【完結】悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます

kana

文字の大きさ
48 / 122
ウインティア王国編

48

しおりを挟む
アランが教えてくれたエリーの飼いだした犬に少しだけ嫉妬してしまう。
きっとエリーのことだ大事に育てているんだろう。

俺の瞳と同じ色の子犬が弱っているのを見て俺と被って心配してくれたんだ。

元気で強い子に育てたら俺が元気になると思ってくれたんだな。

名前まで俺から取ってくれたと聞いて泣いてしまうかと思った。

エリーの姿が見えないと泣いてしまうとアランが言っていた。
そんな子犬ならエリーのことだ、甲斐甲斐しく喜んで世話をしていることだろう。

羨ましいなその子犬。
エリーに甘え放題じゃないか。

俺だってエリーにピクニックに行った時は食べさせてもらったし、濡れた髪を拭いてもらったことがあるんだからな!
あの時のエリーも可愛いかったな。

もう俺はエリーに甘えることも出来ないが、『ラン』がエリーのそばにいる限り俺のことを忘れられることはない。

もうそれだけで十分だ。

幼い頃に初めて会った時にエリーの笑顔に惹かれた。
それから年に1度しか会えなかったが、アトラニア王国まで追いかけて、たった3ヶ月だけど側にいることができた。

もし・・・もしもエリーと想いが通じ合えたら俺は何を犠牲にしても二度とエリーを手放すことはないだろう。

もしも・・・なんて有り得ないけれど夢を見ることを今だけは許して欲しい。
半年ぶりにエリーを近くに感じることができたんだ・・・エリーに会いたいな。


俺はエリーが安心できるように強くならないとダメだ。

自分だけの殻に閉じこもっているのは終わりだ。
俺はこの国の王になるのだから。

気を引き締めてお茶会の会場に向かうと、言い争う声が聞こえてきた。

話を聞くとやはりあの女が原因だった。
今度はアランに目をつけたのか。
男漁りするなら帰れと言うと黙って席に座ったが、アランから目を離さない。

アランが婚約者がいると言ったことも信じていないのか、バカだからもう忘れたのか自分都合で解釈しているのが顔に出ている。

どうも俺を恐れているようだから俺がアランの横にいれば近づくことはないだろう。
同じようにゾルティーとガルザークも思ったのか男4人でいることになった。

それにしても、あの女と同じ様な嫌な目で俺たちを見る令嬢が多いな。

特にセルティ公爵令嬢。
俺の婚約者候補になると周りに持ち上げられているようだが、当然だというように受け入れて派閥を大きくしようと彼女が動いているのは耳に入ってきている。
セルティ嬢が俺の婚約者になるのは自分だと、触れ回っていることも報告があった。

今も挨拶に来たが、後ろにぞろぞろと取り巻きを引き連れて、周りを他の派閥の令嬢が入り込めないように俺たちを囲んでいる。
まるで本当に俺の婚約者に選ばれたかのような態度に気分が悪い。
余程自分に自信があるんだな。
腹に持つ野心を隠せない女が王妃など務める資格は無いと気づかないのか?
令嬢たちのキツい香水の匂いで鼻がおかしくなりそうだ。

ガルザークのガードが堅く俺に話すことも触れることも出来ないと分かると、セルティ公爵令嬢は俺の隣で黙って微笑んでいる。
だがそんな微笑みなどエリーの女神の微笑みを知っている俺からしたら気持ち悪いだけだ。

意外だったのはガルザークだ。
以前のガルザークは女たちに囲まれると鼻の下を伸ばして調子に乗っていたと記憶していたが、俺が編入してから見るガルザークは令嬢たちとは適切な距離を取るよう心掛けているように見える。

俺と同じように変わる切っ掛けを見つけたのかも知れない。


結局お茶会がお開きになるまで『マイ』がアランに接触することはなかった。

帰ろうとしているアランを呼び止めて一週間後、王宮まで来てくれと伝えた。
この機会に渡したい物があるんだ。


その間に急いで追加のプレゼントを用意した。
1つはもともと渡したくても渡せなかったエリーへのプレゼントだ。
気に入ってくれるだろうか?
使ってくれるだろうか?
一度でいいから使っている姿を見てみたい。




アランは約束通り一週間後王宮まで来てくれた。
最初はアランとレイチェル嬢の今の状況を聞いた。
前から思っていたが、アランはレイチェル嬢にベタ惚れだ。

ピクニックに行った時も、カトルズ公爵家でも2人が散歩する姿を何度も見たな。
そのアランとレイチェル嬢を見るエリーが『2人の優しい雰囲気に癒されるの』なんて言っていたが、俺にしてみれば2人を見つめながら微笑むエリーに癒されていたこともきっと気づいていなかったんだろうな。

アランはあの夏期休暇中に婚約指輪を渡したそうだ。
きっとアランの独占欲丸出しの指輪だと想像がつく。

アトラニア王国の学院ではアランとレイチェル嬢の婚約が噂になるなり、元婚約者に蔑ろにされていたレイチェル嬢を、以前から蔑んで嘲笑っていた令嬢たちの嫌がらせが始まったそうだ。
そこはアランがレイチェル嬢をしっかり守る姿勢を見せたことで今は落ち着いたようだ。

その時のエリーが殴り込みに行こうとしたのを止める方が大変だったと苦笑いで教えてくれた。

エリー何をやっているんだ!
俺でも止めるよ。
怪我でもしたらどうするんだ!

でも、エリーの怒った顔も可愛いんだろうな。
俺も見てみたかったよ。

帰りにアランにエリーへのプレゼントと、『ラン』へのプレゼントを渡した。

使ってくれると嬉しいと伝えて、アランを見送った。

アトラニア王国でエリーは元気にやっているそうだ。

俺も負けてられないな。

しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。 さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。 “私さえいなくなれば、皆幸せになれる” そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。 一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。 そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは… 龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。 ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。 よろしくお願いいたします。 ※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。

処理中です...