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オーギュスト王国編
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「あ、あなた、な、何を言っていますの?」
ドドラー伯爵に問うビアンカの声は震えている。
そりゃあ、突然ビアンカ本人と娘のべティーを拒絶されたのだから当然か。
「私はお前など知らない。なぜお前が私の妻を装っている? お前は私に何をしたんだ? 私のとった言動はすべて記憶にある。私の自由と行動を奪ったのはお前だ!もう一度聞くお前は私に何をした?⋯⋯お前は何者なんだ?」
『どういうことだ?』
『洗脳でもされていたと言うのか?』
『確かにさっきまでのドドラー伯爵とは別人だわ』
周囲の注目のなか、ドドラー伯爵家劇場はまだまだ続きそうだ。いつ終わるのだろう?
「あ、あなた⋯⋯」
「やめろ!このっ、このっ、魔女めが!」
ビアンカが震えながら伸ばした手をドドラー伯爵は払いのけた。
今にもビアンカに殴りかかりそうだ。
「ひっ」
これ、本当にどうなるの? 新年の祝いどころじゃないのでは?
何とか言い逃れしようとするビアンカと、怒りの表情で怒鳴り続けるドドラー伯爵。べティーはキョロキョロと周囲を見渡し⋯⋯泣き真似をすることに決めたようだ。
ただ、そんなワザとらしいべティーに手を差し伸べる者はいない。
「ふっ、これで終わりだな」
ドドラー伯爵家劇場に見入っていた私は、隣にいるクロイツ殿下が何を呟いたのかは、よく聞き取れなかった。
そこへ⋯⋯
「何を騒いでいる」
陛下だ。私だけでなく会場にいる貴族のほとんどが、王族方の入場に気付かなかった。
慌てて臣下の礼をとる。
「⋯⋯ドドラー伯爵か。この騒ぎはなんだ?誰か説明しろ」
もう、何がなんだか原因が色々ありすぎて上手く説明出来るものはこの中にはいないのだろう。
「ドドラー伯爵よ申してみよ」
陛下に問われた伯爵は怒りは収まらないものの、何とか言葉を紡ぐが本人もよく分からない部分も多く、上手く説明ができないようだった。が、陛下は『魅了の魔法だな』と言い切った。
「ドドラー伯爵は聞き取りのため別室へ、その母娘は地下牢へ連れて行け」
それを聞いたべティーは逃げ出そうとホールを猿のように走り回り、ビアンカはヒステリーに叫んで暴れていた。
⋯⋯逃げられる訳がないのにみっともない。あまりにも必死なのが滑稽で申し訳ないけれど笑いが込み上げてくる。もちろん顔には出さないわよ。
結局、あっさりと捕まり騎士に引き摺られながら連れて行かれた。
やはり『魅了の魔法』だったのかとスッキリしたのと、彼女たちと二度と会うことはないと言う開放感と安心感からか体が軽くなった気がした。
⋯⋯前回、私が処刑されたのは『魅了の魔法』を使えるべティーが望んだから⋯⋯
だから私の処刑を喜んで見ていた皆んなは悪くなかったんだ⋯⋯なんて思わない。
だって痛みも屈辱も恐怖も忘れることが出来ないのだから。
静まり返るホール。
それでも陛下の言葉で新年の夜会が始まった。
ヒソヒソとさっきの出来事を話し合う人たちもいれば、ホールの中央で何事もなかったかのようにダンスを踊る人たちもいる。
⋯⋯でだ、いつクロイツ殿下は離れてくれるのだろうか?
てか、何しにこの国に来ているのだろうか?
「クロイツ殿下?そろそろ離して欲しいのですが?」
「⋯⋯」
「聞こえないふりはやめて下さい」
「ぷはっ⋯⋯リリーシアは相変わらず面白い顔をしてるな」
はあ!
「怒るなって、ほら踊るぞ」
私の返事を聞く前に、腰を抱かれたままホールの中央に移動させられた。
まあ、クロイツ殿下と踊るのは別にいい。
なんてったって、小さい頃から私のダンスの練習相手はクロイツ殿下だったから慣れたものだ。目を瞑っていても踊れる自信があるわね。
ただね⋯⋯気付かない振りをしていたけれど、クロイツ殿下が現れてからワーグナー先生の目が、クロイツ殿下から離れていない。
まさか、ワーグナー先生一目惚れしちゃった?
だからか、クロイツ殿下の隣にいる私は睨まれている。
確かにワーグナー先生なら年齢的にはつり合うと思うけれど、子爵家の令嬢では無理がある。
クロイツ殿下自身は身分の差など気にもしないだろうけれどね。
それでも、クロイツ殿下が選ぶ相手がワーグナー先生だったら嫌だな。と、なんとなく思ってしまった。
ドドラー伯爵に問うビアンカの声は震えている。
そりゃあ、突然ビアンカ本人と娘のべティーを拒絶されたのだから当然か。
「私はお前など知らない。なぜお前が私の妻を装っている? お前は私に何をしたんだ? 私のとった言動はすべて記憶にある。私の自由と行動を奪ったのはお前だ!もう一度聞くお前は私に何をした?⋯⋯お前は何者なんだ?」
『どういうことだ?』
『洗脳でもされていたと言うのか?』
『確かにさっきまでのドドラー伯爵とは別人だわ』
周囲の注目のなか、ドドラー伯爵家劇場はまだまだ続きそうだ。いつ終わるのだろう?
「あ、あなた⋯⋯」
「やめろ!このっ、このっ、魔女めが!」
ビアンカが震えながら伸ばした手をドドラー伯爵は払いのけた。
今にもビアンカに殴りかかりそうだ。
「ひっ」
これ、本当にどうなるの? 新年の祝いどころじゃないのでは?
何とか言い逃れしようとするビアンカと、怒りの表情で怒鳴り続けるドドラー伯爵。べティーはキョロキョロと周囲を見渡し⋯⋯泣き真似をすることに決めたようだ。
ただ、そんなワザとらしいべティーに手を差し伸べる者はいない。
「ふっ、これで終わりだな」
ドドラー伯爵家劇場に見入っていた私は、隣にいるクロイツ殿下が何を呟いたのかは、よく聞き取れなかった。
そこへ⋯⋯
「何を騒いでいる」
陛下だ。私だけでなく会場にいる貴族のほとんどが、王族方の入場に気付かなかった。
慌てて臣下の礼をとる。
「⋯⋯ドドラー伯爵か。この騒ぎはなんだ?誰か説明しろ」
もう、何がなんだか原因が色々ありすぎて上手く説明出来るものはこの中にはいないのだろう。
「ドドラー伯爵よ申してみよ」
陛下に問われた伯爵は怒りは収まらないものの、何とか言葉を紡ぐが本人もよく分からない部分も多く、上手く説明ができないようだった。が、陛下は『魅了の魔法だな』と言い切った。
「ドドラー伯爵は聞き取りのため別室へ、その母娘は地下牢へ連れて行け」
それを聞いたべティーは逃げ出そうとホールを猿のように走り回り、ビアンカはヒステリーに叫んで暴れていた。
⋯⋯逃げられる訳がないのにみっともない。あまりにも必死なのが滑稽で申し訳ないけれど笑いが込み上げてくる。もちろん顔には出さないわよ。
結局、あっさりと捕まり騎士に引き摺られながら連れて行かれた。
やはり『魅了の魔法』だったのかとスッキリしたのと、彼女たちと二度と会うことはないと言う開放感と安心感からか体が軽くなった気がした。
⋯⋯前回、私が処刑されたのは『魅了の魔法』を使えるべティーが望んだから⋯⋯
だから私の処刑を喜んで見ていた皆んなは悪くなかったんだ⋯⋯なんて思わない。
だって痛みも屈辱も恐怖も忘れることが出来ないのだから。
静まり返るホール。
それでも陛下の言葉で新年の夜会が始まった。
ヒソヒソとさっきの出来事を話し合う人たちもいれば、ホールの中央で何事もなかったかのようにダンスを踊る人たちもいる。
⋯⋯でだ、いつクロイツ殿下は離れてくれるのだろうか?
てか、何しにこの国に来ているのだろうか?
「クロイツ殿下?そろそろ離して欲しいのですが?」
「⋯⋯」
「聞こえないふりはやめて下さい」
「ぷはっ⋯⋯リリーシアは相変わらず面白い顔をしてるな」
はあ!
「怒るなって、ほら踊るぞ」
私の返事を聞く前に、腰を抱かれたままホールの中央に移動させられた。
まあ、クロイツ殿下と踊るのは別にいい。
なんてったって、小さい頃から私のダンスの練習相手はクロイツ殿下だったから慣れたものだ。目を瞑っていても踊れる自信があるわね。
ただね⋯⋯気付かない振りをしていたけれど、クロイツ殿下が現れてからワーグナー先生の目が、クロイツ殿下から離れていない。
まさか、ワーグナー先生一目惚れしちゃった?
だからか、クロイツ殿下の隣にいる私は睨まれている。
確かにワーグナー先生なら年齢的にはつり合うと思うけれど、子爵家の令嬢では無理がある。
クロイツ殿下自身は身分の差など気にもしないだろうけれどね。
それでも、クロイツ殿下が選ぶ相手がワーグナー先生だったら嫌だな。と、なんとなく思ってしまった。
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