最初からここに私の居場所はなかった

kana

文字の大きさ
49 / 73
オーギュスト王国編

49

えっと⋯⋯暇なのかな?
うん、暇なんだよね?

突然馬車が止まっても、襲われている音も雰囲気もなかったからねそんな気はしたんだよ。

「おかえり。皆んな元気だったかい?」

失礼にもノックもなくドアを開けたのは、見慣れた金髪にロイヤルブルーの瞳のクロイツ殿下だった。相変わらず胡散臭そうな笑顔だ。
そっとリズベットが席を立ち向かい側に移動するものだから、馬車に乗り込んできたクロイツ殿下は当たり前のように私の隣に座った。

「そう言えばお前たちにはまだ婚約者がいなかったな?いい人は出来たか?」

「ん~リリーシア姉様とギリアン殿下に婚約話があったよ~」

「ミカエル⋯⋯それはもう話はついているわ」

「⋯⋯へぇ」

こんな話を聞かせたら『振られたのか』ってクロイツ殿下にまた揶揄われるからやめてよ。
⋯⋯あれ?何も言ってこない。
いつもなら笑い飛ばすか、馬鹿にするのにと思いクロイツ殿下の方を向くと、笑顔だけど目が笑っていないような⋯⋯てか怖い。

「わたくしも残念ですがそのような方には巡り会っておりませんわ」

この雰囲気を変えてくれてありがとうリズベット!

「わ、わたしもです」

「⋯⋯俺は⋯いません」

ほら~マリエルとレイも怖かっているじゃない。

「だからね~僕がリリーシア姉様の婚約者に立候補したんだ~でも速攻でお断りされちゃった~えへへっ」

ミカエルは⋯⋯通常通りね。もう、アンタは黙っていなさい。

「それでさ~ギリアンのせいでリリーシア姉様なんて女の子たちから意地悪されたんだよ~」

ミカエル!それを言うな~!

「⋯⋯へぇ、それは解決したのか?」

ん?クロイツ殿下がレイに視線を向けた?

「うん!ミラドール公爵がね!」

「⋯⋯」

「でね!今ではリリーシア姉様なんてって呼ばれてて、皆から恐れられているんだよ~」

もうイヤ!馬車から引きずり下ろそうかしら?

「ぷっ」

このクロイツ殿下の『ぷっ』久しぶりに聞いたけれど何度聞いてもイラッとくるわね。

だって?」

「そうだよ~」

「ぷっこんなに可愛いのにな~」って、ニヤリと意地悪そうな顔で頭を撫でてきた。
うぐぐ⋯⋯これよこの顔!ムカつくけれど懐かしさすら感じてしまう。
クロイツ殿下は今も私を子供扱いするのだ。

「相変わらず殿下とリリーシア姉様は仲がいいよね~僕ヤキモチをやいちゃうよ~」

本当に黙ってて!
マジでミカエルの口を縫いつけちゃおうかしら?

「俺はコイツがオムツをしている頃から面倒を見てやっているからな」

「んなわけないでしょ!クロイツ殿下と初めて会ったのは私が4歳の時よ!とっくにオムツは取れていたわ!」

リズベット?マリエル?なに笑っているのよ。
レイ?顔を背けても肩がプルプルしているわよ。
この休暇中に何度クロイツ殿下に付き合わされるんだろう?と思うとため息が出ちゃう。

こんな感じのクロイツ殿下だけれど嫌いにはなれないんだよね。

あなたにおすすめの小説

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ

霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」 ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。 でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━ これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。 ※なろう様で投稿済みの作品です。 ※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。

婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。

しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。 全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。 しかも、王妃も父親も助けてはくれない。 だから、私は……。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。

火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。 しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。 数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。