ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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虎の国、小国群編

放してくれ!

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 私がその一報を聞いたのは、リンデンが血を流しながら、近衛騎士に支えられて私の元へ報告に来たからだった。

【ユーリ王太子妃様が護衛のリンデンと一緒の時に襲われ、外部の者にリンデンが怪我をさせら倒れたすきに、ユーリ様が連れ去られました。】と。

「リンデンは、支えてもらっているとはいえ、歩くのも苦痛な状態までの怪我をされています。治癒魔法師の資格のある侍女と魔馬車に同乗している侍医をこちらに呼ぶように、手配済みです。」

 そう言った近衛騎士は、リンデンの血で赤くなった近衛騎士の制服を気にもせず、王太子である私に告げたのだった。

「私が、彼を診ましょう。そこのソファに横にしてくれ!」

「イッチェンは留学で医師をしていたのは知っているだろう!イッチェンの言う通りにしろ!」

 私が命令をすると、近衛騎士達がリンデンをソファに横にして、イッチェンの怪我の手当てが始まった。

 何でだ?この魔馬車内にいれば、危険はない筈だった…!聖獣のクー様も同乗しているのだ、その聖獣様の目をくぐって忍び込み、ユーイを連れ去ったというのか!!

 …それはありえないだろう、聖獣様の目を盗んで、お気に入りのユーイを攫うなんて事は、攫った方でも、ソレだけのモノが向こう側にという事実があるのだろう。

 私が考えをめぐらせているうちに、リンデンの治療をしながらリンデンと何かを話していたイッチェンが、リンデンを医務室へ運ぶように騎士達へ指示をして、リンデンが騎士達に連れて出ていかれるまで、報告を受けた時に椅子の上に座っていたままで、その場から動けずにいた。

 私の肩を誰かが叩いていった。私を鼓舞するつもりで、していったのだろう。

 立ち上がって、でも、また椅子に座りなおした。

 何人か騎士達が出入りをしていて、私の代わりにイッチェンが采配しているのを他人事のように、眺めていた。

「私がリンデンから襲撃の様子を聞き出しておいたが、襲撃の手口がキレイだったと言うんだ。不意を突いて狙ったにしては、鮮__あざ__#やかな手口だったと感じたそうだ。おい!ショウ!しっかりしろ!」

 イッチェンに話しかけられたので、何とか、聞いていると返事をしたのだが、声が引きつって、出てこなかったので、「あ、ああ…。」と言うだけしか出来なかった。

「リンデンが言うには、魔馬車に忍び込まれたにしては、気配がなかったというんだ。

 大抵は、忍び込まれれば、魔馬車内の空気がになるのだそうだが、その気配が直前まで全くなかったと。

 いきなり背後から人の気配がした直後に倒され、皇太子妃様を守れずに、連れ去られて悔しかったと、護衛失格なのだと嘆いていたよ。

 襲撃された場所には先王様が近衛と一緒に検証されているそうだ。王太后様も、「私がユーイを呼び出して茶会をしたその帰りの襲われたの。私が気を付ければよかったのに…。」と、気落ちされているそうだ。」

『しっかりしろにゃ!!あたいが襲撃を感知出来なかった相手よ!どんなのが背後にいるのか、女神さまに相談するにゃ!そっちはそっちで検証してよにゃ!

 ちょっと急ぎで、女神さまに相談に行って来るにゃ!後は任せたにゃ!』

「分かりました!」「はい!」

「聖獣様が感知出来なかった相手が背後バックについているのか。ショウ、女神さまの愛し子を欲しがる心当たりはどこでも有り過ぎるからなぁ。」

「…ユーイを攫った相手を嬲り殺すだけでは気が済まない…!!

 聖獣様と同じぐらいの背後がいるなら、女神さまにジャッジを委ねるしかないが、人相手なら、遠慮はいらないと思うが、イッチェンはどう思う?」

「ふふふっ、ショウの立場に私がなったと想像して、我が愛しき妻カーナが攫われたらと思うと、その相手を嬲り殺すだけでなく、その相手の居た国を亡くしてもいいと思う程だよぉ~。」

「おや、親戚のイッチェンとは話が合うな。私も同じ事を考えていたんだ。」

 ドタドタドタ!!ダガン!
 走ってくる足音と、執務室に使っている応接間の扉を蹴破けやぶる勢いで、扉が開いた。

「ショウ!魔力の高い者しか視えない書置きがあったぞ!」

 先王である祖父が、私の所へ何かを手渡して来た。

 その何かは、薄い薄いかろうじて色がついている紙のようなモノで、日本にあったメッセージカードの大きさだった。

「魔力を通すんだ!中身が読める!」

 祖父の言う通りに魔力を流すと、文字のようなものが浮き上がってきた。

【女神の愛し子の番へ】
【子に恵まれないと嘆く王族の人間の願いをたまたま聞き届けた我は、確実に子をはらんで産める女性として、願いを叶えれるようにと女神の愛し子を連れ去ったのだ。
 願いにあったように、子を産んだのちに、女神の愛し子を番の人間の手元へ帰そう。

 それまでは、我慢して待って欲しい。】
【一柱の中の者より】

 なんだ!なんだ!これは!私を壊す気なのか!一柱だと?!攫ったのは神の一柱だって言うのか?!

「ショウ!これは…?!すぐにでもこれを聖獣様に見せよう!なっ!」

 憎イ!憎イ!憎イ!私カラ番ヲ奪ッタ者ヲ許セナイ!!ゆーいヲ捜サナクチャ!何処ニイルンダロウカ?ゆーい、ドコ?

「ユーイを探さなくちゃ…。」

「おい!ショウ!しっかりしろ!」

「ショックのあまり、気をとばしているんだろう。」

 パァンッ!!

 顔が痛くて熱かった…。私は何で、ここにいるんだ?ユーイを捜そうとしていたんだ。

「…ユーイを捜すんだ。どいてくれ…。」

「どけないっ!!」「ここにいるんだ!!」

 身体を2人が動けないようにするから叫んだ。

「放してくれ!!」

「放すもんか!!ここで、ユー様の捜索の指揮を執れ!!」

「放せぇーー!!私に!ユーイを!捜させてくれぇー!!」

「聖獣様が戻ってくるまで、待つんだ!ショウ!耐えるんだ!」

 祖父とイッチェンに取り押えられた私は、声の続く限りに叫んだ。

 ユーイの元へ行くのだと。放せと。

 その叫びは、私の声がかすれて出なくなるまで続いたのだった…。
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