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ロムルド王国編
第十話 閉幕
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オベロンは、まずは人族の様子を見ようと、空を飛んで現場へ向かった。
そして、高所から見下ろしたその先にあったのは、青薔薇に埋め尽くされた草原だった。
「おお……。何とまあ、えげつない……」
青薔薇の群れを相手する人族の数は、全部で七人。
しばらく待っていれば、一人捕まり、二人捕まり、そしてその内全員が青薔薇に捕らえられた。
暫し見ていたが、彼等は諦めてはいないようだが、青薔薇からの脱出は難しそうだった。
「んー? 割と、俺だけで対処できそうだな」
オベロンは人族との対話に算段を立て、一つ大きく深呼吸すると、意を決して地上に降り、青薔薇の壁を左右に開いた。
***
結論を言うなら、オベロンと人族の接触は、ほぼオベロンの望み通りの場所へ着地した。
人族は木霊の端末を持ち帰り、オベロンの『妖精は世界を豊かにするために必要な種族』であるという言葉を、九割ほどは信じてもらえたと思っている。
それを信じてもらえたのは、一行に『世界を豊かにするには精霊の力が必要』であるとつきとめた学者が居たのが大きいだろう。
そして、妖精珠だが、これはノームが言った通り、オベロンが手に持った時、不思議とどうすれば世界へ還せるかが分かった。
その妖精珠を使っていたのが精霊を友とするエルフであったのが、何とも言えぬ虚無感をオベロンに抱かせた。
アーロンという青年や、その仲間達は、まあ、悪くはなさそうな人族だった。妖精珠を持っていなければ、もう少しソフトな対応をしたかもしれないが、まあ、こんなものだろう。
そう思いながら、オベロンは空の向こうへ消えて行った人族達を見送った。
「結局、風の上級精霊の力しか借りなかったなぁ……」
ソワァ、と今回に限り知覚できるようにした精霊達の気配が揺れるのを感じた。
「けど、側に居てくれて心強かったよ。ありがとう」
側に居るだろう精霊達から喜びの感情が伝わり、オベロンは笑う。
「それじゃあ、帰ろうか」
そう言って、オベロンは我が家へと歩き出した。
***
数日後、木霊から無事に分身体が『生命の樹』の種を植え、子株となったと聞き、オベロンは安堵した。
そして、子株が出来てから、オベロンには毎朝の習慣が出来た。
「それじゃあ、今日もよろしく頼むよ、木霊」
「はーい! 任せて下さい!」
そう言って、オベロンが木霊に渡すのは、オベロンの力を籠めた水である。
コップ一杯のそれを受け取り、木霊はそれを飲み干した。
「ぷはー! 美味しかったです!」
「それは良かった」
満足げな木霊に、オベロンも笑顔を浮かべる。
オベロンが何故そんなものを木霊に渡しているかと言うと、木霊本体がオベロンの力を籠めた水を飲むことで、端末にその力を送り出しているのである。
そうして端末が受け取った力は、端末が子株に何らかの手段で与え、その力を受け取った子株がその土地を広範囲で活性化させるのだ。
「最近、人族達が僕の端末に小さい家を作りましたよ」
「へぇ……」
「僕の端末は基本的に子株から離れませんからね。子株の根元でぐーすか野晒しで寝てるのが気になったみたいです」
「ふぅん。結構、受け入れられてる感じなんだ」
「はい。特に幼い子供達には大人気ですよ」
「はは。そうなんだ」
人族に気を許すのは妖精の王となったからか、心情的に難しい。しかし、受け入れられていると聞けば、嬉しくなる。
元は人間だった妖精王は、少し夢見るみたいに呟いた。
「いつか、堂々と遊びに行けたら良いな……」
そして、高所から見下ろしたその先にあったのは、青薔薇に埋め尽くされた草原だった。
「おお……。何とまあ、えげつない……」
青薔薇の群れを相手する人族の数は、全部で七人。
しばらく待っていれば、一人捕まり、二人捕まり、そしてその内全員が青薔薇に捕らえられた。
暫し見ていたが、彼等は諦めてはいないようだが、青薔薇からの脱出は難しそうだった。
「んー? 割と、俺だけで対処できそうだな」
オベロンは人族との対話に算段を立て、一つ大きく深呼吸すると、意を決して地上に降り、青薔薇の壁を左右に開いた。
***
結論を言うなら、オベロンと人族の接触は、ほぼオベロンの望み通りの場所へ着地した。
人族は木霊の端末を持ち帰り、オベロンの『妖精は世界を豊かにするために必要な種族』であるという言葉を、九割ほどは信じてもらえたと思っている。
それを信じてもらえたのは、一行に『世界を豊かにするには精霊の力が必要』であるとつきとめた学者が居たのが大きいだろう。
そして、妖精珠だが、これはノームが言った通り、オベロンが手に持った時、不思議とどうすれば世界へ還せるかが分かった。
その妖精珠を使っていたのが精霊を友とするエルフであったのが、何とも言えぬ虚無感をオベロンに抱かせた。
アーロンという青年や、その仲間達は、まあ、悪くはなさそうな人族だった。妖精珠を持っていなければ、もう少しソフトな対応をしたかもしれないが、まあ、こんなものだろう。
そう思いながら、オベロンは空の向こうへ消えて行った人族達を見送った。
「結局、風の上級精霊の力しか借りなかったなぁ……」
ソワァ、と今回に限り知覚できるようにした精霊達の気配が揺れるのを感じた。
「けど、側に居てくれて心強かったよ。ありがとう」
側に居るだろう精霊達から喜びの感情が伝わり、オベロンは笑う。
「それじゃあ、帰ろうか」
そう言って、オベロンは我が家へと歩き出した。
***
数日後、木霊から無事に分身体が『生命の樹』の種を植え、子株となったと聞き、オベロンは安堵した。
そして、子株が出来てから、オベロンには毎朝の習慣が出来た。
「それじゃあ、今日もよろしく頼むよ、木霊」
「はーい! 任せて下さい!」
そう言って、オベロンが木霊に渡すのは、オベロンの力を籠めた水である。
コップ一杯のそれを受け取り、木霊はそれを飲み干した。
「ぷはー! 美味しかったです!」
「それは良かった」
満足げな木霊に、オベロンも笑顔を浮かべる。
オベロンが何故そんなものを木霊に渡しているかと言うと、木霊本体がオベロンの力を籠めた水を飲むことで、端末にその力を送り出しているのである。
そうして端末が受け取った力は、端末が子株に何らかの手段で与え、その力を受け取った子株がその土地を広範囲で活性化させるのだ。
「最近、人族達が僕の端末に小さい家を作りましたよ」
「へぇ……」
「僕の端末は基本的に子株から離れませんからね。子株の根元でぐーすか野晒しで寝てるのが気になったみたいです」
「ふぅん。結構、受け入れられてる感じなんだ」
「はい。特に幼い子供達には大人気ですよ」
「はは。そうなんだ」
人族に気を許すのは妖精の王となったからか、心情的に難しい。しかし、受け入れられていると聞けば、嬉しくなる。
元は人間だった妖精王は、少し夢見るみたいに呟いた。
「いつか、堂々と遊びに行けたら良いな……」
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