最初からここに私の居場所はなかった

kana

文字の大きさ
52 / 72
オーギュスト王国編

52 ~ギリアン殿下視点~

しおりを挟む
~ギリアン殿下視点~




べティー・ドドラー伯爵令嬢。
ドドラー伯爵が前妻との婚姻前に付き合っていた女性の娘。
しかも、ドドラー伯爵の実娘だという。

礼儀作法もマナーも未熟な令嬢だ。
僕が学院に入学してから毎日のように追いかけ回されうんざりしている。
ハッキリ言って迷惑だ。

入学したての頃は彼女だけでなく、大勢の令嬢に取り囲まれて困っていた。
その理由は僕が王子で婚約者がいないからだ。余程、王族という身分は魅力的なのだろう。
それも入学から1年も経てば落ち着いてきた。
僕に近付くにはジョシュアの鉄壁の守りをくぐり抜けなくてはならないからだ。
ほとんどの令嬢が諦めるなか、ドドラー伯爵令嬢だけは執拗くまとわりついてくる。
クラスは違うが昼休憩と登下校時間は同じだからか待ち伏せされているようだ。

⋯⋯馬鹿らしい。
許可も出していないのに敬称も付けずに名を呼ぶ。
隙あらば勝手に僕に触れようとする。
何かと王族の僕をドドラー伯爵家のお茶会に誘おうとする。王族が参加するなら侯爵家以上だということも知らない。

成績も下から数えた方が早い。
礼儀もマナーも知性もない。
そんな令嬢に惹かれるわけがない。
そんな令嬢を妻に迎えるわけがない。

王族の伴侶には求められるものが何一つとして身に付いていないのだから。

ドドラー伯爵令嬢にはうんざりしていたが、学院生活自体は有意義に過ごしていた。
そして1年が過ぎ、新入生が入ってくる時期に父上から聞かされた。

『レアンドル、お前の叔父の娘が帰ってくるぞ』

『マシェリア王国にいるリリーシアが?』

叔父上の娘⋯⋯従妹なのに会ったことがないな。

『ああ、編入してくる』

『僕にそのリリーシアの世話を?』

『その必要はない。友人と一緒だからな。頭の隅にでも置いておけばいい』

ふ~ん。

『本当はお前の婚約者にしたかったのだが、無理に結ぶわけにはいかなくなった』

従妹には会ってみたいが興味はない。だが王命を出せない理由が気になる。

『レアンドルがマシェリア王国の公爵令嬢を妻に迎えたのは知っているな?彼女はマシェリア現国王の従妹だったんだが既に亡くなっている。⋯⋯でだ、情けないことにレアンドルは残された幼いリリーシアに見向きもせず、使用人任せだった。それを見かねたガルシア公爵⋯⋯リリーシアの伯父が引き取りに来たんだ。⋯⋯マシェリア王国の王太子を連れてな。その時にリリーシアの婚約者を後見人になったガルシア公爵の許可なく決めるなと念を押されたんだ』

親が育児放棄したなら仕方がないな。
でもレアンドル叔父上はそんな人には見えないが⋯⋯

『当時のレアンドルはそう言われても仕方がなかったんだ⋯⋯あいつは魅了に掛けられていた』

はあ?魅了魔法?

それから魅了魔法の効果を聞いて恐ろしくなった。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


いつも稚拙な小説を読んでくださりありがとうございます。

たくさんの登録とエールも励みになっています。m(_ _)m

次話もギリアン殿下視点です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約相手は私を愛してくれてはいますが病弱の幼馴染を大事にするので、私も婚約者のことを改めて考えてみることにします

よどら文鳥
恋愛
 私とバズドド様は政略結婚へ向けての婚約関係でありながら、恋愛結婚だとも思っています。それほどに愛し合っているのです。  このことは私たちが通う学園でも有名な話ではありますが、私に応援と同情をいただいてしまいます。この婚約を良く思ってはいないのでしょう。  ですが、バズドド様の幼馴染が遠くの地から王都へ帰ってきてからというもの、私たちの恋仲関係も変化してきました。  ある日、馬車内での出来事をきっかけに、私は本当にバズドド様のことを愛しているのか真剣に考えることになります。  その結果、私の考え方が大きく変わることになりました。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

私は私を大切にしてくれる人と一緒にいたいのです。

火野村志紀
恋愛
花の女神の神官アンリエッタは嵐の神の神官であるセレスタンと結婚するが、三年経っても子宝に恵まれなかった。 そのせいで義母にいびられていたが、セレスタンへの愛を貫こうとしていた。だがセレスタンの不在中についに逃げ出す。 式典のために神殿に泊まり込んでいたセレスタンが全てを知ったのは、家に帰って来てから。 愛らしい笑顔で出迎えてくれるはずの妻がいないと落ち込むセレスタンに、彼の両親は雨の女神の神官を新たな嫁にと薦めるが……

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

【完結】ハーレム構成員とその婚約者

里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。 彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。 そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。 異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。 わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。 婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。 なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。 周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。 コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

駄犬の話

毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。 不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。 もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。 ※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。

【完結済】25年目の厄災

恋愛
生まれてこの方、ずっと陽もささない地下牢に繋がれて、魔力を吸い出されている。どうやら生まれながらの罪人らしいが、自分に罪の記憶はない。 だが、明日……25歳の誕生日の朝には斬首されるのだそうだ。もう何もかもに疲れ果てた彼女に届いたのは…… 25周年記念に、サクッと思い付きで書いた短編なので、これまで以上に拙いものですが、お暇潰しにでも読んで頂けたら嬉しいです。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

処理中です...