虐められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手に入れたのでとりあえず復讐することにした

野良子猫

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眷属たちの宴 1

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 始まりの町で、出立の準備を整えた優希たちは、宿を出ようとしていた。

「もう一度言うが、お前の力は最強であっても、万能ではないからな」

「わかってる。それは何回も聞いたけど、その理由は話してはくれないんだな」

「それは、これから知っていくだろう。それに、お前の力の弱点は戦闘中に現れることは少ないだろうからな」

 そういう条件なのか、はたまたこいつの性格なのか、パンドラことメアリーは、一向に話さず、ひたすら微笑で対応する。
 そんなメアリーに優希はそれ以上聞かなかった。正直面倒くさくなった。

 優希が五つのものを代償にして手に入れた力は、情報改変。自分もしくは他者の情報を書き換えることができる力。優希が外見を変えたのもこの力によるものだ。もちろん、その力に比例した弱点は存在するのだが、優希はまだ知らない。

「さて、そろそろ行くか」

「で、まずはどこに向かう?」

 コンパクトにまとめた荷物を肩にかけて立ち上がる優希に、メアリーは質問する。
 優希は部屋の壁に貼ってある大陸図を指さして、

「まずは大陸の中心……シルヴェール帝国」



 ********************



 「さすが……賑わってるな」

 エンスベルが転送したこの大陸は、総面積約40万平方キロメートルのひし形の形をしている。
 その大陸の中心に位置し、大陸全土を支配しているのがこのシルヴエール帝国だ。
 大陸の中は、この帝国を筆頭に7つの大都、そして、多くの小村で構成されている。
 つまり、帝国には大陸中の文化や物品が集中している。それゆえに人は自然と集まり、毎日がお祭りのようになっている。

「人が多いな。人間というのはいつの前にこんなに増えたんだ?」

「お前……今何歳なの?」

「女性に年齢を聞くとは、偉くデリカシーがないんだな」

(めんどくせぇ……)

 メアリーは通りがかる店に目を奪われている。彼女にはすべてが珍しいのかもしれない。
 その中でも、特に興味を引かれているものがあった。

「かわいい……」

「……意外だな」

 後ろから優希が声をかけると、メアリーは集中していた意識が分散し、顔を赤く染め、慌てながら答える。
 メアリーが見ていたのは、キーホルダーサイズの熊のぬいぐるみだった。

「べ、別に、ちょっと興味があっただけで、こ、こういうのが好みというわけでは……」

「はぁ~……すいません。これください」

 優希は店主に金を渡し、ぬいぐるみを受け取ってメアリーに差し出す。メアリーは驚きながら、それを受け取ると、少しうれしそうな笑みを浮かべた。

 この世界の通貨は、銅貨、銀貨、金貨の三種類で回っている。銅貨100枚で銀貨一枚。銀貨100枚で金貨に変わる。リンゴ一個は銅貨一枚の価値だ。


「とりあえず、金を稼がないとな」

 優希は金袋からコインを掌に出して、ため息をつきながら呟いた。
 優希の所持金は、銀貨一枚と銅貨三枚。円換算すると1万300円だ。今日は乗り切れても、明日以降は厳しい。


「で、ここに来たわけだけど……」

 優希はその立派な建物を眺める。
 歴史を感じさせる壁や柱に、見上げるほど大きな扉。その中に入って行く者たちは、武器や荷物を持ち、顔や体に傷がある者、巨漢や小男、中には明らかに優希より年が下な女の子も入って行く。

「あんなのも魔物と戦ったりするのか……不憫なものだな」

「お前にも人を心配する感性があったんだな」

「こう見えても、私は優しさと愛情で構成されている」

 自慢げに語るので、とりあえずそういうことにしとこうと、優希はそれ以上反応せず中に入って行った。


 ここは、ギルドと言われる建物だ。帝国の中に限らず、大陸に多数存在する。帝国の中にも大小合わせて10はある。
 その中でもここのギルドは大きい方だ。

 中に入った優希は、あたりを確認する。始まりの町と違って優希を注目するものは少ない。
 中は居酒屋のように賑わっている。受け付けには行列ができており、紙が張り付けられているボードに人が集まっている。

 基本ギルドには眷属が集まる。神に忠誠を誓うことで、一般人と違った身体能力と職業を与えられる。
 しかし、眷属になるのは意外と簡単で、力を悪用している者もいるのだが。

 優希はフードを深くかぶり、リクエストボードと言われるものを見る。
 もの探しといった簡単なものから、魔物討伐といった危険なものと様々だ。
 しかし、今の優希にはそれほど大きなクエストは出来ない。優希のプレートは銀だからだ。一気に大金を稼げるようなクエストをするにはギルドに入会し、多くのクエストをこなしながら昇格試験を受けてランクを挙げなければならない。それはどこのギルドでも同じだ。中にはギルドメンバーしか仕事ができないギルドもある。商業ギルドがまさにそうだ。

「俺が出来るやつで、金額が良いのは……」

 見た感じ、良くても銀貨40枚が限界だ。

「仕方がないか」

 優希はそのクエスト案内書を取ろうとすると、視界の端、フードから少しだけはみ出すように見覚えのある人物が映り、手を止めてそちらを向く。そして、一気に鼓動が強まった。

「西……願寺」

 そこにはひらひらとした服装に杖を持った西願寺さいがんじ 皐月さつきが居た。
 優希が硬直して動揺している姿に、メアリーは優希の視線の先を確認して現状を大体察した。

「見惚れた……わけではなさそうだな。あいつがお前の言う“殺したい奴ら”の一人か?」

「……あぁ」

 優希はボードに二ばされた手を下げ、西願寺の方に歩き出し、メアリーもそれについていく。

「ちょっといいかな?」

 優希は他人行儀で話す。声色も少し変え爽やかな感じにした。
 優希の声に反応して、西願寺は短い黒髪を揺らしながら振りき、自分に指を指しながら答えた。

「私……ですか?」

「うん。あ、急に声をかけたら怪しいよね。俺はジーク。よろしく」

 優希が手を差し出し、握手を要求すると、西願寺も動揺しながら握手に答え、

「あ、えっと、私は西願寺 皐月です」

「名前からして、君は召喚されたのかな?」

「あ、はい。そうです」

 あくまでも他人行儀を貫く。この世界の住人であるかのように。

「で……ご用件は?」

「実は、俺たち、さっきここに来たばかりで、金が全然ないんだ。で、リクエストボードを見てたんだけど、どうにもいい仕事がなくてね。良かったら君たちの仕事に同行させてほしいなぁーって……」

「俺たち?」

 西願寺が頭の上に疑問符を浮かべると、優希の後ろかメアリーが顔を出した。

「あ、こいつはメアリー。こいつも同行させてほしいんだけど……」

「それは私の一存では決められませんが……ちょっと聞いてきます」

 そう言って、西願寺は机の方に向かっていった。そこには見知った顔が複数ある。

「あいつら全員そうか?」

「いや……微妙だな」

 耳打ちするように話していると、西願寺が戻ってきた。

「メンバーに話したら、良いってことですので……」

 西願寺は、メンバーの元に案内する。

「あなたが、うちのパーティに同行したいっていうジークさんとメアリーさん?」

 そう言って切り出すのは、古家こいえ 柑奈かんな。小柄な体に、可愛らしい声で、一部の生徒に人気があった。常に自信満々なところもあり、子ども扱いされると不機嫌になる。夜九時になると眠くなるらしい。

「凄そうっていうからもっと、ごついのかと思ったら、俺たちと年は変わんないんじゃね?」

 そう言って、優希に近づくのは、剣を背中に背負った釘町くぎまち 朝日あさひ。基本的に何でもできる器用な男子。身長の伸びに悩んでいる。

「わ!? 後ろの子、綺麗~」

 メアリーに顔近づけるのは、折りたたまれた弓とまとめられた矢を腰にまとった、相須あいす 恵実えみ。古家とは中学からの親友で、よく古家の頭を撫でてからかっている。小悪魔的な性格だ。

「これから行くクエストも人手が足りないし、ちょうどよかったんじゃね」

 身長の七割はあるんじゃないかと思えるくらい大きな弓を背負っているのは、坊垣内ほうがうち 春樹はるき。学校では弓道部に所属しており、腕前はなかなかだ。鍛えられた腕はクラス一で腕相撲じゃ負けなしだ。

「強いなら結構だ。よろしく」

 肩に小さなドラゴンを乗せ握手を求めるのは、最上もがみ 健けん。動物好きで、犬猫合わせて5匹飼っていた。動物は大体好きだが、虫は苦手らしい。ゴキブリが出たときは発狂しながら逃げるらしい。

「皐月ーリクエストボードに行くだけで男を捕まえるとはさすがだね」

 西願寺の肩を、ツンツンしながらからかっているのは菊谷きくたに 燈あかり。西願寺の親友で、自称学園一の料理人。学校では調理部に入っており、その腕は確かにいい。父親が一流のシェフだ。

 このメンバーを見て、優希は思った。クラスでのグループはこの世界でも健在なのだと。
 この7人はクラスでもよく一緒にいる。優希はあまり知らないが。

「そういえば、なんで柑奈たちなの? 他にも眷属はいっぱいいるけど……」

 古家が優希に尋ねると、優希はそれぞれ顔を見てから答えた。

「一つはやっぱり年かな……見た感じ近そうだし。それに……」

 優希は古家の首にしているプレートを指さす。

「金のプレートがメンバーにいれば、それなりのクエストが受けられると思ってね」

 優希の言葉に、古家は自らの胸に手を当て、高らかに笑いながら、

「気づかれてしまった見たいね! そう、柑奈はあの難しい昇格試験をクリアしたのよ!」

 身長を大きく見せるため、椅子の上に立ち上がった古家は自らのプレートをこれ見逃しに見せつけた。
 古家たちはギルドに入り、その中でも古家は昇格試験に合格したのだ。銀から金のプレートになれば受けられる依頼の幅は大きく広がる。金プレートの眷属が一人いれば、本来無理でも受けられるクエストが出てくる。

「ジークさんは……どこのギルドにも入ってないんですね」

 優希のプレートに顔を近づけたため自然と上目使いにこちらを見てくる西願寺に優希は思わず後ずさりしながら答えた。

「ちょっと人付き合いの方がね……」

「ゆう……ジークは人付き合いが“絶望的”に下手だからな」

 薄ら笑いを浮かべながらメアリーが絶望的を強調して言う。そんなメアリーに優希は横目で睨むが、メアリーはご自慢の不敵な笑みでかわす。

「まぁなんでも構わないわ。これからよろしくお願い、ジーク、メアリー」

 椅子の上に立ったまま、古家はにっこりと笑って、優希たちを受け入れた。
 彼女らは、この時、ジークが優希と気付いていれば、後々の危機は避けられたのではないか? と後悔することになる。 
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