最初からここに私の居場所はなかった

kana

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「悪かったな」

「何が?」

「俺たちが原因で嫌な思いをしたんだろ?」

「⋯⋯ああ!あれね。既に解決済みだから気にしないで」

レイと練習仲間たちに突然謝られて驚いたけれど、私もリズベットもマリエルもすっかり忘れていたよ。
だって一週間以上前のことだよ?
やっぱり男女でクラスが別れていたら情報が届くのに時間がかかるのね。

「⋯⋯それ以降は何もないか?」

「ないわよ」

今回の件は彼女たちを相当怯えさせたみたいだし、リズベットとマリエルとも相談して学園長や実家にわざわざ報告もしなかったのよね。

と言うのも、私に甘いガルシア公爵家の皆んなに知られた日には、彼女たちの人生が終わっちゃうからね⋯⋯

リズベットは侯爵令嬢。騎士団長を父に持っているからか、多少のことでは親が出てくることは無い。

それよりもマリエルだ。マリエルは辺境伯令嬢だ。
上に5人も兄がいる。末っ子に生まれたマリエルは兄たちから溺愛されている。
マリエルへの溺愛が凄すぎて、ご両親がマリエルの将来を心配して兄たちと引き離したのだ。
だからマリエルは幼い頃から王都の邸で母親と暮らしている。
もちろん年に数回は辺境に帰省している。

今回のことが彼らに知られたら⋯⋯辺境から飛んで来るのは間違いない。それだけならいい。それだけでは済まないと知っているからマリエルも、実家には伝えていないのだ。
これは大袈裟ではなく本当に⋯⋯首が飛ぶ。
マリエルが絡むと彼らを止められるのは陛下か、クロイツ殿下か、騎士団長ぐらいだと言われている。

まあ、私の立場を知らなかったのは仕方がないとしても、リズベットやマリエルが高位貴族だとは知っていたはずなのにねえ?

「⋯⋯次は俺に言えよ?」

レイが責任を感じることはないのにね。
最近レイの雰囲気が変わった。
彼の太陽のような暖かい笑顔を最近は見ていない気がする。

「ん~もう大丈夫じゃないかな?でも、その時はお願いするね」

だって令嬢の集団なんて相手をするのも面倒なんだもん。

それにしてもクロイツ殿下といい、レイといい何だかんだと気にかけてくれるのは正直嬉しい。




それから何事もなく夏季休暇に入り、週一の王宮通いと、騎士団の練習に参加させてもらったり、伯父様やお婆様、兄様たちと楽しく過ごしている間に、長い休暇もあっという間に終わった。

休暇中に他にあったことと言えば⋯⋯何が理由かは不明だけど、セリア・シシー子爵令嬢が修道院に送られたらしい。
噂では破落戸だかチンピラだか、あまり評判のよろしくない男たちとつるんで何かやらかそうとしていたとか⋯⋯
結局、罪を犯す前に彼らと一緒にいたアジトを衛兵に踏み込まれ捕らえられたそうだ。

シシー嬢が修道院を出られることはないとか⋯⋯人生を棒に振ってまで何がしたかったのか、そこだけが気になった。
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