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第三章
「物理攻撃は効かない、弱い魔法は反射されるんだったな?」
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『きえた……きえた……』
国王たちが転移したと同時に嬉しそうな声が聞こえ始める。
結界が消えたことに気が付いたのだろう。
結界を作り出していた魔力は転移魔法陣を発動させるために使い切り、もう残っていない。
「相手はパックだ。頭は悪いが力だけは強い。気を付けろ」
「物理攻撃は効かない、弱い魔法は反射されるんだったな?」
「そうだ」
ナイとアルベルトが頷き合う。
二人はこの王城で起こっていることを、この王城にいた者たちよりもはるかに詳しく把握していた。
それはシルキーのデントン嬢のおかげだ。
彼女が他の妖精たちを通して情報を集めてくれたからだった。
本来であれば王城に張られた結界のせいで、いくら妖精を通しても情報は集められない。
しかし、その結界は国王たちを守っていた最後の一つを残してすべて解除されていた。
そして、残った結界は賢者ブリアックが作り出したもので、ナイにとってもデントン嬢にとっても親しみ深いものだ。
解除方法どころか存在はそのままで無効化することができる。
先ほどのように、その魔力を別の魔法陣に利用することすら可能だった。
デントン嬢が集めてきた情報では、この王城を混乱に陥れているのは原始妖精の『パック』。
いたずらを好む妖精だ。
その性質は無垢ゆえの邪悪。
それは妖精の本質であるが、多くの妖精が成長によって捨て去ったものだった。
善悪の価値観を持たないため、どんな残虐な行為でも遊びと同じ感覚でやってしまう。しかも強力な魔力を有していた。
攻撃方法は魔法特化。腕力はない。
むしろ肉体すらなかった。
そのパックを、この国の王族は建国当時から閉じ込め、魔法装置の動力として利用していたのだった。
「封印されている間に弱ってるとかはないのか?」
「ないな。妖精に時間はあまり関係ないからな」
「数は変わってないか?」
「ああ、二千百九十七体。十三×十三×十三、つまり素数の六六六だな」
アルベルトはわずかに眉を寄せる。
「相変わらず、意味がわからねーな」
「素数は魔法陣の基本だなのだがな。アルベルトは頭が悪いな」
「知ってる」
意味のない会話で、二人は笑い合う。
二人が出会ってからまだ一か月と過ぎてはいない。
しかし、二人の関係は長年の親友のようだ。
アルベルトに最初にあった、ナイに借りを返すという意識はもうない。
ナイはアルベルトにとって飼い猫であり、パートナーだ。
ナイの方も、アルベルトを利用してやろうという意識も薄まっていた。
むしろ、一緒にいる理由にそれを利用しているくらいだ。
自身が猫だということよりも、何か、それよりも優先しないといけない感情のようなものを感じていた。
『あそぼー……あそぼー……おにごっこ……皮をはいでもうふにしちゃおう……』
「来るぞ」
「おう!」
かわす言葉は短いが、それだけで臨戦態勢は整った。
国王たちが転移したと同時に嬉しそうな声が聞こえ始める。
結界が消えたことに気が付いたのだろう。
結界を作り出していた魔力は転移魔法陣を発動させるために使い切り、もう残っていない。
「相手はパックだ。頭は悪いが力だけは強い。気を付けろ」
「物理攻撃は効かない、弱い魔法は反射されるんだったな?」
「そうだ」
ナイとアルベルトが頷き合う。
二人はこの王城で起こっていることを、この王城にいた者たちよりもはるかに詳しく把握していた。
それはシルキーのデントン嬢のおかげだ。
彼女が他の妖精たちを通して情報を集めてくれたからだった。
本来であれば王城に張られた結界のせいで、いくら妖精を通しても情報は集められない。
しかし、その結界は国王たちを守っていた最後の一つを残してすべて解除されていた。
そして、残った結界は賢者ブリアックが作り出したもので、ナイにとってもデントン嬢にとっても親しみ深いものだ。
解除方法どころか存在はそのままで無効化することができる。
先ほどのように、その魔力を別の魔法陣に利用することすら可能だった。
デントン嬢が集めてきた情報では、この王城を混乱に陥れているのは原始妖精の『パック』。
いたずらを好む妖精だ。
その性質は無垢ゆえの邪悪。
それは妖精の本質であるが、多くの妖精が成長によって捨て去ったものだった。
善悪の価値観を持たないため、どんな残虐な行為でも遊びと同じ感覚でやってしまう。しかも強力な魔力を有していた。
攻撃方法は魔法特化。腕力はない。
むしろ肉体すらなかった。
そのパックを、この国の王族は建国当時から閉じ込め、魔法装置の動力として利用していたのだった。
「封印されている間に弱ってるとかはないのか?」
「ないな。妖精に時間はあまり関係ないからな」
「数は変わってないか?」
「ああ、二千百九十七体。十三×十三×十三、つまり素数の六六六だな」
アルベルトはわずかに眉を寄せる。
「相変わらず、意味がわからねーな」
「素数は魔法陣の基本だなのだがな。アルベルトは頭が悪いな」
「知ってる」
意味のない会話で、二人は笑い合う。
二人が出会ってからまだ一か月と過ぎてはいない。
しかし、二人の関係は長年の親友のようだ。
アルベルトに最初にあった、ナイに借りを返すという意識はもうない。
ナイはアルベルトにとって飼い猫であり、パートナーだ。
ナイの方も、アルベルトを利用してやろうという意識も薄まっていた。
むしろ、一緒にいる理由にそれを利用しているくらいだ。
自身が猫だということよりも、何か、それよりも優先しないといけない感情のようなものを感じていた。
『あそぼー……あそぼー……おにごっこ……皮をはいでもうふにしちゃおう……』
「来るぞ」
「おう!」
かわす言葉は短いが、それだけで臨戦態勢は整った。
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