虐められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手に入れたのでとりあえず復讐することにした

野良子猫

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眷属たちの宴 4

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(オリジナルスキル……思った以上の威力だな)

 優希は身をもって、オリジナルスキルを体感した。
 上から加わる重圧は、優希を大地に跪かせ、身動きを封じる。

「さ~て、そろそろ効果が切れるんでな、終わらせてもらう」

 ガドルフが大剣を上に掲げ、振り下ろそうとしていたその時、ガドルフは何かに気付いたように後ろの下がる。ガドルフがいたところには探検が突き刺さっていた。

「ほぅ、これは便利なものだな」

 エミリーは手に持っている短剣を眺めながら呟く。どうやら、メアリーは倒れているセンから、神の落とし物ディバインドロップを奪って使ったらしい。

「ジーク、力の過信はほどほどにな」

「言われなくてもわかってる。オリジナルスキルを見てみたかっただけだ」

 ヘヴィワールドの効果が切れ、優希を襲っていた重圧が消え去り、優希はついていた膝を大地から離す。
 優希が立ち上がるのを見て、ガドルフは辛そうな顔をする。どうやらこのオリジナルスキルは、リキャストタイム――次にヘヴィワールドを使えるまでの時間がかなり長いようだ。

「さて、どうする?」

 優希が勝ち誇った笑みを浮かべると、ガドルフは怒りで冷静さを失い、

「くっそたれぇえええ!!」

 ガドルフが考えなしに体験を振り回して突っ込むと、優希は西願寺の認識を超えるほどのスピードでガドルフの目の前に行き、頭部を掴む。

「お前の力……俺がもらう」

 ――機能追加インストール

 優希の威圧に、ガドルフは上っていた血を引かせ、冷静さを取り戻し、優希から距離を取る。
 ただし、それは遅かった。
 優希はメアリーが操り、地面に突き刺したもう一本の短剣を手に取る。そして、短剣を地面にたたきつけるように振り、

「ヘヴィワールド……」

 優希が呟くと、ガドルフは困惑とともに天に押しつぶされ、大地に引き寄せられる。
 西願寺は一体何が起こっているのか分からなかった。それもそのはず、その人固有のオリジナルスキルを優希が使っているのだから。
 この場で理解しているのは、優希とメアリーだけだろう。

 優希は、ガドルフの職業を追加したのだ。練度、スキルだけでなく、オリジナルスキルまでも自分のものにした。

「ここで、お前に選択肢をやろう」

 優希は地面にへばりついているガドルフの顔を無理矢理上げ、人間がしているとは思えないような、いかれた目を向ける。

「命を取る? 力を取る?」

 優希の問いに、ガドルフはすぐには答えられなかった。目には涙を浮かべ、顔は真っ青になり、蛇に睨まれた蛙のようになっている。
 しかし、優希の気もそれほど長くない。優希が短剣をガドルフに突きつけると、ガドルフは震えた声で言う。

「い、いのち……だけは……」

「わかった……」

 優希は、不敵な笑みを浮かべながら、再びガドルフの頭部に手を置く。

 ――機能削除アンインストール……

 優希は、興味が無くなったようにガドルフから離れると、ヘヴィワールドの効果が切れ、ガドルフは再び大剣を振るって叫ぶ。

「この! ヘヴィワールド!!」

 …………

「……な、なんでだ!? ヘヴィワールド! ヘヴィワールドォォオオ!!!!」

 ガドルフは何度叫んでも、ヘヴィワールドは発動しない。今後も発動することはないだろう。優希がガドルフから職業そのものを消したのだから。今のガドルフは眷属ですらない。

 ガドルフは状況を理解できないまま、地面に膝をついた。困惑と絶望に満ちたその表情は、優希の心に心地良いものを感じさせた。

 ――あの表情……たまらないな。あいつらも、こいつと同じように……

「じ、ジーク……さん?」

 優希が戻ると、西願寺は心配そうにこちらを見つめる。優希は心から湧き上がる笑みを殺す。

「あ~疲れた~」

「いや、なんでジークさんが、あの人のオリジナルスキルを……」

「そんなことより……」

 優希は倒れている古家たちを見つめる。西願寺は優希の言葉に反応するように、古家たちのもとに向かった。



 ********************



 帰還した優希たちは、古家たちを診療所に運んだ。西願寺の魔導士練度では完全回復は無理なほど傷ついていたが、致命傷はなく、しばらく安静にしていれば眷属の回復力ですぐに治るようだ。
 それでも心配なのか、西願寺は古家たちのそばに残り、優希とメアリーは宿に戻った。



「良かったのか?」

 宿への帰り道、メアリーは優希に聞く。優希の復讐対象である、古家たちを殺さないどころか、診療所に運んだのだから、メアリーが気になるのも仕方がない。

「俺には俺の復讐の仕方がある。それに……」

 優希は、押し殺していた笑みを発散させるように笑いながらメアリーを見て、

「利用できる奴らは、利用しとかないとな」

 優希の表情と発言に、メアリーは満足そうな笑みで返す。

「お前は、悪い奴だな」

「そんな奴に力を与えたのはお前だ」

「そうだな」

 この時、優希が何を考えていたのか。それは、メアリーにもわからなかった。



 ********************



「おいこら!」

 鳴り響く怒号と、今にも壊れそうなほどドアを強く叩く音に起こされて、優希はイラつきを覚えながらドアを開ける。そこにはおそらく眷属であろう男が一人立っていた。

「……なに?」

「あんたが、ガドルフの兄貴をやったって奴か?」

 その男の首にしてある銀プレートを見ると、そこの所属の欄にはこう書かれていた。

 覇王の道ロード・オブ・キングと―― 

 覇王の道ロード・オブ・キングは、帝国でもトップクラスの戦闘系ギルドだ。黒プレートが5人もおり、そのうち1人がガドルフだ。このギルドは、周辺のダンジョンもかなり深くまで攻略している。
 そんなギルドのメンバーが来る理由は、優希には1つしか思いつかなかった。

「仲間をやられた仕返しか?」

「もしそうなら、銀プレートの俺が来たりしねぇよ。まぁ、ついてこいや」

 仲間がやられたっていうのに、恨みのひとつも感じなかった。
 歩いていく男の後姿を見送ると、優希はゆっくりとドアを閉めた。



 ********************



 優希とメアリーは、西願寺の連絡の元、行きたくもない見舞いに行くことになった。
 古家たちの傷はほとんど完治している。やられてから5日しか経ってないのに、この回復力は眷属の力のだろう。
 優希たちは、西願寺に怪しまれないよう、まっすぐに診療所に向かおうとしていた。しかし、そう簡単に向かわせてくれない者がいた。

「見つけたぞぉ!」

 背後からの声に、優希とメアリーは振り返る。そこには、朝方優希たちの元に来た、覇王の道ロード・オブ・キングの男がいた。

「またお前か。で、なに?」

「なに? っじゃねぇよ! なんで来ないんだよ!?」

「いや、面倒くさいし」

「来てくれないと俺が困るんだよ。なぁ、頼むからついてきてくれよぉ」

 男は目に涙を浮かべながら、優希にしがみつく。最初の威勢などはみじんも感じない。周りを確認すると、若い青年にいかつい男がしがみついているという光景に、周りの人も注目しだしていた。あまり目立つわけにはいかない優希たちは、嫌々ながら男についていった。
 その二人を、物陰から見ている者がいることに、優希たちは気づいていなかった。



 ********************



 ――覇王の道ロード・オブ・キングのギルド

「あんたがガドルフをやったって奴か?」

 聞いたことあるセリフに、優希はけだるさを超えてイラつきを覚えてきた。しかし、ここでこのギルドを敵に回して暴れるのは何かと問題があるので、そのイラつきをぐっとこらえながら、優希はすました顔を向ける。

 ギルドの中は広く、中に入った優希とメアリーを囲うように、ギルドメンバーが集まる。そして、奥の方には、いかにも権限を持ってそうな人が座る椅子に足を組みながら座っている男と、その隣に黒プレートの人が3人並んでいる。
 椅子に座っている男は、筋肉質ながらもシュっとした体付きで、山賊のような服装をしており、手には硬そうな手甲をしている。見た感じ職業は武闘家だろうと、優希は推測した。  

「で、用件はなんだ?」

 優希の言葉に反応するように、周りの目つきは悪くなった。反応と状況からして、椅子に座っている彼がギルドマスターなのだろう。

「あぁ、俺はここのギルドマスター、ガウルだ」

 ガウルは、自己紹介をしながら立ち上がって、優希の方に歩き出した。
 優希は緊迫した空気を変えるように、話を切り出す。

「これが目的か? ほら、返すよ」

 優希はシンとセンから奪った短剣を取り出す。
 ガウルは、その短剣を見て、薄っすらと笑みを浮かべながら、

「いや、それはお前があいつらから実力で取ったもんで、もうお前の物だ。わざわざ返してもらおうなんて思ってねぇよ。俺が欲しいのは……」

 ガウルは優希の肩に手を置き、

「お前だよ。なぁ、うちに来ないか? 強い奴は大歓迎だ」

 ガドルフと同じようなことを言っているが、今回の標的はメアリーではなく優希だ。
 ギルド、それもここほどの実力なら、勧誘されればそれほどうれしいものはないだろう。しかし、優希はギルドに入るわけにはいかなかった。偽プレートがばれるからだ。本来、プレートは誰にでも手に入るため、偽物など使う人はそういない。それゆえ、偽物でもそこまで調べられることはないのだ。しかし、ギルドに入れば、昇格試験などでいろいろとばれる可能性がある。それは絶対に避けなければならなかった。
 なので、優希が取れる行動はただ一つ――

「その気は無い」

 この返答は、周りの空気をさらに悪化させた。

  
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