ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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虎の国、小国群編

あんさん、これからどうするつもりなん?4

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 私達、ナーオ・ロウ魔馬車内のイッチェンとリヨウ達を軸として、聖獣様と女神さまのお力をお貸し頂いての共同戦線。

 そこで行った作戦に参加していても、ユーイの事が心配で、ユーイがいない寂しさと悲しさで、王太子としての私を保つのが難しかった…。

 いつもなら出来る事が出来なくなっていた自分に、腹が立った。それでもと動いていたのだが、いつも出来ていた動きが出来ず、ぎこちない動きしか出来なかった。

 それをまた、誰も責めずにいた。責める者が誰もいなかったのが、また、私を追い詰めていたのだ。

 そんな単純な事に気付けずにいたので、ユーイが助かったと報告があった時点で、目の下の黒いクマが物語るように、倒れたのだった。

 どの位の時間が経った頃だろうか、私は目を覚ました。

 救出時に気を失ったユーイと並んで、私まで、ベッドの住人となってたようだ。自分が横になっているその隣りをを見たら、ユーイが、私のユーイが並んでいたのだ。

 嬉しくなって、幻じゃないかと確かめたくって、ユーイをそおっと抱きしめた。「おかえり。」と言いながら。

 それでも、ユーイは目を覚まさなかった。心配になった私は、すぐさま侍医を呼ぶように従僕に告げたのだった。

 私が目を覚まして呼んでいる事を聞いたのだろう。それで、私を診察に来た侍医がユーイが目を覚まさないと焦る姿を生暖かい目をして見ていたのだが、何故か、その視線がいたたまれなかった。

 あれは魔馬車で後方支援をしていた侍医が、私の倒れる姿を見ていたからだろうか…。それとも、睡眠と栄養をおろそかにしていた私に苦言を呈していたからだろうか?

 侍医には、「倒れるまで王太子様が無理をすると、ユーイ様が悲しまれます。ですから…。」と30分間の説教付きで、懇々と叱られた。侍医には、その日からしばらくは、呆れられ目で見られたのは言うまでもない…。

 あぁ、私はもうユーイがいない生活が出来ない身体になってしまったのだと自覚した。得てして、番を見つけた正常な男の行動なのだと、私達2人の見舞いに来た祖父母せんおうふさいには笑われもしたのだが…。

 ユーイがこの先の将来、私を嫌って出て行っても、探し出して閉じ込めてしまうのだろうとも、ぼんやりと自覚している。

 この世界の番の男には当たり前の、この気持ちも、地球の中の日本では、こんな風な気持ちになる男をヤンデレと呼び、怖がるのだろうという事も充分に理解しているのだ。けれど、…多分、いや、私は、この先も絶対にユーイを逃がしはしないだろう。

 そんな風に考えていたのだが、私の横で目覚めないユーイ。

 侍医からは、「緊張を強いられたので、深く眠っているのです。目覚めるまで、寝かしておくのが最良です。」との診断がされているのだが、ユーイの目に私を映して欲しいのだと、ユーイに甘く呼びかけられたいのだと、もどかしかった。

 これが、日本でいう恋愛脳なのか…。イッチェンもリヨウもこれに日頃から耐えているのか、凄いな。でも、イッチェンのカーナさん自慢や子供達の自慢がうっとおしいのは、どうしようもないけど、な。


 ユーイはあれから3日経った今でも、目覚めない。

 点滴でユーイの栄養状態を補っているけれど、侍医は「無意識に魔力で自分自身を守っていたのでしょう。魔力切れも体力消耗と併せて起こしていますので、こうなるのは仕方のない事です。あと2、3日はこのまましばらくは様子見をします。」と言うだけで、心配しなくてもいいと言う。それでも、私はユーイが心配で堪らない。

 目が覚めた時に私がいない事で、寂しがるのではと、攫われた恐怖の後遺症で心細い気持ちにするのが嫌で、ユーイのいる部屋で、ナーオ・ロウから送られてくる書類を片付けている。

 目覚めたユーイの一番最初に目にするのが私であるようにと、ユーイの側から私が離れられないのだ。

 そんな私の姿を見て、からかいもせず、さりとて文句を言うのでもなく、黙って邪魔をせずに静観していてくれるイッチェンとリヨウには感謝をしている。

 私付きの側近だからと言えば、王太子に配慮するのは当たり前だと言う者がいるのだが、私は当たり前ではないと思っている。

 あの2人は、私の部下であり、友人であり、幼馴染でもあるのだ。だからだろうか、周りの言うタダの部下ではない。

 私が、目覚めないユーイにやきもきしながら業務をこなしていると、リヨウが尋ねてきた。

「なぁ、ショウ。これからどうするつもりなんだ?」と聞かれたのだった。

「…は?何が、だ?」

「ユーイ様との未来。どういう道筋を描いているんだ?俺達はどんな未来を歩んでいくのかを教えてくれよ。

 朧気おぼろげながら、ユーイ様と暮らす事で、どんな国にしたいとかがショウ自体に見えて来たんだろ?だから、ショウはこの外遊をするのだと決めたんだろうし、俺達はこの魔馬車での外遊に付いてきたんだから。」

「ああ、そうだ。私が将来、王となって治める国をどうしたいのかが何となく見えてきたから、この外遊をするのだと決めたのは確かだ。」

「そっか。外遊を終える時までに、大まかな形が決まるといいな。」

「私に探りを入れるようにって、外遊で合流してから何かを聞きたそうにしてソワソワしていたイッチェンから、聞いて来いって言われたんだろう?」

「ショウにはバレてたか。」

「幼馴染を欺けると思わないことだな。ハハハっ!」

「んじゃ、この出来上がった書類をイッチェンがチェックしたら王城へ送っておくから。じゃあな!」


 その同時刻、先王様に呼び出されたわいは、先王様と一緒に、故郷の兄上である王太子と画像と音声付きでの通信をしていたんだった。そん時に聞かれたんや。

「あんさん、これからどうするつもりなん?」と。兄上が今になって、どうしてわいにこんな事を聞いてきたのかの心当たりがあった。

 ですわ。

 何故か、白と黒の虎の聖獣様方になつかれたんですわ。理由?そんなんわいの方が知りたいやわ。何でこないに好かれたんやろか?わいにはとんと理解出来ひんけどな。

 聖獣様方から兄上に話がいったんだと思うんよ。でなきゃ、わいと連絡が取りたいなんて兄上の方から言い出す筈は、ないんやで。それも、先王様に連絡して立ち合おうてもらうなんて、な。どうしたんやろと思っていたら、そないな事を聞かれたんや。わいはそのまま、王太子妃様の、ユーイお嬢はんの、専属護衛を続けてするのかと。

 この職場は居心地もええし、仕事の上司も仕事内容も充分や。急いで辞めるのは、もったいないんやで。

 でもな、このまま一生、こないな生活をしていくのはどうなのかと言う気持ちも持ってはる。国へ帰っても、継承権のない、元王族の王子が出戻っても、良い事あらへんのも理解してるんで、悩み処でもあるんやで。

 そないな状態のわいを聖獣様の御贔屓だと言って、国へ戻すつもりなんやろと、兄上の話を聞いてたん。だからやろうか、兄上の国へ帰って来いと言う声に、素直に頷けなかったわ。

 わいを国へ戻したいと粘る兄上に、先王様は苦笑いをするだけで、通信が終わるまで、なぁんも言ってはくれまへんでした。わいの身元保証人やのに。「お疲れさん。」の一言だけで終わらしはったんでっせ。

 兄上は最後には、仕方なく、「そないにローの気持ちが動かへんのやろな、悔しいわ。仕方ないなぁ。返事は急がないよ。帰りたくなった時に連絡をしてくれればいいさ。ローには帰る場所があるって事を伝えたかったんや。そんだけや。」と、寂しそうに笑ってから、通信を終えたんや…。

 内紛状態もどうなったか聞けんうちに、通信が終わったんでな、落ち着かなかったのもあるんやけど。兄上なら、他の方法で、わいに伝えてくるんやろうなと、気にしない事にしたったわ。

 あー、でも、何か落ち着かへんわ。
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