ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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虎の国、小国群編

女神さまのちょっとした悩み2

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 そうして、あの他神の遣いを捕まえた時の映像を私は黒百合を膝にのせて、見はじめたのだった。

 再生し始めた画像には、自称王子のイエンスと他神の遣いのセバスが2人で座って話している所から始まった。

「セバスがこの計画に協力してくれるとは、思ってもみなかったので、意外だ。」

 ニッコリと微笑むイエンス。ニヤニヤとするセバス。

「いえいえ、イエンス様が努力されるのですから、わたくしめも、この場所で匿っていただいている上、賃金を頂ける仕事も与えて頂けたのですから、イエンス様に、ご協力を惜しまない事にしたのでございます。」

「そうか。済まないな。では、今日も愛し子の所へ行って来る。」「いってらっしゃいませ。」

 イエンスが愛し子の所へ向かったようだが、セバスはゆっくりと茶を飲んでから、溜め息をついた。

「…あれしきの事では愛し子の気持ちが手に入る訳がないだろう。くっくっくっ。
 確実に手に入れるには、洗脳するか、記憶を消してから己の事を刷り込むしか手がないではないでしょうに。ほんに馬鹿が動いてくれるので、わたくしめの隠れ蓑には丁度よかったですが。」

 バリバリと音をたてながら、もくもくとクッキーを口に放り込んで食べていたセバスが、手をはたいてから立ち上がった。

「さて、もう少ししたら愛し子の救出が始まるでしょう。そんな時までここにいては、わたくしめの存在が女神にバレてしまいますね。面倒でも、馬鹿とはいえ役に立ってくれたのだから、そのアフターケアをしておくべきでしょうか。」

(ここで他神の遣いのセバスと名乗ったモノが手紙、いや、書き置きを書いている姿が映っている。その書き置きがズームアップされている映像で)

「これでいいか。そして、イエンスの魂をこれで汚染すれば、崩壊への道に繋がってゆくのだから。あのお方の思う通りにこれで進むでしょう。」

 セバスが歩いて部屋から出ようとすると、足元をとられて、転んでしまう。勢いよく転んだので、被っていたフードがはずれ、どピンク色のぬめぬめした顔があらわになった。

「ちっ!!ついてないですね!わたくしめとした事が焦りましたか?転ぶなんて、いつ振りだか………ああっ!!」

 セバスがもがいているようだが、起き上がれない様子が映っている。足元には白い塊が大量にあった。

「なんですか!これは!あ、足が抜けないっ!!どうなっているんだっ!!」

 もがけばもがくほど、起き上がれもせず、逆に床へ寝転がる姿勢へと変化していた。

「神力でも抜け出せないだと?!」

 とうとう寝ころんだ姿勢のままで、身動き出来なくなったようで、叫んでいる。

「王子が戻ってくるまでに、ここから逃げ出すつもりだったのにっ!誰が!わたくしめの邪魔をしたっ!!」

「それはねぇ~、あたしらのせいよぉ~。うちの王太子妃が大事な時期なのよぉ~!何かあったらどうしてくれようかしらぁ~!!さんしたの遣いっぱしりがなぁ!!ああんっ?!!」と白虎が凄むと、
「我らの土地から何のお咎めもなく、無事に逃げ出すつもりでおったのかぁ?見通しが甘いのぉ。大甘だ。」と黒虎も凄んだ。

 ふわふわと宙に浮いたままの白虎と黒虎がギラリと牙をのぞかせて、薄く冷たく笑っていた。

 白黒の虎によって、セバスはグルグル巻きにされ、魔封じの枷のような、神力を封じる枷を手足に付けられていった。

 黒虎がセバスの書き置きを回収し、白虎が持っていた書き置きを新しく置き直した所で、白黒の虎がセバスを浮かせて運ぶようにした。

『『我らがそちらへ転移します。』』と言った場面で、画像が途切れた。

「あの白い塊は何にゃ?あの書き置きは何にゃ?あたいはこの時には手伝わなかったにゃ。教えてにゃ?ごろごろごろ…。」

『あれは、地球産のとりもちをこの世界の神力以外を吸い尽くすと言う改造を施してあるものだ。特別製のとりもちでな、段々と抜け出せなくなる効果付きにしてあるのだ。

 書き置きはここにある。読んでみるか?』

「読むにゃ!早くー!早くー!」

 女神さまが黒百合に1枚の紙を出した。

『これは複製だがな、書き置きは他神の神力を辿る強力な罪の証拠となるので、な、本物は保存してあるのだ。黒百合には複製しか見せられないのだよ。』

「仕方ないにゃ。複製でも中味が分かるからいいにゃよ。

 …ええと、なになに?

 【わたくしめ、セバスは一足お先に戻ります。どうしてもその相手を手に入れるつもりならば、洗脳するか、記憶を消した後に依存させれば上手くいくでしょう。

 イエンス王子のお幸せをお祈りしております。】ってにゃ、にゃんだこれ?いちいち書かなくてもいい内容じゃにゃいかにゃ?にゃにがしたかったんにゃ?解らないにゃ。」

『それで、こちらが新たに置いたモノだ。』

「にゃににゃに?

【イエンス王子へ

 捕まりたくないので、逃げます。後は知りませんのでお好きにどうぞ。】だってにゃ?!」

『セバスが逃げたと知り、焦った男が動き出せるようにしたのだ。』

「だからかにゃ。女神さまの元で男を監視するつもりでいたからにゃ、罠を仕掛けたのかにゃ?」

『ああ、そうだ。だが、見張る者の気力を削っているとの報告がきていてな。どうしたらいいのかを悩んでおった。

 聖獣と同等の力のある者を取り返しに他神が来たら、それに対抗出来る者は、私しかいないだろう?』

「女神さまも難儀な仕事にゃねぇ。あたいが女神さまをよしよし(頭をなでる)するにゃ!」

 黒百合が女神さまの頭を宙に浮きながら、撫でている。

『黒百合には世話になる。ありがたい事だ。黒百合には何か考えが思いつくか?』

「地球神さまに渡しちゃえばいいにゃ!こっちでは対処出来ないんでしょにゃ。あっちなら、力ある者達が多いから大丈夫なんではないですかにゃ?」

『…そうだ、な、相談だけでもしてみよう。私一人で考えるから駄目なのかもしれない。

 黒百合のおかげで、気持ちが軽くなった。ありがとう。』

「どういたしましてにゃ。えっへんにゃ!」

『ミルクのおかわりも、お菓子の追加もあるぞ。』「わーーーいにゃ!ちょうだいにゃ!」
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