10 / 31
眷属たちの宴 4
しおりを挟む(オリジナルスキル……思った以上の威力だな)
優希は身をもって、オリジナルスキルを体感した。
上から加わる重圧は、優希を大地に跪かせ、身動きを封じる。
「さ~て、そろそろ効果が切れるんでな、終わらせてもらう」
ガドルフが大剣を上に掲げ、振り下ろそうとしていたその時、ガドルフは何かに気付いたように後ろの下がる。ガドルフがいたところには探検が突き刺さっていた。
「ほぅ、これは便利なものだな」
エミリーは手に持っている短剣を眺めながら呟く。どうやら、メアリーは倒れているセンから、神の落とし物ディバインドロップを奪って使ったらしい。
「ジーク、力の過信はほどほどにな」
「言われなくてもわかってる。オリジナルスキルを見てみたかっただけだ」
ヘヴィワールドの効果が切れ、優希を襲っていた重圧が消え去り、優希はついていた膝を大地から離す。
優希が立ち上がるのを見て、ガドルフは辛そうな顔をする。どうやらこのオリジナルスキルは、リキャストタイム――次にヘヴィワールドを使えるまでの時間がかなり長いようだ。
「さて、どうする?」
優希が勝ち誇った笑みを浮かべると、ガドルフは怒りで冷静さを失い、
「くっそたれぇえええ!!」
ガドルフが考えなしに体験を振り回して突っ込むと、優希は西願寺の認識を超えるほどのスピードでガドルフの目の前に行き、頭部を掴む。
「お前の力……俺がもらう」
――機能追加インストール
優希の威圧に、ガドルフは上っていた血を引かせ、冷静さを取り戻し、優希から距離を取る。
ただし、それは遅かった。
優希はメアリーが操り、地面に突き刺したもう一本の短剣を手に取る。そして、短剣を地面にたたきつけるように振り、
「ヘヴィワールド……」
優希が呟くと、ガドルフは困惑とともに天に押しつぶされ、大地に引き寄せられる。
西願寺は一体何が起こっているのか分からなかった。それもそのはず、その人固有のオリジナルスキルを優希が使っているのだから。
この場で理解しているのは、優希とメアリーだけだろう。
優希は、ガドルフの職業を追加したのだ。練度、スキルだけでなく、オリジナルスキルまでも自分のものにした。
「ここで、お前に選択肢をやろう」
優希は地面にへばりついているガドルフの顔を無理矢理上げ、人間がしているとは思えないような、いかれた目を向ける。
「命を取る? 力を取る?」
優希の問いに、ガドルフはすぐには答えられなかった。目には涙を浮かべ、顔は真っ青になり、蛇に睨まれた蛙のようになっている。
しかし、優希の気もそれほど長くない。優希が短剣をガドルフに突きつけると、ガドルフは震えた声で言う。
「い、いのち……だけは……」
「わかった……」
優希は、不敵な笑みを浮かべながら、再びガドルフの頭部に手を置く。
――機能削除アンインストール……
優希は、興味が無くなったようにガドルフから離れると、ヘヴィワールドの効果が切れ、ガドルフは再び大剣を振るって叫ぶ。
「この! ヘヴィワールド!!」
…………
「……な、なんでだ!? ヘヴィワールド! ヘヴィワールドォォオオ!!!!」
ガドルフは何度叫んでも、ヘヴィワールドは発動しない。今後も発動することはないだろう。優希がガドルフから職業そのものを消したのだから。今のガドルフは眷属ですらない。
ガドルフは状況を理解できないまま、地面に膝をついた。困惑と絶望に満ちたその表情は、優希の心に心地良いものを感じさせた。
――あの表情……たまらないな。あいつらも、こいつと同じように……
「じ、ジーク……さん?」
優希が戻ると、西願寺は心配そうにこちらを見つめる。優希は心から湧き上がる笑みを殺す。
「あ~疲れた~」
「いや、なんでジークさんが、あの人のオリジナルスキルを……」
「そんなことより……」
優希は倒れている古家たちを見つめる。西願寺は優希の言葉に反応するように、古家たちのもとに向かった。
********************
帰還した優希たちは、古家たちを診療所に運んだ。西願寺の魔導士練度では完全回復は無理なほど傷ついていたが、致命傷はなく、しばらく安静にしていれば眷属の回復力ですぐに治るようだ。
それでも心配なのか、西願寺は古家たちのそばに残り、優希とメアリーは宿に戻った。
「良かったのか?」
宿への帰り道、メアリーは優希に聞く。優希の復讐対象である、古家たちを殺さないどころか、診療所に運んだのだから、メアリーが気になるのも仕方がない。
「俺には俺の復讐の仕方がある。それに……」
優希は、押し殺していた笑みを発散させるように笑いながらメアリーを見て、
「利用できる奴らは、利用しとかないとな」
優希の表情と発言に、メアリーは満足そうな笑みで返す。
「お前は、悪い奴だな」
「そんな奴に力を与えたのはお前だ」
「そうだな」
この時、優希が何を考えていたのか。それは、メアリーにもわからなかった。
********************
「おいこら!」
鳴り響く怒号と、今にも壊れそうなほどドアを強く叩く音に起こされて、優希はイラつきを覚えながらドアを開ける。そこにはおそらく眷属であろう男が一人立っていた。
「……なに?」
「あんたが、ガドルフの兄貴をやったって奴か?」
その男の首にしてある銀プレートを見ると、そこの所属の欄にはこう書かれていた。
覇王の道ロード・オブ・キングと――
覇王の道ロード・オブ・キングは、帝国でもトップクラスの戦闘系ギルドだ。黒プレートが5人もおり、そのうち1人がガドルフだ。このギルドは、周辺のダンジョンもかなり深くまで攻略している。
そんなギルドのメンバーが来る理由は、優希には1つしか思いつかなかった。
「仲間をやられた仕返しか?」
「もしそうなら、銀プレートの俺が来たりしねぇよ。まぁ、ついてこいや」
仲間がやられたっていうのに、恨みのひとつも感じなかった。
歩いていく男の後姿を見送ると、優希はゆっくりとドアを閉めた。
********************
優希とメアリーは、西願寺の連絡の元、行きたくもない見舞いに行くことになった。
古家たちの傷はほとんど完治している。やられてから5日しか経ってないのに、この回復力は眷属の力のだろう。
優希たちは、西願寺に怪しまれないよう、まっすぐに診療所に向かおうとしていた。しかし、そう簡単に向かわせてくれない者がいた。
「見つけたぞぉ!」
背後からの声に、優希とメアリーは振り返る。そこには、朝方優希たちの元に来た、覇王の道ロード・オブ・キングの男がいた。
「またお前か。で、なに?」
「なに? っじゃねぇよ! なんで来ないんだよ!?」
「いや、面倒くさいし」
「来てくれないと俺が困るんだよ。なぁ、頼むからついてきてくれよぉ」
男は目に涙を浮かべながら、優希にしがみつく。最初の威勢などはみじんも感じない。周りを確認すると、若い青年にいかつい男がしがみついているという光景に、周りの人も注目しだしていた。あまり目立つわけにはいかない優希たちは、嫌々ながら男についていった。
その二人を、物陰から見ている者がいることに、優希たちは気づいていなかった。
********************
――覇王の道ロード・オブ・キングのギルド
「あんたがガドルフをやったって奴か?」
聞いたことあるセリフに、優希はけだるさを超えてイラつきを覚えてきた。しかし、ここでこのギルドを敵に回して暴れるのは何かと問題があるので、そのイラつきをぐっとこらえながら、優希はすました顔を向ける。
ギルドの中は広く、中に入った優希とメアリーを囲うように、ギルドメンバーが集まる。そして、奥の方には、いかにも権限を持ってそうな人が座る椅子に足を組みながら座っている男と、その隣に黒プレートの人が3人並んでいる。
椅子に座っている男は、筋肉質ながらもシュっとした体付きで、山賊のような服装をしており、手には硬そうな手甲をしている。見た感じ職業は武闘家だろうと、優希は推測した。
「で、用件はなんだ?」
優希の言葉に反応するように、周りの目つきは悪くなった。反応と状況からして、椅子に座っている彼がギルドマスターなのだろう。
「あぁ、俺はここのギルドマスター、ガウルだ」
ガウルは、自己紹介をしながら立ち上がって、優希の方に歩き出した。
優希は緊迫した空気を変えるように、話を切り出す。
「これが目的か? ほら、返すよ」
優希はシンとセンから奪った短剣を取り出す。
ガウルは、その短剣を見て、薄っすらと笑みを浮かべながら、
「いや、それはお前があいつらから実力で取ったもんで、もうお前の物だ。わざわざ返してもらおうなんて思ってねぇよ。俺が欲しいのは……」
ガウルは優希の肩に手を置き、
「お前だよ。なぁ、うちに来ないか? 強い奴は大歓迎だ」
ガドルフと同じようなことを言っているが、今回の標的はメアリーではなく優希だ。
ギルド、それもここほどの実力なら、勧誘されればそれほどうれしいものはないだろう。しかし、優希はギルドに入るわけにはいかなかった。偽プレートがばれるからだ。本来、プレートは誰にでも手に入るため、偽物など使う人はそういない。それゆえ、偽物でもそこまで調べられることはないのだ。しかし、ギルドに入れば、昇格試験などでいろいろとばれる可能性がある。それは絶対に避けなければならなかった。
なので、優希が取れる行動はただ一つ――
「その気は無い」
この返答は、周りの空気をさらに悪化させた。
1
あなたにおすすめの小説
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる
六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。
強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。
死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。
再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。
※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。
※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる