断罪の華は夜に散る

はるまき

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序章

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私は、王太子殿下の冷たい瞳をまっすぐに見つめていた。

「リリアーナ・ベルトワール、公爵令嬢としての品位を保てなかった貴女との婚約は、ここに破棄させてもらう」

玉座の前で、王太子殿下、レオナードが厳かな声で言い放つ。

まるで刃のようなその言葉は、容赦なく私の心に突き刺さった。

背後で息を呑む声や囁きが響き渡る。貴族たちの視線が冷たく私に降り注ぐ。

「……理由を、伺ってもよろしいでしょうか?」

声が震えるのを感じたが、私はなんとか耐えた。この場で崩れるわけにはいかない。

だが、レオナード殿下は冷笑を浮かべるだけだった。

「理由? リリアーナ、あなたの所業はあまりにも醜い。私の愛しい者を侮辱し、無理やり追い詰めようとするその行動、見過ごすことなどできない」

私の視線は自然とその「愛しい者」へと向かう。
そこには、優美な姿で控える
侯爵令嬢の**セシリア**。

柔らかな微笑を浮かべるその様子に、会場中が称賛を送り、私を忌み嫌う視線が集まる。

「私はそんなこと…」

否定しようとしたが、すでに声を上げることさえも許されない空気が漂っていた。

誰も私の言葉に耳を傾けるつもりなどない。

すべてはこの瞬間のために仕組まれていたのだ――セシリアに嫉妬し、彼女を貶めようとした悪役令嬢としての私の姿が。

「私にはもう、君に心を捧げることはできない。リリアーナ、この婚約は破棄だ」

レオナード殿下の宣告と共に、その場にいた人々が一斉にざわめき、私を非難する視線がさらに強くなる。

私は拳を握りしめ、冷たい空気に耐える。

**だが――私はこの瞬間を待っていた。**

「……お言葉、確かに受け取りました」

私は静かに頭を下げた。
その言葉は殿下を驚かせたようだった。

冷たい態度のままの彼の顔に、一瞬の動揺が走るのを私は見逃さなかった。

「……何?」

「婚約破棄、感謝いたします」

私は笑った。
ーーーすべては計算通りだったからだ。

この婚約は、最初から私の望んだものではなかった。

レオナード殿下が私を選んだときから、私は自分の運命を理解していた。

「私は、王太子妃としての未来を望んでおりません。どうか、セシリア様とお幸せに」

会場にいた誰もが驚愕していた。

冷酷で悪意に満ちた私が、静かに受け入れ、退場するなんて誰も予想していなかっただろう。

だが、これでいい。
私には私の目指す道がある――それは誰にも知られてはならない、影のような存在としての新たな未来。

**リリアーナ・ベルトワール**の物語は、ここからが本当の始まりなのだ。
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