天才の天才による天才のための異世界

野良子猫

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分析の力

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 ――やばいやばいやばいやばい!!

「うごぉぁぁぁあ!!」

 そいつは突然和也たちの前に現れた。頑丈そうながっしりとした肉体、和也の倍以上はある巨体、手にしているのは血が付着したままの斧、そして、体は人間だが頭部は――牛である。

「何でミノタウルスがここにいるのよ!!」

「知らねぇよ!! とりあえず今は逃げるぞ!!」

 和也とリリは片道を急いで引き返す。が、なかなか分かれ道に戻らない。そしてそのまま行くとそこには剣が散乱していた。

「ちょっと待って!? リリ、ここに来るまで分かれ道あったか?」

「なかったわよ! ずっと一本道だった! それより早く!! 追いつかれちゃう!!」

「塞がれた!」

「え!? どういうこと?」

「ずっと思ってた――なぜ、前の人は出口ではなく、反対の道に進んだのかって。でも、違った。戻りたくても戻れなかったんだ!」

「じゃ、じゃあどうするの!?」

 ――どうするどうする。このまま進んで何もないことに賭けるかーーいやでも、この先にモンスターがいた場合、挟まれて終わり。ならいっそ、ミノタウルスを突破してーーいや無理だあんなの突破しようとするなら最悪一人は死ぬ。くそっ、本当にどうする――

「来たー!!」

 ミノタウルスが和也たちに追いついて来た。リリは和也にしがみつきパニックになっている。対する和也は親指の爪を噛みながら必死で策を練っている。
 ミノタウルスの斧が届く一歩手前までやって来た。リリはパニックの余り手を組み神に祈りを捧げ出した。 
 
「とりあえず奥に進むぞ!」

 二人は再び走り出した。ミノタウロスはずっしりした足踏みで後を追う。
 そして、距離を取った二人は状況を整理していた。

「リリ、魔石は何がある?」

「一通りは持ってきてるけど、ミノタウロス相手に大した効果はないわよ。攻撃に使えるのは火の魔石と雷の魔石ぐらい。風の魔石で出せるのは、せいぜい涼しい風くらいだし」

 話している和也たちにミノタウロスがやって来た。すかさず二人は逃げようとするが、その先に――

「最悪だ……」

 反対側にもミノタウロスがやってきた。和也が想像していた最悪の事態だ。
 二人は徐々に距離が詰まるミノタウロスに目をやりながら、お互いに離れないよう背中を合わせ警戒している。
 すると和也の頭に締め付けられるような痛みが走る。

 ――これは、前と同じ――ミノタウロスの情報が流れ込んでくる

 頭痛が収まると和也がリリに指示を出す。

「リリ、光の魔石を端において中央に風の魔石を使え!あと、水と雷の魔石も用意」

「そうなことしてどうするの!?」

「いいから早く!」

 リリが和也の指示どうりに動くと、和也は上着を脱いで持ったいる短剣で、天井に吊るす。
 用意ができた二人はできる限り壁に寄った。
 すると、二体のミノタウロスは狂ったような形相で走り出した。そして吊るした服越しにミノタウロスはお互いの頭をぶつけた。

「「うごぉああああ!!!!」」

 勢いがありどちらもそのパワーは大きく、ミノタウロスはあ互いにお互いを攻撃した。 
 そしてよろめいたミノタウロスに水と雷の魔石を投げつける。すると、ミノタウロスノ体に電撃が走り、硬直した。
 ミノタウロスが硬直しているうちに二人はさらに奥に進む。



 ********************



「何とかなったな」

「何が起こったの?」

「ミノタウロスの性質は、牛そのものだったから風で揺れたした上着に興奮して突っ込んできたってわけ」

「ま、とりあえずは一難去ったわね」

 ミノタウロスの関門を突破した二人は奥に続く道を進む。
 すると、途中で壁に穴があった。道自体は続いているが、二人は穴に入って行った。
 そこには軽く野球ができるほどの空間が広がっていた。天井には穴がありそこから空が見えている。これと言って特徴は無いが、一か所だけ異質な雰囲気を漂わせている部分があった。
 空間の中心に台座があり、上部の穴から光が射していて。台座の上には一本の剣が置かれていた。
 その剣は、グリップから刀身、鞘までもが漆黒に包まれているサーベルだった。

「これが……クラネデアの宝剣か?なんか思ってたのと違うな。なんかもっとエクスカリバー!みたいなのを期待してた」

「あんた、これでも伝説の宝剣よ」

「これが本物かもわからんしな。もしかしたら先に来た人が取って代わりに置いたのかもしれん」

「先に来た人って誰よ」

「例えばお前の父とか? ここに来るまでに血はあっても骨などは残ってなかったっし、もしかしたら上の穴から出て行ったかもしれない。つまりお前の父は生きている可能性がある」

「でもそれならどうしてお父さんは帰ってこないの?」

「さすがにそこまではわからないけど……とりあえずこの中で亡くなったってことは無さそうだ」

 リリは父が生きている可能性が出たのと、父の手がかかりが完全に無くなった事実に挟まれて複雑な気持ちになった。
 和也はリリを励まそうとしたが、なんて言ったらいいかわからず、話題を変えることにした。

「貰えるものだけもらってとっとと出るか、戻っても入口が戻っている保証はないし、上から出るのが一番かな」

「……そうね。こんなところで悩んでも仕方がない! 早く出ましょうか」

 そういってリリは鞄から縄を取り出し、上の穴に投げつける。

「よし。もう上っても大丈夫よ」

 縄を引き、登れるか確認する。
 和也は「わかった」と返事を返し、剣を手に取ろうとする。
 そして――またしても頭に不思議な感覚が走った。さすがに痛みはそれほど無かったが、やはりまだ慣れない。
 リリが「カズヤ?」と声をかけるが、しばらく反応せずに固まっている。

「はっ! ん……あ、ああ、分かった。それよりこれは本物らしい」

「なんで? 持って帰って鑑定してもらわないと分からないじゃない」

「なんでと言われても困るんだが……けど、これが本物ということはわかる」

「変なの」

 リリはそう言って縄を伝って登り始める。すると、和也が焦るようにリリを引き留めて――

「おい、先についたら縄を引っ張ってくれよ」

「なんで?」

 リリは和也の発言に首をかしげる。和也は胸を張って力強く断言する。

「おいおい、俺にこの高さを登れと?俺の体力のなさをなめるなよ。落ちないようにしっかり縄持ってるから、リリが引き上げてくれ!」

「あんたねぇ」

 男らしくない和也にさすがのリリも呆れ顔になりながら、上に登り和也を引き上げる。
 さすがのリリも人一人を引き上げるのは骨が折れた。



 ********************



「はぁはぁ……あんた……もう少し……男としてのプライド持ちなさいよ。女の子に引き上げてもらう男がどこにいるのよ」

「いや~それを言われるときついな。なんせ今までまともに運動してないせいで体力面は壊滅的でね。リリがいて良かったよ」

 捕まっていただけでまだ元気な和也と息を切らしているリリ。
 リリは水分を取りながら座っている。
 一方和也は、剣を見ながら例の現象について考えていたをしていた。

 ――あれは一体なんなんだ?脳に電気が流れる様な感覚になったと思ったら、さっきまで知らなかったことがわかって来る。
 もしかして、これが神通力ってやつか?いつ習得したかわからんが、これが俺の力なら上手く使えるようにならないとな

 休憩を終えた二人は、街に戻った。
 帰って来た二人は、剣を鑑定してもらうため武器屋に向かう。
 すると、大通りが何やら騒がしくなっている。人々は道の端により中央に視線を向けている。

「なんだ?なんかあったのか?」

 和也はかかとを上げながら、大通りの中央に目をやる。するとそこには何やら行列ができていた。
 中央、後方には武器を持ち隊列を組んでいる兵士が。前方には他の兵士とは明らかに何かが違う、異彩のオーラを放つ二人の兵士。そして先頭には――

「誰だ?」

「知らないの?あの人がセシア姫よ。」

 その女性は翡翠色の髪と目、馬に乗っているため正確にはわからないが和也より少し低い背丈、身にまとっているのは鎧ほど堅苦しくはないが、ドレスというには少々勇ましい服。
 左腰には立派だが、使った形跡のない剣をぶら下げていた。

「遠征かしら?」

「さぁな。そんなことより早く行こうか。もう疲れたし、休みたい。」

 二人は大通りが通れないので回り道するために来た道を引き返す。
 そんな二人を見つめる翡翠色の瞳があった。

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