天才の天才による天才のための異世界

野良子猫

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神の代行者

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 気が付くと和也は、森の中で寝そべっていた。

「……」

 周りには木々が並び、地面は緑一色。心地良い風が彼の髪を揺らす。

「これは……死んで時間が戻った的なあれか?」

 和也がこの世界に来た時と似た状況。しかし、あの森とは違い、今回は神秘的な森だった。
 まだ空は明るいが、木々により光はほぼ遮られ少し薄暗い。そして、蛍のような光が宙を浮いている。
 和也は数分この空間に見惚れていた。

「なんか、妖精でも住んでそうだな」

 和也はとりあえず場所を把握することにした。近くで水の滴る音がする。和也は拠点をそこに定め、音のする方へ向かう。
 しばらく歩くと、光が水に反射され一部だけ明るい場所があった。少しばかり喉が渇いていたため和也は急ぎ足で向かう。
 すると、そこには泉があり、その中心には一人の少女が生まれたままの姿で立っていた。

「――!?」

 和也はすぐさま隠れた。少女には気付かれていないようだ。
 体重を後ろの木に乗せ、どうするかを考えていた。
 一つは話しかける。この機を逃せば、次にいつ人に出会えるかわからない。だが、その場合少女の裸を見たとばれてしまう。
 もう一つは服を着るまで隠れる。服を着た後で、今通ってきたように話しかければすべて解決。だが、その場合服を着るまで、待つということが必要になる。見失わないためにも離れるわけにはいかない。
 三つめはあっちが気付くまで、堂々と姿を現す。

「三つめは駄目だな。変態じゃないか」

 和也は考えていると、つい落ちている小枝を踏んづけてしまった。

「誰ですか?」

 周りは水の音だけで、小枝が折れる音は見事に響いた。
 和也は思わず誤魔化す。

「に、ニャー……」

「猫ですか」

 ――うそーん、あんな適当な物真似が通用すんの!?

 和也は絶対に無理だと思っていたがために、心の中で強く思った。ていうより、声に出していた。

「姿を現すのです!」

「うわっ!」

 少女が構えた瞬間、泉が和也を襲う。
 和也が姿を現すと、少女は驚嘆した。反応からしてこの場に人がいることすら珍しいようだ。

「あなたは誰ですか? どうやってこの場に来たんですか?」

 幼く、か細い声で少女は問う。
 和也は手で顔を覆いながら答えた。

「とりあえず……服を着ないか?」

 少女は赤面して小柄な体を泉に隠す。



「俺はカズヤ。ルカリアから来たんだけど……どうやって来たかはよくわからん」

「先ほどは、いきなり攻撃してしまい申し訳ありませんでした。私はルビーといいます」

 ルビーは深く頭を下げる。和也は少し罪悪感にとらわれた。

「そ、それより、君はこんなところで何してんの?お母さんと逸れちゃったのかな~」

 和也が迷子の子に話すような態度をすると、ルビーは頬膨らませて再び構える。
 和也は慌てて謝る。ルビーは怒らせると恐そうだ。

「話を戻そう。ここはどこなんだ?」

「ここはベルウスの森です」

「うそだろ!?」

 和也はその場所を知っていた。図書館で土地は一通り調べている。
 ベルウスの森は大陸の中心部に位置し、ルカリアからして、ドルドのさらに向こうの場所だ。この場所だけはどこの勢力にも属していない。と言うより、この場所には神が住まうとされ、どの国も侵入しようとしない。

「なんでそんなとこに……」

 そう言ってはいるが、和也には心当たりがある。
 マグスが仕掛けた攻撃だ。

「やっぱりあの槍の力か……」

 ルビーは和也の服を軽く引っ張り、

「とりあえず、ここにいても仕方がありません。家に案内します」

 そう言ってルビーは水色の短髪を揺らしながら歩き出した。
 和也も彼女以外他に情報源がないため、黙ってついって行った。



 ********************



 ルビーの案内の元に和也は彼女が家という場所に辿り着いた。
 その場所には、見上げてしまうほどの大樹があった。真ん中あたりに窓のようなものがあるため、彼女が言う家とはこの大樹のことだろう。

「こっちです」

 ルビーは大樹の根元にある穴に入って行き、姿を消した。
 和也は驚きながら、恐る恐る穴に入った。すると、外から見た空洞とは違って、中にはしっかりと生活感のある空間が広がっていた。

「ルビー……あんた何もんだ?」

「私はこの森の管理者です」

「管理者?」

 この森の場所と大陸にとってどういう扱いかは知っている。だが、管理者は聞いたことがない。

「管理者……つまり、神の化身といったところか」

「正解です」

 この森がどの国にも狙われないのは神が住まうと言われているから。だが、あくまでも言われているだけ。どの国が迷信に囚われず進軍するか分からない。だから、神の代行者――森を守る人物が必要になるのだ。それが、ルビーの存在。

「それに、あの力……おそらく大陸内で最強の魔導士だな」

「それを名乗るのは難しいですね」

「ルビーよりも強い魔導士が居るのか?」

「それはわからないですが、私が魔導士の力を最大限に発揮できるのはベルウスの森の中だけです」

 森の外では力が弱まる。だが、それでも普通の魔導士よりは断然強い。和也はルビーにルカリア側についてほしいと考えたが、森の管理者である以上連れて帰るわけにもいかない。というより、無理やり連れて行こうにも、森の外中関係なく返り討ちになるだろう。

 和也は帰ることを最優先にした。だが、勢力配置図から考えればルカリアに戻るにはどうしてもドルドの領土内に入ることになる。それは一人の和也にとってはかなり危険だ。

 和也はルビーにここに来るまでの経緯を話した。
 話を聞いたルビーは和也に思い当たることを話す。

「おそらくですが、それはガウルの槍でしょう」

 ガウルの槍――和也は例の本で知っていた。カストナーの時同様、あくまでも伝説の範囲だが。

「伝説では、光を超える速さを出し、物体を空間ごと移動させるという……」

「正確にはガウルの槍は空間と空間をつなぐ力です」

「空間と空間をつなぐ?」

 和也は数秒間、言っている意味がよくわからなかったが、元の世界でのワープの概念と見れば納得がいった。
 ルビーは不敵な笑みを浮かべながら言う。

「しかし、運がよかったですね。つながれた空間によれば、雲の上に飛ばされて、落下で粉々になったものもいれば、深海に飛ばされ、窒息したという人も出てますから」

「ほんと恐ぇーな……ちょっと待て。なんでそんなこと知っているんだ?」

 ルビーはまるでその槍を伝説ではなく本当に知っているみたいな口ぶりだった。それに、ランダムに空間をつなぐその槍で死んだ奴のことを知っているのも気になる。もしかしたら、ここは大陸中の情報が集まっているかもしれないと考えた。
 和也の問いにルビーは時間を空けて答えた。

「……それは、あの武器はこの森で生まれたからです」

「この森で生まれた?」

「ガウルの槍だけではありません。あなたが携えているその剣もベルウスの森で誕生したんですよ」

 ルビーは部屋の中にある本棚をさす。

「この森で誕生した武器の伝説はすべてある本に記載されています。少し前まで、そこの本棚に置いてあったんですが、今はどこに消えたのか分かりません。普通の人には読めなくなっていますが、これは大変困った状況です」

 和也はその本に心当たりがある。図書館でリリが保管していた本だ。だが、和也はルビーにそのことを話さなかった。

「それより、この森で生まれたってどういうことだ?」

「それは言えない決まりです。その話をすれば悪用される可能性があるからです」

「つまり、ルビーが言っている本も悪用される可能性があるということだな」

「……」

 ルビーは黙り込んだ。その問いに返答すれば可能性を肯定してしまうことになる。しかし、黙り込めば肯定しているも同然。伝説の武器がこの森で生まれたということを教えてくれたということは、悪いやつとは認識されていないが、まだ信用はされていないようだ。
 和也は本の内容を思い出す。それぞれ伝説の武器と云われしか書いていなかったと思うが、悪用されるということは本に記載してある武器はすべて実在するということ。
 和也は二つの疑問が生まれた。
 あの本を書いたのは誰か。
 ここで生まれた武器はなぜ森の外にあるのか。

 ルビーは知ってそうだが、聞いても答えてくれないだろう。それに、聞いた場合怪しまれる場合がある。これは自分で調べるしかないだろう。
 
 和也は少しでも情報を手に入れるため、ルビーに分析の力を使う。
 途端、和也の意識は途絶えた――

 
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