ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
189 / 207
虎の国、小国群編

店での会話1

しおりを挟む
「あ、お客様が着いたようですわ。」
「あの魔馬車だから、特別室をご予約した高位貴族の方々がお着きになったようです。」
「お得意様の希望で、ご案内はハイリェンと、イーリェンの2人にお願いするわー。私も後からご挨拶に伺うからと伝えて置いて頂戴ね。」
「リューシン店長の通りに動きますわ。」

 豪華な魔馬車の扉が開く。

「お得意の皆様、いらっしゃいませ。いつも御贔屓にして頂き、ありがとうございます。ハイリェンとイーリェンの2人がご案内致します。」
「ただ今、店長よりご紹介がありました、ハイリェンです。ご予約のルー様ですね。」「わたくしは、イーリェンと申します。ご予約された4名様をこれから、ご予約されていた特別室へご案内致します。」

 次の新たなお客様を乗せているだろう魔馬車が到着する音がした。

 先程の高位貴族のルー様御一行を案内し始めた2人をちらっと確認した所で、今、着いたばかりの違うお客様をお持たせするつもりもないので、自身の後ろに控えている従業員に目配せをした。

 次のお客様が魔馬車から降りたらすぐ後ろにいる案内係を付けて、案内をさせるからと合図を送り、リューシン店長が次のお客様へ最初にご挨拶をするのを従業員一同が待ち構えていた。

 特別室へ案内したハイリェンとイーリェンを含む6名が部屋の中へ入ると認識阻害の魔法と、盗聴防止の魔法がかけられた。

「ルゥ兄とロー兄と母上が一緒なのを見るのは、何年ぶりかしら?」「今日は予約が多くて疲れたー!」
「出て行った兄が帰国した挨拶よりも、自分らのおしゃべりが先なんか。ハイとイーリは、わいには相変わらず厳しいなぁ。」
「えー?そんな事はないよぉ。」「リューシン兄も、後で挨拶に来るってさー。」

「妹達の店で雇われ店長やと言っても、リューシンも大変やわぁ。来店の挨拶も慣れたもんやね。感心したわ。」

「2人とも、ローに言う事があるだろう?」

「はぁーい、ルゥ兄の言う通りですー。ロー兄、おかえりー。」「おかえりなさい、ロー兄。お仕事はいいの?」

「わいの仕事を知っていて言ってはるんやったら、ほんまに怒るで?

 わいが家族の話を聞かにゃ、わいの護衛対象の乗った魔馬車が目的地に行けないやろ?」

「…ロー、魔馬車の中に王太后様が乗っていらっしゃるって、本当?」

「なんや。お母はんは王太后様の知り合いなのかいな?」

「(ブルブルと震えてから、)う、うん。あの国であの方に逆らってはダメなの…。」

「はぁ?話が見えんわ。」

「そうです。私もローも、どうして母上の口数が少なくなったのか、その理由をお聞きしたいんですが。」

 青くなったお母はんが語った。

「昔、かの国へ見合いと言う名の周遊の旅に出たのだ。」と、話し始めたんや。

 そこで、お見合いが形だけの中身のないモノだと聞かされ、うるさい監視の騎士もお母はんから国元にいるよりも離れて控えているし、邪魔で口煩くちうるさい女官も着いて来なかったんで、極上な気分になったんやと。

 その開放感で調子に乗ってしまい、好き勝手に行動したったと。

 調子に乗り過ぎて、とんでもないミスを仕出かしたんで、青くなってこの事を祖国にバレたり、バラされたりしたらマズいと焦っていたら、その現場を王太后様、その頃は王妃様だった方に偶然にも見られてしまったのだそうだ。

 それを秘密にする為に、王太后様とお母はんは幾つかの交換条件を交わしたんやと言いながら、その条件の中の一つに、魔法で『国へ帰りたい。帰国したい。』と言う言葉を言えなくする事だったのだと語った。

 それでも、それ以外の条件の内容をお母はんは語らなかったんや。怖いわ!!、聞いても答えてくれへんかったし…。

 そこまで言うと、お母はんがすごい勢いでボロボロと涙を流しはった。ギョッと驚いたルゥ兄とわいと妹2人は、真剣な表情のまま、お母はんの語る次の言葉を待ったんや。

 泣きながら、お母はんが語った内容はこうやった。

「2、3日遊んだので、帰りたいと思った時には、魔法での条件を飲まなければ良かったと気付いたけど、ね、その、私がバレたら困る内容は今でも誰にも言えないけれど、金額も手間もかかる事だったのよ。

 普通なら、弁償をして、王が謝罪しなければならない程、マズイ事だったの。それをなかった事にするのは、大変な事だったと自分で自覚して気付いた時には、私はもう自国に帰った後だったわ…。

 そうそう、それでね、どうしても帰りたいと思ったんで、その当時の王様に付きまとえば、邪魔者として国へ帰されるんだと思い込んでしまったの。

 その当時は私も若かったから、短絡的に単純に考えて、思った通りに動いたのよね。

 お見合いした国の王様を追い掛け回したのよ。見せかけの見合い相手だと理解していたのに、迷惑にも朝も夜もなく面倒をかけたわ…。

 そうしたら、その当時、王太后様は妊娠初期だったんでしょうね。

 王太后様は吐き気を我慢しながら、吐いてもいいような袋を持って、私を追いかけてきたのよ。それも、吐いたモノを入れた袋をその手に持って…。

 「私の番に何をする!私が動けないと思って、色仕掛けでもするのか!」ってね。凄く怖かったわ…。背後に般若の面が見えたもの…(ブルブル)。

 はっと気付いたら、私、ゲロまみれのまま、木から宙釣りにされて、魔法を封じる魔道具まで着けられていてね、泣いて必死に謝ったわ。そうしたらそこから許してもらう条件を更につけられたの…。

 そこから1月ひとつきの間は、側妃の座を狙う、肉食系のご令嬢達を王太后様のかわりに追い払う事になったわ。

 そのすべを王が執務している日中に軍隊の様な厳しい訓練で私に叩き込んで、ね、くださったの。
 朝晩の王が動ける時間を狙って寄ってくる側妃を狙うご令嬢達をツワリで動けなくなっていた王太后様のかわりに私が毎日毎日、追い払っていたのよ。

 この人には逆らってはイケナイのだと、その時にイヤって言うほど身をもって知ったわ。だから、だから、魔馬車にかの人が乗っているのかを知りたいの!!」

 お母はんは一体何をやらかしたんや?!…わいも怖くて聞きたくないわ!

 そっと兄妹達を見ると、わいに向って、頷いている。答えてやれば?って。ルゥ兄も王太子の情報網で誰が魔馬車に乗っているんかを知ってて、わいに丸投げしたんやな!ちっ!

「乗ってはるよ。王太子妃はんの後見としてや。あの国の王妃は今、空席やから。母親代わりに同行してはるんや。」

 わいの答えを聞いたお母はんは、またブルブルと震えて、「あのお方の訓練を思い出すと、「イエス!マム!」と答えたくなるの!私が王妃になっても動けているのはその時の訓練のおかげなんだけど、怖いのよっ!!どうしよう?!」と震えて黙ったままになった。

 こりゃアカンわ。お母はん抜きで話をせな、な。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...