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第三章
<いけるぞ!この魔剣を手に入れれば、栄光の未来が待っている!>
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さらに三日後。
王城の謁見の間は黒いローブの集団が満ちていた。
その集団は数百人。広い謁見の間であっても圧迫感を感じる人数がいる。
彼らは魔道騎士団の団員たちだった。
普段は騎士団として公の場では鮮やかな色合いの制服とローブを着ているが、今着ている黒ローブはいわば作業着だった。
軽く動きやすく、汚れても問題ない。通気性もよくて気温変化にも対応しやすい。
魔法の実験や訓練で汚れてもすぐに洗える優れものだ。
おまけに黒だと目立たずに済む。
今回は騎士団だけの作業で人の目を気にする必要がなく、集中する必要があるため全員この黒ローブでの作業となった。
ただ、煌びやかな謁見の間に黒い集団が集まっている状況は、怪しげな宗教儀式のような異様さがあった。
「メラス伯爵。準備が整いました」
「始めよ」
その集団のほぼ中心、アルベルトの魔剣が展開する魔法陣の傍らにいた魔道騎士団装備部の部長ウーゴ・メラス伯爵は、声をかけてきた助手に大きく頷き返して答える。
助手が手を上げて注目を促すと、その場にいた全員の視線が彼に集まった。
「それでは、集団解呪を行う。皆の者、術式の準備を」
その声で、一斉に全員が手に持っていた巻物を開いた。
巻物には今回使用する魔法の術式が書かれていた。
魔法の術式は本来は個人に合わせて調整されているものだが、今回は全員が同じ術式を使う。
そうしないと魔法同士の連携が取れず、相乗効果が得られなかった。
「連携用の補助術式の魔法陣を私が展開したら、続いて全員で解呪を始める。私が杖を振り下ろすタイミングに合わせよ」
ウーゴが高らかに言い、緊張が走った。
そしてウーゴの詠唱が始まると、謁見の間全体に光の筋が走り、巨大な魔方陣を形成していく。
それは並みの魔法使いでは作り出せない大きさで、ウーゴが装備部とはいえ魔道騎士団の要職を務めるに値することを証明していた。
詠唱を続けながらウーゴは手に持っていた杖を振り下ろす。
杖は術式の補助をする魔道具で、杖だけでも多数の魔法を束ねる効果を持っているものだった。
杖の動きに合わせてその場にいる全員が詠唱を始める。
ひとつひとつは小さな声だったが、重なり合い、共鳴しあうことでそれは建物中に響き渡るほどの大きさとなった。
一人一人の足元には魔法陣が展開され、声と同じく重なり合って巨大な図形を作り出す。
複雑に絡まりあう魔法陣の線。
光の帯がいたるところに走り回り、謁見の間すべてを飲み込んでいく。
それは神々しくも美しい、抽象画のようであった。
<いけるか?>
ウーゴは手ごたえを感じる。
魔法が影響を与え、解呪の効果を与えようとしているのを感じる。
解呪できればこの魔剣を手に入れ、そして王城を汚染していっている『嘘を付けなくなる呪い』も解除できるだろう。
ピシリと、何かが崩れ落ちようとしているのを肌で感じた。
それは卵の殻にヒビが入る感覚に似ていた。
<いけるぞ!この魔剣を手に入れれば、栄光の未来が待っている!>
詠唱しながらも、ウーゴの頬は緩み自然と笑みの形をとっていく。
魔法の行使で流れ続ける汗も、いずれ手に入れるものを考えれば心地いい。
<この魔剣を研究して、匹敵する魔道具を作り出すのだ!あの色魔賢者を超えて称えられるのだ!>
ウーゴの口からは、今にも高笑いが漏れ出しそうだった。
そのせいか、詠唱する声は段々と高くなり、まるでオペラを歌う歌手のようだ。
そしてその声が最高潮になった時、何かが弾けた。
王城の謁見の間は黒いローブの集団が満ちていた。
その集団は数百人。広い謁見の間であっても圧迫感を感じる人数がいる。
彼らは魔道騎士団の団員たちだった。
普段は騎士団として公の場では鮮やかな色合いの制服とローブを着ているが、今着ている黒ローブはいわば作業着だった。
軽く動きやすく、汚れても問題ない。通気性もよくて気温変化にも対応しやすい。
魔法の実験や訓練で汚れてもすぐに洗える優れものだ。
おまけに黒だと目立たずに済む。
今回は騎士団だけの作業で人の目を気にする必要がなく、集中する必要があるため全員この黒ローブでの作業となった。
ただ、煌びやかな謁見の間に黒い集団が集まっている状況は、怪しげな宗教儀式のような異様さがあった。
「メラス伯爵。準備が整いました」
「始めよ」
その集団のほぼ中心、アルベルトの魔剣が展開する魔法陣の傍らにいた魔道騎士団装備部の部長ウーゴ・メラス伯爵は、声をかけてきた助手に大きく頷き返して答える。
助手が手を上げて注目を促すと、その場にいた全員の視線が彼に集まった。
「それでは、集団解呪を行う。皆の者、術式の準備を」
その声で、一斉に全員が手に持っていた巻物を開いた。
巻物には今回使用する魔法の術式が書かれていた。
魔法の術式は本来は個人に合わせて調整されているものだが、今回は全員が同じ術式を使う。
そうしないと魔法同士の連携が取れず、相乗効果が得られなかった。
「連携用の補助術式の魔法陣を私が展開したら、続いて全員で解呪を始める。私が杖を振り下ろすタイミングに合わせよ」
ウーゴが高らかに言い、緊張が走った。
そしてウーゴの詠唱が始まると、謁見の間全体に光の筋が走り、巨大な魔方陣を形成していく。
それは並みの魔法使いでは作り出せない大きさで、ウーゴが装備部とはいえ魔道騎士団の要職を務めるに値することを証明していた。
詠唱を続けながらウーゴは手に持っていた杖を振り下ろす。
杖は術式の補助をする魔道具で、杖だけでも多数の魔法を束ねる効果を持っているものだった。
杖の動きに合わせてその場にいる全員が詠唱を始める。
ひとつひとつは小さな声だったが、重なり合い、共鳴しあうことでそれは建物中に響き渡るほどの大きさとなった。
一人一人の足元には魔法陣が展開され、声と同じく重なり合って巨大な図形を作り出す。
複雑に絡まりあう魔法陣の線。
光の帯がいたるところに走り回り、謁見の間すべてを飲み込んでいく。
それは神々しくも美しい、抽象画のようであった。
<いけるか?>
ウーゴは手ごたえを感じる。
魔法が影響を与え、解呪の効果を与えようとしているのを感じる。
解呪できればこの魔剣を手に入れ、そして王城を汚染していっている『嘘を付けなくなる呪い』も解除できるだろう。
ピシリと、何かが崩れ落ちようとしているのを肌で感じた。
それは卵の殻にヒビが入る感覚に似ていた。
<いけるぞ!この魔剣を手に入れれば、栄光の未来が待っている!>
詠唱しながらも、ウーゴの頬は緩み自然と笑みの形をとっていく。
魔法の行使で流れ続ける汗も、いずれ手に入れるものを考えれば心地いい。
<この魔剣を研究して、匹敵する魔道具を作り出すのだ!あの色魔賢者を超えて称えられるのだ!>
ウーゴの口からは、今にも高笑いが漏れ出しそうだった。
そのせいか、詠唱する声は段々と高くなり、まるでオペラを歌う歌手のようだ。
そしてその声が最高潮になった時、何かが弾けた。
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