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私の発した言葉に室内に静寂が訪れた。
「フィ、フィオナ?」
「はい、嫌です。私は誰とも婚約したくありません」
しっかりと父親に目線を合わせて正直な気持ちを伝えたら・・・ありゃ父親の目にうるうると涙が溜まりだした。母親の方はすでに号泣している。
兄姉は驚きながらも嬉しそうにしているのが表情で見て取れた。
そうだよね・・・フィオナは家族に対して『はい』と『いいえ』以外の言葉を発したことがなかったのだから・・・
「・・・フィオナ嬢?」
「申し訳ございません。婚約の話しはなかった事に・・・」
しっかりと目の前にいるサウス公爵家の面々に向かって頭を下げた。
「フォーライト公爵・・・」
「申し訳ありません。私はフィオナ本人の主張を受け入れたいと思います」
両親と兄姉がスっと立ち上がり頭を下げるのを見て慌てて私も同じようにまた頭を下げた。
申し訳ない気持ちなど一切無いがコレでレオニールとの縁が切れるなら安いものよ。
サウス公爵夫妻の残念そうな顔には少~しだけ胸が傷んだけれど、レオニールは無表情で何を考えているのか分からない。
てか、怖いんですけど!
無表情でじっと見られるのってはっきり言って不気味。
「もうお前たちは部屋から退室しなさい。・・・アルバン、エルシア、フィオナを頼む」
「「承知致しました。さあフィオナ」」
双子の2人が同時に手を差し出してくれるから双子って行動まで似るんだ、と思ったら可笑しくてクスッと笑ってしまった。
あ~あ、ちょっと笑っただけなのに結局父親も兄姉も泣き出しちゃった。
それだけフィオナのことが心配だったんだね。
フィオナ・・・もう大丈夫たよ。
これからは私がフィオナとして生きていくけれど、この優しい家族をもう悲しませたりしないから安心してね。
「フィオナ。わたくしがお姉様よ」
「フィオナ。僕がお兄様だよ」
泣きながらも2人は私の手を離さず案内してくれたのは私でも知っている。
家族が寛ぐための部屋。
いつもフィオナも交えてお茶をしながら家族で談笑をする談話室。
10年近くも反応を返さないフィオナにいつも優しく接してくれていたよね。
ありがとう。
「大好きです。アルバン兄様。エルシア姉様」
フィオナの繰り返しの人生の中で見た2人は、とてもフィオナを可愛がっていた。
そんな妹が突然殺された時はどんなに悲しんだことだろう。・・・私がフィオナになったからには二度と悲しませたりしないからね。
「「フィオナ~~~」」左右から泣きながら痛いほど抱きしめてくる。
もう、私までつられて涙が出てきたじゃないか。
フィオナが心配かけてごめんよ~
3人で抱き合って泣いていると突然扉が開き、すでに泣き顔の両親が抱き合う私たち3人をまとめて抱きしめてきた。
「「フィオナ~~」」
「心配かけてごめんなさ~い」
家族5人でおいおい泣いた。
フィオナは愛されている。
この人達ならフィオナの繰り返しを話しても大丈夫だと信じられる。
だって私は10年近くもずっと中から見ていたんだもの。
今はもう私にとっても大切な家族だわ。
何度繰り返してもフィオナは家族に心配をかけたくなくて相談出来なかったんだよね。
でも私は話すよ。
神様にも口止めされていないからね。
ただ、最後の・・・心が壊れる原因になった出来事までは話すつもりはない。
それと、本物のフィオナがもうここには居ないことも・・・。
どうしよう・・・どこから話せばいいのだろう。
全員泣き過ぎて目がパンパンに腫れているのに、私に向けられる視線は愛情と期待に満ちている・・・
でも話すならこのタイミングがベストなんだよね。
・
・
・
よし!
「今から話すことはとても信じられない話しかもしれませんがすべて真実です。それでも聞いていただけますか?」
両親と兄姉の顔が真剣な顔に変わった。
この家族なら・・・フィオナの家族ならきっと信じてくれる。
私の中にはその時のフィオナの気持ちも、回避する為の行動も・・・そして死ぬ瞬間の記憶も共有して知っている。
私はフィオナが人生を何度も繰り返していること。
その中で毎回17歳までにある人物によって命を落としてきたこと。
その繰り返しで心が壊れかけたことを話した。
彼らは最初からフィオナの話しを疑う素振りすら見せなかった。
フィオナの死に悲痛な表情で涙し、すべてを話し終える頃には、怒りの表情に変わっていた。
「辛い話をよくしてくれた。・・・それでフィオナが覚醒とも言うべきか、目覚めたと言うべきか、その原因はもしかしてレオニールが関係しているのかい?」
凄い、この話しだけで真相に近づくなんて。
「はい、彼にも執着していたある人物に毎回殺されるのです。ですからその原因となる彼との婚約はどうしても避けたかったのです。彼の婚約者にさえならなければ目をつけられることもないかと思いまして」
「分かった、まずはレオニールとの婚約は回避できた。・・・だが、フィオナを守るためにはそれだけでは不十分だと思う。どうやらその人物は異常なほどフィオナを憎んでいるようだからな」
本当に凄い。
我が父はかなり頭が切れるとみた。
『転生者の女はフィオナを初対面の時から嫌い・・・いや殺すほど憎んでいた』と、神様も言っていたものね。
「取り敢えず今日はこの話しはコレでおしまいだ」
「ええ、わたくし達のフィオナが覚醒した喜ばしい日ですもの」
「そうですわ!皆んなで覚醒のお祝いをしましょうよ!」
「そうだね。フィオナが覚醒して僕はとても嬉しいよ」
はははっ覚醒に決まったんだ。
私(フィオナ)は恵まれているね。
もっと、もっと、この優しい家族と一緒にいたい。
せっかく転生したのに17歳にも満たない年齢で死ぬなんてごめんだ。
「フィ、フィオナ?」
「はい、嫌です。私は誰とも婚約したくありません」
しっかりと父親に目線を合わせて正直な気持ちを伝えたら・・・ありゃ父親の目にうるうると涙が溜まりだした。母親の方はすでに号泣している。
兄姉は驚きながらも嬉しそうにしているのが表情で見て取れた。
そうだよね・・・フィオナは家族に対して『はい』と『いいえ』以外の言葉を発したことがなかったのだから・・・
「・・・フィオナ嬢?」
「申し訳ございません。婚約の話しはなかった事に・・・」
しっかりと目の前にいるサウス公爵家の面々に向かって頭を下げた。
「フォーライト公爵・・・」
「申し訳ありません。私はフィオナ本人の主張を受け入れたいと思います」
両親と兄姉がスっと立ち上がり頭を下げるのを見て慌てて私も同じようにまた頭を下げた。
申し訳ない気持ちなど一切無いがコレでレオニールとの縁が切れるなら安いものよ。
サウス公爵夫妻の残念そうな顔には少~しだけ胸が傷んだけれど、レオニールは無表情で何を考えているのか分からない。
てか、怖いんですけど!
無表情でじっと見られるのってはっきり言って不気味。
「もうお前たちは部屋から退室しなさい。・・・アルバン、エルシア、フィオナを頼む」
「「承知致しました。さあフィオナ」」
双子の2人が同時に手を差し出してくれるから双子って行動まで似るんだ、と思ったら可笑しくてクスッと笑ってしまった。
あ~あ、ちょっと笑っただけなのに結局父親も兄姉も泣き出しちゃった。
それだけフィオナのことが心配だったんだね。
フィオナ・・・もう大丈夫たよ。
これからは私がフィオナとして生きていくけれど、この優しい家族をもう悲しませたりしないから安心してね。
「フィオナ。わたくしがお姉様よ」
「フィオナ。僕がお兄様だよ」
泣きながらも2人は私の手を離さず案内してくれたのは私でも知っている。
家族が寛ぐための部屋。
いつもフィオナも交えてお茶をしながら家族で談笑をする談話室。
10年近くも反応を返さないフィオナにいつも優しく接してくれていたよね。
ありがとう。
「大好きです。アルバン兄様。エルシア姉様」
フィオナの繰り返しの人生の中で見た2人は、とてもフィオナを可愛がっていた。
そんな妹が突然殺された時はどんなに悲しんだことだろう。・・・私がフィオナになったからには二度と悲しませたりしないからね。
「「フィオナ~~~」」左右から泣きながら痛いほど抱きしめてくる。
もう、私までつられて涙が出てきたじゃないか。
フィオナが心配かけてごめんよ~
3人で抱き合って泣いていると突然扉が開き、すでに泣き顔の両親が抱き合う私たち3人をまとめて抱きしめてきた。
「「フィオナ~~」」
「心配かけてごめんなさ~い」
家族5人でおいおい泣いた。
フィオナは愛されている。
この人達ならフィオナの繰り返しを話しても大丈夫だと信じられる。
だって私は10年近くもずっと中から見ていたんだもの。
今はもう私にとっても大切な家族だわ。
何度繰り返してもフィオナは家族に心配をかけたくなくて相談出来なかったんだよね。
でも私は話すよ。
神様にも口止めされていないからね。
ただ、最後の・・・心が壊れる原因になった出来事までは話すつもりはない。
それと、本物のフィオナがもうここには居ないことも・・・。
どうしよう・・・どこから話せばいいのだろう。
全員泣き過ぎて目がパンパンに腫れているのに、私に向けられる視線は愛情と期待に満ちている・・・
でも話すならこのタイミングがベストなんだよね。
・
・
・
よし!
「今から話すことはとても信じられない話しかもしれませんがすべて真実です。それでも聞いていただけますか?」
両親と兄姉の顔が真剣な顔に変わった。
この家族なら・・・フィオナの家族ならきっと信じてくれる。
私の中にはその時のフィオナの気持ちも、回避する為の行動も・・・そして死ぬ瞬間の記憶も共有して知っている。
私はフィオナが人生を何度も繰り返していること。
その中で毎回17歳までにある人物によって命を落としてきたこと。
その繰り返しで心が壊れかけたことを話した。
彼らは最初からフィオナの話しを疑う素振りすら見せなかった。
フィオナの死に悲痛な表情で涙し、すべてを話し終える頃には、怒りの表情に変わっていた。
「辛い話をよくしてくれた。・・・それでフィオナが覚醒とも言うべきか、目覚めたと言うべきか、その原因はもしかしてレオニールが関係しているのかい?」
凄い、この話しだけで真相に近づくなんて。
「はい、彼にも執着していたある人物に毎回殺されるのです。ですからその原因となる彼との婚約はどうしても避けたかったのです。彼の婚約者にさえならなければ目をつけられることもないかと思いまして」
「分かった、まずはレオニールとの婚約は回避できた。・・・だが、フィオナを守るためにはそれだけでは不十分だと思う。どうやらその人物は異常なほどフィオナを憎んでいるようだからな」
本当に凄い。
我が父はかなり頭が切れるとみた。
『転生者の女はフィオナを初対面の時から嫌い・・・いや殺すほど憎んでいた』と、神様も言っていたものね。
「取り敢えず今日はこの話しはコレでおしまいだ」
「ええ、わたくし達のフィオナが覚醒した喜ばしい日ですもの」
「そうですわ!皆んなで覚醒のお祝いをしましょうよ!」
「そうだね。フィオナが覚醒して僕はとても嬉しいよ」
はははっ覚醒に決まったんだ。
私(フィオナ)は恵まれているね。
もっと、もっと、この優しい家族と一緒にいたい。
せっかく転生したのに17歳にも満たない年齢で死ぬなんてごめんだ。
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