最初からここに私の居場所はなかった

kana

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「ごめんって!そう怒るなよ~」

ふんっ!
歯型のついた鼻の頭を赤くして謝るクロイツ殿下!ざまぁみろだ。

幼児のしたことだからかな?クロイツ殿下⋯⋯怒らなかったな。
それに、まだ抱っこされたままだ。
巫山戯た口調で揶揄ってくるけれど、優しい人なのかもしれない。




なんて思った私が馬鹿だった。
訂正だ!やっぱりクロイツ殿下は意地悪だった!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「おお!君がリリーシアかい?アナスタシアの小さい頃にそっくりじゃないか!」

クロイツ殿下に抱っこされたまま連れて行かれたのは王宮の奥にある一室だった。⋯⋯たぶん王族が住むところだよね。
部屋に入るなり、ニコニコと両手を広げて歓迎してくれたのは、クロイツ殿下の父親でありお母様の従兄の国王陛下だった。

「さあ、私にも抱っこさせてくれ」と、手を伸ばしてきたけれど、クロイツ殿下がそれを拒んだ。

「ダメです」

なぜ?

⋯⋯。

「⋯⋯クロイツいいから渡せ。さあ、おいでリリーシア」

素直に手を伸ばすと、陛下は嬉しそうな顔をしてクロイツ殿下から私を受け取ろうとした⋯⋯が、距離をとってまた拒んだ。

「⋯⋯何をしている?早く渡せ」

「嫌だ。父上に渡すとリリーシアを返してくれない気がしますので」

結局、クロイツ殿下は私を抱いたままソファに座り、その隣に陛下が座って私をガン見してきた⋯⋯
うわっ、近くで見ると陛下ってすごくカッコイイ!それに若い!40歳には届いていなかったと思うけれど、20代にしか見えない。
マジカッコよ~眼福眼福。
クロイツ殿下も綺麗な顔立ちだけど、それとは系統が違う。瞳の色は同じでもきっとクロイツ殿下は母親似なんだろうな。

「君の瞳は私たちと同じロイヤルブルーだったんだね」

???
突然そう言った陛下が少し悲しそうに見えたのはお母様を思い出していたのだろうか?
何て応えればいいのかクロイツ殿下の膝の上で考えていたら勢いよくドアが開いた。

「抜け駆けなんて許せませんわ!」

「そうよそうよ」

現れたのはそれはそれは美しい迫力美女と美少女だった。

「アナちゃんのミニチュアだわ!」

「本当にアナ様にそっくりよ!」

⋯⋯たぶん王妃様とクロイツ殿下のお姉様で王女様だ。

「クロイツ!さあリリーシアちゃんを渡しなさい」

「⋯⋯嫌だ」

「おいでリリーシアちゃん」

部屋に入ってきた時からいい匂いしていたんだよね。
匂いに誘われるように気付けば手を伸ばしていた。
が!クロイツ殿下が私を離さない!仕方がない⋯⋯クロイツ殿下に抱っこされたまま挨拶をすることにした。

「はじめまちて、りりーちあでしゅ」

「「やだ~可愛い~」」

それからは可愛いを連呼され、王宮の美味なお菓子を食べさせられ、いつの間にか眠ってしまったようだった。
まあ、4歳なら体力もないしお昼寝の時間も必要だよね。

起きた時には部屋には陛下も王妃様も王女様も居なかったけれど、クロイツ殿下に抱っこされたままだった。他は従者と王宮侍女は部屋の端に控えているのが見えた。

「お前のの服がびちょびちょになったじゃないか~」

よだれ?ヨダレ?涎?

別に怒っていないし、汚いものを見るような目じゃないけれど、確実に私を揶揄っている口調だ。

はあ?だったら私を離せよ!先に拭けよ!
⋯⋯恥ずかしいが、まだ4歳。大抵の粗相は許されるはずだ。

「ぷッリリーシアはまだまだお子ちゃまだね」

イラッときて思わずクロイツ殿下の頬っぺをつねって仕返しをしようとしたが驚愕した。

「しゅべしゅべ~」

そして私は別の仕返しを思いついた。
そのすべすべの頬にすりすりとヨダレを擦り付けたのだ。

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