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「おはようレイ」
「お、おはようリリーシア」
あの日以降レイの態度がぎこちない。
てか、横にいても口数が減った気がする。
リズベットやマリエルが怒っていたのは一時的なもので、今は以前と変わらない付き合いをしている。ただ、レイだけがいつまで経っても申し訳なさそうな態度なのだ。
それに、聞いた話では学園が終わると騎士団の練習に毎日参加しているらしい。
さらに、人気者のレイは友人や令嬢たちに囲まれて学園生活を楽しそうに過ごしていたのに、今は友人はともかく令嬢たちとは距離を置くようになった。
だからか一部の令嬢からの視線が痛い。痛いと言うよりも恨みがましい目で睨まれるのだ。
何で?私は何もしていないよ?私を睨むぐらいなら、レイに直接理由を聞けばいいじゃん。
少し私の周りで不穏な空気が漂っているのを感じていたある日、思いもしない噂が私の耳に入ってきた。
「はあ?」
また面倒ごとに⋯⋯巻き込まれそうな予感。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「面白い噂が俺の耳にも入ってきたんだが、どうなんだリリーシア」
相変わらず片口角をあげて面白そうな顔をするクロイツ殿下。
それ!その顔!その顔が意地悪そうなんだってば!
このクロイツ殿下、普段は如何にも優秀で温厚そうに見え、ザ・王子様な見た目だけれど、こっちが本性だ。
もう10年以上の付き合いになるけれど、何度悔しい思いをさせられたか⋯⋯
今日は毎週恒例の王宮への訪問日だ。
ここで出される茶菓子は最高に美味しいんだよね。
部屋の隅に控えてる侍従と王宮侍女とも10年以上お世話になっている。
「ん~私もよく分からないんだよね」
「リリーシアがレイと親しくしている令嬢に嫌がらせをしているとか?レイと恋仲になった令嬢を無理やり引き離したとか?」
「ねえ、クロイツ殿下は馬鹿なの?私がそんなことをすると本気で思っているの?」
「相変わらずお前は王族相手に不敬だな」
「ふん!もちろん陛下や王妃様には失礼な言動は控えているわ。これはクロイツ殿下限定よ」
まあ、陛下と王妃様にはしっかりバレているけれどね。
「⋯⋯それで?」
「何でそんな噂が流れているのか私の方が聞きたいわよ」
「まあレイは顔も良ければ性格もいい。身分も三男とはいえ伯爵家子息だ。十分魅力的ないい男だ。⋯⋯そんな男とリリーシアは随分仲がいい」
「レイがいい男なのは認めるけれど、彼は幼馴染みみたいなものだし友達だわ。それ以上でもそれ以下でもないわね。それで妬まれてもね~」
「なあ?お前って鈍いの?鈍感なの?⋯⋯馬鹿なのか?」
くぅ~この言い方!仕返しか?
「鈍くないし!鈍感でもない!当然馬鹿でもない!」
そう言いながらクロイツ殿下に向かって、フォークを投げたけれど、彼は軽く指2本でそれを挟んだ。その顔には焦りはない。それどころか、また意地悪な顔になっている。
私とクロイツ殿下のこんなやり取りに慣れている侍従と侍女は以前ならギョッとして止めていたものの、近頃では一切動じず表情も変えなくなった。⋯⋯つまんない。
「ま、俺が言いたいのは"気を抜くな"ってことと"舐められるな"ってこと⋯⋯それと"困った時は遠慮なく俺に助けを求めろ"ってことだ」
⋯⋯普段は意地悪なクセに、たまに優しかったりするから憎めないんだよね。
「大丈夫。⋯⋯でも、ありがとぅ」
「お、おはようリリーシア」
あの日以降レイの態度がぎこちない。
てか、横にいても口数が減った気がする。
リズベットやマリエルが怒っていたのは一時的なもので、今は以前と変わらない付き合いをしている。ただ、レイだけがいつまで経っても申し訳なさそうな態度なのだ。
それに、聞いた話では学園が終わると騎士団の練習に毎日参加しているらしい。
さらに、人気者のレイは友人や令嬢たちに囲まれて学園生活を楽しそうに過ごしていたのに、今は友人はともかく令嬢たちとは距離を置くようになった。
だからか一部の令嬢からの視線が痛い。痛いと言うよりも恨みがましい目で睨まれるのだ。
何で?私は何もしていないよ?私を睨むぐらいなら、レイに直接理由を聞けばいいじゃん。
少し私の周りで不穏な空気が漂っているのを感じていたある日、思いもしない噂が私の耳に入ってきた。
「はあ?」
また面倒ごとに⋯⋯巻き込まれそうな予感。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「面白い噂が俺の耳にも入ってきたんだが、どうなんだリリーシア」
相変わらず片口角をあげて面白そうな顔をするクロイツ殿下。
それ!その顔!その顔が意地悪そうなんだってば!
このクロイツ殿下、普段は如何にも優秀で温厚そうに見え、ザ・王子様な見た目だけれど、こっちが本性だ。
もう10年以上の付き合いになるけれど、何度悔しい思いをさせられたか⋯⋯
今日は毎週恒例の王宮への訪問日だ。
ここで出される茶菓子は最高に美味しいんだよね。
部屋の隅に控えてる侍従と王宮侍女とも10年以上お世話になっている。
「ん~私もよく分からないんだよね」
「リリーシアがレイと親しくしている令嬢に嫌がらせをしているとか?レイと恋仲になった令嬢を無理やり引き離したとか?」
「ねえ、クロイツ殿下は馬鹿なの?私がそんなことをすると本気で思っているの?」
「相変わらずお前は王族相手に不敬だな」
「ふん!もちろん陛下や王妃様には失礼な言動は控えているわ。これはクロイツ殿下限定よ」
まあ、陛下と王妃様にはしっかりバレているけれどね。
「⋯⋯それで?」
「何でそんな噂が流れているのか私の方が聞きたいわよ」
「まあレイは顔も良ければ性格もいい。身分も三男とはいえ伯爵家子息だ。十分魅力的ないい男だ。⋯⋯そんな男とリリーシアは随分仲がいい」
「レイがいい男なのは認めるけれど、彼は幼馴染みみたいなものだし友達だわ。それ以上でもそれ以下でもないわね。それで妬まれてもね~」
「なあ?お前って鈍いの?鈍感なの?⋯⋯馬鹿なのか?」
くぅ~この言い方!仕返しか?
「鈍くないし!鈍感でもない!当然馬鹿でもない!」
そう言いながらクロイツ殿下に向かって、フォークを投げたけれど、彼は軽く指2本でそれを挟んだ。その顔には焦りはない。それどころか、また意地悪な顔になっている。
私とクロイツ殿下のこんなやり取りに慣れている侍従と侍女は以前ならギョッとして止めていたものの、近頃では一切動じず表情も変えなくなった。⋯⋯つまんない。
「ま、俺が言いたいのは"気を抜くな"ってことと"舐められるな"ってこと⋯⋯それと"困った時は遠慮なく俺に助けを求めろ"ってことだ」
⋯⋯普段は意地悪なクセに、たまに優しかったりするから憎めないんだよね。
「大丈夫。⋯⋯でも、ありがとぅ」
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