虐められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手に入れたのでとりあえず復讐することにした

野良子猫

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眷属たちの宴 2

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「二人はどういう関係なんですか?」

 クエストを明日に控えた優希たちは親睦を兼ねて食事をしていた。
 基本的な紹介をしたあと、古家をリーダーとしたパーティ全員が思っていた疑問を西願寺が代表して聞いた。その質問に、メアリーは予想以上の反応を示した。

「ああ、私たちは姉弟でな、私が“姉”だ」

 “姉”という部分を強調してメアリーは満足そうな笑みを浮かべた。  
 優希はその辺は特にどうでもいいのだが……

(実年齢は知らんが、こいつなら俺の祖先って言っても通用する年なんじゃ……)

 そんなことを考えていると、まるで心の中を読んだかのようにメアリーが反応し、他には視えないように机の下で優希の足先をかかとで踏む。
 優希は全然反応しない。痛みは感じないからだ。

「ここに来て痛覚を消したことを後悔するとは……」

「ん? メアリーさんなんか言った?」

「いやなんでもない、こっちの話だ。あと、メアリーでいい」

 悔しそうに親指の爪を噛んだメアリーは、西願寺の声かけにとっさに平静さを保つ。
 メアリーが呼び捨てを許可すると西願寺は笑顔になり、「わかった。メアリー」と言って、木製ジョッキを持ちメアリーの木製ジョッキに軽く当てた。

「それより、君たちの職業はなんなんだ? まだ聞いてなかったんだけど」

 最上が肩に乗せているドラゴン、テイミーに餌を与えながら聞く。
 優希は自らのプレートを見せる。まぁ、裏ルートで手に入れ、名前だけ変えた偽プレートだが。
 優希の職業にメンバーは驚くが、それはあまり問題ではない。

(こいつはどうしよう……)

 優希は横目でメアリーを見る。メアリーはプレートなど持ってないのだ。
 聖域から降りるときの力から、職業は魔導士だと思われるが、元ではあるが女神の彼女に職業なんてものが存在するかも定かではない。

「こいつ……姉さんはプレートを持ってないんだ。けど、実力はあるから心配しなくていいよ」

 と、なんとか話してみるが、あまりいい反応はしない。プレート持ちではないということは眷属ではないということ。そんな人が魔物と戦えるはずがないと思っているのだ。

「安心しろ……私はジークより強い」

 状況に呆れたのか、メアリーが自ら言う。戸惑いながらも古家たちは納得してくれたようで、何とか最初の壁は乗り切った。



 ********************



 ――翌日

 優希たちは近くの平地で魔物退治をしていた。優希とメアリーの実力の把握だ。
 相手はイノシシ型モンスター“メタルボア”。鋼の体を持ち、角は武器の材料にはかなり良いらしい。
 突進力と硬さが強みのメタルボアだが、優希たちの敵ではない。
 優希がメタルボアの突進をギリギリでかわして、拳を叩きこむと、メタルボアの側面に優希の拳の後がくっきりと残って吹き飛び、メアリーが風を飛ばすと、メタルボアは縦に真っ二つだ。

「もっと、きれいに倒せないのか? なかなかグロいぞ」

 優希は中身が丸見えのメタルボアの死骸を見てメアリーに言う。メアリーはすました顔で他のメタルボアの元に行き、攻撃した。しかし、先ほどとは違い、メタルボアを風で浮かし、他のメタルボアに投げつけていた。そして、自慢げにこちらを見ると、

「こんなこともできる。どうだ?」

「はいはい……」

 優希たちの力に、古家たちは口が開いたまま固まっている。

「えっと……大丈夫か?」

 優希が彼女らに声をかけると、古家は動揺しながら答えた。

「ま、まぁ確かに実力はあるみたいですね。柑奈ほどではないけど……」

「いや実際、私たちより強いんじゃ……」

 強気でいる古家と現実を認める相須。そして、西願寺が駆け足で近づくと、優希の手を握り、

「ジークさんってとっても強いんですね!」

 目を輝かせながら言う西願寺に思わず優希は目を逸らす。実力は認められたようだ。

「これなら、ダンジョンに入っても大丈夫だな」

「むしろ、心強いぜ」

 抜いていた剣を収めた釘町と大きな弓を背負った坊垣内も、優希の背中を笑いながら叩き、実力を認めた。
 そして、ある程度騒いだ後、古家が手をパンと合わせて切り出す。

「じゃあそろそろ行きましょう。ダンジョンまでは時間が掛かるし、狩場を取られたら元も子もないわ」

 優希たちは速やかに準備し、ダンジョンに向かった。



 ********************



 ――ダンジョン前

 そこには何もなかった。あたりは完全に平地だ。ただ一つ、そんな平地に突き出るように扉があった。

「これが、ダンジョンの入り口……」

 優希が物珍しそうに見ていると、西願寺が隣から話しかける。

「ジークさんはダンジョンは初めて?」

「ああ」

「ダンジョンはね、モンスターが多く生息している場所で、この入り口からかなり深くまで道が続いているの。そこで採れるものはかなり良い値段だし、素材としてもいいものが取れるんだよ」

 西願寺の説明に付け加えるように古家が後ろから話す。

「柑奈たちは27階層まで行ってるわ。そこまでなら余裕ね。今日はさらに深くまで行くわよ!」

 そう言って、小柄な体を多く動かしてダンジョンに入って行った。そして、ついていくように釘町、相須、坊垣内、最上、菊谷も入って行き、西願寺は優希とメアリーの手を引きながら入って行った。

 中の構造は、幅7メートル、高さ5メートルと割と広め作られている。石レンガを積み上げてできたその廊下には少し苔があり、中は真っ暗だが、古家の力によって明るい。
 実際、25階層までは順調に行った。フォーメーションとしては、剣士の釘町と槍兵の菊谷、そして優希は前衛でモンスターと対峙し、獣使の最上が間でモンスターの牽制、後ろから弓兵の坊垣内と相須が矢を放ち、その後ろから魔導士の西願寺と古家、メアリーがサポートするといった形だ。怪しまれないよう、優希とメアリーは力を制限しながら戦っているが、それでも問題ないほどこのパーティは強かった。
 一番練度が低い菊谷でも57、古家に至っては78まで上がっている。

「はぁあ! ライトニングセイバー!!」

 そう叫びながら、釘町は剣を縦に振る。すると、光の波動のようなものが前方のモンスターたちを吹き飛ばした。

(これがスキルか……)

 スキル――職業技と言われるそれは、眷属の必殺技みたいなものだ。どの職業でも使えるものと、職業に寄っって違うスキルがある。スキルは技をイメージし、行動すると発動できるが、発動した後は少し時間を置かないと同じスキルが使えない。まぁ、すぐに使えるものもある。例えば、現在ダンジョンを照らしているのは古家の魔導士スキル“火の灯ヒートランプ”だ。基本的には同じスキルは一瞬に二回も使えないのだ。そして、練度が500に達するとその人特有のスキルが手に入る。オリジナルスキルと言われるそれは、持っていれば眷属の中でも高い知名度と人気が出るだろう。
 ちなみに、優希が使えるスキルは鑑定のみだ。練度が上がれば、モンスターの強さも計ることができるが、優希はあまり練度は上げないつもりだ。練度は職業の実力なので、鑑定スキルを使わなければ、練度は上がらない。つまり、プレートで実力が知られることはないのだ。


 
 ********************



「はぁ~今回の収穫は上々ね」

 体を伸ばしながら、古家は前を歩く。今回は29階層まで行ってダンジョンを出た。
 街に戻った優希たちは飲み屋にて、慰労会もとい反省会を開いていた。

「ぷは~今日はお疲れ! みんないい動きだったよ」

 ビールのようにミルクを飲む古家は、上唇の上を白く染めながらみんなに言う。傍から見れば彼女がパーティリーダーとはだれも思わないだろう。

「にしてもジーク、鑑定士がそんなに強いってどういうことだ」

 優希の肩に手を乗せながら、坊垣内は笑って優希のジョッキにポップウォーター――優希たちの世界で言う炭酸ジュースを注ぐ。
そこからはお祭り騒ぎだ。しきし、優希は心の底からは楽しめなかった。



 ********************



「ちょっと……疲れた」

「何時間も偽りの性格を演じていればそうだろうな」

 宿のベッドに倒れこむ勇気を見て、メアリーが薄ら笑いで言う。
 明日はダンジョンの30階層まで目指すらしく、この日は早めに寝ることにした。
 メアリーは睡眠を必要としないので、この時間は本を読んだり散歩したりしているらしい。
 体を回転させ仰向けになり天井を眺めていると、優希の意識は心地良い感覚とおぞましい記憶とともに薄れていった。
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