悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ

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ヒロインの爆弾発言

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 放課後。
 私は、授業をサボったことを、担当の先生に謝りに行った。お説教を三十分。それに反省文と、大量の課題を言い渡された。自分がやったことだから、それは仕方がないとしても。

 職員室を出たところで、スカーレットが待ち構えていて、うんざりさせられた。正直、顔も見たくなかったのに。
 みぞおちの辺りが、一気にズシンと重くなる。

 でも、ティナとエリーを待たせていた。スカーレットの相手をする時間はなかったし、相手にもしたくなかった。無視しようとしたら、先に彼女がこちらへ来た。
 
「何か用?」

 イラッとしながら、尋ねる。ただでさえ、ささくれた心に、ニョキニョキとトゲが生えてくるようだった。
 スカーレットは私の真ん前まで来て、ごくごく小さく、つぶやいた。

「ちゃんと、悪役・・やりなさいよ」

 その言葉に、心臓がびくっとした。
 スカーレットは何事もなかったかのように、ツカツカ歩いて行く。私はとっさに振り返っていた。
 
 ……まさか。

 私が悪役令嬢だと知っているということは、つまり、彼女も転生者?
 
 あまりの衝撃に、体が固まってしまう。角を曲がって行くスカーレットを、ただ、呆然と見ていることしかできなかった。
 そこへ、

「どうした、ロベリア?」

 声をかけられて、はっとする。同時に硬直していた体から、ふっと力が抜けていった。

「また会ったな」

 歩いて来たのは、バーノンだった。
 スカーレットのことは気になるけど、気持ちを切り替え、尋ねる。

「殿下こそ、こんなところで何を?」
「お前と同じだ」

 私が二時間前、彼に言ったのと同じセリフだった。仕返しのつもりらしい。バーノンは、フフンと笑う。

「お前も授業をサボったことで、教師に呼び出されたのだろう?」
「私は、自主的に、謝りに来たんです」

 訂正すると、すぐにバーノンも言い返してくる。

「大して変わらん。どのみち、こってりしぼられたんだろうが。ここの教師陣は揃いも揃って、みな、説教が長いからな」
「つまり殿下は、度々、授業をサボってらっしゃるんですね」

 そのことに気づいて指摘すれば、

「変なヤツと遭遇したのは、今日が初めてだ」

 バーノンも余裕の笑みで言ってきた。
 今さらだけど。体は十七歳でも、中身はアラサー。年下相手に言い負けるのも、何だか悔しくて。私はさらに言い返す。

「その変なヤツに、声をかけてきたのは、殿下の方ではありませんか」
「俺の正体を知りながら、言い返してきたヤツも初めてだ」
「それは、」

 ぶっちゃけ、あまり好きなキャラではなかったから。だからこそ、言いたいことをばんばん言えるんだけど……。
 そう答えるわけにもいかず、言葉に詰まってしまった。

「それは?」

 答えを迫られて、困っていたら。バーノンが、ふと顔を横へ向けた。つられるように、そちらへ目を向ければ。

「ロベリア!」

 エリーとティナが、手を振っていた。迎えに来てくれたようだ。

「友人か?」
「えぇ」
「では、またな」

 そう言って、バーノンは職員室へ入っていく。彼もこのあとたっぷり、説教されるのだろう。そう思ったら、笑えた。
 私は二人と合流し、頭を下げた。
 
「ごめんなさい。待たせてしまって」

 すぐに戻るつもりが、三十分もお説教を食らったうえに、ついついバーノンとも話し込んでしまった。

「全っ然、気にしてないよー」

 エリーは、満面に笑って、ずいっと体を寄せてくる。

「それより、今の人、誰? 何だか、楽しそうだったけど」
「上級生でしたわねぇ?」

 エリーを真似て、ティナまで体を寄せてきた。
 二人とも目ざとい……。

「少し前に、困っているところを助けてくれた人」

 嘘はついてない。ただ、詳しいことはごまかして、私は二人を促した。

「ほら、行きましょう」

 髪飾りの件のお礼を兼ねて、お茶に誘っていたのだ。


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