最初からここに私の居場所はなかった

kana

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オーギュスト王国編

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「⋯⋯お父様、『ビアンカ』もしくは『べティー』という女性に心当たりはございませんか?」

!!

お父様は驚きに目を見開き顔色が一気に悪くなった。
その様子にお父様がおかしくなっていた原因はビアンカの可能性が高くなった。

「あ、ああ」

やっぱり!

「昔、王都に生まれてくる子供にと玩具を買いに行ったんだ。その時にその名の女性から『俺との間に娘がいる』と聞かされたんだ。それも俺とは過去に恋人同士で、身分違いの差から無理やり引き離されたと言われた」

前回私が聞いた噂話と、今回ドドラー伯爵との噂話と同じだ。

「ああ!リリーシア勘違いしないでくれ!誓って言う!俺は過去も現在もアナを愛している。あの女と恋人だったことは一度もない」

それから暫く、お父様はお母様との出会いから如何にお母様を愛していたかを照れながら嬉しそうに話して聞かされた。
それはもう事細かく⋯⋯両親の初キスとか聞かされるこっちが恥ずかしいわ!

話をまとめると、女性から言い寄られることの多かった王子時代、女嫌いで一切女性に興味を示さないことを心配され、前国王夫妻(私の祖父母)に留学を勧められたそうだ。

そこで出会ったのがお母様だった。
ひと目で恋に落ちたお父様は、今まで言い寄られることはあれど、自分から動く経験がなかったお父様は陰から見つめていたと⋯⋯(ストーカーか?)

それでも留学期間が残り一年となると、焦りがでてきたと⋯⋯(二年間見ていただけとか情けないだろ!)
そこでやっと行動を起こしたが、何が原因かお母様を怒らせたらしい。その時にお腹にパンチをお見舞いされたとか⋯⋯(何をしたらパンチを食らうのよ!)
それが衝撃的でお母様に気持ちを伝えるだけで満足するつもりだったお父様を夢中にさせたとか⋯⋯(変態?)

それからは『必ずアナスタシアを妻に!』をモットーに恥も外聞も捨て去り、口説くようになったらしい。
その度にパンチをお見舞いされたらしい。
『だから腹筋を鍛えたんだ』と照れながら言われても娘の私からするとバカ?としか思えないわ。

てか、私の記憶にあるお母様は儚げな見た目で優しくてとても自分よりも遥かに体格のいい男性に暴力を振るうような人には見えなかったよ?

まあ、その甲斐あってかお父様の努力は実り?お母様の心を射止めたらしい⋯⋯(お母様も変態だったの?)

話をまとめると、お父様はお母様の前に恋人など居るはずもなく、今も昔も愛しているのはただ一人お母様だけで、ビアンカが言っていることは人違いだとしか思えなかったそうだ。

お母様との出会いや、結婚してからの幸せな日々を嬉々として話していたお父様の顔から、また涙が溢れだした。

「⋯⋯ビアンカと会って以来どんどん俺の言動がおかしくなっていったんだ⋯⋯」
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