最初からここに私の居場所はなかった

kana

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オーギュスト王国編

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⋯⋯なんか違う。
違うっていうのも、私の勝手な思い込みなんだけれど⋯⋯なんて言うか、もっとこう両者の言い分を聞いて、公平な人だと思っていたんだよね。


ワーグナー先生が間に入った途端、べティーが泣きだした。

もちろん両者からの言い分も聞いてくれたけれど、泣き出したべティーから話を聞くのには時間がかかり、結局注意を受けたのは私だった。

はぁ?なんで?
べティーが泣たから私が悪くなるの?
じゃあ泣いたもの勝ちじゃない!

「リリーシアさん、確かにべティーさんの言動は褒められたものではないわ。でもね、彼女のような令嬢はどの時代にもいるのよ。同年代の異性と交流できる場なんて学生時代ぐらいなの。⋯⋯誰だって将来有望で少しでも家格の高い相手を見つけたいの。その気持ちは貴女にもわかるでしょう?」

分かりませんが?
相手を陥れてまで自分だけが幸せになろうなんて思わないわよ!

「それにね、こんな大勢の人が集まる場所で公爵令嬢であるリリーシアさんが  『付き合いたくない、関わりたくない』 なんて個人を責めるようなことを言えばどうなると思う?べティーさんが孤立することになることが、賢い貴女なら分かるでしょう?それこそがイジメに繋がると思わない?」

まるで聞き分けのない子を諭すようにワーグナー先生は優しく言う⋯⋯ただ、べティーの本性を知っている私は素直に受け入れられない。

それこそ先生であるワーグナー先生が皆の前で言うことじゃないわよね。
ほら、さっきまで私に同意していた生徒たちから『確かに言い過ぎだよな』『ミラドール様って冷たい人だったのね』なんて声が聞こえる。

「⋯⋯それはドドラー伯爵令嬢に濡れ衣を着せられようが、悪者のように言われようが
私に我慢しろと仰っているのですか?」

「そうではないわ。リリーシアさんは成績も優秀だし、友人にも恵まれているでしょう。多少のことは余裕を持って広い心で受け止めてあげて欲しいの。ね?」

「⋯⋯」

私の勘が言っている。
この人は信用したらダメな人間だ。
良い人ぶりたいだけだ。
本当は少しだけ⋯⋯憧れていたんだけどな。
でも、もういいや。
一瞬だけ向けられたワーグナー先生の目を見てしまったから⋯⋯

「⋯⋯ワーグナー先生の言いたいことは分かりました」

「そう!分かってくれたのね」

私の説得に成功したとでも思った?

「ええ、私も先生を交えてまでこんな揉め事は二度とごめんです。⋯⋯ですから、やはりドドラー伯爵令嬢とは距離を置くことに決めました。信用できない人とは付き合わない主義ですので。では失礼します」

「話にならないわね。わたくしもリリーシアに同感ですわ」

「わたしもです。⋯⋯残念です」

「俺もだ。⋯⋯見る目がなかったな」

「僕もかな~⋯⋯ワーグナー先生ってば、期待はずれだったようだね」

リズベット、マリエル、レイ、ミカエルの順に席を立った。

かすかに聞こえた『え?』って声はワーグナー先生だったのか、それとも他の生徒だったのか、もうどうでもいい。



私たちは振り向くことなく食堂をあとにした。

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