ちゃいけないって聞いた事があるんやわ。たしか、日本で聞いた話だったっけなぁ。」

「アノ女タラシも、正常な精子の数が少ないと診断をされていた筈だ。我が国で母上を攫おうとした時に、極秘で別人の振りをして、検査をしていたんで、判明していたんだよ。」

「そ、そ。姉妹はうちの国でない所で一人は機能的に不妊で、もう一人は違う理由で他の人よりも極端に妊娠しにくいのだと診断されたらしいんだけど。ええと、ルゥ兄の密偵が調べて来たんだっていうんで、俺も立ち会って話を聞いたんだ。」

 妹達は、この手のデリケートな話題の時は基本、黙って聞いているだけなんや。

 何せ、お母はんはルゥ兄とわいの後にも男ばっかし、子供を産んでいるんやけど、な。妹達の本当の母親は、王妃であるお母はんの妹で、双子だった2人を産んだ時に亡くなってはる。

 色々な訳や理由があって、2人の生家は今はもう潰れてなくなってしまった貴族の家で。

 お母はんが2人を引き取ったんで、わい達の妹になったんや。ま、正確には従妹だから、王家の血も流れてるし、妹達の父親も重臣だった人の身代わりで罪を被り、代わりに償った後、さぁこれからだって時に病であっと言う間に亡くなってしまった…。

 だから、妹達は王家から自立をするんだと、育ててもらった分を返すんやと頑張ったあかしが、この店や。

 この店を開いたんは妹達が自立する為やから、同じく自立を目指しているリューも手伝っているんだろうし、な。

 それにしても、焦っているのはどんな理由からかは分からんけど、焦るような事が起きていて、タラシ兄姉妹が内紛を利用しようとして、強引にねじ込んでくる可能性があるっちゅう事でんな。

 これは、報告案件でっしゃろ。内紛の方は膿を出し切るつもりで活用するちゅう話だしなぁ。わいの方でも違うルートで調べてみる必要があるようですわ。

 リヨウはんの方のルートでも、この件について調べてもらった方がええねんな。

「わいの方でなんか分かったら、知らせるわ。兄貴やリューの方で分かった事があったら、頼んますわ。

 んー、ハイにイーリのおススメのお持ち帰り用料理を5人前、頼むわ。滞在先の魔馬車へ持って帰って、自慢するんやわ。妹達の店でうたってなぁ。代金はこれで足りるようにしてや。」

 わいが金を出すと、妹達が「「毎度アリー!!」」と言って、お持ち帰り用豚まんの詰め合わせを持たせてくれたわ。リューに立ち会ってもろて、ブレスレットん中に土産を入れたんよ。

 さぁて、ユーイお嬢はん達のいる魔馬車へ帰ろうか。

「ローは、すっかり、かの国の人になったのね。無自覚に「帰る」って言っているもの。また会えるのを楽しみにしているわ。でもね!私の事を王太后様へは一切!伝えないでね!お願いよ!」

「わーってるて。お母はんの事は一言も言わしまへん。ルゥ兄貴に、リューは情報のすり合わせを頼むわ。

 ハイにイーリは店を頑張って増やしてな。んじゃあな。」

「言わないでねー!」「ああ、すり合わせて伝える。」「ロー兄、またな!」「また買いに来てねー!」「絶対また会おうねっ!」

「ほな、なー。」

 家族に見送られて、わいが帰る魔馬車で待つ人々を思い浮かべて、ナーオ・ロウの魔馬車へ戻ったんは、夕方やった。
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