入れたいのに入れたいのに入れたいのに「ピュルッ」と出てしまう「元ショタ勇者」の物語

人外倫理

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第二部

ポチタロウと、サラの夜:2

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 サラに謝った後で、僕は(サラにお願いして)サラのタンスを借りて手を当ててみることにした。



 サラはルーティン的にそれをしていたし、いつもそれで心を落ち着けていた。僕もその真似をしてみたかった。



 自分自身のルーティンを見つけるヒントになるかな? と思ったし、実際に少し冷静になりたかった。



 僕がタンスの側面に(サラみたいに反省した猿のポーズ的に)手を当てるには、タンスは少し小さかった。なのでタンスの上に右手を置いてみた。タンスの横には(前に見た時と同じく)ちっちゃな文字で「平常心」と書いてあった。



ー 尻尾をガチガチに固定した僕が、平常心だったか? ー



 改めて考えてみたけど、答えは否だと思った。
 


 一周回って、何かをつかんだつもりだった・・・。



ー 尻尾を平静な時の位置で固定する練習をする ー



 考えついたこのアイデアはいいものに思えた。



 でも、実際にやってみたらうまくいかなかった。



 サラの言った言葉が、僕を何だかよくわからない衝動へと掻き立てた。



 頑張りすぎない程度に頑張るってことを忘れて、全力で頑張った。尻尾をギチギチに縛り付けた。



 タンスの横に書いてあった「平常心」っていう文字を見ながら僕は、その「平常心」ってことについても、忘れてしまっていた自分自身がいたのに気づいた。



 一瞬。僕は、全てを投げ出してしまいたくなった。



 本当に、何かを覚えるたびに、何かを忘れていく自分がいて、情けなく思った。



 でもそこでなんとか踏みとどまった。「一度逃げ出してしまった記憶」が僕にそうさせた。



ー あんな情けない思いは、もうするもんか! ー



 そう強く思いながら、僕はメモを開いて「忘れることリスト」に「平常心」と書き加えた。

 

 再度タンスに手を当てようとしたら、ギチギチに固定された尻尾が突っ張って、不快感があった。



 振り返って尻尾を見てみると、いびつに曲がってハリガネでがんじがらめになっていた。もはや平静な時の尻尾の位置ではなくなっていた。



 なんだかそれを見ながら、自分自身もがんじがらめになっているような気がした。僕をそんな風に縛り上げているのは、僕自身な気がした。



■■■■■■
□□□□□□


ポチタロウと、サラの夜:2


■■■■■■
□□□□□□
 


(これはなんだかいけないぞ!?)



 サラに固定してもらってすぐ後だったので、格好悪い気がしたけれども、僕は尻尾のハリガネを取り除くことにした。



 縛り付けられた尻尾を見てからは、どうにも心が落ち着かなかった。そのうち尻尾に対して「早く救出してあげなきゃ!」って想いがあふれてきた。よじれてギチギチに固定された尻尾が、可哀想な気がして仕方がなかった。



 急いでクルクルと、ハリガネをほどくと(自分の尻尾なのにも関わらず)左手で支えつつ右手で尻尾を撫でてあげた。撫で終えた右手をタンスの上に置いてみた。



(ふーーっ・・・)



 そうするとようやく落ち着いた。少し開放感も覚えた。



 尻尾を縛り付けた時に感じていた、不安感や不快感がみるみる消えていった。



 そうしてしばらく目を閉じていると、なんだか、秋の青空と草原のイメージが沸いてきた。



 その草原で、でっかいブランコに乗って笑っているワフルの声と映像も浮かんできた。(それはとても癒やされる光景だった)



 さっきまでは「一つ覚えては一つ忘れる」などと嘆いていた僕が、一転してこんなことを思った。



(本当に僕は、知らないことだらけだな・・・。でも・・・。これだけは、完全に覚えたよ・・・)



 この時に僕が覚えたのは、次のことだった。



ー 尻尾はがんじがらめにしたらダメ、絶対! ー



 そう思ってしまうくらいに、尻尾を解放する前と後とでは、心境が大きく異なっていたのだ。僕は自作自演の「ひとり大改造ビフォア、○フター」をした気分になった。



ー もう少し自分自身にも優しくあろう ー



 そう思っていたことも思い出した。



 がんじがらめの尻尾を見て、なんだかいたたまれない気持ちになっていたし、僕は尻尾と自身を重ねていた部分があった。自分自身ももう少し、いたわってあげるべきな気がした。



(よーしよしよし、アルフレッド・・・)



 「自分に優しくあろうとしていたこと」も「忘れてしまっていた」のだけれども、さっきまでみたいに投げやりな気持ちにはならなかった。思い出したからには、自身に優しくあろうと思えたし、尻尾を解放した後だったので、気分も少し落ち着いていた。



 とりあえず僕は、尻尾をまたナデナデしておいた。(でもまた少し、なんだかムツゴ○ウさんみたいになったし、この時僕は、尻尾に「アルフレッド」と、知らない間に名前をつけていた)



 尻尾を縛り付けた。→気分が悪くなった。→尻尾を縛り付けてはいけないことがわかった。



 こんな感じでまた(小さく)一周まわった気がした。あと一周回ったら「ワン!」って叫んでやろうかと思った。(「3回まわってワンと鳴く」って言葉を思い出したのだ)



 とにかくまあ。



 こうして僕は「尻尾」というやつがとっても「繊細センシティブ」なものであることを初めて知ることとなった。

 

ーーーーーー



 尻尾を解放してみたら、何がダメだった? どう改善していこうか?



 これをまた考えてみる気になった。



 そうしてよくよく考えてみたら、僕が尻尾を握っていようが、それを見てスーが「かっこいい」と言ってくれていたのを思い出した。

 

ー スーの話をちゃんと聞けるようになる ー



 それをできるようにすることが、僕は「一番大事なこと」だと思っていた。それが今、僕の為に一生懸命頑張ってくれているであろうスーの為に、僕ができることだと考えた。



 でもそれは突き詰めてみると、どうやら「スーの為」ってわけではなかった。どちらかと言うと「自分の為」だった。



 別にスーは、そんなことを望んでなんていなかったのだ。



 尻尾を握りしめていようがどうしようが(なんだかんだでまじめな)僕は、スーの話をちゃんと聞いただろうし、それはスーにもきっとわかってもらえただろう・・・。そんな気がしてきた。



 尻尾を握らないで聞けるように・・・なんていうのは、ある意味、僕の独りよがりだった><。僕が「スーに格好悪いところを見せたくない」なんて思いがそこには含まれていた><。



ー スーの為に何かをしたい ー



 こう思ったのは、別に悪いことではなかったようには思った。本当にスーの為になることなのであれば、それを全力でするのも間違っていないような気がした。



 でも僕は「そのやり方」を間違えたようだ。「スーの為」って想いも確かにあったんだけれども、結局は自分自身の為に、それをしていただけだった。



 やり方を間違えたせいで、僕は尻尾をギチギチに縛り付けた。精神が不安定になり、サラの言葉に都度、ひっかかりを覚えてしまった><。また一周回ることになった。



 最初に一周回ったところで、僕は何かをつかんだ気になっていた。その「成果」をすぐにでも、スーに見せたかったのだ・・・。



(一周まわった、スーパーポチタロウさんは・・・ちょっとすごいぜ?)



 こんな気持ちが心の奥底に、ひっそりとひそんでいた。



 時間の流れが10分の1になっているサラの空間にいたものだから、僕はちょっとドラゴンボ○ルの「精神と時○部屋」をイメージしていた。修行をして、中から出てきた孫○空や、○悟飯的に、すごくなったところを見せたかったのだ><。



 そんな打算的な思いがあったことに気づいた後で、僕はこんなことにも気づいた。



(そもそも、スーも今、シルの空間にいるだろうから、時間の流れって、今の僕とスーで一緒だよね!?)



 尻尾を解放した後だったとはいえ、さすがにここまでを気づいて、自分で自分が恥ずかしくなってきた><。たかだか一周まわっただけで僕は、自分のことを「スーパーポチタロウ」になったと勘違いしていたようだ><。



(ねぇ、アルフレッド・・・。お前のご主人様は、相当アホみたいだ・・・)



 (尻尾に対してそう呼びかけながら)僕は知らないうちに、尻尾を撫でていた。



 そうして尻尾を撫でていると「自分に優しくあろう」としていたことを思い出した。



 尻尾を撫でた→思い出せた。



 ここで僕に一つのひらめきがあった。



 おぼろげながらの記憶ではあったけれども、体の部位を触ることで記憶を蘇らせる手法があったことを思い出した。



 ひとまず「尻尾を触れば」、「自分に優しくあろうとしてたこと」を思い出せた。他の場所に触れた時にも、そんな風に、思い出せるようにできるんじゃないかと考えた。



 体の一部を触りながら「すぐに忘れること」をインプットしておく。それを「すぐに忘れること」の分だけ繰り返す。「それらの部位を触る一連の動き」を自分の「ルーティン」にすれば、忘れることを減らせるんじゃないかと思った。



 これもとってもいいアイデアな気がしたんだけれども、ここで僕は考えた。



(いい考えだと思って、またすぐにそれに取りかかったら、前回の二の舞になるぞ、ポチタロウ? また、スーパーポチタロウだなんて、勘違いをするぞ?)



 「勘違い」から連想して僕は「サラが笑いをこらえていた」なんて、勘違いしていたことを思い出した。サラの言葉がやけに気にかかっていたことも思い出した。



 僕はサラに話しかけようと、サラの方を見てみた。ひとまず、笑いをこらえていたのでなければ、何をこらえていたのか? これを聞いてみようと思った。



 サラはベッドに腰掛けて、(前と同じように)肘をついて僕を見ていた。



 この時見たサラは、僕が考えているのを邪魔しないで、見守ってくれている感じだった。



ーーーーーー



「ありがとね、サラ。いいタンスだった。おかげで落ち着いた」



 深刻にならないようにと気をつけながら僕は、こんな風にサラに声をかけてみた。



「おぅ! なら良かった!」



 サラはこんな風にやっぱり軽い感じで、僕に応えてくれた。



 サバサバした発言と、ニシシって感じで笑うサラを見て、やっぱりイケメンだなと思った。


(サラはこんなにすごいのに・・・どうして・・・?)



 この時、僕の中にこんな想いが浮かんできた。



 ここまで来て、ようやく僕の中で、一つわかったことがあった。



 考えすぎかな? ってサラに聞いた時に、サラはそれをうやむやに肯定した。



 それが「まじめさや誠実さでもある」的なことを言って、後の言葉は、なんだかあんまり、まとまっていなくてあやふやだった。



ー わかんねぇことは、わかんねぇ! ー



 終いにサラはこの言葉で締めくくった。これを聞いた時、僕は笑ってしまいそうになっていたんだけれども、後になってから、良くわからない感情が沸いてきて少し悲しくなったのだ。



 サラは小さいのにいろんなことを知っている。僕はサラのことをすごいと思っている。



ー 何かをする前に平常心かどうか、確かめるといいんだってよ? ー



 「平常心」ってことに関しても、サラはそんなことを僕に教えてくれた。他にもいっぱい教えてくれた。事あるごとに僕を発憤させてくれた。



 そんなサラが、なんだかあやふやなままで言葉を締めくくって、考えるのをやめてしまった感じだった。僕はそんなサラを、見たくなかったのだ。そんなことに気づいた。



 でもこの想いはこの想いで、僕の独りよがりな気もした。



 これに付随する形で、僕を衝動的に突き動かした、何かの感情があったように思えた。尻尾のことで、あれこれあったとはいえ、複雑にいろいろと入り交じったその感情についてを、あえて考えないようにしていた自分がいたことに気づいた。



 「あきらめたくない」なんて思ったその感情を、自分でうまく処理できないままに、自分に説明できないままに、僕は考えることを先延ばしにしていたらしい。



ーーーーーー



(思ったことをすぐ口にしない。思ったことをすぐ口にしない)



 左肩のすぐ下のあたり。左の上腕の外側を右手で押さえながら、僕は頭の中でそう繰り返していた。


 
 サラに話しかけたところだったので、そのままサラと話しながら自分の中に渦巻いているよくわからない感情についてを、整理するつもりでいた。


 
 サラが何をこらえていたのか?



 これを聞くつもりだったんだけれども、こっちの「よくわからない感情」についてを先に処理しておくべきだと思った。



ー 僕を突き動かした何かの感情 ー



 思えば、これが元凶の一つだった。



 尻尾の動きをコントロールするというアイデアを試そうと思った当初、僕は、こんな風に考えていた。



ー やれるだけやってみよう。できないなら、あとはスーを信じよう ー



 そこにそんなに深刻な気持ちはなかった。



 でもなんだかよくわからない、その何かの感情に突き動かされて僕は、尻尾をギチギチに固定するところまで行き着いてしまった。サラに非難めいたことを言ってしまった。



 今更ながらなんだけれども、そのよくわからないモヤモヤした感情を、先に処理しておくべきだったのだ。



 サラと話すに当たって、僕はさっそく体の部位を触って、記憶を定着させる方法を試みていた。



 左の上腕を右手で押さえながら、「思ったことをすぐ口にしない」って言葉を頭の中で繰り返した。その記憶を左の上腕に定着させようとした。



ー 思ったことをすぐ口に出しがち ー



 これも僕がしてしまいがちなことで、会話をしていく上で、気をつけるべきことだと思った。サラを責めるような言い方になったりせずに、サラにいろいろと聞いてみたかった。



 頭の中でその言葉を繰り返しながら、僕はサラにかける言葉を探していた。



「・・・痛いのか?」



 でも僕が言葉を発するよりも先に、サラがそう聞いてきた。意味がよくわからなくて首を傾げた僕に、サラが僕の左腕を指差しながらこう言った。



「なんか押さえてるからさ? 痛いのかと思って・・・」



 自然な感じで、腕を押さえていたつもりだったんだけれども、僕が普段そんなことをしながら話していたことはなくて・・・。やっぱりサラには、違和感として映ったらしい。



(昨日の登板で、200球投げたからね・・・。肩がパンパンなんだよ)



 なんとなく、こんな返答が浮かんできた。



 ユーモア的な何かが戻ってきた感じではあったけれども、感情を処理することから逃げているような気もした。(そもそものところ、僕はサウスポーでも投手でもないのだ)



「僕は思ったことをすぐに口にしがちだから・・・。こうやって、体を触りながら、それをしないように、できないかな? って思ったんだよ」



 結局のところ、僕はサラに正直にそう告げた。



「ポチ・・・明日太はそうやって、すぐにいろんなこと考えつくんだな・・・。やっぱりすげーな」



 サラは呼び名を僕の本名に言い換えて、やっぱりなんだか褒めてくれた。「これは言ってもいいよね?」そんなことを考えながら、僕はサラにこう伝えた。



「・・・サラは、僕をそんな風に褒めてくれるけどさ? 僕もサラのことを、すごいって思ってるんだよ?」
「はぅ!!! ・・・い、いきなりどうした、ポチ公!?」



 赤面して、驚いた顔になったサラの僕への呼び方は、ポチ公に戻っていた。でも僕にとっては、むしろそっちの方がありがたかった。僕は言葉を選びながらも、話し続けた。



「サラは肝心な時に、僕をいつもやる気にさせてくれたし、なんだか言葉も頼りになる」



 そんなサラが明確な答えを僕に教えてくれなかった。それで僕は不安になった。でもそれはサラを頼りすぎていただけなのかもしれない。



 赤くなったサラは「はぅぅぅぅ・・・」などど、小さな声で言っていた。



「僕もそんな風になりたいって思うんだけれども、向いてないような気はしてて・・・。でも、それでも。なんだかあきらめたくないって、思ったんだよ・・・」



ー わかんねぇことは、わかんねぇ! ー



 たしかにそうなんだろうけれども、何かが違う気がしたのだ。それであきらめたくないって思ったのだ。



(「知らない」ってことを「知っておく」のは大事なんだろうけど・・・。「わからない」って、この言葉自体はなんか、「僕が」安易に使っちゃいけない気がしたんだ・・・)



 話しているうちに、こんな言葉が頭の中に浮かんできた。頭の中が少しずつ整理でき始めていた。(でも、こっちについてはサラには言わないでおいた)



「んー? あきらめたくないなら、あきらめなきゃいいだけだろ? 旅の行き先さえちゃんと決めておけば、いつかはそこに辿りつくもんだろ? 歩きと車じゃ、速度は違うけど、どっちにしろ、ちゃんとたどり着く。焦らずに、自分のペースでやればいいんじゃね? 旅を楽しめばいい」



 サラはしれっと、なんだかすごいことを言った。前回のあやふや発言とのギャップがすさまじかった。



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