66 / 73
オーギュスト王国編
66
私と一緒にいたレイとマリエルもドドラー伯爵の言葉に眉をひそめた。
⋯⋯ミカエルの姿は見えないわね。どこをほっつき歩いているんだか。
広いとはいえ、入ってきた時からこの王宮の大広間にはむせ返るような香水の匂いが充満していた。
それと比べてもべティーとビアンカから漂ってくる匂いは強烈だ。
香水の瓶を頭から浴びたんじゃないかと疑うほどの臭さだ。
そばに寄ればそれだけでこっちまで匂いが移りそうで、訳の分からない言いがかりをつけるドドラー伯爵との話をさっさと終わらせることにした。
「どなたかしら?まずは名を名乗るべきでは?」
私がただの小娘だとはいえ、家格の差は大きい。
たとえ伯爵家当主でも、公爵令嬢相手に挨拶もなく失礼な発言は許されない。
「⋯⋯これは失礼しました。私はドドラー伯爵家当主、べティーの父です」
「で、ドドラー伯爵は『権力を笠に着て』でしたか? それと『虐め』? を私が行ったと仰るのでしょうか?⋯⋯ 申し訳ございませんか私には一切記憶にございませんが?」
「白々しい。ウチのべティーは毎日学院から泣きながら帰ってくるのですよ!理由を聞いても辛そうにするだけで何も話してはくれませんでした!」
ドドラー伯爵の声が大きいからだろうね、私たちに視線が集まっている。
まあ、気持ちはわかる。
公の場に姿を見せなかった公爵令嬢が現れたと思えば、権力を笠に着て格下の伯爵令嬢を虐めているなんて、人の醜聞が大好きな夫人や令嬢が聞き逃すはずがないものね。
「それで学院に通っている子息や令嬢の家に問い合わせてもらった。⋯⋯君は大勢の前でウチのべティーに近付くな!関わってくるな!と言ったそうじゃないか!」
『まあ』
『それは酷いわ』
そこだけを聞けばそう思うよね。
「ええ、言いましたよ」
「べティーは傷ついたんです。謝罪してください!」
べティー⋯⋯いつまでも泣き真似している場合じゃないわよ。
「謝りませんわよ。⋯⋯私たちが学院に編入した翌日にべティー嬢が虐められたと冤罪をかけたのを知っていますか?」
「ウチのべティーがそんなことをする訳がない」
「いいえ、沢山の生徒が目撃していますよ」
『そう言えばそんな噂もあったわね』
『ええ、わたくしも聞いたことがあるわ』
「そ、そんな⋯⋯べティー?本当なのか?」
「⋯⋯あ、あれは⋯⋯クスンッ、あれは勘違いしちゃっただけなのに⋯⋯リリーシアさんが許してくれなくて⋯⋯」
『まあ!公爵令嬢を敬称も付けないなんて』
普通はそう思うよね。
雰囲気が少しこちら寄りに向いてきた気がする。
「勘違い?でも謝ってもらっていないわ。自分の過ちを認められない、そんな人とは付き合うのも関わるのも嫌だと言っただけだわ。⋯⋯それでも私が悪いとドドラー伯爵は仰るのかしら?」
「⋯⋯」
「もうその辺にしなさいリリーシアさん」
また出たよ。
⋯⋯ミカエルの姿は見えないわね。どこをほっつき歩いているんだか。
広いとはいえ、入ってきた時からこの王宮の大広間にはむせ返るような香水の匂いが充満していた。
それと比べてもべティーとビアンカから漂ってくる匂いは強烈だ。
香水の瓶を頭から浴びたんじゃないかと疑うほどの臭さだ。
そばに寄ればそれだけでこっちまで匂いが移りそうで、訳の分からない言いがかりをつけるドドラー伯爵との話をさっさと終わらせることにした。
「どなたかしら?まずは名を名乗るべきでは?」
私がただの小娘だとはいえ、家格の差は大きい。
たとえ伯爵家当主でも、公爵令嬢相手に挨拶もなく失礼な発言は許されない。
「⋯⋯これは失礼しました。私はドドラー伯爵家当主、べティーの父です」
「で、ドドラー伯爵は『権力を笠に着て』でしたか? それと『虐め』? を私が行ったと仰るのでしょうか?⋯⋯ 申し訳ございませんか私には一切記憶にございませんが?」
「白々しい。ウチのべティーは毎日学院から泣きながら帰ってくるのですよ!理由を聞いても辛そうにするだけで何も話してはくれませんでした!」
ドドラー伯爵の声が大きいからだろうね、私たちに視線が集まっている。
まあ、気持ちはわかる。
公の場に姿を見せなかった公爵令嬢が現れたと思えば、権力を笠に着て格下の伯爵令嬢を虐めているなんて、人の醜聞が大好きな夫人や令嬢が聞き逃すはずがないものね。
「それで学院に通っている子息や令嬢の家に問い合わせてもらった。⋯⋯君は大勢の前でウチのべティーに近付くな!関わってくるな!と言ったそうじゃないか!」
『まあ』
『それは酷いわ』
そこだけを聞けばそう思うよね。
「ええ、言いましたよ」
「べティーは傷ついたんです。謝罪してください!」
べティー⋯⋯いつまでも泣き真似している場合じゃないわよ。
「謝りませんわよ。⋯⋯私たちが学院に編入した翌日にべティー嬢が虐められたと冤罪をかけたのを知っていますか?」
「ウチのべティーがそんなことをする訳がない」
「いいえ、沢山の生徒が目撃していますよ」
『そう言えばそんな噂もあったわね』
『ええ、わたくしも聞いたことがあるわ』
「そ、そんな⋯⋯べティー?本当なのか?」
「⋯⋯あ、あれは⋯⋯クスンッ、あれは勘違いしちゃっただけなのに⋯⋯リリーシアさんが許してくれなくて⋯⋯」
『まあ!公爵令嬢を敬称も付けないなんて』
普通はそう思うよね。
雰囲気が少しこちら寄りに向いてきた気がする。
「勘違い?でも謝ってもらっていないわ。自分の過ちを認められない、そんな人とは付き合うのも関わるのも嫌だと言っただけだわ。⋯⋯それでも私が悪いとドドラー伯爵は仰るのかしら?」
「⋯⋯」
「もうその辺にしなさいリリーシアさん」
また出たよ。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
いくら時が戻っても
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。
庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。
思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは―――
短編予定。
救いなし予定。
ひたすらムカつくかもしれません。
嫌いな方は避けてください。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ
霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」
ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。
でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━
これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。
※なろう様で投稿済みの作品です。
※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。
お望み通り、消えてさしあげますわ
梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。
王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。
国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの“役立たずの聖女”だと噂されるほどだったから。
彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。
この国はより豊かになる、皆はそう確信した。
だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
※この調子だと短編になりそうです。