ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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虎の国、小国群編

私はどうしたかったんだろう?

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 ここでないどこかへ行きたかった。私なんて、消えてしまえばいいのだと、攫われ、監禁されていた私は、追い詰められてもいました。

 24時間体制での監視と、複数の人達の冷たく、軽蔑するかのような、私を小馬鹿にした態度や言動にさらされる中、味方は誰もいないのだと絶えず、嫌な気配がする部屋の中で、気を抜けないでいたのは辛いし、怖かったのは確かだった…。

 あのタイミングで助けが来なければ、その夜にでも、アノ自称王子のイエンスによって、私は手籠めにされる予定だったと聞いていたのだから。

 私の相手をしに、私の居る部屋へと毎日、通ってきていたイエンスは、初日に比べると、段々と、日に日に機嫌が悪くなって来ていました。

 だからかもしれない。彼女達侍女が、私に聞こえない様に固まって話し込んでいたのは。

 私の世話と監視をする侍女達が、ことあるごとに、こそこそと噂話や悪口を私の居る部屋の隅で、いつも話をしていました。何て言ったって、監禁されて外には出れない私の所なら、聞く人も何を言っていたのかを伝える人もいないのだから。

 そこで、逃げ出す隙を狙っていた私は、逃げ出す切っ掛けが欲しいのと、逃げ出すのにこの中での情報が欲しいのとで、侍女達のこそこそ話を頻繁に盗み聞きしていました。

 丁度、皆が助けに現れる前日の夕方、やけにその日一日、いつもより侍女達の視線が刺々しく、かつ、ざまぁ見ろと言わんばかりのものだったので、盗み聞きする機会を狙ってました。

 これは何かの動きがあるのでは、もしくは私に関する話が出てくるのかもしれないと思い、聞きたくないと怖くて震えていた気持ちを奮い立たせながら、侍女達の話を盗み聞きしました。

 ですが、あまりにも、ええと、その内容は、進んで聞きたい話ではありませんでした…。

「…とうとう明日の夜ね。」「やっぱり?!」
「若様は、こらえ性がないのにさ、10日以上も交尾をしないでいるなんて!とも思っていたけれど、我慢の限界だったみたいね。」
「そうなんだー!んじゃあ、あの貴族のお姫様に媚薬を使って、身体から堕とす事にしたんだー。」
「今回は、誰にも見せないつもりなんだってさ。」「えー?!」「楽しみにしてたのにー!」
「あなた達カップルは、覗き見して交尾すると、燃え上がるんでしょ?悪趣味ー!」「えー、なんでー?いけない事なのー?」「趣味わるーい!」
「じゃあ、若い騎士達が夜のオカズに出来ないって、私達の所へ欲求不満解消に押し寄せるじゃんかー。面倒だなー。」「あたしは大歓迎よー!若い男は元気だからー♪」「うわー、年増は怖ーい!」「きゃはははは!」「きゃはははは!交尾し放題かー。」

 …なんだ、これ。え?騎士が仕える人の交尾を覗き見するの?え?カップルでも覗き見して盛り上がる?え?え?えぇー?!!

 …私には理解出来ない世界だわ…。もしかして、明日の夜、私はショウ様でない男に媚薬で身体をひらかれてしまうの?!!

 明日の夜までに、逃げなくちゃ!!!どうしよう?!!と、思った…!

 焦ってはいたけれど、私の世話と監視の為に私から離れないようにしている侍女達へ、何も知らない風を装って、お茶の用意を頼むのに声をかけて、話を中断させたのでした。

 この話を聞いてから、いつもより、より一層、普通に過ごす様にして気を付けた。夜には、中々寝付けないのでと言って、睡眠導入剤を処方してもらいましたが、間違って飲まない様に気を付けました。

 私が睡眠導入剤ををして、眠くなったと言って侍女達を一人残らず、部屋から追い出しました。

 侍女達も、薬を飲んだ私が一晩ぐっすりと眠って起きないだろうと油断をして、誰も残りませんでしたよ。

 そこから、監禁されている部屋の中を探り、証拠になりそうなものを端からブレスレットの中に入れていった。こんな事もあるんじゃないかと、クーちゃんから、「一人で出来るもん」シリーズの魔道具の魔改造をした、マニキュア、つまり、ネイルを爪に塗っておいてましたから。

 一人で出来るもんシリーズの子供用化粧品は、貴族のお子様用化粧品で、高価で、でも、身体に害になる成分が一切入っていないモノで出来てるんです。その化粧品で、貴族の子供がお化粧に慣れるようにするので、そんな名前が付いています。

 そのお子様用化粧品のネイルを魔改造して、料理やお菓子を作る時に不便がない様にと、便利にしたモノをクーちゃんが私専用にアレンジしてくれた物をプレゼントしてくれました。

 ブレスレットの中から材料や必要な物を取り出すのに、立会人を呼び出してから、ブレスレットの中の物を取り出すのは不便だし、面倒でしたし。

 出し忘れや、追加を取り出す時にも立会人を呼ぶのは気が引けるし。だから、私一人でブレスレットの中に出し入れできるようにと、日頃から、魔改造されたネイルを私が爪に塗っていたのですよ。

 他にも色々と料理するのに便利な付与がされているんですけど、ね。それについての説明は追い追いで。

 もちろん、私が悪用するような人間だったら、クーちゃんも私に渡さなかっただろうし、その位の信用はされている。何て言ったって「女神さまの愛し子」だから。

 話がそれてしまったから、戻すけど、自称王子を名乗るイエンスに加担する者達によって私が攫われてからは、私に身体の関係を無理強いするような素振りをイエンスが見せなかったから、自称王子に関しては私も油断してました…。

 なにせ、日本で暮らしていた期間の方が私の人生は長かったもので、日本の様に、安全ではないと言う気持ちを忘れていました。

 監禁されて、でも、部屋の中では自由に動けるので、日本にいる頃の様に防犯面では安全だと多少でも勘違いしていたんだと思います。

 私って、馬鹿ですよ、ね。ここは日本でないのに…。

 証拠になりそうな物を入れた私は、逃げ出す隙を逃さないように眠ったのでした。

 翌朝、目覚めてからも逃げ出すチャンスを狙っていた私の前に、焦った様子のイエンスが現れて、私に魔封じの強力な手錠を重ね付けして魔法を使えなくしてから更に、イエンスの魔法で私を拘束して、私を動けない様にしたのでした。

 そうしてからすぐに、ナーオ・ロウのリヨウさん達が私の目の前に現れました。

 あの自称王子こと、イエンスが「君を取り返しに来た者達に対して、私が何もしないでいるつもりでいるのだと思うかい?何かしらの対策をしているのだと気付いてもいなかったのか。可哀そうなお姫さま。」と、私の耳元で囁いて、何かしらのわなを仕掛けた事を教えて来たのです。

 イエンスの仕掛けた罠が何なのかわからないけど、その罠に皆がハマらないように、こっちへ来ると危ないのだと私はずっと私の近くに来るなと否定をしていたは、ず。

 そこからの記憶がないので、皆に助け出され、魔馬車内の私の寝室へ運び込まれたのでしょう。

 その証拠に、私が愛用している香りがしているし、私愛用のシーツが敷いてあるベッドの上にいるのだから。

 そしてこれが一番だけど、私の目が覚めた事に気付いて、ショウ様が私の手を握って、微笑んでいるのだから。

 あれれ?私の目がボヤけて、ショウ様がブレて見える。

「おかえり、ユーイ。泣くほど私に会いたかった?」

 …会いたかった、凄く会いたかった…!「ショウ様がいなくて、苦しかった。会えなくて、辛くて消えてしまいたかっ、た…。」

 私が、震えながら、泣きながら、そう言うと、ショウ様に強く抱き締められた。

 嬉しい、また会えて良かった…。

 私の心の声が口から出ていたようで、ショウ様にも、「私もユーイを取り返せたので、安心したよ。」と言ってもらえたのだった。

 ショウ様が好き…。もう二度と会えないのだと絶望した瞬間は、凄く辛かったし悲しかった。でも、絶対、もう一度、ショウ様に会うぞ!と言う気持ちもあったのだから。

「私って、現金ですよ、ね。ショウ様に腹を立てていたのに、ショウ様からは離れないのだとも思っているんです。馬鹿みたい…。ショウ様、ごめんなさい。ずっと、無視して。ごめんなさい…。」

「…私も変な意地を張っていたのだから、おあいこだよ。これからも、私と一緒にいてくれるかい?」

「はい…!!」

「侍医を呼んで、診察してもらおう。なにせ、ユーイは何日も目覚めなかったのだから。私がユーイを心配しているのだ。」

「…はい。私って、そんなに眠っていたのですか?」

「6日間もの間、目覚めなくって、お祖母様もクーちゃんも心配していたからね。ちゃんと診察をしてもらう事。いいね…!」と言って、ショウ様が侍医を呼びに行きました。
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