ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

文字の大きさ
202 / 207
虎の国、小国群編

女神さまのちょっとした悩み2

しおりを挟む
 そうして、あの他神の遣いを捕まえた時の映像を私は黒百合を膝にのせて、見はじめたのだった。

 再生し始めた画像には、自称王子のイエンスと他神の遣いのセバスが2人で座って話している所から始まった。

「セバスがこの計画に協力してくれるとは、思ってもみなかったので、意外だ。」

 ニッコリと微笑むイエンス。ニヤニヤとするセバス。

「いえいえ、イエンス様が努力されるのですから、わたくしめも、この場所で匿っていただいている上、賃金を頂ける仕事も与えて頂けたのですから、イエンス様に、ご協力を惜しまない事にしたのでございます。」

「そうか。済まないな。では、今日も愛し子の所へ行って来る。」「いってらっしゃいませ。」

 イエンスが愛し子の所へ向かったようだが、セバスはゆっくりと茶を飲んでから、溜め息をついた。

「…あれしきの事では愛し子の気持ちが手に入る訳がないだろう。くっくっくっ。
 確実に手に入れるには、洗脳するか、記憶を消してから己の事を刷り込むしか手がないではないでしょうに。ほんに馬鹿が動いてくれるので、わたくしめの隠れ蓑には丁度よかったですが。」

 バリバリと音をたてながら、もくもくとクッキーを口に放り込んで食べていたセバスが、手をはたいてから立ち上がった。

「さて、もう少ししたら愛し子の救出が始まるでしょう。そんな時までここにいては、わたくしめの存在が女神にバレてしまいますね。面倒でも、馬鹿とはいえ役に立ってくれたのだから、そのアフターケアをしておくべきでしょうか。」

(ここで他神の遣いのセバスと名乗ったモノが手紙、いや、書き置きを書いている姿が映っている。その書き置きがズームアップされている映像で)

「これでいいか。そして、イエンスの魂をこれで汚染すれば、崩壊への道に繋がってゆくのだから。あのお方の思う通りにこれで進むでしょう。」

 セバスが歩いて部屋から出ようとすると、足元をとられて、転んでしまう。勢いよく転んだので、被っていたフードがはずれ、どピンク色のぬめぬめした顔があらわになった。

「ちっ!!ついてないですね!わたくしめとした事が焦りましたか?転ぶなんて、いつ振りだか………ああっ!!」

 セバスがもがいているようだが、起き上がれない様子が映っている。足元には白い塊が大量にあった。

「なんですか!これは!あ、足が抜けないっ!!どうなっているんだっ!!」

 もがけばもがくほど、起き上がれもせず、逆に床へ寝転がる姿勢へと変化していた。

「神力でも抜け出せないだと?!」

 とうとう寝ころんだ姿勢のままで、身動き出来なくなったようで、叫んでいる。

「王子が戻ってくるまでに、ここから逃げ出すつもりだったのにっ!誰が!わたくしめの邪魔をしたっ!!」

「それはねぇ~、あたしらのせいよぉ~。うちの王太子妃が大事な時期なのよぉ~!何かあったらどうしてくれようかしらぁ~!!さんしたの遣いっぱしりがなぁ!!ああんっ?!!」と白虎が凄むと、
「我らの土地から何のお咎めもなく、無事に逃げ出すつもりでおったのかぁ?見通しが甘いのぉ。大甘だ。」と黒虎も凄んだ。

 ふわふわと宙に浮いたままの白虎と黒虎がギラリと牙をのぞかせて、薄く冷たく笑っていた。

 白黒の虎によって、セバスはグルグル巻きにされ、魔封じの枷のような、神力を封じる枷を手足に付けられていった。

 黒虎がセバスの書き置きを回収し、白虎が持っていた書き置きを新しく置き直した所で、白黒の虎がセバスを浮かせて運ぶようにした。

『『我らがそちらへ転移します。』』と言った場面で、画像が途切れた。

「あの白い塊は何にゃ?あの書き置きは何にゃ?あたいはこの時には手伝わなかったにゃ。教えてにゃ?ごろごろごろ…。」

『あれは、地球産のとりもちをこの世界の神力以外を吸い尽くすと言う改造を施してあるものだ。特別製のとりもちでな、段々と抜け出せなくなる効果付きにしてあるのだ。

 書き置きはここにある。読んでみるか?』

「読むにゃ!早くー!早くー!」

 女神さまが黒百合に1枚の紙を出した。

『これは複製だがな、書き置きは他神の神力を辿る強力な罪の証拠となるので、な、本物は保存してあるのだ。黒百合には複製しか見せられないのだよ。』

「仕方ないにゃ。複製でも中味が分かるからいいにゃよ。

 …ええと、なになに?

 【わたくしめ、セバスは一足お先に戻ります。どうしてもその相手を手に入れるつもりならば、洗脳するか、記憶を消した後に依存させれば上手くいくでしょう。

 イエンス王子のお幸せをお祈りしております。】ってにゃ、にゃんだこれ?いちいち書かなくてもいい内容じゃにゃいかにゃ?にゃにがしたかったんにゃ?解らないにゃ。」

『それで、こちらが新たに置いたモノだ。』

「にゃににゃに?

【イエンス王子へ

 捕まりたくないので、逃げます。後は知りませんのでお好きにどうぞ。】だってにゃ?!」

『セバスが逃げたと知り、焦った男が動き出せるようにしたのだ。』

「だからかにゃ。女神さまの元で男を監視するつもりでいたからにゃ、罠を仕掛けたのかにゃ?」

『ああ、そうだ。だが、見張る者の気力を削っているとの報告がきていてな。どうしたらいいのかを悩んでおった。

 聖獣と同等の力のある者を取り返しに他神が来たら、それに対抗出来る者は、私しかいないだろう?』

「女神さまも難儀な仕事にゃねぇ。あたいが女神さまをよしよし(頭をなでる)するにゃ!」

 黒百合が女神さまの頭を宙に浮きながら、撫でている。

『黒百合には世話になる。ありがたい事だ。黒百合には何か考えが思いつくか?』

「地球神さまに渡しちゃえばいいにゃ!こっちでは対処出来ないんでしょにゃ。あっちなら、力ある者達が多いから大丈夫なんではないですかにゃ?」

『…そうだ、な、相談だけでもしてみよう。私一人で考えるから駄目なのかもしれない。

 黒百合のおかげで、気持ちが軽くなった。ありがとう。』

「どういたしましてにゃ。えっへんにゃ!」

『ミルクのおかわりも、お菓子の追加もあるぞ。』「わーーーいにゃ!ちょうだいにゃ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

処理中です...