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ウインティア王国編
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~リーゼ・ライベルン侯爵令嬢視点~
6歳の時に王宮のお茶会に参加した時に初めてこの国の王子様に出会った。
綺麗な顔で笑顔で挨拶を返してくれたルフラン殿下に一目惚れした。
でも、その数分後には失恋した。
だってルフラン殿下が恋に落ちる瞬間を見てしまったから・・・。
ウォルシュ嬢の弟に向けられた微笑みは私から見ても天使のように可愛らしかった。
それからも毎年開かれるお茶会でも、令嬢たちに囲まれていてもルフラン殿下の視線はウォルシュ嬢に向けられていた。
不器用なルフラン殿下がウォルシュ嬢に王宮の出入りを禁止する言葉を告げたあと一瞬だけ泣きそうな顔をしたことにも気が付いた。
次の年からも毎回ルフラン殿下の目はウォルシュ嬢を探していたけれど、彼女が参加することはなかった。
年々ルフラン殿下の顔から表情が無くなるのを見てきたけれど、何も思わなかった。
何年も前の子供だった頃のわたしの一目惚れなど、初めての王宮、初めての王子様の笑顔に浮かれていただけで、あれは気の所為だったとこの歳になると理解していた。
学園に入学した時にルフラン殿下が留学してこの学園にいないことで、彼を狙っていた令嬢たちが残念がっているのを冷静に見ていた。
それよりもウォルシュ侯爵家の双子の姉弟がいないことの方が気になった。
まだ婚約者のいないルフラン殿下の婚約者候補だと勝手に生徒たちに祭り上げられ、私が何もしなくても派閥は大きくなり、セルティ公爵令嬢の派閥と敵対する形になってしまった。
婚約者の立場も、王妃の椅子も全く興味などなかったのに・・・
勝手に候補に祭り上げられても嬉しくも何ともなかった。
けれど、周りに人がいることが嬉しくて、この場所が心地よかっただけ。
だって家に帰れば私の居場所はなかったから・・・
両親から掛けられる言葉は『絶対にルフラン殿下に気に入られろ』『気を抜くな』『完璧な淑女になれ』『我が家の恥になるようなら追い出す』厳しい言葉ばかり。
そのくせ甘え上手な妹のフィリアが厳しい淑女教育を泣いて嫌がれば、必要最低限のマナーだけを身に付けさせて終わらせた。
何度も将来困るのはフィリアだと訴えても、両親は聞く耳を持たなかった。
『リーゼと違って愛嬌もあり、これだけ可愛ければお前がダメでもフィリアなら王族の目にも止まるだろう』
それならもっとしっかりと教育をしないと本当に選ばれた時にどうするの?
両親のそんな言葉を鵜呑みにするフィリア。
私には甘えることを許さない両親。
毎日続く勉強と厳しいマナー教育。
その間もフィリアは両親に甘えて我儘三昧。
フィリアには何でも買い与える。
泣けば抱きしめる。
私の味方は4つ年上の兄だけ。
兄が私と同じようにフィリアにも教育をさせようとしても両親は聞かなかった。
『僕がこの家を継いだらリーゼを自由にしてあげるからね。王家に無理に嫁がなくていいんだよ。好きな人のところにお嫁にいきなさい』
その優しい兄を学園卒業後、"当主になるなら領地で学んでこい"と追い出すように領地に向かわせた。
次期当主の兄がいなくなってからのメイドたちは、両親に大切にされるフィリアを優先させるようになった。
私の身の回りの世話だけはしてくれるが、それだけ。
この邸には私に声をかけてくれる人はいなくなった。
そんな私をフィリアが笑って見下してくる。
機嫌が悪いと私の部屋まできて八つ当たりする。
怒鳴るだけだから怖くも何ともない。
気が済めば満足するのだから好きに怒鳴らせている。
私も兄もフィリアの本性を知っている。
何も見ようとせず騙される両親のことはもう諦めた。
フィリアの涙も嘘。
自分の欲しい物はどんな手を使ってでも手に入れる強欲さ。
誰かを悪者にしてでも思い通りにする。
こんな子が王族の目に止まる?
マナーも常識も知らないのに?
我儘で思いやりもないのに?
だから家に居場所のなかった私が生徒たちに祭り上げられて婚約者候補だとチヤホヤされることに何も言わなかったのは、もう一人はイヤだったから。
話し相手が欲しかったから。
ただ誰かに側にいて欲しかったから。
その状況が変わったのはルフラン殿下が留学から帰ってきたから。
勝手にできた派閥とはいえ、ルフラン殿下にアピールしなければならなくなった。
アピールの仕方など知らない私はフィリアの甘える仕草を真似るしかなかった。
そのせいでルフラン殿下に何度手を振り払われて睨まれたことか・・・
そのうちタイロン伯爵子息が間に入るようになってくれたから、ルフラン殿下に近づかなくてよくなってホッとした。
セルティ公爵令嬢の強かさには別の意味で尊敬した。
派閥の皆に急かされても、もう私は何もしなかった。
2つ年下のフィリアが学園に通う年になってから侯爵令嬢なのに最下位のクラスになると知ったフィリアが学園には行かないと、また我儘を言い出した。
だからあれほど言ったのに・・・
この頃にはこの邸で私が声を出すことも殆どなくなっていた。
結局、入学前に怪我をして治療の為入学が遅れることにしたようだ。
フィリアと一緒に嘘を考える両親を軽蔑してしまう。
まあ、病弱設定には出来るはずがない。
お母様と度々お茶会に参加していたものね。
そこでも庇護欲をそそる見た目を利用して、沢山の子息達にプレゼントを催促していたのも知っているのよ。
最終学年に上がってすぐ、セルティ公爵令嬢と転移者のマイさんが騒ぎを起こした。
鋭い目つきのルフラン殿下に怯える生徒もいるなか、ウォルシュ侯爵令嬢が登場した。
誰にも触れることを許さなかったルフラン殿下に触れて、微笑むと本当に女神かと錯覚する程の美しさだった。
それにルフラン殿下のウォルシュ嬢を見つめる目が優しくなっている。
ルフラン殿下がウォルシュ嬢の手を握って去って行く後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
嬉しかった。
ルフラン殿下の一目惚れをした瞬間を見て、彼の顔から表情が消えていくのも見ていた。
その一途な思いが届いたのだと、手を繋いで去って行く2人を見て本当に嬉しかったの。
それからはルフラン殿下とウォルシュ嬢が手を繋いで歩く姿が学園内でもよく見られるようになった。
私にとやかく言う派閥のメンバーもいなくなった頃、ルフラン殿下とウォルシュ嬢の婚約が発表された。
6歳の時に王宮のお茶会に参加した時に初めてこの国の王子様に出会った。
綺麗な顔で笑顔で挨拶を返してくれたルフラン殿下に一目惚れした。
でも、その数分後には失恋した。
だってルフラン殿下が恋に落ちる瞬間を見てしまったから・・・。
ウォルシュ嬢の弟に向けられた微笑みは私から見ても天使のように可愛らしかった。
それからも毎年開かれるお茶会でも、令嬢たちに囲まれていてもルフラン殿下の視線はウォルシュ嬢に向けられていた。
不器用なルフラン殿下がウォルシュ嬢に王宮の出入りを禁止する言葉を告げたあと一瞬だけ泣きそうな顔をしたことにも気が付いた。
次の年からも毎回ルフラン殿下の目はウォルシュ嬢を探していたけれど、彼女が参加することはなかった。
年々ルフラン殿下の顔から表情が無くなるのを見てきたけれど、何も思わなかった。
何年も前の子供だった頃のわたしの一目惚れなど、初めての王宮、初めての王子様の笑顔に浮かれていただけで、あれは気の所為だったとこの歳になると理解していた。
学園に入学した時にルフラン殿下が留学してこの学園にいないことで、彼を狙っていた令嬢たちが残念がっているのを冷静に見ていた。
それよりもウォルシュ侯爵家の双子の姉弟がいないことの方が気になった。
まだ婚約者のいないルフラン殿下の婚約者候補だと勝手に生徒たちに祭り上げられ、私が何もしなくても派閥は大きくなり、セルティ公爵令嬢の派閥と敵対する形になってしまった。
婚約者の立場も、王妃の椅子も全く興味などなかったのに・・・
勝手に候補に祭り上げられても嬉しくも何ともなかった。
けれど、周りに人がいることが嬉しくて、この場所が心地よかっただけ。
だって家に帰れば私の居場所はなかったから・・・
両親から掛けられる言葉は『絶対にルフラン殿下に気に入られろ』『気を抜くな』『完璧な淑女になれ』『我が家の恥になるようなら追い出す』厳しい言葉ばかり。
そのくせ甘え上手な妹のフィリアが厳しい淑女教育を泣いて嫌がれば、必要最低限のマナーだけを身に付けさせて終わらせた。
何度も将来困るのはフィリアだと訴えても、両親は聞く耳を持たなかった。
『リーゼと違って愛嬌もあり、これだけ可愛ければお前がダメでもフィリアなら王族の目にも止まるだろう』
それならもっとしっかりと教育をしないと本当に選ばれた時にどうするの?
両親のそんな言葉を鵜呑みにするフィリア。
私には甘えることを許さない両親。
毎日続く勉強と厳しいマナー教育。
その間もフィリアは両親に甘えて我儘三昧。
フィリアには何でも買い与える。
泣けば抱きしめる。
私の味方は4つ年上の兄だけ。
兄が私と同じようにフィリアにも教育をさせようとしても両親は聞かなかった。
『僕がこの家を継いだらリーゼを自由にしてあげるからね。王家に無理に嫁がなくていいんだよ。好きな人のところにお嫁にいきなさい』
その優しい兄を学園卒業後、"当主になるなら領地で学んでこい"と追い出すように領地に向かわせた。
次期当主の兄がいなくなってからのメイドたちは、両親に大切にされるフィリアを優先させるようになった。
私の身の回りの世話だけはしてくれるが、それだけ。
この邸には私に声をかけてくれる人はいなくなった。
そんな私をフィリアが笑って見下してくる。
機嫌が悪いと私の部屋まできて八つ当たりする。
怒鳴るだけだから怖くも何ともない。
気が済めば満足するのだから好きに怒鳴らせている。
私も兄もフィリアの本性を知っている。
何も見ようとせず騙される両親のことはもう諦めた。
フィリアの涙も嘘。
自分の欲しい物はどんな手を使ってでも手に入れる強欲さ。
誰かを悪者にしてでも思い通りにする。
こんな子が王族の目に止まる?
マナーも常識も知らないのに?
我儘で思いやりもないのに?
だから家に居場所のなかった私が生徒たちに祭り上げられて婚約者候補だとチヤホヤされることに何も言わなかったのは、もう一人はイヤだったから。
話し相手が欲しかったから。
ただ誰かに側にいて欲しかったから。
その状況が変わったのはルフラン殿下が留学から帰ってきたから。
勝手にできた派閥とはいえ、ルフラン殿下にアピールしなければならなくなった。
アピールの仕方など知らない私はフィリアの甘える仕草を真似るしかなかった。
そのせいでルフラン殿下に何度手を振り払われて睨まれたことか・・・
そのうちタイロン伯爵子息が間に入るようになってくれたから、ルフラン殿下に近づかなくてよくなってホッとした。
セルティ公爵令嬢の強かさには別の意味で尊敬した。
派閥の皆に急かされても、もう私は何もしなかった。
2つ年下のフィリアが学園に通う年になってから侯爵令嬢なのに最下位のクラスになると知ったフィリアが学園には行かないと、また我儘を言い出した。
だからあれほど言ったのに・・・
この頃にはこの邸で私が声を出すことも殆どなくなっていた。
結局、入学前に怪我をして治療の為入学が遅れることにしたようだ。
フィリアと一緒に嘘を考える両親を軽蔑してしまう。
まあ、病弱設定には出来るはずがない。
お母様と度々お茶会に参加していたものね。
そこでも庇護欲をそそる見た目を利用して、沢山の子息達にプレゼントを催促していたのも知っているのよ。
最終学年に上がってすぐ、セルティ公爵令嬢と転移者のマイさんが騒ぎを起こした。
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誰にも触れることを許さなかったルフラン殿下に触れて、微笑むと本当に女神かと錯覚する程の美しさだった。
それにルフラン殿下のウォルシュ嬢を見つめる目が優しくなっている。
ルフラン殿下がウォルシュ嬢の手を握って去って行く後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
嬉しかった。
ルフラン殿下の一目惚れをした瞬間を見て、彼の顔から表情が消えていくのも見ていた。
その一途な思いが届いたのだと、手を繋いで去って行く2人を見て本当に嬉しかったの。
それからはルフラン殿下とウォルシュ嬢が手を繋いで歩く姿が学園内でもよく見られるようになった。
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